アビドスと太陽を守りたい月 作:キヴォトス一般人
誤字報告もありがとうございますっ!!
時間が進みます。
10話:入学式とやんちゃな新入生
季節が廻り、わたしとホシノちゃんは2年生になりました。たった2人のアビドスではありますが、何とかここまでやっていけています。
「え、新入生ですか。しかも2人とは」
「うんー」
そんな中、ホシノちゃんからとんでもないことを伝えられました。このアビドスに新入生が2人来るというのです。
「……ホシノちゃん、拉致ってきたとかじゃないですよね?」
「人聞きの悪いこと言わないでよ~ ちゃんとした新入生だよ! 話もしたよ」
いえ、あまりにも驚きすぎて拉致を疑ってしまいましたね。ホシノちゃんがそんなことする訳ないのですけどね。
「そうですか……でも新入生ですか」
たった2人だったアビドスに新しい風が吹く予感がしました。
いや、だからと言って厳しい状態が終わる訳でもないのですけど……というか大丈夫ですかね? アビドスの事情知ったら転校しちゃうとかないですか。
「その辺りは大丈夫。ちゃんと話したから」
「そうなのですね。それでも入学するってことですか」
「うん。しかも1人はお嬢様っぽいよ~」
「え」
「話をしたらカードで借金を返済しましょうかとか言われちゃった」
「何か……凄いですね?」
「うん。流石にそれはないかなと思って断ったけど」
「そうですね。そこはホシノちゃんの言う通りです」
それに頼ってしまうのはよろしくないです。それに、何というか……カイザーローンが怪しいというのもありますしね。
正直闇金に頼ってしまったアビドスにも非はあるのですが、それを言うのは野暮というものです。過ぎてしまった過去ですし、なかったことにはできません。
それに……そうせざるを得ない理由だってあったのですから。だからわたしは何も言いません。ユメ先輩以外にも居たであろう、先輩達。ユメ先輩の先輩だっていたはずですし、その方々が返済を頑張ってくれたおかげで少しは減っているのですからね。
「もう1人は何というか、うん。説明が難しいんだけど……拾った」
「え。ホシノちゃん、まさか……」
「いや違うよ! えっとね、ボロボロだったところを新入生の……ノノミちゃんって言うんだけど、その子と一緒に見つけたの」
「ぼろぼろ……ですか」
それは何とも物騒というか穏やかではありませんね。
「名前以外の記憶がないみたいで」
「……なるほど。それでホシノちゃんが保護したという感じですか」
「まあそういうことになるのかな? 色々あったけど、私と勝負して私が勝ったから入学してもらうことになったよ」
「えぇ……どういう状況ですかそれ」
「いやぁ……回復したあの子は結構やんちゃだったもので……」
「なるほど」
それは何というか……まあいいでしょう。
困っている生徒が居たら助けてあげなくてはいけませんね。とはいえ、ホシノちゃんの話を聞くとその子は結構やんちゃみたいですが……。
「というかいつの間にかそんな話をしていたんですか……凄い今更ですけど」
「うーんとね、セレネちゃんが忙しそうだったからその間に私が話をしてたんだ。ノノミちゃんは結構な頻度でアビドスに来てたしね」
「あー……それは確かに」
話を聞けばその時期は確かにわたしは色々としていたなと思います。
ホシノちゃんに怒られてからある程度、限度というかそういったものを付けて守っていましたけどね。
「なるほど、ありがとうございます」
「このくらいはしないとね~ セレネちゃんに追いつけないよ」
「追いつくとは……」
「こっちの話~」
ホシノちゃんの方が強いと思うんですけどね。
「それはともかく、入学式はしてあげたいよね」
「そうですね。豪華なものは出来ませんが……出来る限り大々的にやってあげたいですね」
今のアビドスにはあまり余裕はありませんが、せっかくの新入生です。出来る限り豪華にしたいですね。と言ってもわたしとホシノちゃんしか居ないんですけど……。
「そうだね。せっかく来てくれたんだから」
そんな会話をしつつ、わたしとホシノちゃんは入学式の話をするのでした。
**********
「ん。セレネ、私と勝負する」
そう言ってくるのはホシノちゃんも言っていたやんちゃな新入生である砂狼シロコことシロコちゃんだった。
わたしを呼び捨てにしてくるその度胸は凄いですね。気にしている訳ではないのですが……因みにホシノちゃんのことはホシノ先輩と呼んでいるようです。最初は同じように呼び捨てだったようですが。
春がやってきて、砂漠化の進んでいるアビドスでも桜が満開となり、入学式もいいタイミングで行うことが出来ました。
入学してくれたのはノノミちゃんこと十六夜ノノミちゃんとシロコちゃんこと砂狼シロコちゃんの2人です。
ホシノちゃんの言った通り、ノノミちゃんはお嬢様というかお金持ちのようです。そんなことを言うと実家がお金持ちなだけです、って言われましたが。
「シロコちゃん、セレネちゃんも先輩なんだからそう呼ぼうよー」
そんなことを思い返していると、ホシノちゃんがフォローに入ってくれますが、シロコちゃんが態度を変える様子はありません。そのままでもいいのですけどね。ホシノちゃんはちょっと気にし過ぎですよ。
「ん。自分より強い人の言うことしか聞かない」
「うへぇ」
とまあ、やんちゃというのはこういうことです。
結構好戦的な性格のようで、わたしと戦おうとしてくるのですよね……毎回、ホシノちゃんが止めるのですけど。
「うーん……そんなに勝負をしたいですか?」
「ん!」
そういう反応は可愛いのですけどね……でもまあ、新入生とはいえ彼女達も治安維持に加わってくれたのもあって、少しだけわたし達も楽になっています。
事情は説明済みのようで、それでもノノミちゃんは入学してくれたみたいです。シロコちゃんの場合は、ホシノちゃんとの約束ですけども。
それでも入学してくれたことは嬉しいことです。わたしとホシノちゃんで出来る限り豪華にしましたよ。と言っても普通に見ればささやかのものなのでしょうが……。
「仕方がありませんね……可愛い後輩の頼みですし」
ここまでしつこくされれば仕方がありません。可愛い後輩の頼みでもありますし、叶えましょうか。ホシノちゃんレベルとまでは無理だと思いますが……そういえば、シロコちゃんってどれくらい強いんでしょうか。
いえ、不良相手とかで戦闘を簡単に見た感じではそれなりに強いようですね。そのおかげでアビドス全体の稼ぎも上がっていますし、ノノミちゃんも頑張ってくれていますしね。
ノノミちゃんで驚いたのはメイン武器ですね……まさかガトリングを持ってくるとは思わなかったです。結構重いですよね、あれ……本当にお嬢様なんでしょうか。
いえ、今考えるのはやめておきましょうか。
「不肖セレネ、その勝負受けて立ちましょう!」
「え、セレネちゃん戦うの? だ、大丈夫かなぁシロコちゃん……」
「やった」
ホシノちゃんが最後に何か言っていた気がしますけど、気のせいですかね。そしてあまり表情を出さないシロコちゃんが喜ぶ顔も見れましたし、満足です。
「じゃあ明日、校庭でやりましょうか。……ホシノちゃんは立ち合いお願いしますね」
「うへ、分かったよ~」
「ん!」
こうしてわたしとシロコちゃんの模擬戦ともいうのでしょうか? 勝負が決まるのでした。
◇
「ホシノ先輩……セレネ先輩って強いんですか?」
「あ、そっかノノミちゃんもシロコちゃんもセレネちゃんが実際に戦っているところってあまり見てないもんねぇ。基本的にばらばらだし」
「何か凄い嫌な予感がするのですが……」
「そうだなぁ……うん。セレネちゃんね、ああ見えて普通に強いよ」
「そ、そうなんですね」
「本気を見たことはおじさんもないんだけどね~」
「そうなんですか?」
「うん。でも本気を出さなくても強いから……私と戦ったら互角かそれ以上かもしれないね」
「そこまで……」
「言いたいことは分かるよ~。セレネちゃん、私よりも小さいし……」
失礼なことを言うホシノであるが、事実でもある。実際、ホシノよりも小柄だ。身長差は大した差はないものの、それでもホシノよりも小さい。
だがそんなことを言うホシノも、ノノミからして見ればセレネもホシノも先輩ではあるものの小柄で小さいと思っている。失礼かもしれないが、事実その通りで一番最年長であるはずの2人がノノミとシロコより小さいのだ。
ノノミも過去にホシノと入学の話などと言った会話をしていた中、もう1人先輩が居るということは聞いていた。
しかし、ノノミ自身も何度か入学前にアビドスの校舎までやってきていたが、タイミングが合わずホシノとしか会うことが叶わなかった。
そんなこんなあって初めて顔を合わせられたのが入学式の日だった。
セレネを一番間近で見てきたホシノだからこそ知っている。
ああ見えて、複数人相手でも余裕で相手取ることが出来る。素早く狙いを定め、的確に急所を狙うその精度、飛んでくる弾丸を避けるその身体能力。他にも色々とホシノが思い出せば出すほど出てくるが、あの小さな身体の何処にそんな力があるのかホシノも謎であった。
そんなことを思うホシノではあるが、実際はホシノも人のことは言えない。セレネの方が若干身長が低いが、それでも大して変わらない体格差であり、そんなホシノもセレネからして見れば同じようなことを思うであろう。
ただ彼女の命中率、スナイパーとしての精度は異常でありホシノも何度か助けられていることもあった。あの精度は異常である、そうホシノが思ってしまうほどに。
(それにセレネちゃん、スナイパーライフルがメインって言ってるけど……普通にアサルトライフルも使うし)
「シロコちゃん無事だといいなあ」
「そこまで!?」
そんなやり取りをするホシノとノノミであった。
ここに来てようやく原作2年生組……