アビドスと太陽を守りたい月 作:キヴォトス一般人
本日は2話投稿(←
いやあ、タイトルをつなげたくて……(テキトー)
「……予想外、でしたね」
いや、ある意味想定内だったのかもしれない。
黒服は1人、そんなことを考えながらつぶやいていた。
「……」
小鳥遊ホシノが、黒服の出した取引を完全に断ったこと。おまけに黒服に対して殺意に近しいものを放ってきたのである。
それは以前、もう1人の生徒会副会長であるセレネがこちらに向けてきたようなものに近しいものだった。
小鳥遊ホシノは最高の神秘というものを持っているが、戦闘能力もかなりのものである。それは前々から興味を持っていたこともあって調べていた結果なのだが。
『私は黒服――お前よりセレネちゃんを、皆を信じる』
最後の言葉。
「……やはり、星月セレネの存在は大きい」
分かっていたことである。
確かに小鳥遊ホシノの先輩である、梔子ユメの存在は大きいだろう。だが、小鳥遊ホシノにとっての大きい存在は彼女だけではない。
仮に星月セレネという存在が居なかったら、小鳥遊ホシノはまた違った選択肢を取っていただろう。小鳥遊ホシノを支える2つの存在。
「同級生と、先輩」
他にもあるだろうが、小鳥遊ホシノの中で大きいのはこの2つであろう。
片方が欠けただけでは小鳥遊ホシノは揺るがない、そういうことだ。いや、梔子ユメが消息不明となったときは小鳥遊ホシノは荒れていたと黒服は認識している。
そんな彼女を支えているもう1人の存在が――
「星月セレネ」
黒服としても計画に支障が出るとは前々から予想はしていた。その予想は見事に当たった。
例えば、不安定だったアビドス生徒会を”アビドス廃校対策委員会”という名前に変更し、連邦生徒会認可させたこと。
これによってアビドス生徒会の全てを引き継いだ、実質生徒会組織であるアビドス廃校対策委員会の発足され不安定だった地盤を固めたのである。
「そしてこの認可申請を送ったのも星月セレネ、ですか」
黒服も後から知ったが、その話を出したのも星月セレネであり、小鳥遊ホシノを説得して認可申請を送ったのだ。
そしてそんな対策委員会は、いや、アビドス高等学校は2人の新入生を迎えた。これによって、対策委員会は4人となり、更に安定した組織になっている。
アビドスの現状は変わっていないものの、新しい変化でもあった。
「……」
そんなことを思い返しつつ、黒服は再び思考の渦に飲まれるのであった。
**********
「……」
ホシノは黒服の居たオフィスビルを後に、外へ移動していた。
「今まで保留で通しちゃってたからなぁ」
黒服の取引は簡単な内容であり、ホシノが黒服の持つ企業に所属する代わりにアビドスの借金の半分を負担する、という内容だった。
それはホシノにとっては魅力的な内容ではあったが、よくよく考えてみれば現在のアビドスの借金の残りは7億円ほどであり、その半分である3億5千万を負担してもらったところで半分の借金が残るのだ。
……確かに負担は減るかもしれない。
しかし、ホシノはアビドスの為に頑張ってくれているセレネのことを思い返した。ホシノにとってセレネは大切な仲間であり、親友だ。
「セレネちゃんだけにできるはずがない」
それに、とホシノは続ける。
今はノノミやシロコの2人の後輩も入ってきてくれた。今やホシノにとってはシロコとノノミも等しく大切な仲間だ。
そんな仲間だけを残して、ホシノだけが居なくなるのはどうだろうか?
そもそもノノミやシロコの入学を認めたのもホシノである。もちろん、セレネとも話していたが、それでも最終的な決定権を持っているのは委員長であるホシノである。
入学させておいて、そのまま放って姿を消すのか?
「……冷静に考えたら私、本当に何も見えてなかったなあ」
だが、取引に乗らずに居られたことは素直に自分を褒めてもいいかもしれない。保留という逃げの選択ばかりを取っていたが、今回ははっきりと断ったのだ。
「……でもこの程度であいつが諦めるようには思えないんだよなあ」
それがホシノに残る不安の1つだ。
あのしつこかった黒服が、ホシノがはっきり断っただけで……そう簡単に諦めるだろうか? 怪しいことこの上ない、あの黒服が。
「……」
いや今考えても仕方がないか、とホシノは一度思考を停止させる。
「だけど……もし」
――もし、セレネちゃんやノノミちゃん、シロコちゃんにも手を出すなら絶対に許さない
「大切な仲間だから」
黒服がホシノが断ったからと言って、他のアビドスのメンバーであるセレネやシロコ、ノノミに手を出そうものなら。
「私はたぶん絶対に許さないし、容赦もしない」
それだけは確信できる。
「……ちょっと冷静にならないとね」
色々と考えてしまったが、ホシノは冷静に再考する。
許さないのは事実だし、ホシノも手を出されれば反撃は普通にするだろう。今は様子を見る、それだけであった。
「それに問題は他にもあるし、本当に山積みだなぁ」
セレネに少し前に聞かされた内容を思い返す。
あのときのホシノはセレネに対して結構狼狽えていたと思う。理由は、やはりセレネはホシノが黒服と会っていたことを知っていたこと。
正確には悩んでいたことを知っている、と言うような言い草だったが、あのセレネの反応からして黒服の存在を知っていそうだとホシノは推測する。
しかしセレネはホシノにそのことについて問い詰めるようなことはしなかった。
「はぁ。本当にセレネちゃんには助けられっぱなしだなあ」
我ながら情けない、とホシノは思う。
そんなセレネから聞かされた内容というのは、アビドスの自治区のほとんどがアビドスのものではないというものだった。
最初聞かされた時はホシノも耳を疑ったが、証拠となる書類やデータを見せられては信じざるを得なかった。更に言えばセレネが嘘を言っているようにも見えず、至って真剣で真面目に話したことも影響した。
しかしながら、全てがアビドスのものではないという訳でもなかった。数は少ないものの、アビドスの土地として残っているところもちらほらあった。
どうして土地が減っているのかについては、借金返済の為に仕方がなく過去の生徒会が土地を売却したのだろう、とセレネは言っていた。
「でも」
その売却先であるカイザーコンストラクション。
そしてホシノ達が返済している相手はカイザーローン……どっちもあのカイザーコーポレーションのグループ会社なのだ。
「セレネちゃんも疑ってたね」
どっちもカイザーであること。
これについても、セレネはカイザーコーポレーションのことを疑っていた。今のアビドスの状態……それらの原因はカイザーなのではないか、と。
「……確かにそう考えると」
だが証拠もない。
ホシノもセレネも怪しいとは思うが、疑うことしか出来ないのである。しかもカイザーといえば、キヴォトス内でもかなり有名な大企業でもあるのだ。
「悔しいけど、疑うことしかできないよね」
今は、それだけしか言えない。
ホシノは悔しいと思いつつも、今はどうしようもないと考え、この思考も一度放棄する。これからのことも考えないといけない。
「黒服とカイザーが手を組んでいる可能性もあるってことだよね」
その可能性は否定できない。
とはいえ、判断材料が少ないためホシノは何とも言えない。ホシノに限らず、これはセレネも同じだった。結局今は様子を見ることしか出来ないのだ。
「今は……今後のことを考えなきゃね」
もちろん、黒服に対しての警戒も疎かにはしない。
セレネやノノミ、シロコ達大切な対策委員会の皆を、ホシノは絶対に守る……そう決意し、アビドスへ……セレネ達対策委員会の仲間達が居る学校へ、ホシノは足を向けるのだった。
原作と違い疑心暗鬼にならずに済んだホシノの世界線()
あれ、勝ち目なくね?
黒服がこの程度では諦めそうになさそう……。
大丈夫? 原作通り進む?()
でも、こういう同級生が居たら……って思うんですよ(妄想全開)
因みにもうここで知っているというか、前々から予想していたかもしれませんがタイトルにある太陽と月はホシノとセレネです。ホシノは太陽だと思っています。
アビドスはアビドスですけどね。なお、セレネ(セレーネ―、セレーネ)はギリシャ神話の模様。
こ、細かいことは気にしちゃだめですよ……