アビドスと太陽を守りたい月 作:キヴォトス一般人
「先生ですか」
「はい。どうやら連邦生徒会に先生がやって来たみたいですね。そして連邦捜査部シャーレを設立したようです」
「へぇ」
アヤネちゃんの話に相槌を返します。
しかし、先生ですか……そして連邦捜査部シャーレ……話を聞けば、お悩み相談というか生徒の手助けをする部活らしいですね。そして自治区を跨いでの介入が可能、と来ましたか。
「連邦生徒会長が行方不明の話もまだ話題になっていますね」
「あー」
「私はこのシャーレに支援要請を送ろうかなって思ってるんですけど」
「いいと思いますよ。結構かつかつですし、もしかしたらアビドスを助けてくれるかもしれませんしね」
過去に何度か連邦生徒会宛に支援要請を送ってましたけど、結局音沙汰がないまま今に至ってます。しまいには連邦生徒会長が行方不明になったようですし。何か……色々と凄いですね?
「アヤネちゃんのしたいようにして大丈夫ですよ。望みは薄いかもしれませんが……」
「そうですね。でも送らないよりはマシと思います」
「それはそうですね」
その辺りはアヤネちゃんに任せましょうか。
まあ、先生という存在は気になりますが……正直、大人と聞いてもいまいち何とも言えないのですよね。わたしとしては真っ先に思い浮かぶのは黒服ですし。
「……先生か」
どういう存在なのでしょうね? 連邦生徒会の切り札とかなんとか? 結構あっちこっちで話題になっているようです。
あとはサンクトゥムタワーが襲撃されたとか? このアビドスでも話題になっているくらいですからね。
わたしはアヤネちゃんと別れ、部屋を後に廊下に出ます。
わたしもホシノちゃんも3年目に入りました。アビドスの現状はあまり変わっていませんが、新入生が2人きたこともあって6人となりました。
廊下を歩きながら周りを見ていきます。
全校生徒6人であるアビドス高等学校……普通に見てとんでもない学校でしょうね。とはいえ、皆いい子ばかりですからわたしも助かります。
1年の時のシロコちゃんみたいなやんちゃな子は今回の新入生2人には居ません。
前にも言った気がしますが、アヤネちゃんはしっかり者でオペレーターをしてくれています。情報収集や分析・解析に強くて凄いと思います。
セリカちゃんはいい子なのですが、純粋というか素直である為結構騙されやすいのです。そこは心配ですね。それでも頑張ってくれていますが。
こっそりアルバイトをしているようです。バイト先には見当が付いていますけどね……というか、よく行く場所なのでバレない方がおかしいですよ。
「ふふ」
思わずくすりと笑ってしまいました。
余談というか悲しい話なのですが、新入生2人にもわたしは身長を抜かれています。いえ、これはホシノちゃんも同じなのですけど、これだと先輩の威厳が……。
「何というか……うん。複雑ですよね」
気にしていないと前言ったかもしれないですが、流石に全く伸びないのは思うところがありました。それは3年になっても変わらずです。せめてホシノちゃんと同じか、以上になりたかったですね。
「ないものねだりをしても仕方がありませんね」
それに、もし身長とかが大きく変わっていたら今までの戦い方とかを見直し必要も出てきますから。普通は本来スナイパーであるわたしが前に出ることはないのですけど、そうも言ってられませんからね。
稼ぐ為という理由もあると言えばありますが、一番は以前に言ったようにスナイパーは近付かれたりすると不利なので、中近距離でも対応できるようになりたかったから。
それに使える銃の種類が多い方が何かと役立つと思ったから。
……実は最近こっそりサブマシンガンやショットガン、グレネードランチャーにロケットランチャーと言った別武器も練習しています。
今更と思うかもしれませんけど……皆を守る為、アサルトライフルとスナイパーライフルだけでは不足していると感じました。
アビドスはホシノちゃんとわたしの2人だけだった時から、4人も増えて6人となりました。守る対象も増えたのですよ。
「……」
あれから黒服は何の音沙汰もありません。
ホシノちゃんの方にも特に何のアクションもしていないようです。本当にあきらめたのでしょうかね? いえ、油断はできません。
「アヤネちゃんとセリカちゃんに手を出す可能性も考えないとけませんからね」
結局ノノミちゃんとシロコちゃんには何もしていないようですが、それでもホシノちゃんが言うのであれば、まあ黒服はそういうやつなんでしょうね。
「色々と問題は山積みですね」
毎日にように言っている気がします。
如何せん、アビドスは抱えているものが多いですからね……一番大きいのは借金ですけど、こっちについては3年目に入った今でも変わりません。
そんなことを考えながら、わたしはいつもの屋上へやってきていました。
「今日も天気がいいですね」
見慣れた景色……これを見るのがわたしにとってはちょっとした息抜きになります。
ここからも見えますが、アビドス市街地を除けば砂漠が多い場所です。そんな市街地も少し砂に飲まれてしまっていますし、なんなら完全に飲み込まれた場所もあります。それは過去の資料やユメ先輩からの話で知っています。
「また屋上に居たんだね、セレネちゃん」
「……ホシノちゃん、気配を消すの上手くなりましたね?」
後ろから聞こえた声に少しだけ驚きます。
ホシノちゃんの気配がほぼしなかった……え、ホシノちゃん気配を消す練習でもしていたのでしょうか?
「おじさんもやればできるんだよ」
「……なるほど」
「セレネちゃん程ではないけどね……」
「わたしはスナイパーですからね。気配を察せられないようにするのは得意です」
ホシノちゃんにはまだ負けませんよ。でも今回気付かなかったのは事実なので、鍛え直す必要があるかもしれません。
「セレネちゃんって屋上好きだよね」
「はい。ここは大好きなアビドスが見渡せる場所ですから」
「そっか……うん、そうだよね」
校庭や体育館は元より、市街地や砂漠も見れる場所です。夜は星空を見ることが出来ますし、夜のアビドスも見渡せます。まあ、砂漠の方は明かりがないので見えにくいですし、市街地も人が少ないのもあってライトが少ないですが。
ここから見えているビルや家などの建物は、人が住んでいない方が多いです。アビドスの人口が減っているというのは今に始まったことではありませんが……。
でも前に言いましたがゼロという訳ではないのですよね。まだ残っている一般人も居ますし、アクアリウムとかであれば人がそこそこ来ていますから。
「わたしもホシノちゃんも3年になってしまいましたね」
「そうだね……」
時間が経つのは早いものですね。ちょっとだけ感慨深いです。
「ホシノちゃんは先生の話は聞いてますか?」
「まあ噂程度には」
「ホシノちゃん的にはどう思います? 連邦生徒会の切り札たる先生について」
「……」
そう問いかけるとホシノちゃんは何かを考える素振りを見せます。
「何とも言えないかな……実際会って見極めるまでは」
「ですよね。大人と聞くとどうしてもわたしは、ホシノちゃんを狙ったあの黒服が思い浮かぶのですよ」
「奇遇だね、おじさんもだよ」
それ以外にも色々とあって、わたしもホシノちゃんも大人という存在に対しては、少々思うところがあったりします。
「全員が全員、そういう存在ではないと信じたいのですけどね」
「うん、気持ちは分かる」
アヤネちゃんが救援要請をシャーレに送ってくれます。
その返答次第ですかね? 無視されるのであれば、それは今までと変わらない、そういう存在だということです。連邦生徒会も何度か救援要請をしても返答なかったですからね。
「もしアビドスに来てくれたら……」
「まずは見極めるしかないでしょうね。ホシノちゃんの言う通り」
でもちょっとだけ期待をしています。
先生であれば、この状況を打破できるかもしれない、と。
「うん、そうだね。信用できるかはこの目で見てから、かな」
そんな会話をしながら、先生のことを考えるのでした。
原作とは異なる状況のホシノは大人に対する信用度は原作ほどは低くないですけど、それでも疑いはあります。それはそうだ……。
まあ黒服に対してはガタ落ちですが(セレネからも同じ。むしろセレネの方が好感度超絶低いまである)