アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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いつもありがとうございます!


30話:襲撃未遂

 

「……」

 

 普段あまり怒らない人ほど怒ると怖い――それは、本当のことなのかもしれない。

 ホシノとシロコが戦場となった場所にたどり着くと、そこには阿鼻叫喚な光景が広がっていた。

 

「な、なんだよこいつ!?」

「お、おい、スナイパーライフルで直接殴って……ぐわ」

 

 アンチマテリアルライフルと呼ばれる、重く大きなライフルを片手に持って近くに居た敵を殴ったり、そのまま片手でトリガーを引いて弾丸を放ったりなど……とんでもないことをしているセレネが居た。

 

「もらった!」

「残念ですが、もらわれてません」

「な……ぐわぁ!?」

 

 スナイパーライフルを大きく振りかぶったときの隙を狙い、ヘルメット団の1人がセレネに近づくもののフリーだったもう片方の手からアサルトライフルが姿を現し、ヘルメット団を撃……殴った。

 

「殴るんかい?!」

 

 その様子を見て誰かが突っ込んだが、セレネは気にする素振りは見せずにヘルメット団を倒していく。

 

「うへぇ。先生、大丈夫?」

”う、うん……セレネって強いんだね……”

 

 驚きながら戦いの光景を見ていた先生にホシノが声をかける。

 

「……まあ、そうだね。普通に強いよ」

”うん。実際に今見てるから分かる……”

 

 そんな本人は両手にスナイパーライフルとアサルトライフルを持っては近接で殴ったり、弾を放ったり……そんな動作を繰り返しては、残りのヘルメット団を倒している。

 この場にはノノミとシロコ、セリカにホシノも居るのだが加勢する必要は皆無だった。むしろ、下手に加勢したらセレネがペースを乱してしまうかもしれない。

 

「ぐわああ!?」

「ぎゃ!?」

 

 セレネの攻撃は止まらない。

 敵を1人倒しては、すぐさま次の標的を捉えては確実に仕留めている。遠くから狙っているスナイパーに向けてはスコープなど覗かずに自分の持っているライフルで撃ち抜く。

 

「セレネちゃんが2つの武器を同時に使っている光景とかめったに見ないな……」

「そうなんですか?」

「ん……セレネ先輩凄い」

 

 セレネの戦闘スタイルは基本的にスナイパーライフルを使用する後方火力支援タイプ――なのだが、知っての通り彼女はアサルトライフルやサイドアームとしてハンドガンも持っている。

 2つの銃(或いは3つ)を戦闘の状況に応じて使い分けており、この間のヘルメット団の前哨基地への追撃作戦の時のように、殲滅戦になるとアサルトライフルに持ち替えてホシノと共に前線に出る。

 

 この通り、基本的にアサルトライフルかスナイパーライフルのどちらか片方を使用するのがセレネなのだが、今回の場合はその両方を使っているのである。

 

「昔、セレネちゃんが怒ったときがあったんだけど……その時のスタイルになってるね」

 

 それは遠い昔……と言っても、1年生の前半期頃の話になるのだが。

 ユメとホシノ、そしてセレネの3人でちょっとしたお出かけをしたときに、運悪く不良生徒と遭遇し戦闘となったことがあった。その際に、ユメを守るようにホシノとセレネが戦っていたのだが、偶々流れ弾を受けたユメを見たセレネが急にもう1つの銃を取り出したのである。

 

「もしかして……あれがセレネ先輩の本気?」

「かもしれないけど……本気であるようには見えないなあ」

 

 確かに普段と比べればかなり攻撃的なスタイルとなっているセレネだが、ホシノから見ると本気のようには見えなかった。尤もホシノさえもセレネが本気で戦ったところを見たことはないのだが。

 

「うへ。シロコちゃんに手を出すのはよくないなあ」

 

 そんなことを考えていたホシノは、気配を察知し素早くショットガンを取り出して散弾を放つ。

 

「! ホシノ先輩、ありがとう」

「いいよいいよ、後輩を守るのも先輩の仕事だからね」

 

 ホシノの放った散弾はシロコをまさしく攻撃しようとしていたヘルメット団の1人を吹っ飛ばす。

 セレネが無双もとい、暴れている状態ではあるが相手は数が多い。こうやって漏れて襲ってくるヘルメット団の存在を確認したホシノとシロコはそれぞれの銃を構え、警戒し始める。

 

 セリカはノノミと合流し、セレネが撃ち漏らしたヘルメット団の残党を処理していた。

 

「先生はひとまず、遮蔽物に隠れててね」

”わ、分かった……”

 

 この状況では指揮も安定しないだろうと先生も考え、ホシノに言われた通り頑丈そうな遮蔽物に身を隠す。何しろ、先生は銃弾1発でも受ければ致命傷になり得るのだから。それは先生自身も理解している。

 

『先生、大丈夫ですか?』

”なんとか。前に出るのはまずかったかな”

『過ぎてしまったことは仕方がありません』

”そうだね”

 

 通信越しにアヤネの声を聴く。

 

『ホシノ先輩とシロコ先輩が敵の隠し玉……戦車を破壊したこともあって、こちらが現在完全に有利な状態ですね』

”みたいだね……”

 

 セレネの戦いも凄いが、ホシノ達に関しても先生は同じことを思う。

 

”――だからアビドスは安定しているんだね”

『? 先生何か言いましたか?』

”なんでもないよ。皆強いなって思っただけ”

『ホシノ先輩とセレネ先輩だけ突出していますけどね』

”いやいや、ノノミもシロコも、セリカも……そしてアヤネも立派じゃない”

『そうですかね?』

”そうだよ”

『あ、ありがとうございます』

 

 少しの間も空けずに即答する先生にアヤネは少しだけ照れる。

 

『でも先生の指揮の方が凄いですよ』

”そうかな?”

『はい。皆さん物凄く戦いやすそうでした』

”それならよかった”

 

 そんなこんなで、しばらくの間は対策委員会とヘルメット団の戦闘が続くのであった。

 

 

 

**********

 

 

 

「セレネちゃん、暴れすぎー」

「すみません、ホシノちゃん。ちょっとセリカちゃんを狙ったことが許せなかったので」

「気持ちは分かるよー私もだしね」

 

 大方ヘルメット団の掃討が完了したところで、ホシノちゃんにちょっとお叱りを受けてしまいました。

 とはいえ、セリカちゃんを狙ったことはやはり許せなかったです。まあ、ヘルメット団からしてもわたし達全員を相手するのはきついと判断した結果なのでしょうが。

 

「残りはノノミちゃん達がやってくれそうですね」

「だねえ」

 

 残党を倒してくれているノノミちゃん達を見ながら呟きます。

 ホシノちゃんと一緒だったシロコちゃんもノノミちゃんとセリカちゃんと合流しているようでした。

 

「セレネちゃんが怪しい動きのヘルメット団のこと伝えてくれなかったらセリカちゃんが危なかったかもしれない」

「たまたま見回りしていた時に見つけただけですが……今考えると、運がよかったのかもしれませんね」

 

 夜は基本的に学校内だけを見回りしているのですが、今回はちょっと街の見回りもしていました。ぶっちゃけ、学校にはホシノちゃんも居るので問題なかったですし。

 そこで偶々、本当に偶然、ヘルメット団の会話を聞いたのです。今思うと、あの時すぐにホシノちゃんに連絡したのは正解でした。アヤネちゃんやノノミちゃん、シロコちゃんも駆け付けてくれましたからね。

 

「まさか戦車まで出してくるとは思いませんでした」

「本当にね。何でここまでするんだろうね……」

 

 もう少しゆっくりさせてくれませんかね。

 

「戦車の破片って回収したんでしたっけ」

「したよー、あとはアヤネちゃんに解析してもらうだけかな」

「それで何か分かればいいのですけどね」

「望みは薄いかもしれないね」

 

 それはそうかもしれませんね。

 とはいえ、戦車まで出してきたということは今までの銃などの武器よりも大きな証拠にもなり得る訳です。解析次第ですが……そもそも、ここまで悟られないようにヘルメット団に支援したりしている時点で、戦車にも何らかの対策がされてそうです。

 

 明らかにバックに誰かが居る……だけどその正体が分からない。怪しいのは幾つか思い浮かびますけどね。

 

「ホシノちゃんもありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 問題がまた増える予感がしますが……あとでまた会議ですね。

 

 

 

 





なーむー
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