アビドスと太陽を守りたい月 作:キヴォトス一般人
のんびり平和路線を貫き続けられればいいな、と思います()
「――で、どうしてブラックマーケットに来ているんですかね、わたし達は」
わたしは今居る場所を見てそんなことを呟きました。
ホシノちゃん達に色々と問い詰められてしまい、書類のことを話した結果……まあ色々と大変でした。黒服から渡されたということは何とか話さずに居られましたが、何となくホシノちゃんにはバレてそうだなと思います。
セリカちゃんの怒り具合は凄かったです。気持ちは分からなくはないですよ……わたしだって同じですから。ただそれは、わたしとセリカちゃんだけではなくホシノちゃん達の琴線にも触れたみたいです。
要するに――それを知った皆はお怒りということです。シロコちゃんとか思わず、闇銀行に乗り込もうとしたくらいですからね……ホシノちゃんとわたしで何とか落ち着かせましたが。
「セレネちゃんだけブラックマーケットに行ってたのがずるいと思ってね」
「いやいやホシノちゃん……」
それは理由なのでしょうか?
「ん。これはパトロール……問題ない」
「そうですね☆」
”こんなところにこんな場所があるなんて……”
『一度調査するつもりではありましたから……』
あの書類によってアビドス襲撃の裏側に居たのがカイザーローンだということは分かりました。ですが、皆が思うにカイザーローンだけではないと考えています。
大本のカイザー銀行や、更にその大本の大本……総本山であるカイザーグループ本社の息もかかっているのではないかという結論に至りました。この辺りはまだ推測でしかありませんが……あり得ない話ではないですね。
とまあそれはさておき、このように既に裏に居る何者かの正体は分かったので、ブラックマーケットに来る必要はなかったのですが……こうして居ますね。
「賑わっていますね~☆」
”確かに……ここって闇市なんだよね?”
『先生の言う通り、ブラックマーケット……闇市で合っています。どういった場所かは想像通りかと思います』
”そっか……”
知っての通り、ブラックマーケットは闇市とも言われています。どっちも同じ意味合い言葉ではありますが、闇市と言った方が言葉数が少なく言いやすいのかもしれませんね。
そしてノノミちゃんの言う通り、ここは見た目だけであれば普通の街や商店街と言っても間違っていません。しかしながら、空気はこの通り怪しいと言った感じです。
そしてお店も結構ありますが、どれもこれも正規なお店ではありません。露店や屋台、店舗等など……様々な営業形態があります。
アビドスの市街地よりも圧倒的に人が多い場所……耳をすませば、様々な音が聞こえてきます。
何かを叩くような音や、商人と客の会話、客人同士の会話、酔っ払い、喧嘩の騒音、通話音声……挙げればキリがありませんが、それほどまでに賑わっている訳です。
「……小さな区域かと思ったけど、かなり広いね。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」
”何だか申し訳ない……”
「ん、先生を責めている訳ではない」
「そうですよ。元々昔から存在していた場所ですから――強いて言うなら連邦生徒会の怠慢だと思います。後から来た先生は悪くないですよ」
「んまあ、連邦生徒会も悪いと言えば悪いけど、近くなのに放置していた私達も少しだけ責任があるかもねぇ」
「それもそうですね」
別に連邦生徒会が全て悪いとは言いませんが……こう言った場所を見逃しているのはどうかと思いますね。
確かに今は連邦生徒会長が行方不明で大変な状態でしょうが、この場所は連邦生徒会長が居る時期にも存在していたはずです。
「……」
まあここでごたごた言っても仕方がありませんね。
とはいえ、結局、皆と一緒にここに来てしまいましたね……。
「先生は一応近くに居て」
”分かった……”
先生を中心に守るようにわたし達が囲います。
先頭はホシノちゃんで、わたしは先生の後方ですね。セリカちゃんとノノミちゃんとシロコちゃんは左右に居ます。アヤネちゃんはオペレーターでもあるので、通信越しとなりますが。
「……銃声?」
そのままブラックマーケット内に進むと結構近いところから銃声が聞こえました。その音はわたし以外も聞こえたみたいで、全員は臨戦態勢を取ります。
「待て!」
「うわあ!まずっ、まずいですー!!つ、ついてこないでくださいー!」
……女の子の声?
もちろん聞いたことのない声ではありますが、何かに追われていることは察しました。声のした方を警戒しながら見ると、不良生徒複数名に1人の生徒が追われてる光景が目に入りました。
「わわっ、ど、どいてくださいー!」
そんな生徒はこっちに気付いたのか、そう叫んできますが……気付けば既に目の前まで迫ってきていました。しかも丁度バランスを崩したようで、このままだと彼女は地面とぶつかる……いえ、地面以前に先生達にぶつかる可能性もありますね。
わたしは咄嗟にその進行方向に出てついに転んだ少女を両手で受け止めます。
「セレネ先輩!?」
”セレネ!”
「セレネちゃん!」
思ったより、勢いが強く、踏み止まることが出来ないと判断したわたしは上手く受け身を取るようにし体勢を変え、そのまま少女と共に地面に倒れました。
「あわわわ!? ご、ごめんなさいっ」
「わたしは大丈夫ですよ。そっちは大丈夫ですか?」
若干背中に痛みがあるものの、受け身を取ったのもあってそこまでではありません。
「は、はい……何とか」
慌てて立ち上がった少女が、わたしの方に手を伸ばして起き上がらせてくれます。そこにホシノちゃん達も駆け足でやって来て合流しました。
「なんだお前等は!? どけ!! アタシ達はそこのトリニティ生に用がある」
「わ、私の方は特に用はないのですけど……」
状況は何となく察しました。しかし、あの制服って……見覚えがあるのですが。
「あ、思い出しました。その制服、トリニティのものですね」
『セレネ先輩の言う通りです。校章もありますし、間違いなさそうです』
あまり他校に詳しい訳ではありませんが、情報収集の一環としておおよそ有名な学園の制服くらいは調べたことがあります。とはいえ、人に寄りますけどだいぶ制服を改造したりしている人も居るので、一概にとは言えませんが……。
この辺りで言うならゲヘナやトリニティでしょうかね? あとは柴関ラーメンに行った時とか、アビドスのものではない制服の生徒が何人か居ましたね。
「そう、そしてキヴォトスで一番金を持っているお嬢様学校でもある! だから拉致って、身代金をたんまり頂こうって訳さぁ!」
「拉致って交渉! 中々の財テクだろうぉ?!」
どこかテンションの高い不良生徒と追われていたトリニティ生の方を交互に見ます。
「どうだ、お前たちも興味があるなら計画に乗るか? 身代金の分け前は――」
”……セレネ、ホシノ”
「「ほい」」
「うぎゃ!?」
「ぐわ!?」
先生の合図でわたしとホシノちゃんが目の前の不良生徒を倒します。
まあ、倒すと言っても銃を使う訳ではなく……いえ、使うと言えば使いますかね? 素早く構えたÁrtemisで軽くごつんと殴りました。ホシノちゃんもショットガンで簡単に殴って気を失わせていましたね。
「わー痛そうです☆」
「……ホシノ先輩はともかくセレネ先輩のあれで殴られたら――」
「絶対痛い」
シロコがそう繋げるとわたしとホシノちゃんを除く皆がうんうんと言いながら何度か頷いていました。ホログラム越しのアヤネちゃんも同じように。
……何故か追われていたトリニティ生まで頷いていました。
いや、痛いとは思いますけど……そこまでではないと思います。ちゃんと手加減もしていますし……あまり銃を殴るのに使うのはよくないですが、緊急時に役に立つ自衛テクニックです。
目の前まで迫られてしまったら銃を撃つというのはあまり効果的ではありません。というか、銃を撃つ前にやられますよ。それならどうするのか……銃を持っている状態ならば撃つのではなく、それで殴るのです。
……脳筋ではないですよ?
ひとまずそんなこんな一連の流れを終えた後、他に敵が居ないことを確認してからわたし達は追われていたトリニティ生の方を見るのでした。
来る必要がなかったブラックマーケットさんにやってきたようです()
ま、まあ……こういうのも。ね?