アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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今回、また1.2倍くらい長いです。どうしてこうなった――


39話:ブラックマーケット―その2

「あ、ありがとうございました、皆さんが居なかったら学園に迷惑を掛けちゃうところでした……それに、こっそりと抜け出してきたので――」

 

 アビドスの面々の視線が少女に向けられるとそう言って深く頭を下げてくる。

 

「えっと、ヒフミちゃんだっけ~? トリニティのお嬢様が、どうしてこんな危ない場所に来たの?」

「確かにそうですね。お嬢様が近寄るような場所ではないですよ? ここは危険ですから」

 

 ここは危険な場所であることはセレネは理解している。

 だからこそ、皆をここに連れて来たくはなかったというのが本音だが、結局こうして来てしまっていた。ホシノ達はパトロールと言っていたが……理由としてはおかしくないが。

 

(とは言っても……アビドスの近くですし、皆には教えておく必要はありましたかね)

 

 すぐ近くにこんな場所があるという訳だ。

 それに連邦生徒会の手が届いていない場所があるということを、先生にも教えたと考えればいいだろう、とセレネは思った。

 

 尤も、先生に教えたところでここまで広がってしまったブラックマーケットをどうにかするというのはほぼ不可能に近いだろうが――

 

 そんなことを考えていると、ホシノとセレネの疑問に少女……ヒフミが口を開く。

 

「あはは……それはですね、実は探し物がありまして――」

 

 どこか言いにくそうにここに来た理由を告げるヒフミを対策委員会の面々は興味深そうに見る。

 

「もしかして、戦車?」

「もしくは違法な火器?」

「化学武器とかですか?」

「それとも特殊な爆弾とかですか?」

「えっ?い、いいえ...えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」

 

「ペロロ……?」

「はい、これです!」

 

 ほとんどのアビドスの生徒が首を傾げる中、ヒフミは背負っていたバッグの中から、1つのぬいぐるみを取り出し皆に見せる。

 

「ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ! 限定生産で百体しか作られていないレアグッズなんですよ!」

 

 差し出されたぬいぐるみは、人に寄って反応が異なるものの異質さを醸し出していた。

 

(……ぺ、ペンギンでしょうか?)

(ニワトリかもしれないわ!)

(何かアイスがぶち込まれてるね……)

 

 セレネとセリカ、シロコがそのぬいぐるみを見つつこそこそとそんな言い合いをする。またホシノや通信越しのアヤネは何とも言えない表情をしていた。

 

「わあ⭐︎モモフレンズですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよね!私はミスター・ニコライさんが好きなんです!」

 

 そんな空気の中、場を変えたのはノノミだった。ノノミはそのぬいぐるみのことを知っているようで、ヒフミの方に近づき話を始める。

 

「分かります!ニコライさんも哲学的なことがカッコよくて!最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ!それも初版で!モモフレンズ好きな方に沢山会えて嬉しいです!」

 

 ノノミとヒフミは話が合ったようで、楽しそうに会話をし続けていた。そんな2人をセレネ達は何とも言えない表情で見ていた。

 

「いやぁ...何の話だか。おじさんにはさっぱりだなー」

 

 ホシノがセレネとセリカ、シロコが居る場所に移動しながら口に出す。

 

「まあ、ノノミちゃんが楽しそうなのでいいとしますか」

「だねぇ」

 

 まだまだ話し続ける2人を見ながらセレネとホシノは少し微笑ましく見ていたのだった。

 

 

 

「……アヤネちゃん」

 

 そんな時間は束の間――セレネは周りから感じる敵意を認識した。アヤネに静かに声をかけると、アヤネも気付いた様子だった。

 

『! セレネ先輩!』

「気付きましたか? ……ホシノちゃん」

「んー? ……なるほど」

 

 セレネに声をかけられたホシノは、いつも通り返事をしようとしたがセレネとアヤネの表情、敵意を感じたことで真面目な顔になる。

 

『皆さん、大変です! 四方から武装した集団が接近中です!』

「「!」」

 

 アヤネに声に全員が反応し、ヒフミ以外の全員が武器を取り出す。ヒフミは何が起きているのか分かっていない顔だったが、武器を取り出した面々とその表情を見て察した。

 

「さっきの奴らの仲間かしら?」

「ん、間違いないと思う……」

”みんな戦闘の準備は大丈夫?”

 

 先生の言葉にうなずくが、そこに待ったをかける生徒がいた。

 

「待ってください! あまり規模の大きな戦闘はブラックマーケットの治安管理組織に見つかってしまうかも……! ここから離れた方がいいと思います!」

 

 ヒフミであった。

 ヒフミの言葉にアビドスの生徒が首を傾げる……ただ1人を除いて。

 

「ヒフミちゃんの言う通りですね。規模の大きな戦闘は避けた方がいいかもしれません」

 

 セレネがそう言えば、ホシノ達は構えていた武器を一旦しまい始める。

 知っての通り、セレネはここに来たことは何度かある為、ブラックマーケットのことについてはそこそこ詳しかった。つい先日も、便利屋68を雇って事前調査をしていたのだから。

 

 ヒフミの言う通り、ブラックマーケット専用の治安維持組織というものが存在している。それらに見つかると厄介この上ない為、ここは逃げるのが一番だとセレネも考えていた。

 

「ヒフミちゃんとセレネちゃんの方が詳しそうだし――逃げよっか」

 

 ホシノがそう決めれば、一同はそそくさとその場を離れていくのだった。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

”こ、こんなところにもたい焼き屋ってあるんだね……”

「まあ、ブラックマーケットとと言ってもこの通り、普通の市街地というか商店街というか……そんな場所ですからね。見た目だけは」

 

 敵意を感じなくなる場所まで逃げたところで、わたし達は一息をついていました。

 先生はこんな場所……ブラックマーケットにも普通のたい焼き屋があることに驚いていましたが、気持ちは分からなくありません。お値段もそこまでぼったくりという訳でもなく、普通の値段くらいでした。

 

 美味しそうな匂いに釣られた皆を見て、ここは先輩として奢ろうと思ったらノノミちゃんに止められてしまいました。代わりにノノミちゃんが皆の分を買ってくれたのですが、何というか……先輩としての……まあいいです。

 

「なるほど、そんな事情がおありだったんですね。そして先生はアビドスを救う為に来ていると」

”まあね。とはいえ……”

 

 そんな逃げた先でたい焼きを食べながら一息取りつつも、ブラックマーケットに居る件などの話をしていました。しかし、思ったよりこのたい焼き美味しいですね……ホシノちゃんもご満悦の様子です。

 

”力になれているかは分からないけど……”

「ん。先生にはかなり助けられている。指揮もそうだし、支援物資も……」

「んまあそうだねえ。前よりは好転してるね」

「そうですね☆ 先生も色々と頑張ってくれてますから☆」

 

 ……まあそうですね。今まで積極的に関わってくれるような大人は居ませんでしたからね。ホシノちゃんも最初よりは先生を認め始めていますし、信じ始めています。わたしは……どうなんでしょうね。

 

「……」

 

 皆が固まっている場所から少し離れ、歩いた先で視線を皆の方に戻します。

 ……昔は、ホシノちゃんとユメ先輩とわたしの3人だった生徒会ですが、今では6人……いえ先生を含めて7人となりかなり増えましたね。

 

『あなたがセレネちゃんだよね! 生徒会に入ってくれてありがとう!』

 

 ホシノちゃんより少しだけ早い段階で生徒会に入りましたが……その時は2人だけでしたね。わたしが生徒会に入った理由は廃校寸前のアビドスを何とかしたいという思いもありました。

 

 わたしが入学したての頃は、まだ数える程度ではありますが他にも生徒が居ました。交流はほぼなかったのですが、気付けば皆居なくなってしまい、ユメ先輩くらいしか居ませんでしたね。

 転校自体は考えたことはありました。でも、あっちこっちで時々見かけるユメ先輩の頑張る姿を見て転校という選択肢は気付いたっ頃には無くなっていて生徒会に入っていた。

 

 借金の話は前から知っていましたけど、わたしも最初はかなり驚きましたよ。本当ですよ? 今では笑って飛ばせるようになっていますが……いえ、笑い飛ばせるレベルではないのですが慣れって怖いですよね。

 

『ユメ先輩、騙され過ぎでは?』

『ひぃん!? いや今度は大丈夫だと思ったんだよー!』

『でも騙されてますよ』

『う……』

 

 ホシノちゃんが入る前でも相変わらずな先輩でしたね。

 アビドスもそうですけど、ユメ先輩のことも守りたかったというのは本当です。結局、あの日は守れなかったのですが……。

 

”セレネ”

「? あ、先生ですか。あっちに居なくていいのですか?」

”セレネが心配だったから”

「……わたしは大丈夫ですよ」

”強いのは分かっているつもりだけど、セレネも大事な生徒だからね”

「そ、そうですか」

 

 なんだかこの先生もあまり掴めませんね。黒服とは全く違うというか、正反対な大人ですけど掴めないですから。悪い人ではないのは分かっていますけど。

 

”色々と小耳にはさんだけど、一番頑張っているのはセレネなんだってね”

「そうですかね? よく分からないですけど」

 

 わたしは普通に仕事をして稼いでいるだけですよ。まあちょっと投資と呼ばれるものに手を出していますけど……これについては内緒です。少しでも稼げるならなんだってしますよ。

 

”たぶん、皆にも言われていると思うけど……無理はしないように”

「分かっていますよ。ホシノちゃん達に心配をかける訳には行きませんから……まあ既に色々かけているかもしれませんけどね」

 

 黒服からもらった資料の件もそうですし。

 隠すことは出来なかったので結局は、皆にバレてしまいましたから。先生にも……でも、まさかわたし達の返済金が闇銀行に流れていたとは思いもよりませんでした。

 ヘルメット団に支援とも書いてありましたからね……兵器ではなく資金を提供していたという訳です。襲撃の黒幕は分かりました。

 

「……」

”セレネ……やっぱりあの資料のことで”

「……分かっちゃいますか?」

”うん。セレネにしては珍しく分かりやすかったよ。だからみんなも気付いたんだろうね”

「あれを知ってからちょっと分からない感情に襲われてましてね。……悔しいというか情けないというか、怒りというか」

 

 言葉では言い表せないような感情……わたしにもよく分かりません。怒りもありますし、情けなさもありますし……何というか抑えられているとは思いますが、わたしにしては珍しく取り乱しているようです。

 

”……”

「……先生?」

 

 そんなことを言うと先生が優しくわたしの頭を撫で始めました。

 ……先生の身長はかなり高めです。中性的過ぎてどっちなのか分かりませんが、わたしやホシノちゃんはもちろん、ノノミちゃん達よりもずっと高い、大人ですね。

 

”1人で抱え込む必要はないよ。それに証拠を手に入れた訳だからね。これを連邦生徒会に持って行けば動いてくれるはずだよ”

「……そうですね」

 

 とはいえ、借金自体は恐らく無くならないとは思います。これはもう分っていることなのでいいのですが……アビドスが借金をしたという事実は残っている訳ですからね。

 

「わたし達ではカイザー相手にはどうしようもないです。……先生、お願いします」

”まかせて”

 

 その先生の言葉に何処か力強さを感じるのでした。

 

 




意地で書きました、後悔はしていません()






偶には何か違うものを……ということでAIイラストですがホシノとセレネを作ってもらいました←
※AIイラストです。ご注意ください。

【挿絵表示】

やはり、複数キャラは(特にオリジナルと既存キャラ)だと色々と混ざりますね。
ヘイローと瞳の色が……お目汚し失礼しました。




サラバ!
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