アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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42話:衝突

「セレネちゃん!」

「セレネ先輩!」

”セレネ!”

 

 自治区侵犯をしてきたゲヘナの風紀委員と対面していると、後方から聞き慣れた声が耳に届きました。

 

「あ、ホシノちゃん達も……流石に3回も爆発すれば分かりますよね」

 

 今回は珍しく、アヤネちゃんも生身のままここにやって来ていました。

 皆が来ることは予想済みです。あれだけ大きな爆発が起きれば、アヤネちゃんがすぐに察知しますし……更に言えばそれが3回もあった訳ですからね。因みに3発の砲弾は全部撃ち落としました。

 

”セレネ、これってどういう……ん? そっちの皆は……あ、便利屋68の生徒だよね?”

「私達のこと知っているの?」

”それはもちろん。生徒のことは予め覚えて来たからね”

「……もしかして、先生でしょうか」

「先生……あ、シャーレの」

 

 一早く察したのはハルカちゃんでした。ちょっと予想外だったのは秘密です。

 

「セレネちゃん無事だった?」

「わたしは無事ですよ」

「そっかよかった……やっぱり、空中で爆発したのって……」

「わたしが撃ち落としました」

「だよねえ……それで、これはどういう状況なの?」

「どうもこうもないですよ。あっちが領土侵犯……いえ、自治区侵犯して来たのですよ」

「へぇ?」

 

 わたしが説明すればホシノちゃんが風紀委員の方を睨みつけます。

 

「ん……数が多いね?」

「そうね……でも、セレネ先輩の言う通りなのであれば向こうは侵略者ってことよね」

「あはは……ええとまあ、間違っていませんけどね」

 

 侵略者という言葉にアヤネちゃんが少しだけ苦笑いをします。でもそれと同じようなことですよ。ここはアビドスの自治区なのですから。

 

「ところで、あっちの4人はセレネちゃんのお友達?」

「友達……まあそうですね、依頼主と依頼を受ける側みたいな感じですかね?」

「なるほど? ええと取りあえず、味方ってことでいいんだよね?」

「それでいいですよ」

 

 ひとまずはそれでいいと思います。

 

「何か向こう、全然動かないんだけど」

「あー……うん。セレネちゃん、その溢れんばかりの殺気抑えて抑えて」

 

 ホシノちゃんにそう言わたので、警戒しつつもひとまずは風紀委員の方を睨むだけにしておきます。

 

 ……そしてわたし達と風紀委委員が改めて対面するのでした。

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

「ぐあ!?」

「くぅ!?」

「な、何だこいつら、強い……」

 

 気付けば戦闘に発展していた中、風紀委員会の生徒達は1人だった生徒に5人の生徒と1人の大人が合流したアビドス相手に苦戦を強いられていた。

 

 先生の指揮というのもあるだろうが、それでも6人の戦闘能力はイオリ達の予想の遥か上を行っていた。数は圧倒的に風紀委員会の方が上だったはずだが、たった6人相手に次々と戦闘不能にされていた。

 

 ホシノは前に出て盾を片手にショットガンを。時にはショットガン自体で殴ったり、盾を使って近接戦闘まで行っていた。セレネは少し離れた場所から的確に急所を狙い撃ち、一撃必殺を。

 ノノミはその大きなガトリングで複数の敵を一掃し、シロコはドローンを使いつつも自身も銃を使って応戦し、セリカはホシノとまでは言わないものの、前に出ては敵に銃弾を浴びせていた。

 

 アヤネは後方で待機しつつ、先生の指示を聞きながらも前で戦う皆に対してオペレーターをしている。時にはドローンを飛ばし、支援も行っていた。

 

「私たちのことも忘れないようにね! くふふ!」

「目にものを言わせてあげるわ!」

「はぁ。逃げた方がいいと思ったけど……依頼じゃ仕方がないね」

「アル様が戦うなら私も頑張ります!」

 

 そんなアビドスの6人に加えて、便利屋68の4人が加わり風紀委員会の面々が更に苦戦を強いられる。

 

 柴関ラーメンの店舗周辺が大規模な戦場と化している中、双方が一度下がり体勢を整え直す。そして再び睨み合いの硬直状態に変わっていった。

 

『――アビドスの対策委員会の奥空アヤネです。所属をお願いします』

 

 そんな状態になった中、アヤネが言い放つ。

 

「そ、それは……」

 

『それについては私の方から話させていただきます』

『通信……?』

 

 アヤネの質問にまた違う声が、通信越しに響くのだった。

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します』

「あ、アコちゃん……」

 

 どこか言いにくそうな顔をするイオリをよそに、アコは話を続ける。

 

『行政官というと、風紀委員のナンバーツー……』

 

 アヤネはアコの自己紹介にあった行政官という単語に反応する。情報収集や解析などに長けているアヤネであれば、知っていても当然だろう。

 

『あら、実際はそんな大したものではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして……』

 

 アヤネの言葉にそう返すアコだった。

 そんなアコをセレネはあまり出さない不機嫌な表情をして睨み続けていた。そんなセレネにホシノは気付くが、先ほど言っていた自治区侵犯の話もあり当然だろうと思った。

 

『……アビドスに生徒会の面々が残っていると聞きましたが、皆さんのことのようですね。6名と聞いていますが――どうやら全員居るようですね』

 

 なんだかんだあり、この場にはアビドスの全員がやって来ていた。委員長のホシノに副委員長のセレネ――実質的なアビドスの最上位組織のトップ2が居るということになる。尤も全校生徒6人というのもあって最上位組織と区切る意味はないのだが。

 

『私達は生徒会ではありません。対策委員会です、行政官』

『正式名称はアビドス廃校対策委員会ですよ』

『セレネ先輩』

 

 皆が皆、”対策委員会”と呼ぶので忘れがちかもしれないが、この6人の所属する組織の正式名称は”アビドス廃校対策委員会”である。これはかつて、アビドス生徒会であった名称が変わった後釜の組織に当たっている。

 

『失礼しました、アビドス廃校対策委員会のみなさん。私ゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました。やむを得なかったということで、ご理解いただけますと幸いです』

『他の学校が別の学校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をするなんて、明確な自治権の違反です!』

 

 アコのすました顔の説明に納得がいかないアヤネが大きな声でそう言い放った。

 

『風紀委員でしたっけ? そっちこそ状況分かってる?』

 

 そんな話に今度はホシノが入ってくる。

 

『はて?』

『こちらのこと随分舐めているように見えるけど――』

『そんなことはありませんよ』

 

 絶対嘘だ、とアビドスと便利屋68の面々は心の中で突っ込んだ。

 

『明確な自治区侵害を犯しているのはそちらですよ? あと調べているならわかっていると思いますが、この場に居るわたし達は名称こそアビドス廃校対策委員会ですが、アビドスの生徒会と同等であることを認識していますか?』

『……』

『今あなた達は――アビドス自治区の最上位組織と対面しています』

 

 セレネの話にアコ以外の風紀委員が少しだけ真剣な顔に変わる。

 

『先ほどアヤネちゃんが言ったように、他校の自治区での戦闘行為は双方の同意がないと駄目なはずですよね? わたし達はあなた達の戦闘行為を許可した覚えはありません。念のために聞きますがホシノちゃん、許可なんてしてませんよね』

『もちろん』

『とのことですが?』

 

 何度も言うがここはアビドス自治区だ。

 彼女達風紀委員の戦闘行為は明確な違反である。他校の自治区内で堂々と戦闘行為をしているのだから当然だろう。アビドスの対策委員会が戦っているのは侵略者に対する防衛の為でもある。

 

『ふぅ――これだけの兵力を前にして怯まないだなんて……これだけ自信に満ちているのはシャーレがバックにいるからですか? ねぇ、先生』

”彼女達は自分の自治区を守るために戦闘をしている――シャーレがバックに居る以前の問題だと思うよ? 便利屋68を捕まえたいのは分かるけど、それならちゃんとした正式な手続きをするべきだと思うけど”

 

 先生の言葉は正論そのものであった。

 予め知っていることだが、他校の生徒が他校の自治区内に入るだけであれば問題ないが、その中で戦闘行為などをするのは問題になりかねない行為だ。

 犯罪者を捕まえる為のヴァルキューレであっても、自治区を跨いで逮捕を行うにはその自治区の生徒会等と手続きをしなくてはいけない。これは誰もが知っているはずのことであった。

 

『という訳ですが……? もし彼女達を逮捕したいのであれば正式な手続きをお願いします』

 

 確か人数こそは多い風紀委員の部隊ではあるが、先ほどの戦闘で分かるように6人でもやり合える力がある。便利屋68もセレネからの依頼で加勢している為、10人となるが。

 

『そういう訳で、交渉は決裂です! ゲヘナの風紀委員会、あなた方に退去を要求します!』

 

 アヤネがアコに向けて言い放つ。

 

『委員長としても退去を要求するよ?』

『もちろん副委員長からもですよ』

 

 そこに追撃するようにホシノとセレネが続ける。アビドスの実質なトップ2までがそう言えば、アビドスとしての決定はほぼ確定となる。

 

『それは困りましたね……こうなったら仕方ありません。本当は穏便に済ませたかったのですが……』

 

 しかし、そんなアビドスの話を無視するようにアコは続ける。その自信は何処から来ているのか、全員が疑問に思ったが向こうがそれを望むのであれば、対策員会……アビドス側はそれに対処するだけだ――全員が再び銃を持ち直すのだった。

 

『ヤるしかなさそうですね?』

「ん。望むところ……」

 

 そして再び戦闘が始ま――らなかった。

 

「セレネちゃん?」

 

 アコが告げた瞬間にこの場全ての雰囲気ががらりと変わり始めた。

 

『な、何が?』

「ちょっと、昼なのに何で月が出ているのよ?」

「それだけじゃない、夜になってる……」

 

 戦場の急変――昼であったはずの空は暗く、夜空となり太陽は姿を消し、輝く満月だけが浮かんでいた。

 

「そうですか、こちらも穏便に済ませたかったのですけどね」

 

 そんな急変した場にとてもよく声が響いた。

 

「――”神秘開放”」

 

 刹那、セレネのヘイローがとてつもない光量で輝きだし、赤と青のオッドアイの片方である青い瞳が仄かに光ったのだった。

 

 




おい、おまえそんなんもってたんか……

ヘイローの輝きが他の皆に見えているかは謎です。
明日はお休みします。
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