アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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いつもありがとうございます!
なんか今回も少し長いです。


43話:守る

「……これは」

 

 いつものオフィスで黒服は何かを感じた。それは小鳥遊ホシノの神秘を見たときと同じような感覚であった。

 

「星月セレネの神秘量が……溢れている?」

「ふむ、なるほどなるほど――」

 

 とても興味深そうに考え始める黒服。

 

「明月のセレーネー……前言撤回しましょう。あなたは――無自覚ではなかったようですね」

 

 誰に言うものでもない、黒服の言葉は部屋の中に響くのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ね、ねえ、セレネ先輩どうなってるの!?」

「わ、分からない……あんな先輩は見たことがない」

 

 その変化はアビドスの生徒達すらも困惑するものであった。

 見た目は普通のセレネ――いや、少し違うが、セレネで間違いなかった。しかし、言葉で言うのは難しいが……今のセレネの纏う雰囲気は異質であった。

 異質ではあるものの、ホシノ達や先生にとっては何かに包まれているような感覚があった。どこか優しく、神秘的なそんなものであったが、言葉で表すのは難しかった。

 

『これは一体っ!?』

 

 流石のアコもこの異常な光景には驚くほかなかった。

 アビドスや先生達がそんな雰囲気であるのに対し、風紀委員側については神秘的ではあるものの恐怖を感じ取っていた。

 

「――わたしは、アビドスの最年長として皆を守る義務があります」

 

 青目から仄かに光を放つセレネはゲヘナの風紀委員とアコの方を見ながら静かに言葉を紡ぐ。

 アビドスを守る――それは、1年の時からセレネが決めていたことだ。アビドスを害する者に対しては容赦をしない、そんな覚悟でもあった。

 尤も――ユメやホシノと言った大切な仲間が居たこともあり、セレネが持っていた冷酷な部分は鳴りを潜めていたのだが……完全に潜めていた訳ではなく、例えば黒服と会話したときなど、時折見せることもあった。

 

『星月セレネ――あなたは一体』

「アビドス廃校対策委員会の副委員長ですよ」

 

 それ以上でもそれ以下でもない。

 セレネにとって、既に対するゲヘナの風紀委員会は敵と認定している。先ほどのアヤネやホシノ達の言い分を無視したのだから当然と言えば当然だが。

 

「知ってますか? 月っていろんな形を持っているんですよ。満月や半月、三日月――それぞれの中間の形、そして新月……月相と言われていますが、まあ新月に関しては形と言っていいかは分かりませんが」

 

 先ほどまで光り輝いていた満月が姿を消し、暗闇に包まれる。

 それでも認識できないほどの暗さではないのだが、アコやイオリ、チナツ達風紀委員、先生やアビドス、便利屋68の生徒もセレネを認識できなくなった。

 

『!?』

「セレネ先輩が消えた?」

「セレネちゃん?」

 

「ぐわっ!?」

「!?」

 

 セレネを認識できなくなったと同時に、風紀委員の隊列の方から悲鳴が聞こえる。

 

「新月は見えない」

「!?」

 

 正確には新月は月食――惑星の影が月にかかることによって月が欠けて見える現象である。この状態の場合、地上から見た月は暗くなり認識しにくい。要するに見えなくなる訳ではないが、見えにくいのだ。

 

「――さて、ちょっと予行が過ぎましたかね? ゲヘナ風紀委員の皆さん。これよりわたし達アビドス廃校対策委員会は自治区防衛権を行使します。ホシノちゃん」

「へ? あ、うん。そうだね。これ以上私達の自治区に侵略される訳には行かない。皆戦闘準備を――先生も」

”う、うん。……分かった、任せて”

 

 異常な光景に驚きつつも、セレネの言葉にホシノがそう言えば全員が再び臨戦態勢を取る。

 目の前のゲヘナの風紀委員は――既にアビドスとしては自治区を侵害している敵である。だからこそ、ホシノ達は自分達の自治区、アビドス自治区を守るために動く。

 

 ――これは正当な防衛行為だ。

 

「――待って」

 

 双方が再度ぶつかろうとする最中、1人の声がこの戦場に静かに響くのだった。

 

 

 

 

 

⏱⏲

 

 

 

 

 

「セレネちゃんってよく、そんな大きなライフル使えるよね」

「これですか?」

「そうそう! しかもそれを普通に使えるんだもん、凄いよねえ」

「そうですかね? そんな重いとは感じないんですが」

「そうなの? ちょっと私も持ってみてもいい?」

「いいですよ、ユメ先輩」

 

 そう言ってセレネはユメに自身の愛銃を差し出す。

 

「どうですか?」

「うーん、やっぱり重い方かな? 両手じゃないとちょっと安定しないね」

 

 持てないことはない……が、ユメはセレネがこれを片手で持っていたことを知っている。更に言えば常にこの銃を後ろに背負っていることも知っている。そしてセレネの銃がもう1つあるということも知っている。

 

「常に装備してるよね」

「備えあれば患いなし、ですよ。先輩」

「そ、そうだね」

 

 セレネの言葉はご尤もであった。

 準備不足を何度か経験しているユメは、何処かバツの悪そうな顔をしていた。そのときはいつもセレネがサポートしていたが。

 

「それに常に銃を持ち歩くのは自衛の為ですし。皆普通に持っているじゃないですか」

「そうだね……」

 

 常に銃を携帯するのは常識である。家とか、戦闘が起きないような場所であれば置いといてもいいが、それ以外の場所では持ち歩くのが普通だろう。

 

「でもセレネちゃんの銃は妙に圧を感じるよね」

「50口径ですし。軽装甲の車両とかなら貫通出来ますよ」

 

 普通の車であれば余裕で貫通するだろうし、装甲の薄い兵器であっても貫通できる、そういう口径である。流石に戦車は貫通出来ないだろうが、薄いところを狙えば貫通を狙えるかもしれない。

 

「アサルトライフルも持ってるよね?」

「はい、この通りですよ。もう見慣れてると思うのですが」

「ま、まあね……」

 

 そんなライフル以外にもセレネはもう1つ、アサルトライフルも持っている。ユメも何度かセレネの戦闘を見たことがあるが、アサルトライフルも普通に使いこなしているのである。

 

「いえ、わたしみたいな狙撃手……スナイパーは近付かれると一気に不利になりますからね。いざという時に対応できるように持っておいて損はないですよ」

 

 とは言うセレネだが、実際のところスナイパーライフルを使わずにアサルトライフルで前に出ることがほとんどである。スナイパーとしての実力や技量は高いが、アサルトライフルについても同等レベルだ。

 

「私がセレネちゃんの戦い見たときって大体前に出てアサルトライフル使ってるところがほとんどな気がする……」

「まあ、遭遇戦とかではあまり狙撃は意味ないですしね」

 

 それにユメが居る時に遭遇した場合、わざわざスナイパーライフルを取り出して遠距離に移動するというのは余計な手間である。予め狙う相手が決まっているのであればスナイパーライフルだが、こういった遭遇戦では中近距離の戦闘がほとんどだろう。

 

「あ、時間ですね。ちょっと出て来ます」

「分かったよー、セレネちゃん気を付けてね」

「ユメ先輩もですよ」

「わ、分かってるよぉ」

 

 いつものやり取りをしてセレネは生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「――ふぅ、片付きましたね」

 

 一通り、不良を倒した後セレネは一息つく。

 アビドスの治安が最近、悪化しつつあった。仕方がないこととはいえ、アビドス内で暴れられるのは困るのでこうして頻繁にセレネは治安維持の為に市街地など、色んな場所を見回っていた。

 

「セレネちゃんいつも助かってるぜ」

「ありがとう!」

「無理しないようにね?」

 

 人口は減少しつつあるアビドスだが、それでもまだこうして残っている一般人も居る。セレネの役割はそういった一般人もそうだが、アビドスやユメと守ることだ。これはセレネが決めたことであった。

 

「また何かあったら連絡ください。出来る限り駆け付けます」

「いやいや、今以上にセレネの嬢ちゃんに負担をかける訳には行かねえさ。俺たちも自衛くらいは出来るようにならなないとな」

「もしもの時だけ連絡するわね」

「いつもありがとね」

「いえ、皆さんが無事ならわたしは……」

 

 とはいえ、確かにセレネ1人だけで自治区の治安を維持するというのは無理があった。しかし、それをできるのがセレネしか居ないこともまた事実でもあった。

 アビドスにはユメも居るが、彼女はあまり戦闘慣れはしていないとセレネは判断している。間違っていないのだが。

 

「……」

 

(こうして感謝されるのは不思議なものですね)

 

 だからこそ、セレネは余計に守りたくなった。

 

「でも、やっぱり人手不足ですね」

 

 このままではどんどん治安は悪くなっていくだろう。アビドスは結構広く、移動にも時間がかかることもある。だからセレネ1人で全てをカバーするというのは不可能に近い。

 

「まだ残っている生徒も居ますけど、数名は転校が決まってますからね」

 

 仕方がないことだが、少しだけ寂しい。

 尤も転校しないとしても生徒会に入るかは別ですが……とはいえ、そんな生徒達も出来る限りは借金返済に協力してくれている。

 

「今はこうしてやって行くしかないですよね」

 

 それしかない。セレネはそう結論を出し、次の見回りポイントに移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ただいま帰りました、ユメ先輩」

「セレネちゃん!? もう朝だよ!?」

「そうですね」

「いや、そうですね、じゃなくてね?」

「ユメ先輩も学校に居るじゃないですか」

「いや、今登校してきたんだよ? 全然帰って来なったから家に帰ったのかと思ってたけど――」

 

 ユメの言葉にセレネは『そう言えばしばらく帰ってないな』、と思い返す。

 

「いやぁ、ちょっと治安維持に力を入れすぎまして」

「セレネちゃん……セレネちゃんがアビドスの為に頑張ってくれるのは嬉しいけど、無理して倒れでもしたら言語道断だよ!?」

「ユメ先輩がまともなことを言ってます」

「セレネちゃん、それどう意味なの……いやそれは後で聞くとして、私だって心配何だからね?」

「……」

 

 ユメにとってセレネは大事な後輩である。生徒会に入ってくれただけでも、何ならアビドスに居てくれるだけでもユメにとっては嬉しいことだ。そんなセレネのことをユメが心配しないはずがなかった。

 

「私からすればセレネちゃんが生徒会に入ってくれただけでも嬉しいのに。もっと言えばアビドスに居てくれるだけでも嬉しいんだからね」

「それは……まあ、ユメ先輩の頑張る姿をいつも見ていたので……」

「そうなんだ! それで入ってくれたの?」

「まあ理由の1つですかね」

「ちょっと照れちゃうね」

 

 少しだけ頬を赤くするユメだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホシノちゃんにはまだ紹介できてなかったね! 私達アビドス生徒会のもう1人の仲間だよ!」

 

 そう言ってユメがセレネのことを紹介する。 

 セレネは一歩前に出て、ホシノと呼ばれた少女に目を向ける。その子は自分と同じ、左と右で色の異なるオッドアイの少女であった。

 

 そしてこの時、セレネはホシノと初めて会ったのだった。

 

 

 

 

 




もう少し描写能力を上げたい()
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