アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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誤字報告や、ここすき、感想等いつも本当にありがとうございます。
何とか1つに収めようと思ったら過去最大の文字数になってしまった……

2倍とまではいきませんが、1.5倍は長いです()


44話:ゲヘナの風紀委員長

 

 

「……」

 

 ふと、昔のことを思い出していました。昔……まあ昔といっても間違いではないでしょうね。わたしが1年生の頃の話で、更にホシノちゃんがまだ生徒会に入っていなかった時のことです。

 アビドスを守ること――それは既にその時に決めたことです。頑張っているユメ先輩の姿に感化されたのもありますけどね。

 

 その時のアビドス生徒会はわたしとユメ先輩の2人だけでした。生徒会に入って改めてユメ先輩の危うさというのを理解しました。本人は無自覚のようでしたけどね。

 だからあの頃は少しでもユメ先輩やアビドスに貢献できるように、そして守れるように……行動していました。

 まあ、柴大将に無理すんなよって言われたこともありましたね……。

 

 

 話が逸れましたね。

 

 黒服の言う神秘とは恐らくこのことでしょうね。

 惚けたつもりはありますが、正直神秘と言われてもいまいちピンと来ないというのが本音です。だから黒服の言う神秘についてはさほど興味はありません。

 

 わたしもわたしで自分でもこれが何なのかははっきりと分かりません。ただ、全体的に影響を出すような効果があるのは分かります。使い方は分かるのにこれが何なのかが分からないってやつです。

 

 わたしはこれ以上のアビドスへの侵略は見過ごせませんでした。

 流石に数が多いのもあって、これを使ってしまいましたが――あとでホシノちゃん達に色々聞かれそうですね。

 聞かれたとしてもわたし自身も分からないことが多いので何にも言えないと思います。

 

 ホシノちゃんやシロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん――そして先生。

 

「――わたしは、アビドスの最年長として皆を守る義務があります」

 

 ホシノちゃんはもう言わずもがな、2年生のシロコちゃんとノノミちゃん、1年生のセリカちゃんとアヤネちゃん、大事な後輩です。

 先生も……今までここまで関わろうとしてくれた大人は居ません。アビドスの為に動いてくれている先生……最初こそはホシノちゃん同様疑いがありました。

 

 ちょっと頼りないところもあれば頼れるところもありますね。

 

「最年長としてでもなくても、かつてのアビドス生徒会副会長、現対策委員会副委員長としても見過ごす訳にはいきません」

 

 便利屋68の4人も……依頼主と依頼を受ける側の関係ではありますが、アビドスにしばらく滞在するようですし、紫関ラーメンも気に入ってくれてます。

 ゲヘナの生徒で、ゲヘナでは風紀委員が動くくらいの子なのかもしれませんが、今彼女達はアビドスに居る。そしてアビドスでは何もしていません。

 

 もちろん、正式な手続きを取っているのであれば考える余地はありますが、そんなことを一切せずにやってきたゲヘナの風紀委員会に従う義理はありません。

 

『星月セレネ――あなたは一体』

「アビドス廃校対策委員会の副委員長ですよ」

 

 それ以上でもそれ以下でもありません。

 副委員長だ。1年の頃からずっと……委員長や生徒会長をサポートしていた副委員長、副会長ですよ。

 

「知ってますか? 月っていろんな形を持っているんですよ。満月や半月、三日月――それぞれの中間の形、そして新月……月相と言われていますが、まあ新月に関しては形と言っていいかは分かりませんが」

 

 これはどうでもいいことかもしれませんが、何となく月には親近感が湧くのですよね。たぶん、わたしの名前に星と月が入っているからでしょうね。単純なことだと思います。

 昔月食を見たことがあります。確かにその時は地上から月は非常に認識しずらかったですね。でも何故か何処にあるかは分かっていました。

 

 月や星を見ることは結構好きです。趣味とまでは行きませんが……アビドスから見上げる星空はきれいですよ。

 なので興味が湧いたのもあって星や月の本を読んだ覚えがあります。読んだだけで詳しくなったかと言われれば微妙なところですが。

 

 また話が逸れましたね。

 正直、不思議と怒りはないのですよ。怒りを通り越してむしろ、何も感じなくなりましたから。

 

 ……たぶん、いえ、ほぼ確実? にあの行政官とやらの独断でしょうね。だってこの場に向こうの風紀委員長が居ませんからね。 

 それに……いえ、これはいいでしょう。この力を使うときは多少見通すことができてしまうことはここは置いておきましょうか。

 

「新月は見えない――」

 

 正確には見にくいというか……それはいいでしょう。そっと影に入り込むように動き、そして風紀委員の1人の背後に回り、ハンドガンでヘッドショットを決めます。

 

「ぐわ?!」

 

 続けて他の生徒にも同じように至近距離でヘッドショットを決めておきます。次々と悲鳴をあげて倒れていく光景は恐ろしいものでしょう。だけど、わたしのことは認識できない――

 

 複数人を戦闘不能にしたあと、元の位置に戻ります。そして暗くなった空は再び満月の光に照らされます。

 

「――さて、ちょっと予行が過ぎましたかね? ゲヘナ風紀委員の皆さん。これよりわたし達アビドス廃校対策委員会は自治区防衛権を行使します。ホシノちゃん」

 

 これは正当な自治区防衛権の行使です。最終的な判断はホシノちゃんが決めることなので、ホシノちゃんに投げかけました。

 

「へ? あ、うん。そうだね。これ以上私達の自治区に侵略される訳には行かない。皆戦闘準備を――先生も」

 

 委員長の決定が下され、わたし達は再び戦闘態勢を取りましたが、そこに声が響きました。

 

「待って――」

 

 

 

 

■■

 

 

 

 

「アコ、これはどういうこと?」

「ヒ、ヒナ委員長……」

 

 戦場によく響く透き通ったような声。

 しかし、その声を聴いたアコはどこか様子がおかしかった。先ほどまでの余裕そうな態度はどこへやら、顔を青くしていた。

 

「ゲヘナ風紀委員長――空崎ヒナ……! 外見情報も一致します、間違いなく本人です!」

「さ、流石にまずいかも」

 

 その生徒――ゲヘナの風紀委員会のトップの生徒、ヒナの登場に便利屋68の面々は表情を変えていた。

 しかし当のセレネやアヤネを除いた4人は特にこれといった反応もせずに静かにヒナと風紀委員会の方を見ていた。武器も構えたままである。

 この中で特にセレネとホシノはヒナの登場にはさほど興味がなく、目の前の侵略者達を見据えている。

 

「ゲヘナの最高戦力」

「聞いたことはありますね。でも、だからと言って許すことはないですよ」

 

 カヨコの言葉にセレネはそれだけ返す。

 確かにこのヒナという生徒――ゲヘナの風紀委員会のトップで尚且つ、ゲヘナの最高戦力なのだろう。しかしそれはセレネにとってはどうでもいいことであった。

 

『えっと……委員長、全て説明いたします』

「いや、もういいよ。大体は把握したから――」

 

 アビドス側に居る便利屋68と先生の方とゲヘナの風紀委員の方を交互に見ながら、ため息交じりにヒナは口にする。

 

「要するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除ってところね」

『!』

「……でもアコ、私達は風紀委員であって、生徒会じゃない。そういうのは『万魔殿』のタヌキたちにでも任せておけばいい」

『……』

「ひとまず通信を切って謹慎してなさい」

『はい……』

 

 ヒナがそう指示すれば、アコは通信を切り姿を消した。そしてアビドスの方を向く。1人――セレネの方を見ればヒナも普通ではないことを察する。

 

(……あれはまずいかもしれないわね)

 

 そもそもこの状況にヒナでさえも驚きを隠せないでいる。ここに来る途中は間違いなく昼間だったというのに、ここに来た瞬間夜となった。異常の他なかった。

 

「こちらはアビドス廃校対策委員会所属の、奥空アヤネです。風紀委員長のヒナさん、で宜しいでしょうか」

「ええ、そうよ」

「現状は把握されていますか?」

 

 アヤネがそういえば、ヒナは一度周囲をぐるりと見回した。

 

「事前通達なしでの他校自治区に於ける無断兵力運用、及び他校生徒との衝突。しかもあなた達はこの自治区の生徒会であること」

 

 いくらアビドスが廃墟に近しい状態となっていても、ここはアビドス自治区である。しかもちゃんとそれらを管轄する組織が存在している。

 昔はアビドス生徒会であった名前がアビドス廃校対策委員会として名を変えている。そしてその組織は連邦生徒会によって認可されている。

 

 調べればすぐに分かることだった。

 

 だというのに、アコは便利屋68の確保を理由に自治区を跨いで戦闘行為を実施。しかも、一般人の営業している店に対して砲撃までした。尤も――砲撃の指示を出したのはイオリであって、アコではないのだが。

 

「一般人の営業している店舗に対しての砲撃もあったようね」

「っ」

 

 じろりとヒナの視線がイオリに向く。

 幸い、店舗の方は無事のように見えているが、破片がそこら中に散らばっているのが見える。狙いが外れたか、砲弾が不発だったか……それとも――

 

(……)

 

 ヒナはセレネを見る。

 

「さっきのアコだっけ? あの子よりは話が通じそうだねえ?」

「……あなたは」

「私? さっき言ったと思うけど。アビドス廃校対策委員会――委員長、小鳥遊ホシノだよ。以後よろしく。因みにに向こうのセレネちゃんは副委員長だよ」

「それもさっき言ったと思いますけどね」

 

 ホシノとセレネがそれぞれ前に出てヒナと風紀委員を見据える。

 

「――そう。こちらに非があったのは認めるけれど、風紀委員会の公務を妨害したのも事実、違う?」

 

 ヒナの言葉にも一理あるが、それでも風紀委員の方が過失があるということは理解しているつもりであった。

 しかし妨害されたことも事実であった。ただ向こうにはシャーレが付いている。本音を言えばだいぶこちらの方が分が悪かった。

 

「それはそうかもしれませんね。ですが――」

「私達は自治区の防衛権を行使しているだけだよ。ちょうど対策委員会も勢揃いだし……相手してあげるよ」

「――!」

 

 セレネが続ける前にホシノが続ける。ホシノが周りを見つつ、ヒナにそう告げる……と同時にそこには殺意も混じっていた。

 

「まさか、アビドスの小鳥遊ホシノ……1年の時とはかなり変わっている。別人と思えるくらいには」

「ん? 私のこと知ってるの?」

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから」

 

 全く雰囲気が異なっていたのもあり、最初はヒナは気付かなかったが先ほどの雰囲気ではっとなった。間違いなくあの小鳥遊ホシノであること。

 

「ということは……そっちは星月セレネ――」

「……わたしのことも知っているようですね」

「ええ。同じく情報部にいた頃にマークしていたから――あなたも昔と比べて雰囲気が変わってる」

「そうですかね」

「昔はもっと切羽詰まっているように見えた」

「まあ、そうかもしれませんね」

 

 昔は確かに色々と切羽詰まっていたかもしれない、とセレネは思い返す。

 セレネもセレネで昔は冷酷な部分がよく出ていた。それらはアビドスを守る為であったが――

 

「……ふぅ。アビドス――いえ、アビドス廃校対策委員会。私はここに戦いに来た訳じゃない」

 

 ホシノとセレネ、そしてシャーレの先生とアビドス廃校対策委員会を見ながらヒナは告げる。

 

「そ、そうなんですか?」

 

 ヒナの言葉にそれぞれ異なる反応を見せる。しかし、先ほどまでのこともあり、全員疑うような眼差しでヒナ達を見ていた。

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として”アビドス廃校対策委員会”に対して公式に謝罪する」

 

 疑われるのは承知の上であり、ヒナは嘘ではないことを謝罪することで証明する。

 

「!」

「頭を下げました!?」

 

 ヒナが頭を下げたことにセレネとホシノを除く委員会メンバーがびっくりする。

 

「今後、ゲヘナの風紀委員会がアビドスへ無断で侵入したり、意味もなく武力行使をすることはないと約束する。どうか許してほしい」

「……そうですか」

 

 嘘ではないことが分かったセレネはその力を止めた。夜となっていたこの戦場に太陽の光が差し込む。

 

「空が明るく……」

「ちょっと目がきつい」

「仕方ないよ」

 

 そんな光景にそれぞれこの場に居た全員が反応していた。

 

「ホシノちゃん、どうしますか?」

 

 セレネはあくまで副委員長である。ホシノが不在の時は一任されているが、この場にはホシノが居る為、最終的な決定権はホシノにある。

 

「んまあ、本当みたいだし……謝罪は受け入れるよ」

「ありがとう」

 

 少しだけ考える素振りを見せ、ホシノが委員長として最終的な決定を下す。それと同時にシロコ達は構えていた武器を収める。

 

「先生」

”何かな”

「シャーレに対しても正式に謝罪するわ、ごめんなさい」

 

 アビドスではないにしろ、連邦捜査部シャーレの先生が顧問をしている対策委員会である。シャーレにも迷惑をかけてしまったことをヒナは謝罪した。

 

”大丈夫だよ”

「ありがとう」

 

 そんなヒナに笑顔で答える先生であった。

 

「それと、これは先生に伝えた方がいいかなと思って。アビドスについての情報だけど」

”アビドスの……?”

「ええ。これはティーパーティーも知らない情報だけれど――アビドスの棄てられた砂漠、あそこで、カイザーコーポレーションが何かを企んでいる」

”!”

 

 ヒナの言葉に先生ははっとなる。

 やはり、間違いなくカイザーコーポレーションが裏に居るということ。既にセレネが手に入れた証拠で知っていた先生だったが、ここにさらなる情報が入ったことで更なる確信に繋がった。

 

”ありがとう、ヒナ”

「いいえ、これくらいはさせて頂戴」

 

 先生がお礼を言えば、ヒナは気にするなといった表情で返し、風紀委員がいる方向へを戻っていった。

 

「撤収準備よ」

「はっ!!」

 

 ヒナの一言で風紀委員全員が撤収の準備を始めるのであった。

 

 





区切りのいいところがわからず、書き終えた結果()

たぶん次回が最後になるかと思います。
既に証拠もありますし、原作での2章後半はざっくりなくなりそうです……

3章はどうしようかなあ、と思いつつ――
オリジナルシナリオを考える力が欲しい……!


番外編はたぶん書きます()
アビドスリゾート復興委員会とか? ま、まあそのあたりは考え中です。
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