アビドスと太陽を守りたい月   作:キヴォトス一般人

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お久しぶりです。
生きてます。

「1年ぶりですね……」
「何が?」
「いえ、なんでもありません」
「そう? 変なセレネちゃん」


49話:何もしない日

「セレネちゃんに大事なお話があります」

「はい?」

 

 ある日の朝。いつも通り対策委員会の皆が集まる中、ホシノちゃんがそんなことを言ってきました。

 はて、大事なお話とはなんでしょうね。

 

 改めて周囲を見れば、シロコちゃんにノノミちゃん、セリカちゃん、そしてアヤネちゃん。珍しく全員揃っています。

 

 ……なんでしょう。

 少し嫌な予感がしますね。

 

「今日は、セレネちゃんは仕事しちゃダメな日だよ」

「……はい?」

「私たち、考えたんです」

 

 続けて口を開いたのはアヤネちゃんでした。

 

「前みたいに無理はしていないですけど……それでも、私たちはセレネ先輩に頼ってばかりだなって思いまして」

「別に、わたしは――」

「はい、そこまで」

「……ホシノちゃん?」

「今日は反論も禁止でーす」

「何故ですか」

 

 流石にそれは酷いと思います。

 そう思いながら他の皆へ視線を向けると、誰も助け舟を出してくれる様子はありません。それどころか、ホシノちゃんに同意するように揃って頷いていました。

 

「えぇ……まあ、いいです。それではわたしは、これから少し依頼を受けてきますね」

 

 ちょうど手頃な依頼もありましたし、今日も少し稼いでおきましょう。そう考えながら出口へ向かうと、すっとホシノちゃんが前に立ちました。

 

「ええと、ホシノちゃん。そこにいられると外へ出られないのですが……」

「さっき言ったよね、セレネちゃん。今日は仕事しちゃダメな日って」

「仕事じゃないですよ? 依頼です」

「いやいや、それ普通に仕事でしょ」

「そうですかね?」

 

 依頼を受けて、お金を稼ぐ。

 いつも通りの日常なのですが。

 毎月の借金返済も以前よりは随分と楽になりましたが、それでも早く完済できるに越したことはありません。

 

「……やっぱり今日、絶対休ませた方がいいね」

「ん。同意」

「何故ですか?」

 

 なんだか今日は皆さんの雰囲気が違いますね。

 

 妙な圧を感じるのですが……気のせいでしょうか。

 

「わかりました。そこまで言うのであれば、依頼を受けるのはやめます」

「そうそう、それでいいんだよ~」

「では、今日は書類整理をすることにしますか。いつもアヤネちゃんに任せきりですからね」

「あの、セレネ先輩……それも同じです」

「え?」

 

 書類の方へ向かおうとすると、今度はアヤネちゃんに進路を塞がれました。

 

 むむ……。

 

 隙を見て書類へ手を伸ばそうとしますが、そのたびにアヤネちゃんが素早く身体を動かし、わたしの前へ回り込んできます。

 

「……」

「……」

「アヤネちゃん、何か強くなってませんか?」

 

「私もアビドスの生徒ですからね。いつもオペレーターをやっていますが、このままでは駄目かと思って、少しだけ特訓しているんです」

「……少しだけで身につくような動きじゃない気がしますけど」

「はいはい。セレネちゃん~、仕事は禁止だよー」

「ホシノちゃん、引っ張らないでください」

 

 わたしの片腕を掴んだホシノちゃんに、そのままずるずると引っ張られていきます。

 一応抵抗はしてみましたが、ホシノちゃんの力には敵わず、結局されるがままになってしまいました。

 

「むむ。なんだか意地悪ですね」

「むしろ逆だよ~。セレネちゃんには、ゆっくり休んでもらいたいの。それに前に約束したでしょ? 無理はしないって」

「……そんな話もしましたね」

 

 書類整理も駄目ですか。

 

 ふむ。

 

「それなら、備品の整理でもしましょうか」

 

 以前より襲撃の数は減りましたが、それでも時々やってきます。

 パトロールや依頼の際にも消耗品は使いますし、管理を怠れば、いざという時に数が足りない……なんてことにもなりかねません。

 

「それは私がやります。セレネ先輩は休んでください!」

「そ、そうですか……」

 

 セリカちゃんに取られてしまいました。

 敬語ではありますが、ホシノちゃんたちと同じような圧を感じます。

 

「それなら見回りを――」

「ん」

「シロコちゃん?」

「それは私がやる。セレネ先輩は休む」

「……」

 

 今度はシロコちゃんに塞がれてしまいました。どうやら、こういうのも仕事に含まれるらしいです。

 

 仕事……なのでしょうか。

 わたしとしては、いつも通りの日課なのですが。

 

「それなら掃除でもしますか」

「セレネ先輩~☆」

「ノノミちゃん、なんだかその笑顔が怖いんですが……」

「お掃除は私に任せてください☆」

「……」

 

 どうしましょう。

 本当に何もすることがなくなってしまいました。

 

「……ホシノちゃん。大変です。やることがありません」

「……セレネちゃん。それでいいんだよ」

「ええ?」

「今日はゆっくり休む日だよ」

「でも、わたしだけ何もしないのは……」

「うへぇ。そんなこと言ったら、おじさんもやることないから仲間だねぇ」

「……」

 

 やがて、それぞれの仕事へ向かった後輩たちが部屋を出ていき、室内にはわたしとホシノちゃんだけが残されました。

 

「……」

「この前、約束したでしょ。二人でアビドスを守っていくって」

「……そう、ですね」

「一人じゃなくて二人。それは私も同じだし、セレネちゃんも同じ。どっちかが欠けても駄目なんだから」

「ホシノちゃん……」

「まあ、おじさんも人のことは言えないんだけどねぇ」

 

 そう言いながら、ホシノちゃんはどこか遠くを見るような目をしていました。

 

 昔のことを思い出しているのでしょうか。

 あの頃は、ホシノちゃんの方がずっと無理をしていた気がします。

 

 ……いえ。今思えば、わたしも大して変わりませんでしたね。

 

「何もしないって、退屈ですね」

「セレネちゃんは働きすぎなの。たまにはおじさんを見習って」

「いや、ホシノちゃんも割と働きすぎですよね? 夜とか……」

「……それ言われると、おじさんの立つ瀬がないなぁ。あはは」

「……」

 

 そう言って笑うホシノちゃんを見て、わたしも思わず小さく笑いました。

 

「ふふ。わたしたち、やっぱり似た者同士みたいですね」

 

 目指しているものも。

 守りたいものも。

 きっと、お互い同じなのでしょう。

 

「そうだねぇ」

 

 少しだけ開いた窓から、柔らかな風が入り込んできます。

 それが、なんだかとても心地良く感じました。

 

「ホシノちゃん……って、あら」

「すぅ……すぅ……」

「寝ちゃってますね……」

 

 いつの間にか、ホシノちゃんは眠っていました。その寝顔を眺めていると、不思議とこちらまで眠くなってきます。

 確かに、少しだけ眠気もありますし。

 

「……たまには、こういうのも……いいのかもしれませんね」

 

 そう呟きながら目を閉じると、わたしの意識もゆっくりと眠りの中へ沈んでいきました。

 

◇◇

 

「ん。ただいま……」

「あ、シロコちゃん。おかえりなさい」

「ん。ノノミ、あれは……」

「しぃ、ですよ。ふふ、どうやらちゃんと休めたみたいですね~☆」

「そっか」

 

 帰ってきたシロコが目にしたのは、互いに寄りかかるように眠っている二人の先輩だった。

 

「二人が目を覚ますまでに、私たちだけで残りを終わらせちゃいましょうか」

 

「ええ、そうね」

 

 アヤネの提案に、ノノミ、シロコ、セリカが頷く。

 そして四人は、気持ちよさそうに眠る二人を起こさないよう静かにしながら、今日の残りの仕事を片付けていくのだった。

 

番外編ネタ(※参考までに)

  • ifルート的な何か
  • セレネ話
  • ホシノとセレネの話
  • 過去の生徒会
  • セレネとユメの話
  • 対策委員会とセレネ
  • イチャつけ(誰とは言わない)
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