アビドスと太陽を守りたい月 作:キヴォトス一般人
生きてます。
「1年ぶりですね……」
「何が?」
「いえ、なんでもありません」
「そう? 変なセレネちゃん」
「セレネちゃんに大事なお話があります」
「はい?」
ある日の朝。いつも通り対策委員会の皆が集まる中、ホシノちゃんがそんなことを言ってきました。
はて、大事なお話とはなんでしょうね。
改めて周囲を見れば、シロコちゃんにノノミちゃん、セリカちゃん、そしてアヤネちゃん。珍しく全員揃っています。
……なんでしょう。
少し嫌な予感がしますね。
「今日は、セレネちゃんは仕事しちゃダメな日だよ」
「……はい?」
「私たち、考えたんです」
続けて口を開いたのはアヤネちゃんでした。
「前みたいに無理はしていないですけど……それでも、私たちはセレネ先輩に頼ってばかりだなって思いまして」
「別に、わたしは――」
「はい、そこまで」
「……ホシノちゃん?」
「今日は反論も禁止でーす」
「何故ですか」
流石にそれは酷いと思います。
そう思いながら他の皆へ視線を向けると、誰も助け舟を出してくれる様子はありません。それどころか、ホシノちゃんに同意するように揃って頷いていました。
「えぇ……まあ、いいです。それではわたしは、これから少し依頼を受けてきますね」
ちょうど手頃な依頼もありましたし、今日も少し稼いでおきましょう。そう考えながら出口へ向かうと、すっとホシノちゃんが前に立ちました。
「ええと、ホシノちゃん。そこにいられると外へ出られないのですが……」
「さっき言ったよね、セレネちゃん。今日は仕事しちゃダメな日って」
「仕事じゃないですよ? 依頼です」
「いやいや、それ普通に仕事でしょ」
「そうですかね?」
依頼を受けて、お金を稼ぐ。
いつも通りの日常なのですが。
毎月の借金返済も以前よりは随分と楽になりましたが、それでも早く完済できるに越したことはありません。
「……やっぱり今日、絶対休ませた方がいいね」
「ん。同意」
「何故ですか?」
なんだか今日は皆さんの雰囲気が違いますね。
妙な圧を感じるのですが……気のせいでしょうか。
「わかりました。そこまで言うのであれば、依頼を受けるのはやめます」
「そうそう、それでいいんだよ~」
「では、今日は書類整理をすることにしますか。いつもアヤネちゃんに任せきりですからね」
「あの、セレネ先輩……それも同じです」
「え?」
書類の方へ向かおうとすると、今度はアヤネちゃんに進路を塞がれました。
むむ……。
隙を見て書類へ手を伸ばそうとしますが、そのたびにアヤネちゃんが素早く身体を動かし、わたしの前へ回り込んできます。
「……」
「……」
「アヤネちゃん、何か強くなってませんか?」
「私もアビドスの生徒ですからね。いつもオペレーターをやっていますが、このままでは駄目かと思って、少しだけ特訓しているんです」
「……少しだけで身につくような動きじゃない気がしますけど」
「はいはい。セレネちゃん~、仕事は禁止だよー」
「ホシノちゃん、引っ張らないでください」
わたしの片腕を掴んだホシノちゃんに、そのままずるずると引っ張られていきます。
一応抵抗はしてみましたが、ホシノちゃんの力には敵わず、結局されるがままになってしまいました。
「むむ。なんだか意地悪ですね」
「むしろ逆だよ~。セレネちゃんには、ゆっくり休んでもらいたいの。それに前に約束したでしょ? 無理はしないって」
「……そんな話もしましたね」
書類整理も駄目ですか。
ふむ。
「それなら、備品の整理でもしましょうか」
以前より襲撃の数は減りましたが、それでも時々やってきます。
パトロールや依頼の際にも消耗品は使いますし、管理を怠れば、いざという時に数が足りない……なんてことにもなりかねません。
「それは私がやります。セレネ先輩は休んでください!」
「そ、そうですか……」
セリカちゃんに取られてしまいました。
敬語ではありますが、ホシノちゃんたちと同じような圧を感じます。
「それなら見回りを――」
「ん」
「シロコちゃん?」
「それは私がやる。セレネ先輩は休む」
「……」
今度はシロコちゃんに塞がれてしまいました。どうやら、こういうのも仕事に含まれるらしいです。
仕事……なのでしょうか。
わたしとしては、いつも通りの日課なのですが。
「それなら掃除でもしますか」
「セレネ先輩~☆」
「ノノミちゃん、なんだかその笑顔が怖いんですが……」
「お掃除は私に任せてください☆」
「……」
どうしましょう。
本当に何もすることがなくなってしまいました。
「……ホシノちゃん。大変です。やることがありません」
「……セレネちゃん。それでいいんだよ」
「ええ?」
「今日はゆっくり休む日だよ」
「でも、わたしだけ何もしないのは……」
「うへぇ。そんなこと言ったら、おじさんもやることないから仲間だねぇ」
「……」
やがて、それぞれの仕事へ向かった後輩たちが部屋を出ていき、室内にはわたしとホシノちゃんだけが残されました。
「……」
「この前、約束したでしょ。二人でアビドスを守っていくって」
「……そう、ですね」
「一人じゃなくて二人。それは私も同じだし、セレネちゃんも同じ。どっちかが欠けても駄目なんだから」
「ホシノちゃん……」
「まあ、おじさんも人のことは言えないんだけどねぇ」
そう言いながら、ホシノちゃんはどこか遠くを見るような目をしていました。
昔のことを思い出しているのでしょうか。
あの頃は、ホシノちゃんの方がずっと無理をしていた気がします。
……いえ。今思えば、わたしも大して変わりませんでしたね。
「何もしないって、退屈ですね」
「セレネちゃんは働きすぎなの。たまにはおじさんを見習って」
「いや、ホシノちゃんも割と働きすぎですよね? 夜とか……」
「……それ言われると、おじさんの立つ瀬がないなぁ。あはは」
「……」
そう言って笑うホシノちゃんを見て、わたしも思わず小さく笑いました。
「ふふ。わたしたち、やっぱり似た者同士みたいですね」
目指しているものも。
守りたいものも。
きっと、お互い同じなのでしょう。
「そうだねぇ」
少しだけ開いた窓から、柔らかな風が入り込んできます。
それが、なんだかとても心地良く感じました。
「ホシノちゃん……って、あら」
「すぅ……すぅ……」
「寝ちゃってますね……」
いつの間にか、ホシノちゃんは眠っていました。その寝顔を眺めていると、不思議とこちらまで眠くなってきます。
確かに、少しだけ眠気もありますし。
「……たまには、こういうのも……いいのかもしれませんね」
そう呟きながら目を閉じると、わたしの意識もゆっくりと眠りの中へ沈んでいきました。
◇◇
「ん。ただいま……」
「あ、シロコちゃん。おかえりなさい」
「ん。ノノミ、あれは……」
「しぃ、ですよ。ふふ、どうやらちゃんと休めたみたいですね~☆」
「そっか」
帰ってきたシロコが目にしたのは、互いに寄りかかるように眠っている二人の先輩だった。
「二人が目を覚ますまでに、私たちだけで残りを終わらせちゃいましょうか」
「ええ、そうね」
アヤネの提案に、ノノミ、シロコ、セリカが頷く。
そして四人は、気持ちよさそうに眠る二人を起こさないよう静かにしながら、今日の残りの仕事を片付けていくのだった。
番外編ネタ(※参考までに)
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ifルート的な何か
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セレネ話
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ホシノとセレネの話
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過去の生徒会
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セレネとユメの話
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対策委員会とセレネ
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イチャつけ(誰とは言わない)