この世界のダークヒーローになる予定だった。 作:可哀想は可愛い
「私くれーぷ?ってやつ食べてたんですよね。とっても甘くて美味しくて。まるで涙が出てくる感じ?…感動してたんですよね。」
「はぁ。」
「そしたら急にぶつかってきた生徒が居て…私は軽く謝ったんですよ。」
「なんて?」
「前も見えないのかしら?角付きはお里が知れるわねって。」
「バカ?」
「そしたら急にヘルメット付けて私に銃撃ってくるから。」
「お前が悪くね?」
「私も軽く
「食べ切ってなかったんかい。」
「もう私、許せなくて許せなくて…まるでこの恨み晴らさずおくべきかって感じで
「
「よくわかってるじゃないですか。」
何がわかってるだよ、この子達何言ってるかほんとに理解してるの?
「はぁ…それでその後は?」
「ふっふっふっ!それでその後はまぁカクカクシカジカって感じで*1________」
「え?さっきと言ってることが違くないユイちゃん?!」
「え?なんの事?」
「なんか恩を着せるだのどうのこうの言ってたじゃん!着せられたのこっちじゃないの?」
「?話聞いてなかった?その通りだが?」
「あの子達になんて説明するの?」
「我々の約束を違えるゲヘナ学園は許せない!って言ってテロを増やします。」
「何それ…」
私は頭を抱えずには居られなかった。
……はぁ。
「とりあえず、五日間って言ってたよね?」
「そだよ〜。」
「初めは三日と言ってましたけどね。」
「黙らっしゃい!」
「うぅ、まだ三日ならそんなに人員割かなくて良かったかもしれないのにぃ…」
「あぅ…ごめんなさい。」
「もう過ぎた話しても仕方ないけどさぁ〜。」
「ユイ様は何時も無駄な事をしてやらかす癖をどうにかするべきだと思われます。」
「今回の件はルカも悪くね?」
「否定、私は何も悪くないです。回答、全ては貴方のせいです。」
「何そのロボみたいな話し方!ちょっといいじゃん…」
「もぉ!真面目に話してよぉ!」
ユイちゃんもユイちゃんである、よくわからないことしてルカちゃんの事を虐めたりでもしていたんだろうか?
まぁそんなことよりも…
「
「ユイ様とアリサ様なら…可能性は低くはありません。」
「ヨシきたっ!指差し確認ヨシ!!!」
「あんま調子に乗らないでね〜!?問題事を持ってきた事には変わりないんだからね?」
「えへへ、ヒナちゃそ*2と会えるけど改変はしない程度にするので。」
「改変?」
「こっちの話でしてよアリサ姉。」
トントン*3、とドアを叩く音がする。
「誰?」
「あれ?この声は…」
ユイちゃんがテトテトとドアに向かって歩き出した。
ガチャッ、ユイちゃんが片方のドアを開けてこっそり外を覗くと…
「およ?アヤじゃーん!」
「ふぇっ?!…ユイ先輩?」
「よぉ〜、元気だった?」
「げ…元気でした。」
「だ、大丈夫ですか!ユイ先輩!」
「コヒュー…コヒュー…大丈夫、大丈夫だぞい……」
何やってるんでしょうか?
「あ〜、とりあえず入りなさいな。」
「…失礼します。」
「ユイ様、そこ邪魔だと思います。」
ズリズリと足首を引っ張りながらユイちゃんを運んでいくルカちゃん…容赦なさすぎてちょっと怖い。
「あぁ…で?何の用?」
「はい、ユイ様にご報告をしに来ました。」
「…へぇ?…私との楽しい楽しい会談の最中に?」
私はこれでもこの組織のボスだ、それをたかが小娘に舐めれられてちゃ、部下たちに示しがつかんだろう……ふぅ、怖いフリするのも少し疲れるものだ。
「ヒュッ……!?」
どうやら彼女…夜桜アヤと言ったか?
彼女は怯えているみたいに見える…少し怖がらせすぎただろうか?
「…アリサ姉、そんな怖がらせんな。」
「はいはい…所でなんの報告に?」
怖がらせ過ぎたし、少し明るく話そう……
「…あっ……連邦生徒会が動き出しました。」
「連邦生徒会が!?」
「ヒッ……!!」
「ユイちゃん、そんなに叫ぶ事ないでしょ?」
何か確信でもあるのだろうか?余り多くは語りたがらないように感じる彼女の声色。
安堵?焦燥?……様々な感情が入り混じっている、まるでパレッドで混ぜられた絵の具のように。
「それに付随して、『
「へぇ…。」
「詳しい擬態内容はコチラを。」
ペラペラと報告書を捲りあげていく、あまり関係ない話題が多い中、一番大きな議題内容であることは確かだ。
今はキヴォトスに超人…連邦生徒会長が居ないことは断言出来る……でもそれにしても…
「不思議ね…たかが一外部の人間にここまでの権限を?」
「はい、それとサンクトゥスタワーを動かす唯一の存在とも仄めかしていました。」
「…なるほど。」
確かにそこまで動かせるのならば、この処遇も納得と言っても過言では無い…誰も動かせない宝を動かせるという存在が居るのだから……。
「…何時だ?」
「ユイちゃん何を________」
「…シャーレの人間はいつこのキヴォトスに足を踏み入れるんだ?」
「…一週間後の様です。」
「アリサ姉…あの部隊を一週間後に貸し出せる用意はある?」
「え?ユイちゃん突然何を?」
「答えて。」
……雰囲気が変わった?いや、なるべく早く揃えて…ギリギリと言ってもいいか。
「ギリギリ…出来るかどうかってところね…」
「ありがとう、それとその日は戦闘員の半数を借りていくね。」
「なんだってそんな大勢を!?」
何をしようとしているのだろうか?…戦闘員の半数、約500人余りで何をしようと言うのだろうか?
「試さないといけないんだよ。」
「…何を?」
「アレが本物なのか、それとも偽物が来るのか…をね?」
「…そう、」
何を言ってるか理解はできない…よく分からないけれど。
「ユイちゃんの事を信用するから…話が聞かないでおくね。」
「ありがとう。って事でアヤ〜一緒に帰ろ〜」
「えっ?!えっ、えっ!?」
私の事を交互に見て、どちらを優先するか迷っている…そんな様に見える。
「…はぁ、アヤ…だったかしら?その子について行っていいわよ…あとついでに一週間くらい休みをあげるわ。」
「おっ!流石アリサ姉!太い腹ァ!」
「太い腹って!バカニシテルノカナァ!?」
「ユイ様、謝った方がよろしいかと。」
「ごめんなさい!にーげろ〜!」
「え?あっあぁ、待ってくださいぃ〜」
「ふふっ…」
賑やかな子達だな…そう思ってしまった。
「あっ…また忘れてた…」
あの子が戻って来ないか聞こうとしてたのに…
「賑やかすぎていつも忘れちゃうのよね…」
少しため息を着いてしまった…また会うその時でいいか…私は私を強引に納得させたのだった。
◆
「始まっちゃうんだな。」
「???」
頭を撫でながら歩いていたせいで、こちらを振り返って来たので、不思議そうに見つめてくるアヤを見つめ返しつつ。
「何でもないよ。」
軽口を零した。
先生が、現れる。
それは私にとってとても良い情報であった。
そもそも来ない可能性も見越していたため、最悪の事態が起きることは無いんだなって。
「アヤ!そうだ!一週間暇貰ったし、私と一緒に住も〜」
可愛い可愛いアヤをその辺に放置したり一人寂しく元の家に戻したくないし、近くに居たら使える。WinWinだわさ。
「えっ?いい…の?」
「いいよいいよ!私と一緒に過ごそうねぇ!」
「ユイ様、邪念が垣間見えるのですが気の所為ですか?」
「べらんめぇい!このタコが!クレープを二つ買ってこい!あっこれね、余ったら好きに使っていいから。」
「ユイ様、行ってきます。」
「ほい、いてら〜」
まぁ逃げることはないだろ…無いよね?
「この辺で待っとこうか?」
「いいと思います。」
「じゃあそこのベンチ座ろっかな」
「はっ、はい!」
「もっとゆるーくはなしてよ、敬語無しで〜」
「えっ…わかりまし…わかった。」
「それでいいんだよ。おーわしゃわしゃわしゃー」
座る事もなく対面しているアヤの髪を両手でぐしゃぐしゃにしてやった、嫌いな奴にされたらぶちギレるレベルで。
「えへへ…」
「嬉しそうだねぇ…ほら、
膝をポンポンと叩いてそう言ったら…
「はい…」
と言いながら恥ずかしそーに乗ってきた。ここ大事ね?恥ずかしいながらも乗ってくる、可愛いポイント273。
……アヤも先生に取られるのかな…もしそうなら、オラは先生潰しに行くかもしれん…いや出来ないけど。
「ただいま戻りました、どうぞアヤ様。」
「あっありがとうございます!」
クレープを受け取ったアヤはそれはそれは満面の笑みを浮かべていた。
……あれ?私のは?
「…ルカ?私のは?」
「おや?何を言ってるのですか?」
「…はぁ?私三人分の金を渡したよね?」
「二人分買って来いとしか言われませんでしたので。」
「もう一つは?」
「御冗談を、来てる途中に一つ食べ終えました。」
こんにゃろう!ふざけやがって!もしアニメの世界なら俺とルカの目が合ってる時スパークでバチバチしてると思う感じに睨みつけていると……
「…あの、私の…食べる?」
この場を収める為には致し方なし、とでも言いたげに上げたくないんだろうなって感じの心の叫びが聞こえる程目が潤んでいた。
意地悪してもいいんだよなぁ…別にそこまで欲しいわけではないが…
「なら一口だけ貰ってもいい?」
「ユイ様…意地汚いですよ…」
「ど、どうぞ!」
意を決して手に持ってるクレープを後ろの俺に差し出してくる。
……クレープってさ?一口目のど真ん中が一番具材つもってるやん?
この…横のさ?生クリームのところ?ちょっとだけ食べさせてもらうザマス。
「パクリンチョヌス」
「わ……わぁ……。」
「ユイ様ワードセンスキモすぎて輝いて見えます。」
「美味しい…ですか?」
「うん!とってもね!…もしかして食べた事ない?」
「……はい。見た事はあったけど、食べた事は……」
ウッ*5、クレープすら食べた事ないなんて……いっぱい甘やかしてやる!
ナデナデ*6、可愛い子は撫でるに尽きる。
「ユイ様が一口貰って食べたと言うことはこのくれーぷは私のモノですね。」
「なっ!?貴様どこにそのクレープを!?」
「フッ、ユイ様の次のセリフは「「私はもういいや、食べていいよ」」です!こんなの…赤子の手をひねるより楽な作業です。」
なんだコイツ……。
「そんなにクレープ好きなのか?」
「えぇ、嫌いな人間は生まれてきたことを後悔するべきです。」
思想偏りすぎだよ?
「あれ?アヤ様?」
「ん?アヤがどうしたって…うわぁぁぁ、ぐでってしてる!ぐでたまかよ。この子のおでこあっつ!?ぐでたまじゃなくて目玉焼きだよ!」
「そんなこと言ってると場合では無いですよユイ様。」
「そ、そうだな。とりあえず寝かせて…寝てる間に潰れちゃうからクレープ取って…って手からクレープが離れない!?力強!」
「ユイ様…力弱すぎでは?」
「弱くない!保冷剤とかある?」
「こちらに。」
「……何でも持ってるやん。」
この子はどこに置いてるの?
「とりあえずおでこに置いといて…」
……体調悪かったのかな?…そんな素振り無いように見えたのにな…
とりあえず家に持ち運ぶか……
「ルカ、家に帰るからアヤのことを丁重に、まるでガラス細工を触る感じで優しく持って行って。」
「私のことをなんだと思って……仕方ないですね。」
「よし!帰るぞ〜」
「はぁ…。」
さっきからため息のすごい奴がいるけどムシムシ。
とっとと家に帰ってぐったりするんですよ!ヤバイわよ!
◆
隊長……いや、ユイ先輩に会ったのはずっと昔の頃。
私が舞瑠破藍意に入る前の事だ。
どんな名前不良グループだったかは…とうの昔に忘れてしまった。
私はそのグループでいじめられていた…原因は、この緊張すると吃ってしまうこの口。
……いや、誰でもよかったのだろう。
人は、古来から他者を貶めて自分達が上に居ると思いたい物なのだ。
結束を高めるため、自己をよく見せるため、自分達より下を作って安心したいのだろうか?
まぁ、それもこれも…所詮は言い訳。
負け犬の遠吠えって物なのだろう。
きっかけは些細なものだった。
私達の不良グループの一人が、たまたま舞瑠破藍意の一人に喧嘩を売った。
只それだけ。
圧倒、その言葉が等しかった。
見せしめだったのだろう…私たちに歯向かうとこうなるのだ、と言うような。
確かに、ボコボコと言っても過言では無い。
拠点を爆弾でボロボロにして、瓦礫の山に変えてしまった。
……私は見てるだけだった。
抵抗するわけでもない…抵抗する意味もなかった。
こんな化け物に…抵抗?
……むりだ、泣き出さなかっただけ、私は私を褒めてあげたいぐらいなのに……
「おっ!こんな所にもいんじゃねぇかよ〜」
舞瑠破藍意の一人が、私に気づいてしまった……
「いいねぇ!どう調理してやろうか…」
マズイ、マズイマズイマズイ______
嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ。
死にたくない。
「…許して、やめて…嫌だ……何もしてない……ヤダ……やだやだやだやだやだやだ______」
「……大丈夫?」
「えっ……」
……そこに、彼女がいた。
「なぁお前ら、こんな小さい子に…可哀想やと思わんの?」
「「いや…でも隊長?ここに居るってことは……」」
「チッ…うるせぇな……散れ。」
「「はい!すいませんでした!!」」
彼女が一言話すだけで、私に近づいてきた不良達が一気に散った。
「…大丈夫?…ほら、怖くないよ。」
優しい声で、私に話しかけて来る。
「えっ…その……」
「わぁわぁ、そんな怪我しちゃって…どいつにやられたの?後で〆とくから。」
その一言を聞いて、辺りの不良達は震え上がっていた…一体何をする気なのだろうか?……でも、この怪我はその人達にされた訳じゃない。
「その…これは……元からで…」
「……元から?…スゥゥゥ、あの…もしかして貴女が夜桜アヤ?」
何で、私の名前を知ってるの?……得体の知れない恐怖を感じて、少し後ずさりしてしまった。
「いやいや、そんな怖がらせるつもりじゃなくってね?……たまたま…そう!たまたま聞いたから。あのね?ここに居る良い子の夜桜アヤって名前をね?たまたまだよ?ホントだよ?」
……怖い、そう思ったのに…ここまで焦っている姿を見ると…
「ふふっ、あははっ…」
少し……いや、かなり安心してしまっていた。
「そんなに笑わないでよ〜…」
そのせいなのか…目から零れ落ちてくる…涙。
「……あれ……そんな…泣きたいわけじゃ……ないのに……」
何故か…理由があった訳じゃなかった。
分からないかもしれない。
自分を虐めてくる人が居ないとこで、優しくしてくれる。
大丈夫?と声をかけてくれる。
そんな言葉、いつぶりだろう。
胸の奥がじんと熱くなって、喉の奥が震える。
こらえようとしても、きっともう限界だったのだ。
「……ひっ……うぅ……」
涙が止まらない。
苦しくて、辛くて、ずっと誰かに助けてほしかったんだ。
突然泣き出してしまって、迷惑をかけてしまっている…わかっている、理解している……でも、氾濫する感情を…抑え込むことが出来なかった。
「あぁ…ほら、泣かないで…大丈夫、大丈夫だから。」
彼女は近付いて、優しく…割れ物を触るかのように抱きしめてくれた……
そんな私が……彼女を好きになってしまうのに…なにか不自然なことがあっただろうか?
……私の意識はここで途切れていた。
私はそこから始まっていたのだ…彼女に対する恋心が
向けられる事の無いであろう感情が芽生えてしまったのに。
その愛が例え私に向けられなくても……私からの愛が失うことは無い。
__________大好きです…ユイ先輩。