開戦の号砲が静かだったのと対照的に、『
現れるのと同時に、悪魔に対する防御としても通用するよう頑丈に作られた門を一刀両断にしたのだ。
(バフォメットから手に入れたファーガスの剣*1が思いの外、強いな。確かメガテン2だとバグのせいで1回攻撃でしょぼかった覚えがあるが、ここでは文句なく強い)
先のバフォメット特異固体討伐の際、手に入れたファーガスの剣が思いの外強いことに、徹は驚きを隠せなかった。低命中のはずだが現実では関係なく当たる。それで最低4回攻撃と来たら、彼からすれば人権武器もいいところだった。
実際には、その異常な重さから一定以上の力のステータスがなければ、剣に認められないため1回攻撃にしかならず、剣士としての技量が一定以上ないと当てられないというのが普通であった。
両方を備えた者が使いこなせばどうなるか、その答がそこにはあった。
当たるのを幸いに、黒騎士が容赦なく悪魔を切り裂いていく。たまに物理無効の悪魔が混じっており、流石に弾かれたりもするのだが、次の瞬間には炎によって消し炭にされている。
「馬鹿な、悪魔共がこうも簡単に!」
門を破壊されたことで、わらわらと出てきたカジュアル達が召喚した悪魔達が、なんの痛痒も与えられずに霧散していく。完全に腰がひけているが、数を頼みに殺される端から召喚しているため、悪魔は軍勢といってもいいレベルの数だ。ゲーム的に表すなら、悪魔の軍勢LV30と言ったところだろう。
しかしだ、軍勢などゲームにおいてカモでしかない。所詮集まったところで烏合の衆、まして最大LV20程度のがどれだけ集まったところで、今の『
【冥界破*2】
それどころか、最近覚えたばかりのスキルの試し打ちに使われる始末。そして、試し打ちに関わらず、結果は凄惨だった。
悪魔の軍勢は根こそぎ消し飛び、召喚していたカジュアル達も巻き込まれて、肉体の一部が欠損した状態で骸と化している。それでも肉体が文字通り消し飛んだ連中に比べれば幸運だったと言えるくらいだ。
その様を一顧だにせず、ゆっくりと死神の如き黒騎士は歩みを進める。道中にある全てを正面から斬り伏せ灼き焦がして。
――この瞬間、オザワ配下の士気は完全に崩壊した。
黒騎士は、今まで悪魔を使ってやりたい放題やってきた彼らに、死を届ける死神だった。そうとしか思えなかった。誰も彼もが我先にと逃げ出す。最早なりふりなど構っていられない。どれ程惨めだろうが、死んでしまえば全てが終わりなのだから。
だが、逃げた先の裏口にいるのは、彼らを手ぐすね引いて待ち受けていたメシアン達だった。彼らに異教徒にかける情けなどない。ましてや悪魔召喚士ならば、尚のこと。
「ようこそ、ガイアーズの皆さん。あなた方に神の国の扉は開かれません。疾くこの世から消え去りなさい!」
テンプルナイトの無慈悲な一斉掃射が、カジュアル達を薙ぎ払う。元より悪魔さえいなければ、覚醒したての異能者にさえ負けるのがカジュアルだ。それは当然の現実だった。
「う~ん、実に素晴らしい。
――散々私をいらつかせてくれた塵虫共が!挙げ句の果てに、我が聖母候補を浚うだと万死に値する!」
佐竹は、黒騎士の前ではけして見せなかった激情を露わにしていた。それは紳士然としていた時とは似ても似つかない狂気に満ちた表情だった。今の彼は狂信者そのものだった。
「……生きたいですか?では、先日お前達が襲った教会から浚った女の行方を言いなさい」
佐竹は、掃射から辛うじて生き残った虫の息のカジュアルを、片手で持ち上げて尋問した。
しかし、殆ど死にかけていたせいか、それが致命になったのだろう。何も答えることなく吐血して死亡した。
「ちっ、最後まで役立たずですね、カジュアルというものは。まあ、いいでしょう。まだまだ代わりは沢山いますし、最悪皆殺しにすればいいだけのこと。
――あちらも派手にやっているようですからね。しかし、想像以上ですね、『
狂気を貼り付けたまま、狂信者が笑う。一方で、次の瞬間真顔になって、黒騎士の評価を冷静にし始める辺り、本当に理解不能で怖いとしか言えない様相であった。
「しかし、この分だとただの塵掃除になりそうですな」
そう呟くメシアンに、オザワの放った刺客が襲いかかったのは、そんな時だった。
<そこで止まるがよい、益荒男よ>
最上階まで一気に行こうと駆け上がる寸前、強烈な圧力と共に響いた厳かな声に、俺は思わず足を止めた。
「オザワの悪魔か?」
この圧力からして、LV40以上の霊格の持ち主。恐らく霊格だけでいえば、ほぼ互角の相手だろう。
流石にオザワにこれ程の悪魔を従える力があったのは、完全に想定外だった。
<然り、なれどあれに使役されているなど思うなよ。我はその逆、我が存分に戦う為にあれと契約してやっているに過ぎぬ>
オザワの制御下にはないが、一応の使役契約は結んでいるとなれば、恐らく建御名方だろう。
(なるほど、そういうところは原作と同じなわけね……。でも、格上の悪魔を曲がりなりにも使役出来ている時点で、オザワは悪魔召喚士としては、間違いなくそれなり以上だな)
「止めたってことは、当然素直には通してくれないよな!」
そう言いつつ、ファーガスの剣で斬りつける。
<無論だ。オザワの首が欲しいなら、我を倒して見せよ!>
調子よく出た6回の斬撃を、掌底でもって全て迎撃して見せる建御名方。
(そう言えば、建御雷と建御名方の力比べは神事相撲を象徴するものとも言われていたな。つまり、この悪魔相当に
今までやり合ってきた悪魔とは、雰囲気が明らかに違う。これが神の名を冠するものの圧なのだろうか。
「言われなくとも!」
妖刀から奪い、そして今や完全に自分のものにした剣術を最大限に使う。ファーガスの剣は、けしてなまくらなどではない。その切れ味は妖刀には劣るものの、攻撃回数やCLOSE付与の特殊能力を考えれば、総合性能では軍配が上がるだろう。
そんな剣をもって、『
<どうした?その程度か!>
仕切り直すべく距離をとれば、ガルダイン級の魔風が襲ってくる。流石に踏ん張ることもかなわず、吹き飛ばされる。
(そういや軍神で、風神でもあったんだか?多芸な神様だこと!)
だが、俺にも負けないものはある。クトゥグアの炎はこの神様にも通じるという確信が俺にはある。
「この程度で勝ったと思うなよ、軍神!」
更なる魔風の追撃に対し、自らの内で常に燃える炎を解放する。思った通り、炎は魔風を掻き消し燃えさかる。
<ほう、それが貴様の切り札か!大した炎よ、我が風を阻むとはな>
「この炎で貴様を討つ!覚悟はいいか、軍神『建御名方』!」
<先程から妙だと思ったが、我が神名を知るか!?面白い、やって見せよ!>
炎が渦巻き、俺の全身を包み込むと共に、炎が剣に絡みつき収束する。先程とは違うという確信をもって、建御名方とやり合う。
<ぬうううっ!?>
先のぶつかり合い同様、建御名方は見事にこちらの剣戟を捌ききる。
しかし、彼の神が苦悶の声を上げるだけの明確な違いがあった。魔風を纏った腕で、剣を迎え撃ったというのに、それさえも侵略して傷を負わせていたのだ。
(やはり、クトゥグアの炎なら殺せる!)
初めて入った明確なダメージに、俺は勝機を見いだすが、建御名方は止まらなかった。
<我は建御雷以外には負けぬ!ハアアアアッ>
その巨体からの体当たり、こちらを体勢を崩したところで立て続けに打ち込まれる凄まじい掌打の嵐。それは魔風さえ伴った純粋な暴威の顕現だった。
全身甲冑の上からでも、素通しではないかと思えるような衝撃と破壊力が、俺の肉体に的確にダメージを与えてくる。本気で強いとしか言い表せない相手だ。
「負けられないのはこっちだって一緒なんだよ!」
吹き飛ばされ、強かに打ち崩された肉体に鞭打って立ち上げる。マジで痛いし、キツイ。確実に肋骨が何本かイッテルだろう。それでもこのまま、負けを認めるわけにはいかない。
負けられないのは、こちらも一緒。世界崩壊案件をやらかす奴は、LV60以降がデフォルトの修羅の世界だ。こいつ程度に負けていては、この地獄のような世界を生き抜けない!
何より、こちとら『邪神様が見てる(ガチ)』なのだ。クトゥグアの炎を使って、苦戦どころか負けたりしたら、彼の邪神様が何をするか分かったものではないのだから。
<よくやる!まだ立ち続けるか、益荒男よ!よかろう、我が最大の技で葬ってくれようぞ!>
気炎を吐く建御名方が大きく息を吸い込み、同時に奴の力が充満するのが分かる。
(こいつチャージ*5しやがった!ヤバイ、次は本気で死にかねん!?)
目の前の建御名方は、明らかな異常個体だ。建御雷に引っ張られて、スキルを雷神のようにされているゲームのメガテンと異なり、本性の風神、軍神としての力を取り戻している。
であれば、この異常個体が最大の技という以上、ハッタリなどでは断じてありえない。それは必殺にほかならないだろう。
<建御雷の奴に馳走してやる前の試しだ、誇りに思うがいい!疾風剛破*6!>
魔風を凝縮し纏った強烈なまでの掌打が、周囲のもの一切合切を薙ぎ払いながら迫る。
(マズイマズイ!いくらなんでも、ここまでダメージくらった状態でこれは死ねる。
だが、どうする!剣じゃ無理、可能性のある炎は、あれを相殺するだけの威力にするには到底間に合わない。クソッ……何か、何か他にないか!?あるっ!奴が風神の本性に回帰しているなら有効な一手が一つだけある)
怖いのは監視の目だが、クズノハは恐らくこの依頼を請けるとは思っていなかったはずだ。そのせいか、監視役を用意していなかった。メシア教の方も、何かトラブルがあったのか、こちらを監視している余裕はないようだ。つまり、召喚する環境は整っている。
「来たれ雷光のアステリオス!」
LV45になった時に、いつの間にかペルソナも進化し『アステリオス改』になっていた。それ以来、ランクを最大限に上げてからは召喚したことがなかった。なにせ、ペルソナ能力は俺の中でも秘中の秘だ。クトゥグアが嫌がるのでおいそれと使えないし、どうしても忘れがちになるのが傷だ。
しかし、この絶体絶命の状況で使わずして、いつ使うというのだ。
(アステリオスはミーノータウロス、ゼウスの別名である「アステロペーテース(雷光を投げる者)」と同じだ。つまり、雷光もアステリオスの力だ!)
【ジオダイン*7】が召喚されたアステリオス改から放たれた。
(<雷撃だと!?今まで隠しておったか!だが、我が雷の対策をしていないとでも思ったか!>)
突然の雷撃にさしもの建御名方も意表を突かれたことになったが、彼に動揺はない。建御雷に対抗するために、【電撃耐性】を身につけていたからだ。完全な不意討ちの電撃といえども、致命傷にはならない。
故に、この結果は純粋に運が悪かったのだとしか言い様がない。建御名方はSHOCK(感電)状態*8になってしまったのだ。耐性でしかない以上、ダメージは通る。ダメージが通る以上、状態異常も通る。残酷な現実であった。
ゲームなら、一度出したスキルが途中で止まることなどありえないが、ここは現実である。無情にも建御名方の必殺は、どうしようもないタイミングで不発した。
当然ながら、彼の敵手である『
「ええい、もうパクりとか気にしていられん!アカシックバスター*9!」
煉獄の化身と化した黒騎士が建御名方の巨体に凄まじい勢いでぶつかる。腰だめに構えられた剣は、それまでが嘘のように建御名方の神体を貫いた。そして、煉獄の炎が全てを飲み込む。
<雷、またも雷が我を阻むか。忌々しい……。
だが、見事であったぞ。誇るがいい益荒男よ!貴様は、この軍神建御名方を討ち果たしたのだ!名乗れ、貴様の名、黄泉路への供にしてやろうぞ>
「――卯月徹」
一瞬、徹は迷ったが、この敵手に対し名を隠すのはないと思ったからだ。とはいえ、無用の心配だった。そもそも、この至近距離でしか聞こえない声だ。それに万が一監視がいたとしても、炎に巻かれたこの状況では読唇も盗聴も不可能なのだから。
<そうか確かに聞いた!いつかまた雌雄を決さん!>
そう言って、呵々大笑して消えていく建御名方。徹はそれを複雑な心境で見送った。
勝てたのは完全に運が良かっただけで、自分は初めての自爆技で鎧も完全に崩壊している。満身創痍といっても過言ではないのだから、無理もない。
「俺は二度と会いたくないぞ、軍神様よ」
それは偽らざる徹の本音であった。これに一方的に勝った建御雷はどんだけだよとすら思った。
影蔵*10から貯蔵されている魔石とチャクラドロップを使い、即座に鎧を纏い直す。
「監視の目は、本当にナシか。こりゃあ、メシア教の方でも本格的に何かあったな」
メシアンの監視の目が、ドローンと使い魔という形でついてきているのは徹も気づいていた。なので、悪魔を掃討する時、諸共に薙ぎ払っていたのだが、それでも懲りずに何度も追加が送られてきていたのだ。
だが、今はどちらの気配も微塵もない。建御名方との戦闘中だけであれば、巻き込まれるのを避けてということもあっただろうが、今現在に到ってもとなれば、こちらの監視に割く余裕が全くないということの証左だろう。
「建御名方のことを考えれば、オザワは雑魚じゃない。人に言っておいて、自分が足下をすくわれたか、メシアン」
どこか愉快そうに言う徹だったが、最早油断はない。元よりオザワを舐めていたわけではないが、どうしてもゲームでの印象が先行していたのは否めなかった。
しかし、建御名方との死闘がそういったものを完全に塗りかえて、オザワを客観的な目で再評価することになったのだ。
「思えばカオスヒーローを誕生させた男だ、けして端役ではないということなのかもしれないな」
最上階を見据え、再び黒騎士は動き出すのだった。
アカシックバスター(偽)
参考元のサイバスターのものとは似ても似つかない自爆技。咄嗟に浮かんだ炎の体当たりがこれ以外なかったので、採用の至りに。実態は剣を腰だめに構えたヤクザアタックである。ちなみに未完成な上に制御できていない為、ダメージ効率が悪く、鎧も強制解除される。
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