いつもの3倍は時間かかったわ!
健太郎は、中1の頃に起こした徹との絶交騒ぎの後、幼馴染の三人とはすっかり疎遠になってしまい、その代償と言わんばかりに肉欲に溺れていた。
ありていに言えば、猿になっていたといってもいいだろう。初体験は、三年の先輩だったように思うが、もうはっきりとは覚えていない。兎にも角にも、性衝動の赴くままにヤリまくっていた。
彼氏持ちだろうがなんだろうが関係ない。強引に寝取ろうとしたこと自体はないが、誘われれば喜んでついていった。いくつかトラブルも起こしたが、健太郎は喧嘩も強かったので、問題はなかった。
少し人数を連れてこられても返り討ちにできるだけのポテンシャルが、彼にはあったのだ。
そして、気が付けば、かなり有名になっていた。札付きのワルというわけではないが、悪名なのは間違いない。それが近隣にも響き渡ると、健太郎のヒーローの時間は終わりを告げた。部活の助っ人に呼ばれなくなったからだ。
何も練習していないのに、部員より成果を出す彼は、見ている分には最高のエンターテインメントなのだろう。人寄せにも勝利にも寄与してくれるとなれば、部員だけでなく部活動顧問からさえ積極的に呼ばれた。その恩恵もあって、彼は内申や成績に下駄を履かせてもらってさえいた。
しかし、そんな時間も終わりを告げたのだ。健太郎の悪名や所業が知れ渡ってから、それは激減した。本当にどうしても勝ちたいとか、なにか事情がある以外ではまず呼ばれなくなったのだ。なぜとは思ったが、活躍で誤魔化せるレベルを彼はとうに超えていたのだ。要するに、呼ぶメリットよりもデメリットの方が大きくなってしまったのだ。
結果、中3になった頃には、近づいてくる女も激減した。世評や行状というのは健太郎が思うよりも、はるかに重要だったということに気づいたのは、全てが手遅れになってからだった。
今や積極的に寄って来るのは、外見だけしか見えていないアーパーか、彼氏をトロフィーかアクセサリだと勘違いしているバカくらいで、真面な女はまず寄ってこない。たとえ、寄ってきても、ほとんどが彼の噂を知ると離れていってしまう。
ヤリまくりの爛れた日常はどこへやら、これで健太郎が高校生以上か金をもっていたら話は別だったろうが、生憎とどちらもそうではなかった。
年上であるほどリスクを嫌う。中学生(有名になりすぎて高校生だと偽ってもバレる)というだけでリスクはあるのに、そこに悪名がついては目はなかった。同年代もスポーツでの活躍や外見の良さだけが男の価値ではないことに気づくものが多くなり、それに受験も重なって悪名と行状が大幅なマイナスとなり、見向きもされない始末。
気づけば、健太郎は女を抱くためにある程度の努力をする必要があるようになっていた。電車でナンパの場所を遠くに変えたり、今日のようにデートを重ねるなどの努力をだ。
(今日のデートが終われば、確実にやれる。瑞穂やみこちゃん相手でもないのに、手間かけさせやがって。貴重なバイト代をこいつにいくら使ったことか……。あのクソオヤジ、身内だからと言って安く使いやがって!)
己を最低賃金でこき使う叔父の顔を思い出して、健太郎は心底げんなりする。
とはいえ、これは誤解で、やり過ぎた健太郎は親からの罰で小遣いなしにされてしまい、それを不憫に思った叔父が中学生にも関わらず、身内の手伝いという形で雇ってくれ、バイト代を支払ってくれているのが真相である。
それでも今日はやれるだろうという感触を健太郎は得ていたので、機嫌はよかった。ある人物達を見るまでは……。
それは彼のよく知る二人、今は断絶してしまった幼馴染だった。一人は絶交を一方的に叩きつけ、一人は頬を叩かれた。あの時の痛みは生涯忘れない。今も夢に見るあの光景。殴られても尚口を割らず仕方ないことだと諦めている徹、自身に向けられるみこの失望と怒り、瑞穂の悲しそうな顔。そうさせたのは健太郎であり、その全てが彼を苛む。
(分かってる。俺はクソダサい真似したんだって。みこちゃんの親父さんは、俺は信用できなくても、あいつは信用できると思ってたんだってことは……。)
そもそも、健太郎と徹は比べる必要もないほどに親の評価が段違いだった。散々やんちゃして、それでいて悪びれない健太郎は、それがいいという人もあれば、反感を買うことも少なくなかったのだから。
だから、徹の代理なんて健太郎に務められるはずがなかったのだ。みこの父親の拒否は当然だったと、今の健太郎は認めることができる。
――それでもあの時に感じた敗北感が忘れられない。
屈辱だった。自分はヒーローのはずなのに、誰も称賛するどころか、彼を責めた。血のつながった実の親ですら、それはお前が悪いの即答だった。
(俺とあいつ、何がそこまで違うんだ?なあ、みこちゃん?)
視線の先には、仲睦まじく手をつないで券売所に並ぶ徹とみこの姿があった。初恋の少女が、初めて敗北感を与えた男に向ける笑顔は、今の健太郎にはあまりにも眩しすぎるものであった。
「なにもここまで急がなくても……」
「ダメです。今日は何もかも忘れて、一日遊ぶんです!」
そう言って、遊園地の前で意気込むみこの姿に徹は苦笑する。常の巫女姿ではないみこの私服姿は非常に可愛らしく、よく彼女に似合っている。メイクこそナチュラルメイクだが、気合を入れてきたのは、端から見れば丸わかりだった。
とはいえ、当の徹はそこまで化粧に詳しいわけでもなく、いつもより可愛らしいなあとか、巫女姿じゃなせいか新鮮だなあくらいにしか思っていなかった。
「5時起きで、お弁当まで作ったんだろう?大変だったろう?手伝うって言ったのに」
「ええ、大変でしたよ。でも、今日は手伝ってもらうわけにはいかなかったんです!それに5時起きした甲斐はありました。文句なしの出来ですから」
徹がみこの料理を手伝うのは、よくあることである。なんだったら、一緒に料理するのも珍しくないのだが、今日に限っては断固拒否されてしまい、徹は困惑していた。
「自信作というわけか、それは昼を楽しみにさせてもらおうか」
「ええ、期待していてください」
こんなやり取りをしているものだから、周囲からは完全にカップル扱いであった。初々しいものを見るようなものがいれば、やさぐれるものもいた。
(覚えのある気配?……まさか、健太郎か?うわ、気まずい)
だが、そんな中に徹は己が良く知る気配を感じ、なんとも間が悪いと思ってしまう。こんな時ばかりは、己の鋭い感覚が恨めしい徹であった。みこも気づいたのではと心配になって見る。
「??徹、どうかしました?私の顔になにかついていますか?」
そう言って小首をかしげるみこは、大変に可愛らしい。憂いのようなものは欠片も見られないので、気づいてないと徹は判断した。
(セーフ!気づいていないみたいだな。これなら、俺が今だけ我慢すればどうにかなるだろ。健太郎は一人で遊園地に来るような奴じゃないしな)
健太郎のお盛んぶりは、徹も耳にしている。元々大の女好きでマセガキだったし、変に色気づいてもいた。さらに原作下級生の主人公ポジだと考えれば、何も違和感はない。なので、すぐに自分達のことは忘れて、女の子と楽しむだろうと判断したのだ。
「可愛い顔がついているな」
「――!?徹ったら、すぐ揶揄うんですから!」
たちまちに赤面して俯くみこに、よし上手く誤魔化せたなと思う外道な徹であった。
「俺、マジでなにやってんだ?」
己でそう言わざるを得ないほど、健太郎は自身を制御できていなかった、あの二人を見かけた後、待ち合わせ通りの時間に来たお相手に謝り倒して、衝動的なドタキャンを許して貰った。健太郎が待ち合わせより早く来ていたのを彼なりの誠意と誤解してくれたこともあり、予想以上に穏便に話は済んだ。勿論、埋め合わせは約束させられたが、彼女とヤリたい健太郎としても渡りに船だった。
(久々に女を抱けるチャンスを不意にして、やることは疎遠になった幼馴染みカップルの尾行とか、意味わかんねえよ)
何か深い考えがあったわけではない。ただ、内から湧き上がる強い衝動に動かされて、健太郎は気づけばお相手の彼女を帰していた。そして、徹とみこの後をひたすらつけている。二人は全フリーのパスポートを買っていたが、こちらは入場券のみ(デートでもないのに散財したくなかった)なので、アトラクションに入られればどうしようもない。そんな意味のない尾行を彼は続けていた。
(二人がいちゃついてるのを見ているだけじゃねえか!なんの意味があるんだよ!)
内心でそう思っても、健太郎の意思に反して体は勝手に動く。何度もうやめようと思いながらも、結局は二人の後をつけてしまう。完全に不審者であったが、その逡巡とアトラクションにまでついて行かないことがいい方に働き、辛うじてストーカーのようには見られていなかった。
(もう、十分だよ。これ以上何を見ようって言うんだよ)
二人が恋人同然に見られているのは、学校でも公然の秘密だった。
なにせ、家の事情で公欠扱いで、一緒に休んだりしているのである。家の事情で公欠とかどういうことだよと思うが、公共団体からの依頼で地鎮祭等(実際には悪魔関係依頼)を執り行うことがあるらしく、人手が足りていないので、後継である二人が手伝いでかり出されるみたいとは瑞穂から聞かされた話であった。
そして、それを肯定する光景を嫌というほど今日だけで見せられた。徹の為に作ってきたお弁当に、彼だけに向けられる健太郎が知らない笑顔、手を握るだけだったのにいつの間にか腕を組んでいるetc.
(瑞穂はまだ付き合ってないって言ってたが、もうほとんど恋人同然じゃねえか!面白くねえ)
みこのことは、もう他の男には可能性がないと断言してもいいレベルで、徹にぞっこんなのは明らかだった。
(みこちゃんの眼中に俺がいないのは知っていた。だから、俺は……!)
健太郎も馬鹿ではないし、察しもけして悪くはない。幼心にみこの眼中に異能者ではない自分が映っていないことはなんとなく感じていた。瑞穂すら黄色い声を上げるくらいの活躍をしても、勿論喜んでくれたし応援もしてくれたが、みこはどこか冷めていた。健太郎が瑞穂ではなくみこに執着し、淡い初恋を抱いたのも、彼女だけが他の少女とは異なっていたからなのかもしれない。人間は手に入らないものほど、ほしくなる生き物であるから。
(今更、なにもかも今更だよ。どの面下げて、二人の前に出られる?俺は結局謝りもしてないんだぞ……ダセえな、俺)
あれ以来、顔を合わせることがあっても、意識的に無視してきた。合わせる顔がなかったのもあるが、己が明確に負けたのだということを認められなかったからだ。己の初恋は最悪の形で敗れたのだ。それを忘れるように、女に溺れた。女と肌を合わせている時だけは、全てを忘れて没頭できたから。
(ククク、どこまで未練がましいんだ、俺は?今まで好き放題やってきただろうが!文字通りヤリたい放題だ)
甘酸っぱい恋模様を繰り広げる二人を見ていると、どうしようもなく己が汚れているように思えて、健太郎は惨めさすら感じた。
(あん、あれは?)
二人に近づく怪しい影に、健太郎は目を細めるのだった。
「おい、お前達中坊だろ?もう十分楽しんだろ?ここからは俺達が使ってやるから、それよこせよ」
突然そんなことのたまう馬鹿がやってきたのは、みこのお弁当を食べて、茶を飲みながらくつろいでいたそんな時だった。
(ああ、入場券のみで入ってきたのか。そして、フリーパスはカツアゲして入手とはえらいせこいな。しかも、人の目が少ないところにいるタイミングでとは、目をつけられていたか)
「はい?申し訳ないですけど、譲ることはできないので、ご自分で買って下さい」
勿論、考える暇もなく、みこを後ろにかばって即断る。デートはまだまだこれからなのに、フリーパスポートを渡すとかありえない。
「あん?テメエ、誰に向かって口聞いてやがる!大人しく渡せばいいんだよ!」
金髪に染めたリーゼント頭の不良という、今時珍しいタイプである。後ろで腕を組んでいる同じく金髪のギャルっぽい頭の悪そう女もニヤニヤしている。恐らく、脅せばどうとでもなると思っているのだろう。
(確かにかなりの強面で迫力あるけど、殺し合いしてきた悪魔連中と比べるとなあ……。)
なんというか、身の程を知らないチワワが喧嘩を売ってきているようにしか見えなくて、複雑な気分になる。
「凄んでも無駄なんで、諦めてくれませんか?」
「テメエ、俺を舐めてるだろ!中坊風情が調子こいてんじゃねえぞ」
なんと殴りかかってきた。少なからず人目のあるここで、こうも簡単に暴力に及ぶとは、余程頭スカスカのようだ。
(どうしようかな?殴られても痛くも痒くもないけど、流石にこいつ相手に殴られてやる理由もないよな)
大ぶりのパンチを避けて、足を引っかける。見事に引っかかって馬鹿は転んだ。強く殴ろうとする余りに重心を不安定にする、素人がやりがちなミスだ。だから、こうも簡単に転ぶ。
そして、立ち上がる暇を与えずに三度ほど顔面を踏みつけて黙らせる。正直、さっきからいらないことをわめき散らしていい加減耳障りだったので、ちょうどいいだろう。
「りゅ、竜二ー!?」
連れの女が思いもしなかった展開に動揺して絶叫する。五月蠅いので、こちらも睨み付けて黙らせる。
「とっとと失せろ。それとも、こいつみたいになりたい?」
「!?」
ブンブンと首を振って、その場にへたり込む女。
(おいおい、なんでここでへたり込んじゃうかな?って、漏らしたんかい!)
「そこで何をしている!」
最悪のタイミングで警備員が来たのは、流石の俺も文句をつけたいところだった。
「なんだ、あれ?あいつ、あんなに強かったのかよ」
徹の鮮やかすぎる鎮圧劇に、健太郎は目を見張っていた。
危なくなったら助勢して、それで今までのことをうやむやにして、仲直りしようとか情けないことを密かに企んでいただけに愕然とした。
そして、女の方に向けられた言葉と凄絶な殺意。漏らしてしまうのも致し方ない程の迫力と冷たさがあった。
(あんなの大の男でも漏らすわ)
徹の言葉には、女でも容赦しないという確かな凄みと迫力があった。端から見ていた健太郎自身、動けなくなってしまうほどの迫力だったのだから無理もない。正直なところ、憂さ晴らしでやったことのあるストリートファイトですらかすむほどだった。背筋が凍るとはまさにこのことだろう。
(というか、鮮やかすぎる。あれは暴力に慣れている奴の動きだ)
人間不思議なもので、ちゃんと倫理観道徳観を教育されている日本人は、基本的に大怪我させるか、殺してしまうような攻撃をしようとすると、自動的に無意識でブレーキが掛かり、手加減してしまうと言う。倒れた人間、それも頭部への踏みつけ。どう考えてもセーフラインを超える攻撃であった。
(もしかして、あいつ、俺より強くないか?)
別に自慢でもなんでもないが、恵まれた肉体と破格の運動神経で、健太郎は喧嘩では負け知らずだった。
だが、あの幼馴染み相手ではどうだろう。明らかに無駄なく鍛え抜かれた肉体に、恐らく何らかの武術を修めているだろう技巧。少なくとも今の光景を見て感じて、勝てるなどとは口が裂けても言えなかった。
(負けているのは、勉強や礼節だけじゃないっていうのかよ!あの真面目野郎に俺は劣るのか!?)
明確に感じた二度目の敗北感に、健太郎の自尊心が音を立てて無様に崩壊していく。
今更、出て行くなんて情けない真似が出来ようはずもない。みこ達に出すはずだった助け船も、自力で解決されてしまえばどうしようもない。惜しむらくは、あの二人が近づいた時に止めていれば良かったのだが、徹の情けないところを見せて、颯爽と自分が助けるなんて妄想をしていた彼には不可能であった。
「クソッ、本当にマジでダセえ……」
それでも一つだけ健太郎はやるべきことをやり、独り、トボトボと帰路につくほかなかった。
「本当に失礼です!」
遊園地のからの帰路、みこはお冠であった。
「まあまあ、あの人達も仕事だからさ。それに苛ついて、俺もやり過ぎたし」
「正当防衛じゃないですか。カツアゲしようとして返り討ちの挙げ句逆ギレなんて、恥ずかしいとは思わないんでしょうか?」
男の方は鼻が結構ヤバイことになっていた&女の方が失禁して腰が抜けていたということもあり、なんと徹が加害者側であると見られ、事務所で事情聴取とあいなったのだ。被害者と見られる男女が中々意識を取り戻す&正気に戻らなかった為、ほぼ営業終了間近まで拘束されたのだ。あわや警察を呼ばれるところだったが、一部始終を見ていたという匿名の連絡があり、誤解は解けたのだった。ダメ押しに男の方が起きるなりにブチ切れて、ナイフを取り出して凄まじい騒ぎを起こし、徹がこれを鎮圧したものの、男は結局御用となった。
「大の大人が中学生にやられちゃ面子が立たないんだろうさ。あのクソは救えないけど、遊園地のスタッフは仕事をしただけだから、許してあげよう、お詫びにいいものを貰ったし」
「本来、株主限定のフリーパスでしたね。こんなものあるんですねえ~」
感心したように貰ったものをまじまじとみこは見つめる。
「ああ、便利なものだよな。とはいえ、3回限定だけど」
流石に本来株主限定優待で配布されるペアのフリーパスポートを制限なしではくれなかった。本来、10回使えるものだが、残り3回のものをくれたのだ。
「3回も行けるなら十分です。勿論、全部付き合ってくれますよね、徹?」
「みこがそう望むなら喜んで……瑞穂さんと行ってもいいんだぞ」
「駄目です、これは徹と一緒に貰ったものですから、二人で使うんです!」
みこはそう力強く断言した。
「匿名の連絡には助けられたな」
「……健太郎君ですね?」
「気づいていたのか?」
「素人の尾行ですし、いつまでも同じ気配がつかず離れずしてれば嫌でも気づきます。私は鈍くないんです」
(アンジェリカのことをどう説明しようかと悩んでいたら、爆速で気づかれたからなあ)
あの時の罰で3時間も正座させられたのを、徹は忘れていない。悪ノリした親父さんまで協力してきたので、本当にきつかったのだ。
「めっ!です」「イタタ!?」
みこに突然、足を強めに抓られて、予想だにしなかったものに徹は声を上げた。
「帰り道とはいえ、デート中です。他の女の子のことを考えたり、名前を出すのは禁止です。瑞穂ちゃんは幼馴染みなので見逃しましたけど、アンジェリカさんは駄目です」
「……なんで、分かるの?」
「女の勘です。それに徹のことは誰よりも見ていますから」
悪戯っぽく笑うみこだが、その目には深い情念が渦巻いていた。
「そっか……。話を戻すけど、健太郎には助けられたな」
「徹とのデートをずっとつけ回していたお邪魔虫なんですから、これくらいやってくれないと困ります」
みこは、これでも気づかないふりをして、全力で楽しむべく努力していたのだ。正直、用があるなら、さっさといってくれればいのにとすら思っていた。別にこちらには、健太郎に含むものはないのだから。
――ただ、諦めているだけで……。
「なあ、みこ。俺達は確かに常人とは違う。強い力を持っているし、最終的には関わらないのがお互いのためだというのも分かる。でもな、全てを諦める必要はない。俺達は裏と表の違いはあれど同じ世界で生きているんだ。交わる部分では一緒に過ごしてもいいんだ」
「それで説明できなかったら、健太郎君のようになるのにですか?」
みこのあの時の失望は大きかった。幼馴染みで親しい友人同士であった徹と健太郎でも決裂したのだから。結局、異能者とそうでない者には、相容れない溝があるのだと彼女は諦観したのだ。
「それでもだよ。可能な部分は説明して、納得して貰えるよう努力しよう。どの道、手加減や常識・世情を知るという意味で、人との交流をきることなんかできないんだから」
「私達に関わったら、悪魔に襲われるかもしれません」
「今の俺達なら、そんじょそこらの悪魔には負けないだろう?白狐様に勝ったのは伊達じゃないんだぞ」
そう言って、徹は力強く笑う。昔とは違い、今なら守れるのだと。
「そうかもしれません。でも、私は怖いです。今まで、父様と徹に守られてきましたから」
それでも恐怖は拭えない。生まれつき人と違う、それはみこの根源に根ざした恐怖だった。
彼女は知っていた。徹や父が、自分のために色々手を尽くし、気を遣ってくれていたことを。
「みこは強くなった。心身共にね。だから、大丈夫だよ。
それでも、君が不安だというのなら、俺が君を守る。悪魔から、悪意をもった人々から、君を傷つけさせないように」
「そう言ってくれるのは嬉しいですけど……それは一生ですか?」
みこは伏せたままの顔を上げずに踏み込んだ。本当は、今日告白するはずだったのだ。思わぬアクシデントのせいで、望んだシチュエーションではないが、まだデート中で間に合うはずだからと。
「……」
徹はすぐには答えなかった。もしや断られるのかと、まさかの展開に頭が真っ白になるみこ。
せめて断られるにしても、徹の顔を見ようと、顔を上げた。
チュッ
それは不思議な感覚だった。初めての感触であった。なにされたのかを理解したみこの頭が、瞬間に沸騰して身体が熱くなる。
「あっ、あのっ!」
みこは完全に茹で上がった頭で何かを言おうとするが、言葉にならない。
「今のが答じゃ駄目かな?
そう言って、悪戯っぽく微笑む徹だったが、顔が真っ赤で何も隠せていなかった。
「……徹はしょうがない人ですね。でも、徹だから、貴方だけには特別に許します!」
そう言って、みこは徹に抱きついたのだった。
変わるものも、変わらないものある。これは徹とみこが望んだ変化であった。
健太郎君ゴメンよ、君が都合が良すぎるポジションにいるから、悪いのだよ。その代わり、前倒しして、ヤリまくり生活だ!君は原作でも、真剣になるまでは本気でチャラいしいい加減で、女癖は最悪だからな!
大丈夫、君にはしっかりお相手を用意しているからね。
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いやいや、全面禁止で
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