親父さんことみこの父親
正直な話、あの少年に大事な一人娘を託すのは不安がないとは言えぬ。かの少年の力は、覚醒する前から底が見えなんだのだから。辛うじて、ただひたすらに強大なことだけは理解できた。所詮この身は、みことは比べくもない非才の身。みこという神山家最高の天才をはかることが出来ぬように、卯月徹という突然変異の化物もはかることが出来ぬのは、当然やも知れぬ。
しかし、とうに血が絶たれたと思っていた卯月の一族の生き残りがいようとは……。
この町で、『卯月』の姓を名乗れるのは、始祖の親友であったこの辺り一帯の地主の家系だけ。戦後のどさくさで散り散りになったと聞いておったが、未だこの地に残っていた血族がいたとはな。それも、みこという天才の誕生した時にあのような存在が生まれるとは、これも始祖様のもたらしてくれた縁やも知れぬ。大切にしなければ。
それにしても、潜在能力もさることながら、あの魔を惹きつけ易いのは体質なのだろうか?神山神社が三百年以上封印してきたあの曰く付きの妖刀が飛んできた時は、流石に肝を冷やした。
始祖様の親友であった卯月の者も、不思議と魔を惹きつけたらしく、それが原因で始祖様に危ういところ助けられて親友になったということのようだからな。覚醒前からの異常なまでの勘の良さは、そういうことにならぬよう備わっていたのかもしれぬ。そう考えると、魔が惹かれるのも併せて、卯月一族の宿業なのか。難儀なものよ……。
才色兼備な幼馴染み(結城瑞穂)
徹君とみこちゃんが普通じゃないのは、なんとなく分かっていた。みこちゃんはいつも私達に理解できない何かを恐れていたし、どこか人付き合いに壁を作りがちだった。それを健太郎君が力尽くでどうにかしようとしたけど、厳格なみこちゃんのお父さんには通用しなかった。
それをどうにかしたのは、恐るべき勘の良さで私達を誘導してた徹君だった。その勘の良さと来たら百発百中で、霊感なんてものがあるなら、彼がそれを備えていると思う。私達を危険から遠ざけたのは、一度や二度じゃきかないくらいだ。
今じゃ、お父さんやお母さんも、徹君の忠告は素直に聞くくらいなのだから、その勘の良さはもう特殊能力と言ってもいいだろう。みこちゃんも徹君程ではなくても、なんとなく分かっていたように思う。でも、あの子はそれを表に出すことを嫌っていた。そういう意味では二人のあり方は対照的だった。
そんな二人に決定的なことが起こったのは、徹君の誕生日パーティーがあった直後だと思う。何があったのかは詳しくは分からない。
でも、そこから二人の関係は、明確に変わった。二人は互いを呼び捨てにするようになり、徹君は今まで以上に大人びてなにか考え込むことが多くなったし、みこちゃんは徹君へは全く壁を作らなくなって嬉しそうによく話している。
二人が今まで以上に仲良くなったのは嬉しいし、私達の成長に伴い健太郎君の視線が明らかにHぽくなってきて、今までのように付き合うのは難しくなってきたことを思えば羨ましくもある。健太郎君なんてあからさまに不貞腐れてたから、彼にも何かあったのは分かったんだろう。
でも、健太郎君、あの二人はきっと私達とは違う。何かが決定的に違うのだと私には分かる。みこちゃんのお父さんも、けして意地悪で私達の付き合いを制限していたわけじゃないと思う。きっと私達には分からない何かがあの二人の間にはあるんだよ。
――それを分かち合えないのが、寂しくて悲しいけれど……。
スポーツ万能で勉強はできないが頭の回転は速い幼馴染み(長瀬健太郎)
あいつが頭がいいのは知ってた。イタズラを考えさせたらピカイチだったし、それでもやり過ぎないようにあいつは気をつけていたし、それで迷惑をかけてしまった時は誰よりも先に謝っていた。正直、俺は気の使い過ぎだと思ったさ。
――そんなペコペコするのはみっともない。活躍すれば全部帳消しだろ!
だから、運動で誰よりもヒーローなのは俺だ。仮に勝負すれば勝つのはいつも俺だし、運動会では女子にキャアキャア騒がれるのは、いつも俺だった。
でも、そんな俺より、あいつは日頃から大人に褒められる。その頭の良さで、礼儀正しさで、大人からの受けが良かったんだ。瑞穂にみこちゃん、それにあいつの四人で過ごしていても、態度の悪さで俺だけゲンコツをくらうなんてことはしょっちゅうだった。
何よりうらやま――いや、妬ましいのは、その圧倒的な勘の良さだ。不思議とあいつの勘は当たる。明日の天気から、変質者の回避、電車の遅延から、イタズラ時の逃走経路の選定にいたるまで、あいつの勘は無双した。あいつの勘の良さが俺にあったらと思ったのは、一度や二度じゃきかない。
そして、最近は最悪なことが起きた。俺が瑞穂やみこちゃんをエロい目で見ていることがバレて、ちょっと疎遠になりつつあった間に、あの野郎はみこちゃんと急接近しやがったのだ。今じゃ、呼び捨てにしあってて、二人だけで度々出かけていることも知っている。
あのクソ頑固親父が認めているので、神社関係の所用なのは確かなようだが、みこちゃんはともかくあいつが一緒に行くのは納得がいかない。一度代わりをと言ってみたが、「君では駄目なんだ」と断言された。瑞穂は何か納得したような顔をしていたけど、俺は納得がいかない。
――あいつは良くて、なんで俺じゃ駄目なんだよ!
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