「はぁっ、はあっ……」
止まれない、撃たれた足に血が滲み痛む。でもここで足を止めてしまえば風紀委員会の人達に捕まってしまうだろう。いっそのこと諦めて捕まってしまおうか──
キキィィーー
諦めかけたその時、目の前に1台の車が急停車した。車には給食部の文字が、そこから聞き覚えのある声が聞こえてくる
「乙骨さん、乗ってください」
そこに乗っていたのは美食研究会の黒舘さん達だった
「……ありがとうございます!」
「トリニティまで行けばよろしいですか?」
「いやーそれは無理そうだよ、ほら」
そう言いながら鰐渕さんがスマホを見せてくる
「し、指名手配……!」
「乙骨くんがトリニティってことはバレてるし封鎖されてるかもね」
「ではD.U.地区を目指しましょう」
「んんっっ!」
「あの、この縛られてる人は?」
「給食部のフウカさんです。さらなる美食の為にご協力していただいているところでしたが」
「一緒に食べた仲だし!さすがに見捨てられないよね」
「い、一応解いておきますね……」
見たところ追ってこれていないみたいだけど、指名手配されるくらいだしどこで待ち伏せされているかも分からない
「伏せてください!」
バックミラーを確認した黒舘さんがそう叫ぶ
ドゴオオオオアオオオ!!
凄まじい音と共に車体が大きく揺れる
「ふ、風紀委員会。いつになく全力で止めに来てるわね」
解放されたフウカという人がそう言う
・
「相手はあのヒナさんを一瞬にして気絶させるほどの実力を持っています。戦車や迫撃砲などすべての使用を許可します!ヒナさんの仇っ!」
「迫撃準備完了!」
「撃てーっ!」
「戦車部隊、目標の進路を封鎖しました!」
「わかりました。十分に引きつけて確実に仕留めてください……ここまでやれば流石にくたばるでしょう。ゲヘナの風紀委員会を敵に回したことを後悔させてあげましょう」
・
「見かけによらずかなりの実力者だったのですね」
「空崎先輩を瞬殺って、冗談よね?」
「そんなこと言ってる場合ですか!?」
無数の迫撃弾に対し凄まじい運転技術によって回避していく
「しょ、正面に戦車が!」
「しっかり捕まっててねっ!」
そう告げると鰐渕さんはアクセルを限界まで踏み込んだ、立ち塞がる戦車の壁に向って突っ込むのではなく、道端に置いてあった廃材をジャンプ台代わりにしたのだ
「嘘でしょぉぉおおっ!」
「いやぁぁぁぁああっ!」
「流石に大げさすぎますよ」
絶叫する僕とフウカさんを涼しい顔で見ながら黒舘さんは告げた
「上手く巻けたようなのでこの辺りで別れましょう」
「私たちもなるべく逃げ回って時間稼ぎするね」
「僕なんかの為に、ありがとうございます」
「私も一緒に!」
「それではフウカさん、一緒に逃げ回りましょうね」
「誰かぁぁああ!」
そう叫ぶも助けが来ることはなく、フウカさんは再び美食研究会に攫われていった
「……。逃げなきゃ……」
ーー
その後僕はD.U.地区を動き回りなんとか逃げ切る事ができた。しかしヴァルキューレも動き出し、完全に逃げ場がない。男子生徒というのもあって嫌でも目立ってしまう
ーー2週間後
あれから逃げ回ったが完全に狙いがD.U.地区に絞られ、いまだ地区からは脱出できずにいた
「ダメだ、どこに行っても人がいる」
「おいおい、こんなところで何やってるんだ?」
「コイツっ!噂の指名手配犯じゃね!?」
「っ!」
相手が銃を構える前に常備していた銃を使い制圧した。きっとその弾丸には今までにないほどの憎悪の感情が含まれていたであろう
「さ、流石にまずいか」
キヴォトスの生徒の割に出血量が多かった為、やむを得ず近くにいた一般市民をその場に誘導して立ち去った。スマホの充電はとっくに切れてしまっているため、ヒフミさん達から連絡が来ていても分からない状況だ。店にいくだけでもすぐにバレてしまうので出店や屋台を転々としてなんとか食いつないでいる
「そろそろ財布も限界かも……」
そんなとき、激しい爆撃音と共に警報が鳴り始めた
ズドオオオオオン!!
ドガアアアアッ!
ドゴオオオオオッ!
気になり音の発生源へ向かう、道中すれ違う人は災厄の狐だと騒いでいた
「うわっ……」
乙骨はその光景に唖然としていた。近くにあった建物は片っ端から破壊されていき、応戦しているヴァルキューレの生徒達が次から次へとなぎ倒されていく
「この騒ぎに乗じてなら逃げれるかも!」
そう考えついてからの動きは早かったなるべくトリニティに近い方へと向って走り出す
ダァッン!
しかしそこに威嚇射撃がはいる
「なんでっ!」
そこにはキツネと思われるケモミミの生徒達が立っていた
「FOX小隊だ、これより第2目標である乙骨憂太を鎮圧する」
戦ってはまずいと感じ、なるべく車などを遮蔽物にしながら距離をとろうと走る
「逃げる気かなっ!」
普通の生徒よりもあきらかに足がはやい。そして連携力、一瞬にして囲まれてしまった。FOX小隊を名乗る4人の中の1人、ピンク髮の生徒が僕を押し倒す
「確保っ!大人しくしてよねっ!」
「っく……」
必死にもがくが力負けしてしまっている
「ごめん、里香ちゃん!」
ドゴガアァン!!
僕を捕らえようとしたピンク髪の生徒は、急に現れた里香の腕から放たれる一撃を受け倒れ込んだ。その隙を見逃さずに僕は走り出す、さっきの騒動を起こしていた災厄の狐のもとへ
僕が第2目標なら第1目標はきっと災厄の狐と呼ばれるさっきの生徒だ
「私が安全な場所まで運ぶから!先に第2目標を追って」
「まずいな……このままだと第1目標と同時に接敵してしまう」
僕は第1目標と呼ばれる災厄の狐が見える範囲まで来ると、近くに停めてあったトラックの下に潜り込んだ。しばらくして、さらに銃撃戦が激化するがやがて銃声は聞こえなくなった
その場に立っていたのは災厄の狐だった。FOX小隊2人では制圧しきれなかったようだ、今は里香に殴り飛ばされた生徒を運んでいたFOX小隊の残り1人が応戦しているが、あきらかに劣勢だ
・
「ま、まずいです。遂にFOX小隊までも壊滅してしまいましたよ!このままじゃ連邦生徒会もなすすべがありません!!」
「ここまでの甚大な被害、やはり2人も同時には無理がありましたか……」
「うっううーー!リンちゃーん!!」
「誰がリンちゃんですか!」
「連邦生徒会長、ここはミレニアムやゲヘナ、トリニティに協力を仰ぎましょう。このまま連邦生徒会のみの戦力で戦うには分が悪すぎます」
「そうですね。そうしましょう!」
ーー数分後
「ゲヘナの空崎ヒナさんを除く風紀委員会が乙骨憂太さんを、トリニティの正義実現委員会が狐坂ワカモさんを、ミレニアムの方々は狐坂ワカモさんが使っていたドローンのような機械の主導権を奪って応戦してくれるそうです!」
・
「随分とすごい数ですね……これを1人に、と考えるのは現実的ではありませんね。そこで隠れている方、あなたも追われてる身ですよね?ここは1つ協力しませんか?」
「……。協力、ですか……」
「僕が戦うとその分周りの皆が傷ついて、その分里香ちゃんも傷つく。だから僕はもう戦えません……」
「……そうですか。なら邪魔なので消えてください」
「はい、そうさせて頂き──」
そう言いかけた時、先程まで災厄の狐が操っていたであろう機械に僕と災厄の狐もろとも吹き飛ばされた
「うぐぅっああっ!!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
頭が割れそうな感覚で視界がぼやける。骨が折れてしまったのだろうか、足は動かない。一緒にふっとばされたであろう災厄の狐はすぐに起き上がり、再び戦いに行った
「息を、呼吸をしなくちゃ……死んじゃう」
(死んじゃう?もういっそのこと死んで里香と同じところに)
「だめに決まってるだろっ!」
「まだ息が合ったんですか、本当にそのムカつく生命力には驚かされますね。これで終わりです」
その生徒が射撃の指示をだそうとした時、何者かがその生徒を吹っ飛ばした
「乙骨さん!大丈夫ですか!詳しくはトリニティで……」
羽川先輩、ダメだ意識が朦朧と里香ちゃんお願いだから暴れないで……ね……
「ちょっと!何してくれるんですか、ってトリニティの正義実現委員会。ここにきて邪魔に入りますか」
「例の災厄の狐はミレニアムの生徒が主導権を握った機械と正義実現委員会のツルギ達が戦っています。おそらく時間の問題でしょう」
「そんなことはどうだっていいんですよ!私たち風紀委員会は乙骨憂太を始末するように頼まれているんですよ!」
「それはおかしいですね。私たちは災厄の狐を倒した後、矯正局へと連行するように指示をもらっているのですが……始末するように頼まれたのですか?」
「しかし、息がある状態ではいつ暴れ出すかわかったものではありません!」
「いえ、始末までする心配はなさそうですよ」
「痛みに耐えかねて気絶しましたか……仕方ありません、風紀委員会としてもこれ以上の問題は起こしたくないため今回は矯正局まで連行するだけにしましょう」
「そうですか、感謝します」
ーー
「それで?ハスミ、乙骨憂太は?」
「ツルギ、どうやら乙骨さんは風紀委員会からかなり恨まれているようで特にあの変な服を来ている人が頑なに譲ってくださりませんでした」
「そうか、ゲヘナとの外交関係にヒビが入るのは避けたい。仕方ないということか……」
ーー
その後乙骨憂太は矯正局で重要特別監視対象と指定され、地下にある牢屋へと入れられた。後日、詳しい取り調べが行われるようだ
結構厳しめな展開になってしまいましたね
まあ、頑張れよ乙骨くん