平和で楽しい時間、そんなものは長く続かない
誰かの怒り、憎しみ、恨み、恐怖、そしてそれらの負の感情はやがて呪となる
何が正しい選択なのか、何が間違いだったのか。それに気づくことができなかった。ダメだ
とうしてだ。ダメだ
僕のせいだ、僕が里香に、里香ちゃんを、里香は……
ただひたすらに過去の自分が憎い、何もできない今の自分が憎い
──僕はもう何もしたくない──
「おい、時間だ移動するぞ……」
「……。」
ーー
「担当のカンナだ、座れ」
「まず罪状に着いてだが……ゲヘナ学園での暴力事件、テロ行為を裏で指揮していた。これは事実か?」
「僕はもう何もしたくありません」
「答えになっていないぞ。事実なのか、事実でないのか」
「わかりません。僕がやったのか、誰がやったのか、僕のせいでこうなったのか、誰のせいでこうなったのか」
「……質問を変えよう、多数の風紀委員会から奇妙な化け物を見たという証言があった。これは事実か?」
(まだ里香の存在を知られていないなら隠すのが得策)
「僕は知りません、見間違いだと思います。第1僕みたいなひ弱な人間がそんな力を持ってるわけないじゃないですか」
「わかった。次だ、数週間前ゲヘナでとある定食屋が美食研究会によって爆破されたらしい。その時美食研究会と一緒にいるのを見たという証言があったがこれは?」
(初めてゲヘナに行ったときのことか)
「確かに僕はその日定食屋で食事をしていました。でも爆破したのは僕じゃありません、僕はフウカさんみたいに誘拐されただけです」
「なるほど。次だ、数日前ゲヘナで便利屋68というゲヘナの違法な機密組織と一緒にいたらしいな。その後近くの廃船庫を爆破、これは?」
「それも誤解です。僕は彼女らから話があると呼ばれ、廃船庫に行ったところ風紀委員会からの襲撃にあいました。爆破も風紀委員会だと思います」
「その辺りの真実は詳しく分からないな、なんせゲヘナだ。そんなことは日常的なことのはず、それでもお前は指名手配されていた。罪は確証が取れないため多少の免除をする」
「最後に、どうやってあのゲヘナで最強と名高い次期風紀委員長候補の空崎ヒナを倒した?」
「……。」
「……!答えろ」
「……。」
「その空崎さんが銃を逆さに持っていて、自滅したと言ったら信じますか?」
「……信じられん」
(……。)
「僕には周りの人を不幸にする力があります。きっとそれによる影響でしょう、僕もこの力についてはよくわかっていません。」
「そうか、以上だ」
ーー
──取り調べ記録──
名前 乙骨憂太
学年 1年
所属 トリニティ総合学園
罪状 ゲヘナ学園での暴力事件、テロ行為を指示した疑い
(ゲヘナ学園はもともと治安が悪いため詳細は不明)
複数生徒への被害
(当人は周りの人を不幸にする力と言っていたが、トリニティ総合学園ではそれらしき行動が見られていない。力の発動条件を知る必要がある)
処遇 ゲヘナ学園でトップクラスの強さを保持する空崎ヒナをほぼ無傷で制圧、D.U.地区にて鎮圧に向ったFOX小隊の1人を一瞬で制圧。あまりの強さと危険性を持つため『重要特別監視対象』として再度地下牢で監視を行う
なお当人の精神状態を保つため監視は午前のみとする。
看守は故意に干渉してはいけない。
看守は当人に対しどんな事があろうとも手を出してはいけない。
ーー
どうしてこうなったのだろうか、どこで間違ってしまったのか
(僕に居場所なんて最初からなかったんだ、たくさんの人を不幸にする僕が幸せになっていいはずがなかったんだ)
悲しみよりも憎しみよりも、僕は何よりもどうしようもない孤独感と絶望感におそわれていた
(このまま消えてしまいたい。そうだ、僕がいるからみんなが不幸になる。僕はこのまま死んでしまえばいいんだ、死にたい、死にたい、消えたい、消えたい)
憂太にはもはや声が届かなかった。ただ自分がこの世界から消えることを考えていた
「午前の監視が終わった。くれぐれも脱獄など考えないように」
そう言うと監視役の人は立ち去っていった
(……。)
「あら、あなたはあの時の協力を拒んだ生徒さんですね」
向かいに囚われている人が話しかけてきた。あの狐の面は災厄の狐と呼ばれていたあの生徒のもので間違いないだろう
「結局どちらも捕まってしまいましたね。それにあそこまで厳重に監視までされるなんて、協力すれば本当に逃げ切れたかもしれませんわね」
「……僕は誰かの為にはなれません、一緒にいる人を不幸にする。それが僕です」
「随分と悲しいことを言うではありませんか、そこまで自分を拒絶するほどのものですか?」
次に災厄の狐の隣に囚われている怪盗のような格好をした生徒が話しかけてきた
「僕はこのまま、誰にも迷惑をかけずに消えたいんですっ!」
「もう、誰にも、迷惑をかけたくないんです……」
「……。」
それを聞いて喋るものはいなかった。ただ静まり返った地下牢に僕の声が反響する
「でも、」
災厄の狐が口を開く
「1人では寂しくないですか?」
「……っ!」
このまま一人で消えてしまうつもりだった。もう誰にも会わないつもりだった。それでも、短い時間の幸せ、ヒフミさんやアズサさん、聖園の先輩、会いたい。もう一度みんなで笑いたい、僕にそんな資格がなかったとしても、やっぱり一人は寂しい
狐の面を被った生徒は続ける
「確かに消えてしまいたいと思えば簡単に出来ますが、貴方にしか出来ないこともあるのではないですか?もし力があるなら、それを人助けには使えないのですか?」
「僕、は……」
考えもしなかった。人を不幸にする力──いや、僕の力で人を助けるなんて、里香が何を望んでるか分からない、何が理由で僕が里香が呪われたのかは分からない。それでもきっと人を助けること、それに里香は喜んでくれるはずだ。僕にしか出来ないこと
「僕にしかできないこと」
「僕は、僕は……里香にかかった呪を解きます!」
「そうですか、それがあなたがやりたいこと、やらなくてはならないこと、貴方にしかできない事ですか。わたくしとしては里香という方についてよく知りませんが目的を持つのはいいことですわ」
「ふん、災厄の狐が似つかないことを言うものだな慈悲を感じたか?」
「いえ、消えたいと言うのでそれはあまりにも勿体ないと思っただけですわ」
「興味が湧いた、話を聞かせてくれよ」
更に近くに囚われていた筋肉質のすごい人が話に入ってきた
「なんで呪われてるかも気になりますしね」
ここでなら打ち明けられる気がする。この人達になら言える気がする
「僕について話しましょう。その代わり、皆さんの話も聞かせてくださいね」
少し冗談っぽく付け加えて伝えた
「面白い、せっかく退屈なんだしそれぞれの境遇でも話し合おうか」
こうして4人の囚人同士の語り合いが始まった
ーー
「そこで僕は里香ちゃんに婚約指輪を渡して結婚をやくそくしたんだ」
「な、なんですかこれはっ///」
「純愛だな、これは」
「あたしの予想とだいぶ懸け離れたぶっとび方してるな」
「──そこで里香ちゃんとは死に別れたんだ」
「重いですわ」
「なんと重い」
「重すぎる」
終始反応は色々だったが、なんだがみんな僕を気遣ってくれていた
「最後に1つ、狐坂さん、清澄さん、栗浜さん、僕の力は里香です。僕がピンチに陥った時、呪になっても僕のそばにいてくれる里香が助けてくれるんです」
「そういうことでしたか」
「二人の愛の絆ということですね」
「どんな事があろうとも変わらぬ愛、
いいでしょう!」
その後は捕まった経緯について話したり、それぞれが起こした悪事を話しあった
(決意は固まった。どれだけ先になろうとも僕は里香の呪を絶対に解いてみせる)
ーー
今はただひたすらにこの場所の居心地がよく、面会もすべて断っている。あれからも3人とは他愛のない話しで盛り上がっている
──とある日
「ほむ、ここが地下牢でしたか。警備も貧弱になっていたので簡単に来ることができましたね」
「この方ですか?」
「なるほど、これがアケミが言っていた脱獄策か」
「待っていました!」
「でも鍵は看守の人が……」
そう呟いていると一斉に扉が開く、それと同時に警報システムが作動する
「うわっ!」
「それでは、せっかく脱獄させたのですから上手く逃げて下さいね」
そう言うとその生徒は去っていった。
「それでは慈愛の怪盗として次の目的を果たしにいきます」
「やっとあのヘルメット組織に復讐ができる」
「2人とも、またどこかで合いましょうね」
「憂太さんも気をつけて、それでは」
アキラさんとアケミさんはそれぞれの目的に向って行った
「わたくし達も行きましょうか」
「また破壊活動ですか?」
「そうですね……手始めに連邦生徒会へ復讐でもしに行きましょうか」
「僕も行き場は決まっていないのでワカモさんと一緒に行動させてもらいます」
「いろいろと準備があるのでまずは隠れ家に向かいましょう」
里香の呪いを解く方法がわかるまでは僕はワカモさんと共に行動をするようにした
「……本来なら今日で2年生か」
次回からいよいよ先生が動き出します
乙骨くんは監視対象なので七囚人は七囚人のままでいかせてもらいます