家を出てから数分、歩き続けているがなかなか住宅街から抜け出せない。ここにあるのはどれも高級住宅といった美しい外観の家だった
「すごいなぁ……」
本当に夢なのではないだろうかと思える程の景色に、思わず声が漏れ出した
そんな住宅街も終わりが見えてきて大通りにでる
「こ、コレが学校!?」
目の前に現れた城とも呼べる程大きな校舎は、見ているだけで取り込まれそうな程とてつもない存在感を放っていた
あまりの驚きで圧倒されていると後ろから声をかけられた
「貴方は……この学校の新入生ですか?見たところ……男子生徒のようですが」
「あっ、はい!ここの生徒……だと……思います」
声を掛けてきたのは恐らくこの学校の先輩だろう。黒くて大きな翼に頭の上に浮かんだ天使の輪っか?みたいのが目立つ
(天使のコスプレ?)
家に気を取られていたため、まったく気づかなかったが周りの人全員に同じような翼と輪っかがあった
「それで……何か僕に用が?」
恐る恐る聞いてみる
「ああ、いえ、失礼しました。私はトリニティ総合学園2年正義実現委員会の羽川ハスミと申します。キヴォトスに男子生徒は珍しいものですからつい声を掛けてしまいました」
「……そうなんですか?」
よくよく周りを見ると何処を探しても女子生徒しかいない。嫌な予感がしたので聞いてみることにした
「あの、ここって女子高だったりします……か……ね?」
するとおかしいなことを言うといった目で返事を返してくれた
「そもそもキヴォトスに男子高なんてものはありませんよ、私も学生で男の人を見るのは今日で初めてです」
「えっ?」
まさか自分以外に男子生徒を見たことがないなんて、やっぱりここは自分が知る場所とはまったく違う場所なのだろう
「えと、その……頑張りますね……」
「はい、よい学園生活を」
そう言うと羽川先輩と別れて門を潜った
ーーーー
しばらく中を見渡すと校舎の入り口が見えてきたので中に入る。男子一人というだけでもだいぶ肩身が狭いというのに、周りの生徒は皆お嬢様のような人ばかりだった
(ここが僕の席か……)
席は教室の左端後ろ、目立ちすぎないので丁度いいのかもしれない。そう思い授業の開始時間を待つ
時間になっても先生が来ないと思っていると、何やら皆タブレット端末を使って授業を受けていた
(えぇ……タブレット端末なんて持ってきてないよ……)
そんな事を思いながらカバンを探る
「あのー、よければ一緒に使いませんか?」
突然隣から声をかけられる。驚いて隣を向くと、何やら変な鳥のようなアクセサリーで飾られたタブレットを差し出してくれていた
「あ、うん、見せてもらってもいい、かな?」
「はい!もちろんです!困っている人には手を差し伸べて上げるのがいいですから」
満面の笑みでそう答えてくれた
「私は阿慈谷ヒフミです!」
「僕は憂太、乙骨憂太」
「乙骨君ですね!これからよろしくお願いしますね」
「ああ、うん、よろしく……」
微妙な返事になってしまったが阿慈谷さんが特に気にする様子はなかった
(よかったああーー)
隣の人が気遣いの出来る優しい人だと知ることができとても安心した
(ここの生活は悪くないかも……)
乙骨憂太は少しでもコレからの生活に希望を持つことができた
ーー帰宅時間
「あの……今日はタブレット見せてくれてありがと、そのー」
「はい!次は忘れないように気をつけてくださいね」
「うん、気を付けるよ」
そう返事をすると一人で帰路に着いた
(1日目、なんとか乗り切ることができたよ……それよりなんでみんな銃を持ってたんだろ……)
今日1日でそれがずっと疑問だった。あんなに優しい阿慈谷さんですら平然と銃を持ち歩いていた
(この辺はそんなに危ないところなのかな?持ってるのが普通って感じだったし)
ゴツンッ
「イテッ」
考え事をしていると目の前の何かに頭をぶつけた
「何だ?チッ、コイツ男かよ」
恐る恐る顔を上げるとそこに立っていたのは感情を一切読み取れない2体のロボットだった
「ヒッ……!」
思わず体が竦む、そして理解した。ここは危険な場所だみんなが銃を持ってるのは自分の身を守るため
「いや待てよ、キヴォトスで男子生徒は珍しい、何かに利用価値があるかもしれねぇ」
「ヘイローがない奴なんて一瞬だなw」
2体のロボはこちらに向って手を伸ばす
「ま、待ってください!それ以上は!」
必死に静止を促すがロボは聞く耳を持たない。遂にロボ達が触れると思った瞬間……
ギシッギシミシッ
辺りの空気が重々しいものへと変わる
「おい!様子が変だぞ!?」
「へ?何だ?」
ゆうだを゙を゙を゙ーー虐るなぁ゙ぁ゙!!
背後からこの世の物とは思えないような怪物が姿を現す
「里香ちゃん!」
折本里香、彼女はある日事故で亡くなった。
その後里香は成仏することなく僕に呪いとして取り憑いている。そして今のように僕に危険が訪れると顕現して僕を守ってくれる
コレが僕が転校を繰り返す理由の1つだ、どれだけ学校を移動してもイジメの標的にされ、その度に里香ちゃんが僕に危害を加えようとする人達を殺す
「死にたくない!ぐわぁーー!」
「ば、化け物!誰か、助けてくれぇ!!」
里香は出てくるや早々に2体のロボを殴り殺し、パーツがぐちゃぐちゃになるまで叩き潰した
誰もいない夕焼けの下に二人の断末魔が響いた
里香はいつものように満足すると僕の中に戻っていく
「どうして……里香ちゃん……」
正直助けてくれるのは嬉しいしありがたかった。けれど里香に人殺しなんてさせたくなかった
相手がロボだったのもあり、いつもよりかは罪悪感が少ないがコレが学校で起きてしまうと考えると恐ろしくて仕方がない
里香が誰かを傷つけた日には必ず罪悪感に飲まれる
(僕のせいで、また誰かが傷つく……里香ちゃんもきっと望んでこんな事はしてないはずなのに……)
足早に家に帰り、今後里香ちゃんを出さないようにすると心に決めた
用を済ませて布団に潜り込む
何度も帰宅時の光景が浮かんで来た。なかなか忘れられない光景だったが、それでも眠気は襲ってきて僕は眠りについた
(明日こそいい日になるといいな……)
乙骨くん、強く生きてくれ……