乙骨くんの憂鬱アーカイブ   作:イルカライフル

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最近忙しいですが、なるべく早い投稿を目指します


契約

 

 

「クックック、初めまして乙骨憂太さん」

 

 

目の前に立ち僕の名前を呼んだのは、黒いスーツ姿で頭の部分には歪んだ顔の様なものが浮かんでいる。人間とは到底言えない姿をしている存在だった

 

 

「誰?!」

 

 

「おっと、これは失礼申し遅れました。私のことは"黒服"とでも呼んでください。この呼び名が気に入っていますので」

 

 

「く、黒服さん……その、なんの用で?」

 

 

「そう謙遜ぜすに、私は他でもないあなたにようがあって来たのですから」

 

 

「僕に?」

 

 

(な、なんだろう。もしかして便利屋と間違われてる?でも僕の名前知ってたし……)

 

 

「困惑、といったところでしょうか。では、私から1つあなたが及ぼした影響と私がここまで動いた経緯をご説明しましょう」

 

 

黒服さんからは確かに先生の様な大人の風格を感じるが、僕に対してどうも下手に出ている辺りがとても不気味だ

 

 

「あなたは本来、この世界に居るべき存在ではありませんでしたよね?」

 

 

(っ!?)

 

 

「図星のようですね」

 

 

「何でそんな事を?もしかして黒服さんが僕を──」

 

 

「いえ、あいにく私が研究している無名の司祭の技術を得てもそのような事は不可能。あなたという存在がこのキヴォトスに来たのは、限りなく0に近いイレギュラーが発生したことが原因だと思われます」

 

 

「……。」

 

 

「続けます。あなたがこの世界に来たことにより、この世界のパワーバランスは完全に崩壊しました。正義となり生徒を導こうとする者の側、そしてそれの対することになる我々ゲマトリアのような己の探求心を糧に動く存在、預言者であるデカグラマトンなどを含む側。あなたが先生の為に力を使う事によって、この2つのパワーバランスは生徒を導く者が存在する側に大きく偏りました」

 

 

「僕のせいで?」

 

 

「そうとも言い切れません。実際にこの世界はパワーバランスが崩れても消滅することはありませんでした。それは何故か」

 

 

「我々ゲマトリアのメンバーと所在がわかるデカグラマトンを被験対象として調べ上げました。……クックック、結果として分かったことをお伝えしましょう。我々のような生徒を導く者と対する関係にある側、そのすべてのステータス、及び潜在能力が急激に大幅上昇をし、この世界のバランスを繋ぎ止めたのです!!」

 

 

「つ、つまり?」

 

 

「失礼。つまりは2つのパワーバランスはあなたが来たことによりできた差を埋めるため、我々に強化を与える形でこの世界のバランスを保ったのです」

 

 

「……。そんな、そんな訳ない!僕はそんなに強くないし、いつも皆んなに迷惑かけてばっかだし!!僕が……」

 

 

「絶望の感情、しかしこれもヘイローを持つキヴォトスの生徒とは異なるエネルギー。どうやら間違っていなかったようです」

 

 

「乙骨憂太さん、私と"契約"してくださりませんか?」

 

 

契約、普段聞き馴染みのない言葉。それでも契約がどれほど重たいものかは知っている。契約も一種の呪のようなものだ

 

 

「私があなたにかかった呪を解く手伝いをして差し上げましょう」

 

 

「里香の呪を解く?なにか方法があるんですか!」

 

 

「ここは重要な点になりますので、具体的に説明します。私が差し出すのは、あなたが持つ呪の力。その使い方です」

 

 

「呪の、使い方?」

 

 

「ええ、呪は使い方によっては誰かを助けるために使うことができる。こんな言葉を聞いたことはありませんか?」

 

 

「っ!本当に僕は呪を扱えるようになって、里香にかかった呪を解いてあげることができるんですか?」

 

 

「教える限りのことは伝えると約束しましょう。それとあなたが私に差し出すのは、あなたの呪について調べるため、研究に付き合っていただくこと。私の探求心がそれを求めています」

 

 

やっと見つけた手掛かり、けどこの対価は僕だけが払えばいいものではないだろう。里香にも聞く必要がある

 

 

「すみません。それはできません、ちゃんと里香ちゃんからの同意もないと」

 

 

「……困りましたね、もっとスムーズに契約をしてくださると思ったのですが、仕方ありません」

 

 

「里香さん?がその呪となってしまった方でよろしいですか?」

 

 

「はい」

 

 

「では、里香さんの出現時のデータ観測、乙骨憂太さんの呪の量──呪力量の変化の観測。研究内容をこの2つに絞ったものはどうでしょうか」

 

 

「……里香、里香の呪を解く手掛かりがやっと見つかったんだ。ちょっと見た目は怪しいけど黒服さんが"契約"を破るようには思えないんだ、だから里香にも協力してほしい」

 

 

僕が里香に呼びかけても、里香が反応することはなかった。それでも僕には伝わってきた

 

 

「……。」

 

 

「黒服さん。契約、しましょう」

 

 

黒服さんはその言葉を待ってましたと言わんばかりに、揺らいだ顔から少しの喜びの感情が感じ取れた

 

 

「では契約成立です。また後日お話しをするので、今日はお別れとしましょう。そろそろ便利屋と呼ばれる方々も帰ってくるでしょうし」

 

 

そう言うと黒服さんはすぐさま出てきた亀裂に戻っていった。その場にはさっきまであった亀裂の入った空間はなくなっていた

 

 

(これでまた一歩前進できたのかな……)

 

 




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