投稿を待って頂いている皆さんには本当に申し訳ない限りです
ゲヘナの風紀委員会との一件があった翌日、僕は先生、黒見さん、奥空さんと柴大将のお見舞いに来ていた
「おお、憂太も来てくれたのか」
「ご無事で何よりです。それにしても災難でしたね……」
大将は軽い怪我で済んだものの、柴関ラーメンは木っ端微塵に爆ぜてしまったのだ
「いやー、確かに災難だったが少し前から退去命令が出されてたんだよ。閉めどきってやつかなと思って今朝店の前を通った時にこのバッグが置いてあってな」
そう柴大将が指し示すバッグに僕らは見覚えがあった
「……こ、これって」
「見覚えがあるのかい?」
「あ、いやそのー……」
(あの後陸八魔さん達が持って帰ったんだった!)
「これは大将の店に置いてあったんだし、大将のラーメンを気に入った人達がきっと置いていってくれたんだよ」
「そ、そうです。だからこれは大将が」
「うちの店にここまでやってくれる人がいるなら続けないとだよな、よし!いっちょ屋台でも開くか」
そんな感じに話を丸め込み、柴大将はまた柴関ラーメンを続けてくれることになった
「それにしても、大将の店に退去命令なんていったい誰が?」
「いったい今のアビドスの所有権は誰が持っているんでしょうか……」
『……カイザーコーポレーションですか?』
「うーん……そんな名前だったような気がするが……悪いな、はっきりとは覚えていないな」
「……。」
カイザーコーポレーション、アビドスに来てから何度も耳にしたその名前、カイザーコーポレーションがアビドスに何らかの目的を持って自らの所有物にしようとしているようだ。でも僕にはそれが何なのか、見当がつくことはなかった
僕らは大将のもとを後にして、黒見さんと奥空さんは一緒に調べ事に、僕と先生らアビドス高校へと向かった
ーー
門の前で十六夜さんとシロコさんに会って、その後先生は十六夜さんと会話を交わしていたので、僕は先に対策委員会の部室に行くことにした
誰もいない部室で僕は考えた。自分の目的を見失わないためにも
最近はアビドス高校の件で振り回されっぱなしだったのもあり、里香にかかった呪について調べられていなかった
(カイザーが狙うもの……砂漠だし、やっぱお宝とかかな?)
何が呪を解く手掛かりになるか分からない以上、片っ端から試していくしかない
「はぁ……黒服さんに聞いたらカイザーの人達の目的とか分からないかな」
「お呼びしましたか?」
「どっ!?、いてっ!……うわっあ!」
声と共に現れたのは、黒いスーツ姿で頭の部分には歪んだ顔の様なものが浮かんでいる。人間とは到底言えない姿をしている存在
「く、黒服さん!?」
「クックック、実にいい反応ですね憂太さん」
「今の聞いてたんですか!?」
「それはもちろん。なにせ私はあなたに興味がありますからね、いつでも観察させて頂いていますよ」
「……。黒服さん、ストーカーだったんですね。プライバシーの侵害です。見損ないました……」
「クックッ……嫌われてしまいましたかね」
僕の言葉を聞いて、黒服さんはあからさまに落ち込んでいた
「まあ、冗談です。それに黒服はさんのことを嫌いにはなりませんよ、だって黒服さんのお陰で今の僕はみんなの力になれるんですから」
「その言葉、しばらく心に留めておくとしましょう。恨まないで下さいね?」
そう意味深に微笑むと黒服さんは空間に現れた亀裂の中へ去っていった
「……あ、結局カイザーの目的聞いてなかった」
そんな事をぼやいた時、部室のドアが開かれた
『お疲れ憂太』
「お疲れ様です先生」
軽くみんなと挨拶をして席につく、議題はもちろんカイザーと所有地について
「皆さん、揃いましたね。早速ですがとんでもない事実が発覚したのでお伝えします」
資料は先生の予想通りであり、それ以上に遥かに酷い状態を示していた
「ちょっとこれって……」
「はい、このアビドス地区全体、ここアビドス高校以外の土地がカイザーコーポレーションの所有地になってしまっています」
「こ、こんな重要なことに気づかずに今までいたなんて……」
「しかしこれによってカイザーコーポレーションの狙いはお金ではなく、土地であると結論ずけていいと思います」
「はい!その結論でよさそうですね」
「でもなんで土地なんですかね?」
『それなんだけどね……実はヒナと会った時にアビドスの捨てられた砂漠で、カイザーコーポレーションが何か企んでるって教えてもらったんだよ』
「アビドス砂漠で……」
「カイザーコーポレーションが……」
「先生……そういうのは早く共有しましょう。悩んだ僕の意味がなくなるじゃないですか……」
『いやーなんか極秘情報みたいでかっこよかったから、温めといてたんだよね』
「隠し事が無しなのは先生も一緒ですよー?」
『うう…、』
「ああっ、もう!それよりもやることがあるでしょ!」
『そ、そうだね!アビドス砂漠に行ってみよう』
「「はい!」」
先生によって、カイザーコーポレーションの目的となる場所があっさりと判明したので、僕たちはアビドス砂漠へと出向くことになった
ーー
「時間、空いてる?」
出発のために、軽く準備をしていると小鳥遊さんが話しかけてきた
「僕ですか?空いてますけど……」
「そっか、ならちょうどよかったよ。手短に、1つだけ聞かせてよ」
「はい、答えられる範囲でお願いします……」
珍しく小鳥遊さんからそう言われたので、僕は準備の手を止めて大人しく質問を聞いた
「乙骨憂太、君は大切な人。折本里香ちゃん、その人を失ったんだよね?」
「はい」
表情はいつも通りの穏やかさを保っているが、あきらかに声色が変わっていることに気づいた
「それでも君は今、立ち直っているように思えるんだけどさ、おじさんには君がどうやって立ち直ったのかが分からないんだよ」
「そう、ですか……立ち直れていますかね?」
「前に先生から話してくれたように、僕は大切な人を失いました。それでも里香ちゃんはどういう訳か、僕のもとに残ってくれたんです。呪われた里香ちゃんを助けてあげられるのは僕しかいない。そう考えたら立ち直らないでいる暇なんてないと思ったんですよ」
「もちろん周りへ危害が加わったりして、死んじゃいたいって、消えちゃいたいって、思ったこともあります。でもそれじゃ駄目だったんです。いつしか僕には逃げるなんて選択肢がなくなっていました」
「……。」
「でもそれは僕が立ち直ったんじゃなくて、立ち直らなくちゃいけなかったんですよ。それだけです……」
「じゃあもし、立ち直らなくてもいい状況だったとしたら?」
「……?一生自分を呪って過ごしてたんじゃないかって、今なら思いますね」
少し不安げな表情で問う小鳥遊さんに、冗談交じりにも、そう答えてみた。
小鳥遊ホシノには眩しかった。ただひたすらに、自分と似たようで違った境遇の彼がここまで立ち直って目標を定めていることが
小鳥遊ホシノには羨ましかった。そんな過去を克服しようと出来た彼が
「そっか……おじさんにも大切な人がいたんだ。先輩だったんだけどね、突然いなくなっちゃって」
「でもどんなに絶望してても、立ち直ることはできるんだよね?今のおじさんにとってはそれが唯一の希望かな……」
「小鳥遊さん……」
「ホシノでいいよ〜」
そう僕に言うホシノさんの声色はいつものゆったりとしたものに戻り、表情も普段通り穏やかだった。ならば言わなくてはならない
「ホシノさん。」
「うへー、何かな?」
「早く準備してください。置いていきますよ?」
「……う、うへー最近の子は準備が早いよ〜」
「……。」
準備をするホシノさんを見ながら感じることがある。自分と同じ境遇を味わったと知っただけでも悲しい気持ちが止まらなくなってしまった
(必死に変わろうとしたのかな……)
しかし、今の憂太がそれを知る術はなかった
そろそろアビドス編も終わりに向かいますね