乙骨くんの憂鬱アーカイブ   作:イルカライフル

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ここから戦闘ラッシュが続きます。


アビドス決戦 前編

僕は今、アビドス砂漠から戻ってきた先生と対策委員会のみんなでお互いの情報を共有しているところだ

 

どうやら、先生達が砂漠で対面したカイザーコーポレーションこそが、アビドスの借金相手だったようだ

 

 

「ら、来月の返済額がそんなことに!?」

 

 

「もう真っ当な稼ぎ方じゃ返せない、何か別の方法を……」

 

 

黒見さんがそう言うとみんなが難しい顔になる

 

 

「うへー、今は考えてもしょうがないよーそれよりもおじさんとしては、憂太くん達に何があったのかが聞きたいかなー」

 

 

話の番が回ってきたので、あった出来事を一通りみんなに話した

 

 

『それで、憂太は襲われた生徒に覚えはないんだね?』

 

 

「はい、僕がトリニティに通っていた頃はゲヘナ以外に行ったことがないので」

 

 

「私もあの制服は初めて見ました。調べてみてもなかなか情報が手に入らない状況です」

 

 

「でも何で憂太先輩が狙われてるのよ」

 

 

「うへ〜優太くんは人気者だねー……」

 

 

「言ってる場合ですか!?とにかく、トリニティには古書がたくさん保管されているので、そこで探してみれば情報が手に入ると思います……。トリニティ、一段落ついたら行ってみます」

 

 

『しばらくは憂太も警戒が必要かもね』

 

 

結局、有力な解決案は見つからないまま解散となってしまった

 

ーー

 

 

「こんにちは……黒服さん、それで話って?」

 

 

「クックック、お久しぶりですね、乙骨憂太さん。アビドス砂漠に訪れなかったということは、暁のホルスから話しは聞きましたか」

 

 

「暁のホルス?」

 

 

おっと、これはこれはと言いながら黒服さんが話しだす

 

 

「小鳥遊ホシノのことですよ、真実を伝えずに上手く誘導したということでしょうか……クック」

 

 

駄目だ、全く黒服さんの言いたいことが読めてこない

 

 

「結局何を伝えたいのか?といった顔ですね。ええ、お教えしましょう」

 

 

「簡潔に伝えますと、私は彼女に提案を持ちかけています。」

 

 

「提案?」

 

 

「そうです。小鳥遊ホシノがアビドス高校を退学して、私共の会社に所属する。そうすればアビドスが抱える借金を半分ほど肩代わりする。というものです」

 

 

「退学?、借金の肩代わり?それで、黒服さんに何の利益があるんですか」

 

 

「クックック、よい着眼点です。私は彼女がもつ神秘に興味があるのです。キヴォトスの全生徒がもつ神秘、その中でも彼女は最も高い神秘を有しています」

 

 

ホシノさんがキヴォトス最高の神秘……黒服さんは一体何を。答えてくれているようで、肝心なリターンの内容が分からない

 

 

「そうですか……話しは終わりですか?」

 

 

それだけかと、素っ気なく返してみる

 

 

「おっと、乙骨憂太さん。今の状況をおわかりいただけていますか?」

 

 

「……。」

 

 

僕は黙って続きを待つ

 

 

「アビドス対策委員会は、来月の返済を真っ当な方法では行えない、これが決め手になりました」

 

 

「……っ!」

 

 

「お分かりいただけましたか?もう小鳥遊ホシノは手に入ったも同然、きっと彼女は後輩たちのためなら平気で自己を犠牲にするでしょう」

 

 

「違う!ホシノさんは、みんなを置いていったりしない。きっと先生や対策委員会のみんなと一緒に方法を見つけるはずだ!」

 

 

大丈夫、きっとホシノさんなら……

 

 

「そうですか……その希望も薄いと思いますが」

 

 

「……本人に聞くのが一番ですね。それでは」

 

 

ホシノさんの元へ行かなければ、黒服さんに背を向けて歩き出す

 

 

「もし」

 

 

「……。」

 

 

黒服さんの呟きに足をとめる

 

 

「あなたが代わりに私共の元へ来てくれるのなら、アビドス高校の借金を全額肩代わりし、小鳥遊ホシノさんにも今後いっさい手を出さないと誓いましょう。どうです?」

 

 

僕はその提案に振り返り、再び黒服さんの元へ歩み寄る

 

 

「本当に、卑怯ですね。やっぱりみんながみんな、先生みたいに優しい大人じゃない」

 

 

黒服さんは何やら面白そうに僕の話を聞いていた

 

 

「その提案、受けましょう」

 

 

「クックック、あなたならそう言ってくれると信じていましたよ。しかし、それもホシノさんが先に来てしまえば意味がなくなる」

 

 

「僕から話しておきます」

 

 

そう言って僕は立ち去る

 

 

「ククッ、そう簡単に彼女が譲るとは思えませんがね」

 

 

ーー

 

 

「……。」

 

 

「あれーー?こんな時間に学校にいるなんて、どうしたの?」

 

 

「優太くん」

 

 

そう僕に尋ねるホシノさんの目はいつもよりも色褪せて見えた

 

 

「小鳥遊さん。提案について、確認してもいいですか」

 

 

僕は話を切り出す

 

 

「提案ー?何のこと……って言っても先生から聞いたのかな」

 

 

「……ま、いいよ。おじさんは提案を受ける気はないよ」

 

 

黒服さんから話を聞いた僕になら分かる

 

 

「うそ……」

 

 

「んー?」

 

 

ホシノさんが僕を不思議そうに見つめる

 

 

「うそ、ですよね。ホシノさん」

 

 

僕はホシノさんに尋ねた

 

 

「その確信は一体どこから湧いてくるんだか」

 

 

探るような視線をこちらに向けてくるホシノさん。何も隠すことではないか

 

 

「黒服さんから聞きました」

 

 

「黒ふっ!あいつ!!憂太に接触したのかっ……!」

 

 

少し取り乱したように荒れるホシノさんを前に少し怯むが、ホシノさんはすぐに正気を取り戻したように、いつもの穏やかな口調に戻っていた

 

 

「大丈夫だよ憂太くん、あいつは私が何とかするから」

 

 

「僕が代わりになりますよ」

 

 

僕は伝えた

 

 

「???」

 

 

「うへーごめんねーこれはおじさんだけが成立する提案だから憂太くんは──」

 

 

ホシノさんがそう言い切る前に遮る

 

 

「自己犠牲は辞めてください。なれますよ、僕なら代わりに」

 

 

「……どういうことかな?憂太くん」

 

 

(理解が追いつかないのも無理はない。ホシノさんは優しいんだ、だから僕はその優しさを守るために代わりとなる)

 

 

「そのまんまの意味です。僕も提案を受けました」

 

 

「いやーそれでもここはおじさんたちの学校だし、おじさんがやらなきゃ」

 

 

(もういいですよ、ホシノさん。あともう一押しでこの口論に勝てる)

 

 

「聞きましたよ」

 

 

「黒服のやつ、どこまで話したんだか……」

 

 

「借金の半分肩代わり、らしいですね。僕は全額肩代わりで提案を受けました」

 

 

「な……」

 

 

微かながらホシノの瞳は揺れて動いていた

 

(動揺だ、なにせ僕一人の犠牲で学校と対策委員会のみんなが救われるのだから)

 

 

「きっと対策委員会のみなさんはホシノさんがいなくなれば悲しむと思います」

 

 

「でも、僕がいなくなるだけだったら、きっとすぐに立ち直れるはずです」

 

 

「っふざけないでよ!そっちこそ自己犠牲じゃないか」

 

 

「……。」

 

 

「今憂太くんが何を言おうと代わりはさせない」

 

 

(ああ、良かった。これで確定した、ホシノさんはやっぱり黒服さんの提案を受けるつもりだった)

 

(だって……提案を受けないって選択肢が一度たりとも出てこなかったじゃないか)

 

 

「……なんとしてでも代わってもらいます」

 

 

2人の間に長い沈黙が流れる。ホシノは愛銃のEye of Horusを取りだし、優太はホシノから一瞬たりとも目を逸らさずに引金に人差し指をかける

 

 

「うへ、ほんとは憂太くんと撃ち合いなんてしたくないんだけどなー」

 

 

「やっぱり戦うしかないんですね……」

 

 

(一瞬、一瞬、目を離すな……)

 

 

「ふっ!」

 

 

先に動いたのはホシノ、一気に間合いを詰めて一撃で勝負を決めにいく

 

 

「うわっ、ぐ……」

 

 

優太は呪力を一点に集中させて、これをなんとか防ぎ切る。しかし優太は勢いのまま校舎の外へと放り出される

 

 

ガシャアアアアン!

 

 

「そう簡単にはいかないかー……」

 

 

(まずい!次が来る)

 

ホシノは窓から飛び降り、校舎の外へと投げ出された憂太に追撃を仕掛ける

 

それに反応するように優太はその場から飛び退き、追撃を避ける

 

(……反撃の余裕がない!)

 

 

「なかなかやるねえ、おじさん感心しちゃったよ」

 

 

「こっちとしては手加減して欲しいくらいですがねっ!」

 

 

そう言い放ちながらホシノに向かって憂太が愛銃のハンドガンを撃つ、しかし銃弾は一発たりともホシノさんには当たらず、すべて銃身に打ち払われてしまった

 

(いくらなんでも強すぎでしょ!)

 

今度は一息つく暇もなく、ホシノが憂太に蹴りをいれる

 

 

「ぐあっ!は……」

 

 

(意識が、飛びそう、だ)

 

 

あまりにも屋外戦は不利だ。そう感じた優太は校舎の中に逃げ込む

 

ーー

 

 

「あれ、終わりでいいかな?」

 

 

呑気に言ってみたが、そんなはずはなかった

 

 

ダァン!ダァン!

 

 

「痛っ、と。成る程、屋内から攻撃か。確かに広い方がおじさん的には戦いやすいかな」

 

 

一方的に撃たれるわけにはいかないので、仕方なくホシノは憂太がいた教室へ向かう

 

(この銃弾、やけに痛いなー)

 

 

「っと、見つけた!」

 

 

不意打ちだったはずが、憂太くんは銃を構えずに階段を駆け上がっていった

 

 

「距離をとるつもりか、確かに向こうの方が射程が長い」

 

 

考えをまとめ、階段を登るが足音は一向に止まることなく上に向かっている

 

 

ドゴッ

 

 

屋上の扉を蹴破るとそこには、息切れした憂太くんの姿があった

 

 

「速かったですね、はあ、はあ、」

 

 

「せっかく屋内に逃げ込んだのに、なんでわざわざ屋上に来たのさ」

 

 

(だいぶ消耗してる。ここらで終わりかな)

 

 

「ホシノさんを止めるため、です」

 

 

違和感を感じた。憂太くんの目は覚悟が決まっていた

 

何をするつもりか、そんな事を考える暇もなく憂太くんが動き出した。ただこちらに向かって走るだけ

 

(う、うへぇ!?)

 

それだけでも突然の捨て身タックルに十分戸惑い、撃つのが遅れた

 

 

「あがっ」

 

 

次の瞬間には、ホシノは憂太に吹き飛ばされていた

 

憂太はその場から飛び退く

 

(まさか……!)

 

上空には無数のドローン、シロコちゃんが攻撃用に普段使うものだ

 

 

「やるじゃん……」

 

 

ドゴガアアアァ!!

 

 

ーー

 

屋内で戦ったとしても、勝てるビジョンは見えない。ならば一発逆転に懸けるしかない

 

シロコさんの使うドローンを操作機と呪力操作のみで死角に用意する

 

 

「ホシノさんを止めるため、です」

 

 

(正直、ここは賭けにでるしかない。ホシノさんが躊躇してくれることに)

 

ドガッ

 

無事にホシノさんにタックルをきめて、体勢を崩すことができた

 

 

「あとは終いだ」

 

 

僕は動かせるだけのドローンをホシノさんの元へ向かわせて、一斉に攻撃を指示した

 

 

ドゴガアアアァ!!

 

 

見事に命中し、激しい攻撃の嵐がホシノさんに降り注いだ

 

 

「僕の勝ちです。代わりは任せてください」

 

 

言い残して立ち去ろうとする。が、

 

 

バキバキッ!、ドガッ!、バコオォン!!

 

 

「そんな……!そんな、そんな」

 

 

ダヒュンッ

 

 

ホシノの攻撃は憂太の頭に命中する

 

 

「あ……あぁ、」

 

 

唖然としていた。だんだんと意識が遠のく

 

 

「駄目、だ……」

 

 

憂太は完全に意識を失った

 

 

ーー

 

 

「うへー流石にヒヤヒヤしたよー」

 

 

一人で呟きながら左手に持つ盾を見つめる

 

ドローンの攻撃が来るギリギリのところで、ホシノは盾を展開することに成功していたのだ

 

 

「ユメ先輩、私は正しかったのかな……」

 

 

当然帰ってくることなどない質問を投げかける

 

 

ホシノは倒れた憂太に掛け布団と手紙を添えて、アビドス高校を後にした。いつもよりも暗く深い夜

 

 

「シロコちゃん、ノノミちゃん、アヤネちゃん、セリカちゃん、先生、憂太くん。……元気でね」

 

 




次回は中編になります。

0の初期憂太くんじゃ手加減したホシノにすら勝てません
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