乙骨くんの憂鬱アーカイブ   作:イルカライフル

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騒がしき日常と補習

 

「それで、補習授業部って何ですか?」

 

 

僕は先生に率直な疑問を投げかけた。

 

 

『その名の通り、成績が振るわなかった生徒たちに私が勉強を教えるんだよ』

 

 

「その、僕は停学していたので分かりますが、ヒフミさんもですか?」

 

 

『それはヒフミ本人から聞こうか』

 

 

そうして僕と先生はヒフミさんに向き直った

 

 

「えっと、そのですね。こうなったのにはやむを得ない事情がありまして……」

 

 

「ペロロ様のゲリラ公演に参加するため、テストをサボってしまって……それで」

 

 

必死に弁明するヒフミさんに、僕は冷たい目線を送っておくことにした。きっと先生も同じようにしていると思う。

 

 

「そ、そんな冷たい目で見ないでください……!ちゃんと日程は確認していた筈なんですっ。何かの間違いと言いますが、手違いと言いますか……。」

 

 

「あうぅ、ご、ごめんなさい……。言いづらかったんですが憂太くんも一緒なので心強いです」

 

 

「先生?テストをやむを得ず受けられなかった僕が、同じ待遇を受けるのは違和感があると思うんですけど……」

 

 

『憂太はまあ色々あったし、私の補助って考えてくれればいいと思うよ』

 

 

「それなんですけど。私も先生の補助をナギサ様から任されてまして、補習授業部の部長に任命されました」

 

 

「えっ……」

 

 

『部長だったんだ……!?』

 

 

僕はヒフミさんの言葉を聞いて、自分の役割がまた一つ減った気がした。

 

 

(本当に何で僕、補習授業部に入れられてるの?!)

 

 

「憂太くん、こうなってしまったからには仕方がありません。落第を免れるためにもテストでいい点を取りましょう!」

 

 

「ヒフミさん……なんか楽しみにしてないですか?」

 

 

「はい!状況が状況ですが、憂太くんと一緒に授業ができることに変わりはないので!」

 

 

ヒフミさんもこう言っているし、僕自身も補習授業部で授業を受けるのが嫌な訳では無い。

 

 

『憂太は勉強得意な方?』

 

 

「はい、一応学年では上位の方でした。落第点さえ回避すればいいんでしたら、かなり簡単に取れると思います」

 

 

『心強いね』

 

 

僕はここでふと感じたことを尋ねた

 

 

「そういえば、ヒフミさん。補習授業部と言うくらいですし、他にも何人かいるんですか?」

 

 

「はい、私と憂太くん含めて補習授業部は5人です。今から他のメンバーも探しにいきましょう!」

 

 

ヒフミさんは名簿を確認しながら歩き始め、先生もそれに続く。

 

 

「聖園先輩、ありがとうございました。僕も行ってきます」

 

 

僕は一礼した後、背を向けると聖園先輩に呼び止められる。

 

 

「あのさ、エデン条……。やっぱり大丈夫。じゃあね☆」

 

 

聖園先輩は言いかけて止めると、手を振って行ってしまった。

 

 

(エデン条約、内容は軽く知ってるけど詳しくはわからないな……今度図書室に行って調べてみよう)

 

 

(聖園先輩が何を言いかけたのかは気になるけど、今は先生たちと補習授業部のメンバーを探しに行こう)

 

 

ーーー

 

 

2人に付いて行き辿り着いたのは、正義実現委員会の教室だった。

 

 

「正義実現委員会って抜け目なく優秀ってイメージなんですけど、ここに補習授業部の生徒がいるんですか?」

 

 

「多分どなたかいらっしゃいますか?ここのはずなんですが、えっと、失礼します……どなたかいらっしゃいますか?」

 

 

ヒフミさんが声をかけるとピンク色のツインテールで、正義実現委員会の制服を身に纏った生徒が出て来た

 

 

「……正義実現委員会に何の用?」

 

 

「え、えっと……探してる方がいまして、ここに閉じ込められてるって聞いて……」

 

 

「え……それってもしかして……」

 

 

その生徒は心当たりがあったのか少し戸惑った様子を見せた

 

 

「こんにちは、もしかして、私のことをお願いしました?」

 

 

そう言って現れたのは、何故か校内で水着を着用している生徒だった。

 

 

「「!?」」

 

 

それを見た皆は驚きと困惑の表情を浮かべていた

 

 

(自主的……?水泳中に捕まったとかかな……?)

 

 

「あんたどうやって牢屋から出てきたの!?ちゃんと鍵閉めたのに!?」

 

 

声を張り上げる先程の正義実現委員会の生徒

 

 

「いえ、開いてましたよ?それよりも、先生がいるということは……もしかして補習授業部の?」

 

 

「ま、待って!!その格好で出歩かないでよ!?ちょっとぉ!!」

 

 

「その……水泳の授業で捕まって制服がない、とかじゃないんですか?」

 

 

「そんなわけないでしょ、自主的にこの格好になって歩き回ってるの!」

 

 

(ええぇ……)

 

 

「……?何か問題でもありましたか、下江さん?」

 

 

「あるに決まってるでしょ!?何で学校の中を水着で歩き回るの!?」

 

 

その後もよく分からない会話を繰り返す2人、言い合いをしたまま牢屋の方へと戻って行ってしまった。

 

 

「い、今はちょっとハナコさんとお会いするのは難しそうなので、一旦、次のメンバーに会いに行きましょうか……」

 

 

「もう1人は……白洲アズサさん」

 

 

「……!?アズサさんですか?」

 

 

「はい。憂太くんの知り合いでしたか?」

 

 

「聖園先輩から紹介されて、その流れで仲良くなりました」

 

 

「それじゃあさっそく会いに……」

 

 

ドガアアアアッ!

 

 

その時、ヒフミさんの声を遮るように爆発音が聞こえてきた

 

 

「さっきから爆発音が度々聞こえていたけど、結構近いな……」

 

 

状況を確認するために教室を出ると、そこでは正義実現委員会の生徒達がアズサさんと交戦していた

 

 

「ヒフミさん、あれ、アズサさん……」

 

 

「ええぇ……!」

 

 

『ハスミ?』

 

 

「あれ?先生、いらしていたのですね。このような状況で申し訳ありません、すぐに鎮圧しますので少々お待ちください」

 

 

どうやら、アズサさんは一人で正義実現委員会を相手に戦い続けているようだ。

 

 

「先生?」

 

 

『いいよ憂太、行ってきな』

 

 

先生の許可を得た僕は、里香の手の部分だけを顕現し模倣した黒服さんの能力を発動する。

 

 

すると、周囲の空間が黒くドロドロと変化してあっという間に僕を飲み込んだ。

 

 

次の瞬間には僕はアズサさんの背後に現れていた。

 

 

「アズサさん久しぶりですね……」

 

 

手に持つ銃を左手で、右手では肩を抑えてそう話しかける

 

 

「その声、憂太?」

 

 

僕の登場でアズサさんは銃を降ろして、こちらに振り返った

 

 

正義実現委員会の方も恐らく先生が止めてくれたのであろう

 

 

「憂太、少し待っていてくれ、追っ手を撒ければ落ち着いて会話ができる」

 

 

「アズサさん、その……何をしたんですか?」

 

 

「それが急に敵襲を受けて、反撃の為に攻撃を仕掛けたら、さっきの正義実現委員会が現れて、逃げ切るために教材用催涙弾の弾薬庫を占領していたんだ」

 

 

「……あ、あー。それは、その、大変でしたね……」

 

 

「色々と良くない状態みたいですし、ゆっくりお茶でもしませんか?ほら、もう撃ってきてないですし……」

 

 

「いや憂太、これは恐らく私達をおびき寄せるための罠だ」

 

 

「考えすぎですよ!もし罠なら僕も協力して戦いますから、一度銃を降ろして下さい」

 

 

「憂太が罠じゃないと保証してくれるんだな、それなら安心だ、念のため私も警戒しておく」

 

 

「頼みますよー……」

 

 

ーー

 

 

再び正義実現委員会の教室に戻ると先生と羽川先輩が会話をしていた。

 

 

『あ、憂太だ』

 

 

「憂太さん、ご協力ありがとうございました」

 

 

2人は僕に気づくと、すぐに駆け寄って来た

 

 

「憂太!?やっぱり協力者だったのか?」

 

 

「大人しくしていれば味方……というか友達ですよ」

 

 

「アズサさんが次に暴れ始める前に事情を説明しておきましょう」

 

 

アズサさんのガスマスクを外してもらうと、僕は補習授業部について説明を始めた。

 

 

「……まあ要するに、テストでいい点を取れるようになればいいんですよ」

 

 

「なるほど、そういった訓練ということだな。任せてくれ憂太」

 

 

『うん、訓練なのかな?』

 

 

「ある程度の理解は得られたでしょう……水着の人は仕方がないので、残す一人のところに移動しましょうか」

 

 

『それなんだけど、憂太が戻ってくるまでの間ハスミに話したら、2人を補習授業部として連れて行って大丈夫だってさ』

 

 

「ここに戻ってくる手間が失くなって良かったです」

 

 

僕は牢屋から連れて来られた水着姿の生徒とアズサさんを引き連れ、正義実現委員会の教室を後にしようとする

 

 

「ちょっと!凶悪犯2人も連れて、どこ行くつもり!?」

 

 

するとそこで突っかかってきたのは先ほどの下江と呼ばれる生徒だ

 

 

「そう言われてもですね……」

 

 

「ふ、ふん!まあでも良いザマよ!こっちはこんな凶悪犯たちと一緒にいなくて済むし、そもそも補習授業部なんて!恥ずかしい!」

 

 

そう言い張る下江さんを僕が若干引き気味で見ていると、ヒフミさんが耳打ちしてきた

 

 

「その最後の生徒さんなんですけど……」

 

 

僕はそれを聞いて思わず呆れるしかなかった。

 

 

「あははっ!良いんじゃない、悪党と変態の組み合わせ!そこに「バカ」の称号だなんて、私なら一緒にいるだけで恥辱心で死んじゃいそう!」

 

 

「その……下江さん」

 

 

「なによ!」

 

 

「落ち着いて聞いてください。最後の補習授業部のメンバーなんですけど」

 

 

「下江コハルさん。あなたです」

 

 

「え、私っ!?」

 

 

「というか赤点3回も取っておいて、よく人にバカとか言えましたね?!」

 

 

ーーー

 

こうして僕ら5人と先生の補習授業部が結成された

 

 

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