乙骨くんの憂鬱アーカイブ   作:イルカライフル

9 / 35
美食研究会の知識が足りず苦労しました


美食旅

 

 

「……。」

 

 

ドドドドド! ダダダダダ!

 

 

「結局、少し静かになったと思ったらまた銃声が聞こえてくるなんて、ここほんとにどうなってるの……」

 

 

こんなにも絶え間なく銃声が聞こえるゲヘナでも風紀委員会というのが活動していると言うが、流石に手が回りきらないのだと理解した

 

 

「うーん、普段見慣れない場所で歩き回るのって結構疲れるなあ。……!丁度いいしお昼にしよう」

 

 

そうしてなんだかんだ近くにあった定食屋に足を運んだ。いかにも定番と言った空揚げ定食を頼み、あまり広いとは言えない店舗だったため、空いていた4人席に座った。

 

(やっぱこういう普通な感じがいいんだよね)

 

僕が食べ始めるのと同じくらいのタイミングで別の客が来店してきた。見たところ3人組なので恐らくこの席に来るだろう、特に気にしたことではないがトリニティの学生なので何かといちゃもんつけられないといいんだけど

 

 

「空揚げ定食3つでお願いしますわ。」

 

 

そう一人が伝えると相席失礼しますと言いながら隣へ腰を下ろした

 

(特に気にすることなく会話をしてくれている。食べ物の話が多いな、美食?)

 

 

そしてその3人組も定食が届くと早速食べ始めるものと、何やら分析するものがいたが皆食べるスピードが早い。結局先に食べ始めた僕とほとんど同じタイミングで食べ終わってしまった。さっさと会計を済ませて観光を続けようと思ったが、相席していたうちの一人に声をかけられた

 

 

「すみません、少しよろしいでしょうか?」

 

 

「は、はい!?」

 

 

いきなりのことに少し驚きながら聞くことにした

 

 

「さっき、同じ空揚げ定食を食べていましたよね。その感想をお聞きしたいのですが」

 

 

思ってもみない質問だった。普通食べたものの感想をましてや他人に聞かれることなどないからだ

 

 

「感想、ですか?うーん……自分は定番の定食って感じがして定食ならではの懐かしい味わいを楽しめたのでとても満足しました」

 

 

「なるほど……やはり普通でしたか、リスペクトを感じる言い方ですが懐かしいの味わいというのも少し味が物足りないを言い換えたようなものでしょう。やはり私の美食に対する感覚は間違っていなかったようですね」

 

 

乙骨憂太には理解出来なかった。これから何が起こるのか、彼女たちが何者なのか

 

 

「あの、そこまでは言って──ドォオオオッン!」

 

 

言いかけたとたん激しい爆音とともに店が倒壊した。僕はとっさに机の下に隠れたため、下敷きになる事態はなんとか回避することができた。

 

 

「えぇぇ……」

 

 

(これも僕が関わったせい?)

 

机をどけて体を起こそうとすると自分に手が差し伸べられていることに気づく

 

 

「あの?」

 

 

「あなたの美食に対する洞察力見事でした。よければゲヘナの名所を紹介して差し上げますよ、トリニティの生徒さん」

 

 

僕は差し伸べられた手を取り一言伝えた

 

 

「すみません。お断りさせてくだい」

 

 

(だって絶対にやばい趣味してるじゃん!トリニティの生徒がゲヘナを嫌う理由がわかる気がする……)

 

 

「それは残念です。っと言いたいところなんですが、そうもいかなくなってしまいましたね」

 

 

「……?」

 

 

「あちらは風紀委員会の方々です。今の騒ぎを聞きつけて来たようですね」

 

 

頭が真っ白になる

 

 

「う、嘘でしょぉぉおおお!?」

 

 

ーー

 

 

こうして僕は今銃弾ど爆薬が飛び交うカーチェイスに巻き込まれている

 

 

「お、お願いですから逃げ切って下さいねっ!!」

 

 

「はい、ゲヘナの名所を紹介すると約束しましたからね。それにこういうのは何度も経験しているのでそう珍しくないですよ」

 

「運転は任せて〜!」

 

「今回はあの次期風紀委員長候補が来てないし余裕だね!」

 

 

そんな言葉を聞いた乙骨の目に入るのは今にでもパンクしそうなタイヤと割れた窓ガラス

 

(これ余裕要素どこおおぉ!?)

 

 

ーー

 

 

「ハアーーっ。な、なんとかなった」

 

 

「では名所を巡りに行きましょう」

 

「私さっきのでまたお腹すいちゃったよぉ」

 

「たしかにさっきのだけじゃまだ物足りてなーい」

 

 

あまりの切り替えの速さに呆気にとられるが、どうやら僕を名所巡りに連れて行ってくれるようだが一人じゃないとどうにも落ち着かない

 

 

「そのー、他人といると気が休まらなくて……」

 

 

「あら、失礼。まだ自己紹介をされていませんでしたね」

 

 

(……?)

 

 

「私は美食研究会所属の黒舘ハルナと申します。以後お見知り置きを」

 

 

「同じく美食研究会の鰐渕アカリ、よろしくね〜」

 

 

「私は獅子堂イズミ!特技は食べることかな!」

 

 

自己紹介をすることで知人になるというあまりの荒業に乙骨憂太は絶句した

 

(もう、なんなのこの人達……)

 

しかし特に行き先を決めていなかったため、名所巡りというのは大変助かる。

 

(雰囲気的にも断りにくいしここは一緒に行くしかないのかな)

 

乙骨憂太は渋々とそう決断をだした。大丈夫だただ名所を見て周るだけ、危ないことはおこらない

 

 

「トリニティ総合学園1年の乙骨憂太です。よろしくお願いします」

 

 

「はい、憂太さんでは早速1つ目の名所に行きましょう」

 

 

そう促され再び車に乗った。しばらく車からの景色を楽しんでいたが、車が止まった先を見て憂太はこの名所めぐりのすべてを悟ってしまった

 

 

「あの、ここって?」

 

 

「ゲヘナの大食いチャレンジで有名な店だよ!新メニューが出たから行きたかったんだよねー」

 

 

「ここは私が知る中でも、量と質どちらも劣ることなく食としての美を生みだしている。間違いなく名所の一つです」

 

 

誤算だった。いや、最初から気づくべきだったのだろう。この人達は美食研究会であり、おそらく黒舘さんが言う名所は飲食店……つまりゲヘナの観光地や絶景などの名所巡りではなく、食べ物巡りなのだ

 

来てしまったからにはしょうがないと憂太は今日一日は食べ巡りを楽しむことにした

 

 

ーー

 

 

「アカリさん大食い新メニュー最速記録です!」

 

 

「ふふっ、もう1つお願いしま〜す」

 

 

「ラーメンにオレンジジュースをいれて、焼肉のタレとチョコレートを混ぜたらすごく美味しそう!」

 

 

「……。さすが美食?研究会ですね黒舘さん」

 

 

「私達美食研究会はあくまで同好会のようなものなので、それぞれが追い求める美食のために共に行動しているのですわ」

 

 

個性的で独特な人達だけどこうして話しながら食べるのも悪くないかもな。黒舘さんが僕を誘ってくれたのも皆で食べると普段よりも美味しく感じるからなのかな

 

 

ーー

 

 

その後も何件かを周り、お気に入りのメニューや美食について語ってくれた。本来の目的とはそれた形になってしまったけど、ゲヘナのあちこちを車から眺める事が出来たしこれでよかったとしよう

 

 

「今日はありがとうございました!」

 

 

「こちらこそ、また美食の名所を探しておきますね」

 

「また一緒に食べにいこうねー」

 

「じゃあねー!」

 

 

最後は橋まで送ってもらった。ゲヘナの人はいろいろおかしいけど楽しい人と出会えた

 

 

「ゲヘナの人達、聞いてたよりもずっといい人達だったな」

 

 

最初の定食屋が爆破された記憶に憂太はそっと蓋をしておいた

 

 




そろそろ本編が見えてくるはず、後3から4くらいかな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。