末永くよろしくお願いします。
男は今日も朝5時に起床し、足早に準備を済ませ出勤の準備を整えていた。
「はぁ...今日も仕事かぁ、帰れないんだろうなぁ。」
「週に6日働いて1日の休みはあってもさ、たった1日で体が休まるわけないだろ...」
生まれながらに家族のいない彼は頼れる親戚も家族もいない、
ましてや友人など学校にもろくに通えていなかった彼には当然ながらいない。
また、里親はいたが中学の途中で里親登録を解除されたため、中学は1年までしか行けていない。
その後は施設に戻され、施設の従業員からも白い目で見られながら生きてきた。
そのため基本的に自分以外の人間が嫌いだ。
「毎日毎日働いて貰えるのは今月を生きていくのに最低限必要な額のみ...か
今月の健康診断も結果を提出してもA判定に書き換えられて体調さえ無事なら出勤させられるから無駄なんだよなぁ。」
そんな彼を今日まで生かしてきたものがある。
それは、アニメだった
といっても様々なアニメを視聴しているわけではなく、オーバーロードというたった1つのアニメに夢中だった。
物語の始まり方や、鈴木悟という主人公への親近感、そしてなにより仲間と築き上げてきたもの、仲間が作った子供ともいえるNPC達と転生してしまうという設定が大好きだった。
仲間、それは苦楽を共にし、笑いあい、時には喧嘩しながらもここぞという所で助け合える存在...
人間嫌いではあったが、彼は仲間という存在に対して強い憧れを持っていた。
「今日は昨日部長に押し付けられた資料を整理しないといけないんだっけ?、
.........いや、もうどうでもいいか。今日ぐらいサボってもいいよな。」
先日提出した健康診断にはこう記載されていた.......肺がんステージ4.......余命3ヶ月。
彼は普段着に着替え、自宅を出て最初に目に留まった廃工場へと向かった。
「ここ昔からあるけどまだ取り壊されてなかったのか、でも人も来なさそうだし丁度いいか、」
廃工場の最上階まで登り、格子にもたれかかり彼は今までの自分の人生を振り返った。
「不幸自慢するわけではないけど俺の人生ってかなりクソだったよな、友人どころか家族もいないしな、
.......仲間.......か。」
「俺の人生にもDMMOが、ユグドラシルがあれば少しは変わったのかな...
自分のなりたい種族でなりたい職業で、冒険して仲間が出来てギルドなんか作って自分の子供とも呼べるNPCなんかも作成したりできるわけか...........最高だよな」
「それに、チャンスすらなかったとはいえ息子に活躍の機会を与えてやれなかったのは申し訳なかったな、もし次があったならもっと積極的になってみるか?......って今から死のうとしてるのに何考えてんだか、」
男は人生に数少ない未練と後悔を残して屋上から身を投げた..................