「これが……領域……。」
エレガンジェネラルの息が乱れながらも、静かに聞こえた。
スターリープライドの領域がそうだったように、彼女にも、他のウマ娘たちにもこの剣闘士たちは見えているのだろう。
視界の中に、規律を持った隊列が浮かび上がる。
鎧に身を包んだ剣闘士たちが、無言で整列し、共に進軍する姿。
それは、もはや幻ではなく、私の戦いの象徴となっていた。
「でも、ストーリア、あなたには負けない!」
エレガンジェネラルの声が響く。
私は、ちらりと横目で彼女を見た。
彼女の瞳には、私と同じ決意が宿っていた。
彼女の呼吸は荒い。
それでも、彼女は前を向いていた。
「第4コーナーにさしかかり、エレガンジェネラルが位置を上げてきた!ストーリアと並び、最終直線に入ります!」
実況の声と、スタンドからの歓声が重なる。
エレガンジェネラルも、速度を上げ迫ってくる。
だが──私は、負けない。
剣闘士たちは、
その一人一人が、無言のまま槍を構え、盾を固め、私の両脇を進む。
背後から、ローマ将軍の進撃を告げる号令が響く。
「進め!」
その瞬間、全身が覚醒する。
脚は軽く、風は速く、世界が研ぎ澄まされていく。
「──っ!!」
私は、加速する。
エレガンジェネラルを引き離し、先頭へと踊り出る。
彼女の気配が遠のく。
視界の隅で、彼女の必死の形相が見えた。
しかし、私は止まらない。
観客の歓声が大きくなる。
ゴールはもうすぐそこだ。
だが、その瞬間。
前方から、矢の嵐が襲いかかってくる。
──これまでも、私は矢の幻影を見てきた。
左脚に突き刺さる幻覚は、私の走りを一瞬鈍らせたこともあった。
しかし、今の私は違う。
足の痛みでは、もう迷わない。
「痛む左脚なんて、構うものか!」
私は、叫ぶように前へ飛び出した。
剣闘士たちは盾を掲げ、矢を防ぎながら進軍する。
私はその先頭を駆け抜ける。
もう、迷いはない。
──私は、勝つ!
視界の先に、ゴールが見えた。
歓声が混ざり合い、世界が揺れる。
……その時だった。
矢の一つが、左脚を貫通した。
それは、これまでの幻覚とは違っていた。
全く異なる痛み。
鋭く、深く、何かが決定的に壊れるような感覚。
「……っ!?」
私は、思わず脚を見る。
左脚に刺さった矢。
もちろん、実際には何もない。
しかし、脚は動かない。
「そんな……」
次の瞬間、身体が傾いた。
バランスを崩し、地面が近づいてくる。
歓声が、悲鳴へと変わる。
「ストーリア!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
私は、それが誰の声なのか分からなかった。
ただ、白い光に包まれながら、私の世界は閉じていった。