執務室の机の上に広げられた地図を、光恵は鋭い眼差しで睨みつけていた。
その上には、戦線の状況、ネウロイの進軍ルート、軍のわかる限りの戦力分布が細かく記されている。
しかし、この地図はもはや「どこを守るか」を決めるためのものではなく、
「どこで時間を稼ぎ、どこから撤退するか」 を判断するためのものだった。
熱田区の陥落、中区への侵入、さらに北部への拡大――。
名古屋はもはや持ちこたえられる状況ではない。
問題は どれだけの時間を稼げるか だ。
その時、廊下の奥から駆け寄る足音が聞こえた。
扉が勢いよく開かれ、佳乃と頼子が飛び込んできた。
「来たわよ、光恵!」
佳乃の声には焦燥が滲んでいた。
頼子も険しい表情を崩さず、真剣な声で問いかける。
「何があったのですか?」
光恵は深く息を吸い、二人を見据えながら静かに口を開いた。
「名古屋の状況は壊滅的だ。すでに栄、千種、北区は突破され、名古屋城周辺にも敵が迫っている。
だが、今回のネウロイはただ蹂躙しているのではなく、意図的に住民を追い詰めている可能性がある」
佳乃が目を細める。
「何かを探してるってこと?」
「ウィッチかもしれないし、軍の中枢かもしれない。
いずれにせよ、これまでの戦術が通用しないと考えたほうがいい」
光恵は拳を握りしめた。
「ここまでの経過を見るに、ネウロイの進軍速度は計算をはるかに上回る。
住民の避難も遅れている。我々がここで無理に戦線を維持しようとすれば、
撤退のための時間すら稼げないまま、全滅する可能性が高い」
佳乃は唇を噛み締める。
「じゃあ……もう名古屋は……」
「今、最も重要なのは撤退の成功だ。
ただ逃げるのではなく、どこで時間を稼ぐかを決める必要がある」
頼子が即座に反応する。
「となると、部隊を分割する必要がありますね」
「そうだ」
光恵は頷く。
「一部の部隊が殿を務め、ネウロイをできる限り引きつける。
その間に、主力部隊と住民を撤退させる」
佳乃は腕を組み、険しい表情を浮かべた。
だが、その指先はかすかに震えていた。
——撤退のために、誰かを犠牲にする。
その現実を、彼女は痛いほど理解していた。
佳乃は拳を握りしめ、深く息を吸い込んだ。
彼女は数え切れない戦場を駆け抜けてきた。
だが、戦う仲間を守れずに失ったこともある。
そして今回は、自らがその選択をしなければならない。
「……殿の部隊は?」
その言葉は、まるで喉を切り裂くかのような苦しみを伴っていた。
光恵は静かに答えた。
「犠牲は避けられないかもしれない」
佳乃は唇を噛み締める。
——わかっている。
それでも、誰かがやらなければならない。
頼子が小さく息を吐きながら、低い声で言う。
「……残るのは、私たち、ということでしょうね」
光恵は彼女をじっと見つめる。
「もちろん、犠牲は最小限に抑えるつもりだ。私の部隊では誰も死なせたくない。
だが、今は何よりも撤退を優先しなければならない」
佳乃はしばらく沈黙した後、ゆっくりと頷いた。
「……やるしかないわね」
そして、決意を固めるように息を整え、はっきりと言い切る。
「……いいわ。私が残る」
「殿軍をやるなら、覚悟を決めるだけよ」
「待ってください!」
頼子が声を上げ、一歩前に出た。
「私がやります!あなたはこの部隊に必要な人です!」
佳乃は頼子の必死の訴えに眉を寄せ、しかし静かに首を振る。
「いいえ、頼子。あなたの方が必要よ。私はあなたのような分析力はないわ」
頼子は唇を噛み、光恵を見た。
光恵はしばらく二人を見つめ、静かに言った。
「殿軍の決定は、戦略だけでなく、隊の未来にも関わる。私の部隊では、誰一人として無駄に失うことは許されない」
「……だったら」
頼子は目を伏せ、息を整えた。
「私は残ります。佳乃中隊長は、全体を指揮してください」
佳乃は頼子の強い意思を感じ取り、ふっと息を吐いた。
「……あなた、本当に頑固ね」
頼子は何も言わず、ただ佳乃をまっすぐに見つめる。
光恵は地図に視線を落とし、短く言い放った。
「では、頼子。お前に殿を任せる」
「……了解しました」
頼子は静かに、しかし確かな決意を持って頷いた。
光恵はそんな頼子の目をまっすぐ見据え、わずかに目を細める。
「ありがとう、頼子。佳乃」
頼子は静かに頷き、すぐに切り替えて地図に目を落とした。
その瞳に迷いはない。
「では、すぐに具体的な作戦を立てましょう」
彼女の声は冷静だった。まるで、この戦いの勝算を探ること以外に何も考えていないかのように——。
光恵は赤鉛筆を手に取り、地図上に素早く線を引いた。
その視線は鋭く、戦局の全体像を冷静に見据えている。
「国道1号を基軸に、岐阜方面へ抜ける国道12号までのルートは確保しなければならない。」
光恵が地図に手を置きながら言った。
佳乃と頼子はその指先を追い、刻一刻と悪化する戦況を見つめる。
「それだけじゃない。東海道が豊橋方面で寸断されている以上、代替ルートの確保が急務になる」
光恵は続ける。
「岐阜街道、美濃路、上街道と下街道から接続する中山道まで――これらの旧街道が主要な撤退経路になる。
この撤退戦の成否は、ここをどこまで守り抜けるかにかかっている」
頼子は地図の上に視線を落とし、慎重に言葉を選んだ。
「美濃路を中心に、名古屋から一宮を経由して岐阜方面へ向かうルートですね。
現在、そこには敵の大規模な侵攻は確認されていませんが、名古屋を放棄する段階で確実に狙われます。
通行可能なうちに、できるだけ多くの避難民を退避させなければなりません」
「となると、後方支援部隊と警防団の協力が不可欠ね」
佳乃が険しい表情で地図をなぞる。
地図の上にはいくつもの撤退ルートが線で引かれているが、すべてが容易に通れる保証はない。
「……これも、戦国時代の撤退戦に通じるものがあります」
頼子がふと呟いた。
光恵と佳乃が彼女を見つめる。
「例えば、金ヶ崎の戦いです。」
頼子は地図から顔を上げ、落ち着いた口調で語り始めた。
「織田信長が追撃を受けながらも、巧みに後退し、軍の損害を最小限に抑えた戦いです。
信長は後方での殿軍をうまく配置し、撤退の際に敵の追撃を防ぎながら撤退路を確保しました。
その結果、彼自身は無事に撤退することができました」
頼子の言葉に、光恵は頷く。
「だが、今の私たちの状況は、単なる軍の撤退戦とは違う。」
光恵は険しい表情を浮かべた。
「私たちは、軍だけでなく、民間人を伴う撤退戦を遂行しなければならない。
これが加わることで、撤退速度は大幅に低下する。
撤退ルートの安全確保、混乱の防止、民間人の避難誘導――すべてが戦場の戦術と同じくらい重要になってくる」
光恵は、地図に新たな印をつける。
「もし岐阜への退避が困難になった場合、名古屋から北上して津島方面へ抜ける経路も考慮する。
ただし、渡河地点が限られているため、大規模な移動は難しい。あくまで補助ルートだ」
「……岐阜が陥落したら?」
頼子が慎重な口調で問いかける。
「その場合は、大垣を経由して関ヶ原が最終防衛線になる。」
光恵の言葉に、室内が静まり返る。
佳乃は拳を握りしめながら、地図を見つめた。
「その手前の赤坂、大垣、多治見でもできる限り時間を稼ぐ必要があるわね」
「そうだ。特に多治見は、地形を利用すればある程度持ちこたえられる。
だが、時間を稼げるとしても、決して長くはもたない」
光恵の言葉に、一瞬の沈黙が流れた。
頼子は考え込むように扇を指でなぞり、やがて静かに口を開いた。
「つまり、どこで最も粘るべきかが鍵になるわけですね」
そう言いながら、彼女は手に持った扇をすっと地図へ滑らせ、赤坂、大垣、多治見と順番になぞる。
「防衛拠点としての優先順位は、赤坂→ 大垣 → 多治見 の順です。」
彼女は扇を再び赤坂へ戻し、軽く叩いた。
「赤坂は大垣の後方に位置し、八幡へ通じる要衝です。ここを拠点とすることで、大垣の防衛に対する支援が可能になります。敵が大垣を突破しても、赤坂を防衛線とすれば、一気に戦線が崩壊するのを防ぐことができるでしょう。」
言いながら、扇は大垣へと移る。
「次に大垣。ここは後方の補給拠点として機能しますが、もしここが突破されれば、赤坂との防衛ラインが機能しなくなり、木曽三川を活かした防御が極めて困難になります。」
頼子は扇を握り直し、最後に多治見へ滑らせた。
「多治見は丘陵地帯を利用して敵の進軍を遅らせることが可能ですが、防御拠点として長期戦に耐えられる場所ではありません。ここの役割は、敵の侵攻を可能な限り遅らせ、後方の防衛陣地を整える時間を稼ぐことにあります。」
頼子の視線が地図上を滑る。
「したがって、関ヶ原での最終防衛を成立させるためには、赤坂・大垣・多治見を戦術的に連携させ、可能な限り持久戦を展開しなければなりません。」
頼子は視線を上げ、他の者たちを見渡す。
「特に赤坂が持ちこたえれば、大垣の防衛が安定し、関ヶ原での決戦準備に必要な時間を確保できます。そのためにも、ここの粘りが最も重要なのです。」
静寂が室内を満たした。
地図上に広がる防衛線を見つめながら、彼女の言葉の重みがゆっくりと場に沈んでいく。
彼女の静かな言葉が部屋の空気を締めつけるように響く。
まるで鎌倉武士のように、頼子は敵の動きを読み、戦局を見極め、冷徹に最も効果的な布陣を敷こうとしていた。
「結局、私たちは戦いながら撤退するしかないのよね……」
佳乃の声が、重く室内に響いた。
「……でも、やるしかない」
光恵は静かに頷いた。
「この撤退戦の成否に、扶桑全体の命運がかかっている。私たちは、ただ負けるわけにはいかない」
頼子は息を吐き、佳乃も小さく頷く。
「では、各部隊に指令を伝えましょう」
光恵は深く息を吸い込み、覚悟を決めた。
「名古屋撤退戦、開始する」
こうして、彼女たちの戦いが始まる――。
その時だった。
通信班の一人が慌ただしく駆け込んできた。
「戦隊長! 小牧と通信がつながりました!」
光恵はすぐに立ち上がる。
「よし、すぐ行く!」
指揮所に駆け込むと、通信班が無線機を前に必死に調整していた。
スピーカーからはノイズ混じりの音声が漏れている。
『……こちら、小牧……状況……名古屋……』
雑音の向こうで、確かに人の声が聞こえる。
「こちら各務原基地、扶桑陸軍第一七戦隊戦隊長・尾山光恵! 小牧基地、応答せよ!」
『……尾山戦隊長……! 名古屋は……壊滅……』
静まり返った指揮所に、その言葉だけが響いた。
佳乃の拳が震え、頼子が無言で唇を噛み締める。
「……やはりか」
光恵は奥歯を噛みながら、次の報告を待つ。
『……敵はすでに栄を突破……現在、北区、東区、西区方面への進出を確認……』
「小牧の状況は?」
『戦力は消耗しているが、まだ戦線は維持できる……』
「よくやってくれている」
小牧基地は、すでに撤退支援を担う重要な拠点だった。
光恵も小牧の現状は把握していたが、こうして直接通信が取れたことで、今後の戦術調整が可能になる。
「小牧基地、現在の防衛戦力は?」
『戦闘機隊、ウィッチ隊ともに半数が稼働可能。燃料と弾薬は不足しつつあるが、持ちこたえられる』
光恵は即座に決断した。
「小牧には引き続き撤退支援を続けてもらう。だが、無理な持久戦は禁物だ。敵を可能な限り引きつけつつ、戦力を温存し、必要があれば即時後退できる体制を整えておいてくれ」
『了解……!』
「さらに、戦闘機隊には偵察も兼ねた支援を要請する。敵の進軍ルートと戦力規模を報告してほしい」
『……承知……次の報告は三〇分後……』
「頼むぞ、小牧」
通信が途絶えると、光恵は指揮所を見渡した。
「小牧は、すでに撤退戦の中核を担っている。こちらもそれに合わせて動くぞ」
佳乃が深く息を吐く。
「名古屋が落ちた以上、私たちの役割は決まったわね」
頼子も静かに頷いた。
「各務原と小牧、両方を拠点に撤退戦を続けるしかありません」
光恵は手元の地図を睨みつけ、次の指示を下す。
「佳乃、全隊員を即時出撃準備をさせてブリーフィングルームに集めろ! 今すぐだ!」
光恵の鋭い声が指揮所に響き渡る。
佳乃は即座に敬礼し、躊躇なく動き出した。
「了解! すぐに集めるわ!」
指揮所の通信兵や基地の整備兵たちも、緊迫した空気を感じ取る。
光恵は彼らにも向き直り、力強く呼びかけた。
「君たちの力が必要だ! ウィッチたちが全力で戦えるよう、支援を頼みたい! 弾薬補給、機体整備、通信維持——すべてが戦場を左右する! どうか、力を貸してくれ!」
「はい、戦隊長!」
「お任せください!」
一人、また一人と敬礼し、それぞれの持ち場へ駆け出していく。
戦闘に直接出るのはウィッチたちだけだが、基地の兵士たちもまた、この戦いの重要な一部なのだ。
数分後、ブリーフィングルームには全隊員が集まっていた。
ウィッチたちは整備兵による最終チェックを終え、緊張した面持ちで光恵の言葉を待っている。
光恵は部屋の中央に立ち、視線を巡らせた。
目の前にいるのは、彼女が信頼する仲間たち——そして、死線を共に越えてきた戦友たち。
彼女は深く息を吸い、静かに、しかし力強く言葉を紡ぎ始めた。
「今から伝える情報は、ここにいる全員にとって極めて重要なものだ。名古屋が——完全に崩壊した」
その瞬間、部屋が静まり返る。
息を呑む音、誰かが僅かに椅子を引く音が響く。
「……名古屋が……?」
「崩壊……」
光恵は全員の視線を真正面から受け止め、言葉を続けた。
「熱田区、港区、中区の防衛ラインはすでに突破され、敵は市内全域に広がっている。東海軍司令部は完全に沈黙し、名古屋はもはや戦場とは言えない。ただの蹂躙の場だ」
隊員たちは言葉を失ったまま、光恵の言葉に耳を傾けている。
しかし、ただ絶望を伝えるためにこの場を設けたわけではない。
光恵は拳を握りしめ、語気を強めた。
「だが、ここで絶望する必要はない! 私たちの戦いはまだ終わっていない!」
その言葉に、一瞬の沈黙が訪れた後、隊員たちの背筋が伸びる。
「これから我々が行うのは、ただの撤退ではない!」
「この作戦は、扶桑の未来を繋ぐ戦いだ!」
「私たちの目的は、生き延び、次の反攻の礎を築くことにある!」
部屋の空気が一変する。
ただ逃げるのではなく、次の戦いのための撤退——その意義が隊員たちに浸透していく。
光恵は机上の地図を指し示しながら続けた。
「私たちの次の防衛拠点は小牧だ! 名古屋の陥落によって、小牧は戦線の最前線となる! ここを死守できなければ、岐阜への撤退ルートは完全に閉ざされる。すべての戦力が包囲され、我々は追い詰められることになる!」
隊員たちの表情が引き締まる。
「小牧を守り抜けば、次の戦いに繋げることができる! だが……」
光恵の表情が険しくなる。
「もし小牧が陥落すれば、岐阜の防衛線は崩れ、最終的には関ヶ原での決戦すら危うくなる」
隊員たちが息を呑む。
「小牧はただの通過点ではない。ここが落ちれば、扶桑全体の戦局が崩壊しかねないんだ!」
ここで、頼子が前に出て、静かに言葉を継いだ。
「今回の戦いは、我々が単に生き延びるためのものではありません。
この戦いの目的は、未来へ繋ぐための時間を稼ぐことにあります。
小牧を確保し、撤退部隊を支えれば、私たちは岐阜での新たな防衛線を築くことが可能になる。
これは、扶桑全体の戦局にとっても重要な意味を持つのです」
頼子の声は落ち着いていたが、そこには確かな信念があった。
「小牧を維持することで、ただ戦線を維持するだけでなく、今後の反攻作戦の基盤を作ることができます。
つまり、ここで踏みとどまることで、ただ逃げるだけでなく、反撃への可能性を残すことができるのです」
隊員たちの目の色が変わっていく。
「私たちの使命はただ生き延びることではない。撤退戦であろうと、勝つための戦いをしなければならないのです」
その言葉に、隊員たちは静かに頷き始める。
佳乃が前に出ると、力強く言い放った。
「つまり、これは単なる防衛戦じゃない! 私たちが小牧を守ることで、未来の戦局を左右する! ここで戦う意味は、ただ生き残ることじゃない——この戦いが、未来を決める!」
隊員たちの中に、明確な覚悟が宿っていく。
光恵は、その様子を見届け、最後に一言、強く言い放った。
「全員、準備を整えろ! これは私たちの戦いだ! 生き延びて、次の戦いへ繋ぐ!」
「「「了解!」」」
ブリーフィングルームが熱気に包まれた。
「そして、美夜! ナツ!」
「「はい!」」
光恵が二人を名指しすると、彼女たちは即座に返事をした。
美夜は緊張した面持ちで、ナツは拳を握りしめ、光恵をまっすぐに見つめる。
「君たちを戦力として扱う。だが、戦う場所は小牧ではない。岐阜だ」
美夜とナツが息を呑む。
隊員たちも静かに耳を傾けた。
「小牧が崩れた時、次の戦線は岐阜だ。
備えなければ、岐阜もまた持たずに終わる。
だから、君たちには 岐阜の防衛態勢を整え、住民の避難支援にあたってもらう」
光恵の言葉は力強く、迷いがない。
ナツは戸惑いながらも理解を示し、問いかけた。
「つまり、私たちは岐阜を“戦える街”にする役目ってことですか?」
「そうだ。私たちは時間を稼ぐが、その時間をどう使うかが重要だ。
君たちは、戦闘が始まる前に岐阜を“守れる街”に変えてほしい。
それができなければ、小牧が陥落した時点で終わる」
美夜の指先が僅かに震えた。
「……私たちで、本当に……?」
光恵は力強く頷く。
「君たちだからこそ、やれるんだ!」
ナツが息を呑み、美夜も光恵を見つめた。
「君たちは、この戦場で生き抜く覚悟を決めた立派な一人前のウィッチだ。
戦うことだけがウィッチの役目じゃない。
人々を守り、未来を作ることもまた、ウィッチの役割だ!」
その言葉が、二人の心に響いた。
美夜とナツは、お互いを見つめ合い、次の瞬間、大きく頷いた。
「……やります!」
「任せて! 光恵さん!」
光恵は満足そうに頷き、二人を力強く見つめた。
「岐阜の未来は、君たちに託した。頼んだぞ、美夜、ナツ!」
「「了解!!」」
その瞬間、隊員たちの士気がさらに高まった。
こうして、美夜とナツを含む全員が、それぞれの役割を託され、己の使命を胸に刻んだ。
その様子を見ていた美春は、一瞬、驚きに目を見開いた。
新人である美夜とナツにまで、正式な役割が与えられるとは、予想していなかった。
しかし、次の瞬間、その驚きは静かな確信へと変わる。
――頼もしい。
不安を抱えながらも、それを振り払い、自らの役割を果たそうとする二人。
その姿は、まさに戦場を生き抜く者たちのそれだった。
美春は、彼女たちの背中を見つめながら、深く息を吸い込む。
こうして、全員が己の覚悟を定め、決戦の刻へと歩みを進めていく――。
ブリーフィングルームに張り詰める静かな緊張。
作戦図が映し出されたスクリーンの前で、指揮官が力強く言葉を紡ぐ。
「この戦い、必ず生き延びる! みんな、力を貸してくれ!」
一瞬の静寂――そして、次の瞬間。
「「「「了解!!」」」」
鋭く響く返答が、部屋の空気を震わせる。
それは決意の証。戦いへと向かう者たちの覚悟が、一つになった瞬間だった。
つづく
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