美濃の魔女たち   作:多治見国繁

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第7話 絶望の決断

孝恵を営巣に収容した光恵は、執務室で佳乃たちの帰還を待っていた。

 

出撃してから、いまだに連絡がない。

 

戦闘が長引いているのか、それとも……

 

考えたくないことばかりが脳裏をよぎる。

 

もし彼女たちが撃墜され、戦場に散っていたとしたら。

 

それを知ることすらできないまま、ここでただ待ち続けるしかない自分がもどかしかった。

 

「……佳乃たちは大丈夫なのか……頼子がいる。佳乃もいる。あの二人なら……でも、万が一ということも……」

 

光恵は執務机の周りをぐるぐると歩き回り、己の不安を持て余していた。

 

突然、思い立ったように管制室へ向かう。

 

「……通信は?」

 

短く問うと、管制官は苦しげに首を横に振った。

 

「まだ、ありません……」

 

「そうか……」

 

光恵は静かに肩を落とし、拳を握りしめた。

 

「何か分かり次第、すぐに知らせてくれ」

 

管制官は黙って敬礼する。

 

光恵は執務室へ戻り、窓の外を見つめた。

 

「どうか無事で……頼むから、生きて戻ってきてくれ……」

 

佳乃。頼子。

 

そして、まだ経験の浅い美春や秋乃たち――。

 

彼女たちの命運は、今や彼女自身の手から完全に離れていた。

 

待つことしかできない。それが、何よりも辛かった。

 

遠くから、足音が聞こえた。

 

それは次第に大きくなり、焦燥に駆られたようにドアが勢いよく開いた。

 

ナツだった。

 

「来ました!帰ってきました!美春さんたち、無事です!」

 

光恵は一瞬、言葉を失った。

 

――無事?

 

夢ではないかと、思わず自分の頬を抓る。

 

「本当かい!?」

 

叫ぶように言い、光恵は執務室から飛び出した。

 

滑走路に駆けつけると、そこには疲れ果て、ボロボロになりながらも確かに帰ってきた隊員たちがいた。

 

煤と血と汗にまみれ、息も絶え絶えに倒れ込んでいる。

 

しかし、誰も欠けていない。

 

光恵は彼女たち一人一人をその大きな胸で抱きしめた。

 

「よく頑張った……! よく帰ってきてくれた……!」

 

その温もりが、彼女たちに「生きている」という実感を与えた。

 

「ありがとう……ありがとう……誰一人失うことなく帰ってきてくれたこと、それが何よりも誇らしい……」

 

震える声で光恵が言うと、佳乃が皆を代表して答えた。

 

「全員無事よ……怪我もないわ……でも、名古屋方面は……」

 

佳乃は苦々しく目を伏せる。

 

「ネウロイの群れ、それに火の海よ……」

 

光恵の表情が険しくなる。

 

「そうか……最悪の事態というわけだな……」

 

光恵は改めて佳乃と頼子の肩を叩いた。

 

「佳乃、頼子。皆を無事に連れ帰ってくれて、本当にありがとう……感謝してもしきれない」

 

その言葉に、二人はわずかに頬を染める。しかし、すぐに真剣な表情に戻った。

 

「まずは被害状況の把握だ……佳乃、頼子、報告を聞かせてくれ。疲れているところ悪いが、すぐに執務室へ来てくれ」

 

「ええ、わかったわ」

 

佳乃と頼子は静かに頷き、光恵とともに執務室へ向かう。

 

広げられた地図の前で、光恵は改めて二人の顔を見回した。

 

彼女たちの顔や服は煤と埃にまみれ、髪には血のしぶきが固まっている。

 

いかに激しい戦闘をくぐり抜けてきたのか、一目で分かるほどだった。

 

光恵は努めて明るい声を出した。

 

「まず、君たちの帰還を喜ぼう。よくぞ、全員無事に戻ってきてくれた……まずは、それが何より大事だ」

 

佳乃は真剣な表情のまま静かに頷いた。

 

「いいえ……私たちは当然のことをしたまでよ……」

 

だが、光恵は首を横に振る。

 

「いや……君たちは立派だった……本当にありがとう」

 

光恵の声は静かだが、その瞳には熱いものが宿っていた。

 

「誰かを失うなんて……私は耐えられないからね……」

 

佳乃と頼子の表情がわずかに緩む。

 

ほんの少しだけ、胸の奥にあった後悔と申し訳なさが和らぐのを感じた。

 

だが、それも束の間。

 

目の前に広がる地図を見て、彼女たちは再び厳しい現実へと引き戻される。

 

名古屋。四日市。豊橋。

 

そして、彼女たちが置き去りにしてきた戦場。

 

「……さあ、始めよう。これからどうするか、決めなければならない」

 

光恵は、目を逸らさずに地図を見つめた。

 

佳乃と頼子もまた、それに倣い、真剣な眼差しで戦況を見つめる。

 

安堵の時間は、一瞬で過ぎ去った。

 

次の戦いは、もう始まっているのだから。

 

光恵の執務室に、重苦しい沈黙が垂れ込めていた。

 

佳乃と頼子は、地図上の地名を指し示しながら、名古屋の現状を報告する。

 

「……南区、港区、熱田区。この一帯はすでにネウロイの支配下にあるわ」

 

佳乃は赤い駒を並べ、地図の広範囲を赤く塗りつぶしていく。

 

頼子もまた、冷静に情報を整理しながら説明を続けた。

 

光恵はそれを見つめながら、頭の中で状況を組み立てる。

 

――これは、絶望的な戦況だ。

 

「……それで、名古屋はどのくらいもつ?」

 

光恵の問いかけに、佳乃は一瞬言葉を詰まらせた。

 

「……おそらく、半日持てばいい方よ……現場の状況を正確に把握している者も少ないし、部隊の展開も……」

 

「そうか……」

 

光恵は目を閉じる。

 

半日。

 

――それすら、楽観的な見積もりなのだろう。

 

「もっと私たちが持ち堪えられたら……申し訳ありません……私たちには守り抜けませんでした……」

 

頼子は肩を落とす。

 

光恵は、頼子の苦しみを痛いほど理解していた。

 

欧州戦線で何度も味わった、どうにもならない敗北感。

 

手のひらからこぼれ落ちていく命を、ただ見送るしかない無力さ。

 

光恵はそっと頼子の肩を抱いた。

 

「仕方がないことなんだ……辛いことだが、私たちだけでできることには限界がある。それは、頼子だって分かっていることだろう?」

 

頼子は震える唇を噛みしめる。

 

「分かっています……それでも……」

 

頼子は、必死に涙を堪えていた。

 

「手の中から零れ落ちていく命を……散っていく将兵たちを……業火に焼かれていく民間人たちを……ただ見ていることしかできないなんて……私は大竹少尉にあんなことを言いましたが……そんなに強くはありません……」

 

彼女の声は、限界だった。

 

光恵は、そっと彼女の手を握る。

 

「頼子、あなたの苦悩は私たちみんな、分かっているわ……」

 

佳乃もまた、気丈に振る舞いながらも、祖国扶桑の惨状に心を押しつぶされそうになっていた。

 

欧州では、戦場は遠いものだった。

 

しかし、今や戦火は故郷を飲み込みつつあった。

 

「さて、みんな、状況は分かった。報告ありがとう。私からも報告がある。辛い話だが、覚悟はいいか?」

 

光恵の言葉に、佳乃は不安げに尋ねる。

 

「何が……あったの……?」

 

光恵は深く息を吸い込む。

 

「豊橋が陥ちた……」

 

――沈黙。

 

「何ですって!?どういうこと!?あそこには海軍の部隊があるでしょう!?」

 

佳乃は椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がった。

 

「浜松飛行学校の教官、牧野孝恵中尉が先ほど飛んできて、報告してきた……彼女は老津から来たそうだが……」

 

「だってそんな……豊橋は……愛知第三の都市なのよ……それに軍都……いったいどうなっているの……」

 

佳乃の声が震える。

 

「……私も驚いたよ……絶望しそうだった……だが、現実なんだ……受け入れるしかない……」

 

「そうね……それで、そのウィッチは……?」

 

「彼女は……営巣だ……豊橋に帰りたがったが、私が命令して無理に止めた……死んでほしくなかったからな……目を離すと飛んで行ってしまうかもしれないから、営巣に閉じ込めたんだ……」

 

「そう……それで、豊橋は……」

 

光恵の表情が曇る。

 

「彼女の話によれば、豊橋はすでにネウロイの巣窟と化した。市街地は瞬く間に炎上し、渥美半島は分断された。半島に取り残された住民は、船を持たない限り逃げられない。豊川も時間の問題だ……」

 

「そんな……」

 

佳乃は絶句する。

 

「わずか数時間で、愛知の第三都市が……」

 

膝の力が抜け、床にへたり込む。

 

光恵も頼子も、かける言葉が見つからなかった。

 

「……どうすればいいのよ……どうすれば……私たちはどうすればいいのよ……」

 

佳乃は呆然とつぶやく。

 

光恵は拳を握りしめた。

 

「……できることは、これ以上、ネウロイに渡さないように持久戦を展開するしかない……勝利を目指さず、釘づけにしておくくらいしか、私たちにはできない……」

 

会議室の空気が凍りついた。

 

尾山光恵少佐が静かに提案を述べた後、数秒の沈黙が流れる。

 

「……できることは、撤退戦で名古屋を放棄、戦線立て直し、これ以上、ネウロイに渡さないように持久戦を展開するしかない……勝利を目指さず、釘づけにしておくくらいしか、私たちにはできない……」

 

会議室の空気が凍りついた。

 

尾山光恵少佐が静かに提案を述べた後、数秒の沈黙が流れる。

 

そして、ゆっくりと、だが確実に、佳乃と頼子の顔が強張った。

 

「……佳乃、頼子。落ち着いて聞いてくれ。結論から言う。名古屋はもはや、機能していない」

 

光恵の低く、重い声が部屋の空気をさらに圧迫する。

 

「現状で、東海軍司令部、市役所、県庁すべてが沈黙している」

 

「……沈黙、ですか……?」

 

頼子が冷静に問い返すが、その声には微かな震えが混じっていた。

 

「そうだ。どこも応答がない。通信が完全に途絶え、状況すら掴めていない。可能性としては、敵の攻撃による壊滅、あるいはネウロイの侵入による占領だ。詳細を確かめる余裕もないし、確かめたところで何も変わらない。もう、名古屋の防衛網は崩壊したと考えるべきだ」

 

佳乃は拳を握り締め、声を絞り出した。

 

「……まるで、第二次ネウロイ大戦の初期みたいね……」

 

かつて欧州戦線での激戦を生き延びた彼女にとって、その言葉がどれほどの重みを持つものか、頼子には理解できた。

 

「同じ状況だ……避難する住民を援護しながら、名古屋から撤退し、戦線を立て直して持久戦を行うしかない」

 

光恵は地図上の名古屋を指し、次々と赤い駒を置いていく。

 

「第一防衛線は、一宮・小牧・春日井・瀬戸。名古屋を失った以上、これが最前線になる」

 

「……ですが、それだけではもたないでしょう?」

 

頼子が即座に指摘する。

 

「その通りだ。ここを突破された場合、次の防衛線は岐阜・大垣となる。だが、ここでの戦いは極めて厳しいものになる」

 

光恵は地図を睨みつけながら続ける。

 

「岐阜・大垣周辺は平野だ。防衛戦には不向きすぎる。遮蔽物が少なく、敵が容易に展開できる。ここを突破されたら、後方の補給線もすべて絶たれる。まともに防ぎきれるとは思えない」

 

「じゃあ、多治見方面は?」

 

佳乃が希望を見出すように問いかける。

 

「内津峠なら、あるいは……」

 

光恵は、多治見周辺に視線を落としながら頷く。

 

「多治見は地形的にまだ防衛戦が可能かもしれない。内津峠で敵を押しとどめることができれば、後方の戦力を立て直す時間が稼げる」

 

頼子は地図を見つめ、考え込んだ。

 

「……つまり、名古屋から徐々に後退し、一宮・小牧・春日井・瀬戸で戦線を立て直し、持久戦を展開する。可能であれば、多治見の内津峠で抵抗し、それでもダメなら最終的に岐阜・大垣へ撤退……ということですね」

 

「そういうことだ」

 

光恵は頷いた。

 

「問題は、どれだけの時間を稼げるか、だ」

 

その時だった。佳乃が、光恵の言葉を遮るように叫んだ。

 

「そんなのとても無理よ! どれだけの難民が出るかわかってるの!? 私たちだけで、どうやってあれだけの人たちを守りながら撤退できるっていうのよ!」

 

佳乃の声は怒りと焦燥に満ちていた。それも当然だった。彼女たちの任務は軍事的な防衛戦だけではない。名古屋だけでも130万、他の地域から合流してくる人々を含めたら数百万という住民の避難を支援しながら、戦線を維持しなくてはならないのだ。

 

光恵も、そんなことは百も承知だった。それでも、言わなければならない。

 

「わかってる! でもやらなくてはいけないんだ!」

 

彼女の声は、会議室に雷鳴のように響いた。

 

「私たちは軍人だ! 国民を守るのが我々の義務だろう!」

 

佳乃は、息を呑んだ。

 

光恵は、拳を握り締めたまま続ける。

 

「どんなに無謀でも、どんなに過酷でも、私たちはやらなくてはならない。軍が国を見捨ててどうする? 住民が避難できる時間を稼ぐことが、今の私たちの戦いなんだ」

 

佳乃は口を開きかけたが、言葉が出なかった。

 

彼女の脳裏には、燃え盛る名古屋の光景が焼き付いている。地獄のような炎、崩れ落ちる建物、逃げ惑う人々。

 

――私たちが戦わなければ、彼らはどうなる?

 

「……そうね」

 

佳乃は、静かに目を閉じると、深く息を吐いた。

 

「やるしかないのよね……」

 

「そうだ」

 

光恵は頷く。

 

「この戦い、決して無駄にはしない。最後まで戦い抜くぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

戦いは、これからが本番だった。

 

しかし、佳乃は気がついてしまった。そこには名古屋市民だけしか対象に含まれていないことに。

 

佳乃は、拳を握りしめたまま、地図の上を睨みつけるように見つめた。

 

名古屋の撤退戦――それはつまり、名古屋市民のための戦い。

 

「でも、光恵。それって、名古屋のみが対象なのよね?」

 

低く、押し殺した声で問いかける。

 

光恵の表情が僅かに曇る。

 

「……そうだ」

 

短く、だがはっきりと光恵は答えた。

 

その言葉が、佳乃の心を激しく揺さぶる。

 

「じゃあ……名古屋以外の人たちは? 彼らは……どうなるの?」

 

「……」

 

誰も答えなかった。

 

頼子が、眉を寄せたまま静かに目を伏せる。

 

それが答えだった。

 

「……そんなの……」

 

佳乃は髪を掴み、乱暴にかきむしる。

 

「わかってるわよ……! 私たちが全部を守れないことくらい……! でも、名古屋市民だけを助けて、それ以外の人は見捨てるなんて……そんなの、そんなのって……!」

 

言葉が詰まる。

 

「どこかで線を引かなきゃならない。すべての人を助ける余力はない」

 

光恵の声は冷静だった。しかし、それは決して冷酷なものではなく、無理にでも理性を保とうとする軍人としての矜持だった。

 

「本当なら、豊橋や岡崎、四日市の人たちも救いたい。でも、その余力はない……。私たちの戦力は限られている。補給も、弾薬も、人員も……。今、私たちにできるのは、名古屋の防衛線をできるだけ維持し、住民の避難を援護しながら小牧の防衛線まで撤退することだけ」

 

「それ以外の人は……見捨てるの?」

 

「……そうしなければ、小牧はおろか岐阜の最終防衛線すら守れなくなる」

 

光恵は静かに告げた。

 

「……クソッ……」

 

佳乃は唇を噛みしめ、机を拳で叩いた。

 

「そんなのとても割り切れないわ……!私たちは軍人よ! だけど、それ以前に人間なのよ! 見捨てるなんて、そんなこと……できるわけがない……!」

 

「それを割り切るのがどれだけ辛いか……わかってるの!? 私たちが見捨てるその人たちは、誰かの家族なのよ!? その誰かが、私たちの家族だったらどうするのよ……!」

 

佳乃の叫びが、執務室に響く。

 

誰もがその言葉を痛いほど理解していた。

 

「……尾山光恵少佐……私たちは何のために戦うのでしょうか……」

 

佳乃の声が震えていた。

 

光恵は、胸の奥が締め付けられるのを感じた。

 

「……佳乃、気持ちは痛いほどわかる……。でも、私たちは軍人であり、指揮官だ。感情に流されるわけにはいかない」

 

「感情に流される……? それが人間でしょう?」

 

「……そうだな」

 

光恵は認めるように頷いた。

 

「だからこそ、私たちの感情を利用しよう」

 

「……どういうこと?」

 

「私たちが悩むのは、それだけ犠牲を出したくないからだ。だったら、その想いを少しでも多くの命を救うために使うんだ」

 

光恵の声には、揺るぎない決意があった。

 

「見捨てるなんて、簡単には言えない。だけど、すべてを救うことはできない。なら、今ここで生き延びることを最優先に考えるしかない」

 

佳乃は、ゆっくりと目を伏せた。

 

「……光恵は、強いわね」

 

「強くなんてない。私だって、苦しい。でも、こうでもしなきゃやってられないんだ」

 

「……そうね」

 

佳乃は小さく微笑んだ。

 

「……光恵、頼子。私は……私たちは、どうすればいい?」

 

「持久戦を展開する。とにかく、名古屋の住民を避難させる時間を稼ぐ」

 

光恵は地図を見つめ、改めて決意を固めた。

 

「やるしかないわね……」

 

佳乃も、頼子も、それぞれに静かに息を整えた。

 

苦悩は消えない。だが、それでも進まなければならない。

 

「行くわよ……私たちの戦いを、始めましょう」

 

この戦いは、軍人として、そして一人の人間としての誇りをかけた戦いだった。

 

「……ともかく、今は休め……すぐに出撃することになるだろうから、体力を少しでも回復させておいてくれ……頼子、君もだ。今はゆっくり休んでくれ」

 

「はい……」

 

頼子は小さく頷いたものの、その表情はどこか硬かった。

 

「光恵、あなたは……この決断に、後悔はないの?」

 

「後悔なら、もうしてるよ。でも、それを引きずる暇はない……私たちは、今、生きるために戦うしかないんだから」

 

「……わかったわ」

 

佳乃は息を吐き、頼子とともに執務室を後にした。

 

二人の背中を見送ると、光恵は椅子に深く座り込み、天井を仰いだ。

 

「……どうしたものかな……」

 

言葉にすることで、ようやく自分の中の迷いが形になった気がした。

 

軍人として正しい決断をしたのか――それとも、人として間違った選択をしてしまったのか。

 

その答えは、まだわからない。

 

ただ、決断は下された。あとは、戦うだけだった。

 

つづく




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