「天雨行政官!」
ゲヘナ風紀委員会本部にて1人の風紀委員の声が響いた。
「どうしましたか?何か問題でも?」
「はい!ゲヘナ郊外でヘルメット団同士の戦闘が起こっており、その周辺に暮らす人々により通報がありました」
「そうですか…。『路地裏』の連中は動いていませんか?」
「特に動きはありません」
アコは少し考えたのち、結論を出した。
「わかりました。しばらくしたら、イオリ達を向かわせましょう」
「いえ、それが…」
「?」
風紀委員の子は少し言いずらそうにした後、こう言った。
「リンカ先輩がどこからかそれを聞いて、真っ先に向かったようです…」
「はぁ!それを先に言いなさい!すぐにイオリ達を向かわせなさい!」
「は、はい!」
風紀委員の子が走り去っていく。その様子を見ながらアコは、大きくため息を吐いた。
「全く…面倒ですね…」
そう呟き、早足で執務室へと帰っていった。
ーーーーーーーーーー
ゲヘナ郊外
「こちらイオリ。今郊外に到着した」
イオリ達が指定された場所に到着した時には、すでに戦闘は終わっていた。そこにはヘルメット団達が死屍累々であった。その奥に見知った人物を見つけイオリは声をかける。
「リンカ先輩、やっぱりいたですね」
名前を呼ばれた人物は、後ろで括った赤い髪を揺らしながらイオリの方に振り返り手を振った。
「やっほ、イオリ。結構早かったじゃん」
イオリはため息を吐きながら頭を抱えた。
「リンカ先輩、以前から言ってますよね?こんなふうに独断先行するのはやめてくださいって」
「仕方ないだろう?面白そうなことしてたんだからさ」
「『路地裏』が関わってたらどうしてたんですか!本当に面倒なことになってたんですからね!」
「『路地裏』、か…」
そう呟きニヤリと笑うリンカに、イオリは嫌な予感がしていた。
「…先輩、『路地裏』にちょっかいかけたりしませんよね?」
「……しないさ」
「なんなんですか今の間は!本当にやめてくださいよ!最近はトリニティのこともあるんですから!」
「わかってるよ!今はやらないよ今は」
含みのある言い方がとても気になったが、イオリはもう気にしないことにした。
「そういえば先輩、どうやってこの場所を知ったんです?」
先輩には教えていないのに、という言葉を言外に伝えながらイオリは聞いた。
「簡単なことだよイオリ。まず他の風紀委員通しが郊外で抗争が起こっているといった話しているのを聞く。そして郊外まで走って行き、そこら辺のヘルメット団に聞く。そして、そいつが言ってた場所まで行って全員しばけば、このとおりだ!」
イオリは絶句した。嬉々としてこれを語ってきたことも、それを実行し成功したことにドン引きしていた。
「待って先輩。ゲヘナの郊外といってもここのあたりだけじゃない。先輩はまずどこの郊外に行ったんだ?」
「まず向かったのは南だ!」
真反対。今回の現場からは真反対であった。イオリはさらに頭を抱えた。
「あーあー、アコちゃん聞こえる?南の方でも被害が出てる可能性が高い。誰か向かわせて」
無線に向かって被害が出てるであろう場所を報告し、先輩に向き直る。
「とりあえず先輩、帰りましょうか。もう時間も遅いので」
「そうだな。一緒に帰ろうか、イオリ」
そう言って先輩はニコニコと笑って歩き出した。
香山リンカ。敵と判断すれば誰にだって噛み付いていくことからついた異名がいくつもある。
風紀委員の暴走兵器、秩序側にいるだけのテロリスト、ゲヘナの狂犬…
風紀委員として、1人の後輩として先輩のこれからが心配になるイオリであった。
香山リンカ(かやま りんか)18歳
ゲヘナ学園の3年生。風紀委員の中で2番目に強く、1番の問題児。戦うことが大好きで、戦闘となれば真っ先に突っ込んでいく。昔ヒナ委員長と戦い、負けた結果風紀委員に入った