…少し見てみよう
そう思い動画を再生した
「コトリ、映ってるか?」
「はい!ばっちりです!」
1人の少女が、コトリに向かって確認を取る。
「ウタハ部長、ヒビキ、準備はできてる?」
「こっちは問題ないよ」
「ばっちり」
ウタハとヒビキは実験の準備や保険を準備していた。
「よし、コトリ動画回してくれ」
「もう撮ってます!」
「早いな!まあいいや」
少女は姿勢を正し、カメラに向きなおす。
「えー、これよりジェット式空中移動バイクのテストを開始する」
「これは私が開発した超小型ジェットエンジンを用いて作った空飛ぶバイクの試作機の実験だ」
「このエンジンはロケットに使われるようなエンジンを小型化し、出力を落としたものだ」
「やろうと思えばロケットと同じ馬力を出せるが、それをすると乗っている人間が持たないからな」
「いろいろと説明するより実際に乗っていくとしよう。ヒビキ、持ってきてくれ」
ソニがそう言うとヒビキが台車に乗ったバイクを持ってきた。
しかしそのバイクにはタイヤはついておらず、代わりにジェットが付いていた。
「御覧の通りこのバイクにはタイヤの代わりにジェットの噴射機が付いている」
「噴射器の向きは動かすことができ、これで進む方向を変えることができる」
「ハンドルと連動していてハンドルをきった方向と逆の方向にジェットがむくんだ」
「タイヤと同じで前のジェットだけが動く」
「ちょっと複雑な機構をしているが、操作感はバイクと一緒だ」
「早速乗っていくとしよう」
そう言うとソニはバイクにまたがり、エンジンをかけた。
バイクとは思えないほどの轟音を鳴らし、噴射機からジェットを噴出した。
ソニが軽く地面をけるとバイクが浮かんだまま前にゆっくりと動いた。
とたんソニはバイクとともに空に飛んで行った。
ハンドルを回した途端出力が最大になってしまったのだ。
「ちょ!まずいですよ!」
「ソニ、無事かい?」
焦るコトリをよそにウタハはソニのヘルメットにつけていた通信機からソニに連絡をとった。
『一瞬驚いたが、なんとか安定してきた。しばらく動かしてみる』
「了解。何かに当たらないようにな」
『了解』
空を見ると悠々自適に飛び回っているソニのバイクが見えた。
「すごいですね!」
「本当に飛んだんだ」
「ああ、まるで鳥のようだ」
エンジニア部の3人は飛び回るソニを少し羨ましそうに見ていた。
そろそろいいだろうとウタハが通信機に話しかけた。
「ソニ、そろそろ降りてくるといい」
『了解』
はっきりとした声が聞こえ、ウタハは撤収の準備をしようかと思った。
しかし一向にソニが下りてくる気配がなかった。
「ソニ、何か問題があったかい?」
『ああ、問題発生だ部長』
ウタハの中には様々な問題がよぎったが、試作機ゆえに何が起こったかは分からなかった。
「何があった?」
『完全に私の失敗だ』
「何を失敗したんだ?」
『……安全に降りる手段をつけ忘れた』
「……あっ」
ここにいる全員が忘れていた。
空飛ぶバイクというロマンに目がくらんで、安全性という言葉を忘れていたのだ。
『…部長、少々手荒だが降りる方法を思いついた』
「おそらく私の考えている方法と同じだろう。医務室への運搬は任せたまえ」
『ありがとうございます』
そう言い終わるとソニのバイクはこちらに向かって落ちてきた。
なるべく速度は落としたようだが大きな音とともにバイクはバラバラになってしまった。
ソニも地面についた瞬間勢いよく転がっていった。
「ソニ!大丈夫かい!」
ソニは寝そべったままヘルメットを外し、3人を見た。
「……ははは、最高でしたよ、本当に」
からからと笑うソニにウタハたちは肩の力が抜ける。
「まだまだ改良するべきところが多いですね」
「そうだね。だがそれは君の怪我が治ってからだ。立てるかい?」
「腕の一本も動かせませーん」
「だろうね。ヒビキ、はこぶ君を持ってきてくれ」
「わかった」
ヒビキはソニを運ぶための装置を取りに向かった。
「ああ、コトリ」
「はい?」
「記録ありがとう、もう止めていいよ」
「わかりました!これにてジェット式空中移動バイクの記録を終わります!」
そう言って、コトリはカメラの撮影を止めた。
こんな実験をやってたんだ
……ほかにも記録はないかな
そう思いほかの記録を探し始めた