【悲報】ワイ、デスゲームの主催者に転生してしまう……   作:今空掻揚

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第2話

 俺と草木優菜という女の子が幼馴染と呼べる間柄である事に気づいたのはそれこそ最近の事だった。

 そもそも幼馴染って言葉自体知らなかったし、そしてそういえば確かに彼女と俺は幼稚園の頃から割と一緒に過ごす事が多かったなと気づいた。

 幼馴染。

 そしてその言葉以上の意味はないのが俺と草木優菜という女の子との間柄である。

 まあ、その「それ以上の意味」を俺は良く分かっていないのだけど。

 ……学校の連中が俺と優菜との事を「ひゅーひゅー」とからかってきた。

 みんなしてそのように言われてあまり良い気はしなかったけれども、優菜の方はなんの反応もしなかったどころか一部の連中に対しては普通に攻撃していたので気づいたらそんな風にからかってくる連中はいなくなっていた。

 そもそも優菜自体がクラスの女の子達には割と人気がある方だったので、そのからかってくる連中達もたくさん味方がいる優菜に対しては意地悪をしたくはなかったのかもしれない。

 

 なんにしても、俺と彼女は幼馴染なのだそうだ。

 だから何だとも思う、彼女とは長い付き合いだったからこそ「そう」なのが自然だったし、これからもきっとそうだと漠然と思っていたから。

 

「まあ、蓮人とはなんだかんだ長い付き合いになるだろうね」

 

 と、扉に「一堂蓮人」と書かれたボードが付けられているはずの俺の部屋に遠慮なしに遊びに来てゲームを遊んでいる優菜が顔を上げずにそういった。

 割と適当な口ぶりだったから別に彼女自身も特に何か意味があってそんな言葉を発した訳ではないんだろうけど、しかしなぜそんな事を言ったのか気になった俺は彼女に尋ねた。

 

「ん? いや、だって蓮人も基本的に中学から高校までは近くにある進学校に入学するんじゃないの?」

 

 中学、そして高校。

 ……俺達は今六年生だから進路についても考えなくてはならない、のかもしれない。

 だけどあまり現実味のない話のように聞こえる。

 今まで気楽に、悪い風に言うのならば適当に生きてきた身としては、そういう「人生」に関わってくる選択をしなくてはならないというのはなんだか異世界の出来事のように感じるのだ。

 勉強は、普通。

 運動については、ゲームばかりしている優菜だったがこれでも外で遊ぶ事も多く、だから彼女に引っ張られていろいろなところに連れまわされているから、自然と人並み以上の運動神経が身についていた。

 

「蓮人?」

 

 顔を上げ、小首を「こて」と傾げてこちらを見てくる優菜。

 

「違うの?」

「……ん、いや。なんかいつもお気楽な優菜から進路の話をされるとは思いもしなくて」

「別に、私だって将来の事は考えてるよ。小学生程度には」

「そりゃあ小学生なんだから小学生程度には考えるだろ」

「ていうか、蓮人。話逸らしたでしょ」

「進路については、正直なところ良く分からないよ」

 

 俺は白状する。

 

「ぶっちゃけ今まで適当に生活してきたし、そういう『将来』の事とか難しい事はよく分からないよ」

「そっか、まあ蓮人がそうなんだったら無理して答えなくても良いよ」

「……なんか、ごめん」

「別に、謝る必要はない、でしょ? かくいう私だって都会の方にある『頭良い』人達用の学校に行きたいとか考えたりはしないし」

「優菜、頭良いんだから中学受験も出来るんじゃないのか?」

「うーん、まあ。それに関しては」

 

 優菜は苦笑を浮かべる。

 

「私、ただの神童だし」

「自分で言うのか」

「神童も歳を取ればただの人ってね。天才じゃないし、人より優れた才能を持っている訳じゃないから」

「そういうもんかな」

「そういうもんだよ」

 

 それから優菜は飽きたように顔をまたゲーム画面の方に移し、ぱたぱたとボタンを押してプレイを再開した。

 

「んー。まあ、私は蓮人がまっすぐに成長してくれればそれで良いから」

「なんか父さんか母さんみたいな事を言うのな」

「蓮人が普通に成長してくれて私は嬉しい。今後ともその調子で頑張るように」

「本当にどこ目線なんだよ」

「年上目線?」

「同じ歳だろ、幼馴染なんだから」

「知らないの? 女の子の方が精神的な成熟が早いんだよ?」

「少なくとも精神的に成熟? している人はそんな風に言ってこないと思う」

 

 そりゃそうだ、と笑う優菜。

 どうやら言った本人も別に本気で言ったわけではないようだ。

 まあ、俺も俺で彼女が本気でこういう事を言うようなタイプではない事を知っているので、だからこちらも彼女から言われた言葉に関してはあまり本気にしていない。

 いつものように、いつものような駄弁り。

 他愛のない会話だし、少なくとも小学校が終わるまではきっとこのまま続くはず。

 中学に上がってからは、どうだろう。

 分からない。

 

「……」

 

 彼女は、女の子の方が精神的な成熟が早いとは言っていたけれども。

 俺だって一応、精神的に成長していると思っている。

 いや、正確に言うのならば「女と男の違い」くらいは理解できるようになってきた、と言うべきだろうか?

 嫌でも理解できるようになってきた。

 だって、優菜の……そう、身体がだんだん丸みを帯びてきたというか。

 引っ込むところは引っ込んできたというか。

 なんていうか、えっと、胸も、膨らんでいるし。

 性徴というらしいけど。

 なんだか優菜が優菜じゃなくなっているような気がして、少し怖かった。

 俺は、身長が伸びる以外の変化はない。

 将来的には声が低くなるらしいし、身体もごつごつしてくるのかもしれない。

 大人になって、だから将来の事を否が応でも考えなくてはならないんだと思う。

 どうなるんだろう。

 なんだか想像がつかない。

 

「優菜はさ」

「んー」

「どんな大人になりたいんだ?」

「いきなり唐突だね」

「いや、参考に。どんな事を考えているのかなって」

「んー」

 

 優菜はまた顔を上げ、今度はゲームの電源ボタンを押した。

 それからまた「んー」と首を傾げた彼女は「困ったな」と零す。

 

「私も別に大して『こうなりたい』っていう大人のビジョンがある訳じゃないから」

「そうなのか」

「適当に生きてるからね」

「そっか」

「ちゃらんぽらんなんだよ、私って。知らなかった?」

「それは知ってたけど」

「おい」

「でも、あれだな。この感じだと一応中高は同じ進路っぽいけど、だとするとちょっと安心かも」

 

 俺の言葉に優菜は「ん?」と少しだけ気まずそうな表情を浮かべた。

 

「なに? 恥ずかしい事を言おうとしてる?」

「いや、普通に見知ったやつが近くにいると怖くないじゃん」

「んあー、確かにそれは」

「困ったら助けてって言えるし」

「そこは、出来る限り自分で解決してください」

「頑張るよ」

 

 たはは、と笑う。

 彼女も笑った。

 

 そんな、ありふれた普通の日常の一幕だ。

 多分、今後はこういう日常が続けられなくなりそうだなーとも思った。

 小学生だったころと比べて中学校になったら勉強も難しくなるだろうし、それこそ「将来」に向けての準備をしなくてはならないんだと思う。

 それは勉強なのかもしれないし、それ以外の何かかもしれない。

 今の俺はそれが何なのか分からない。

 

「……」

 

 寂しいけど、優菜ともこうして適当に同じ時間を過ごすのも難しくなるんだろうなーとか。

 そんな風に思った。

 

 

  ◆

 

 

 中学に上がってもなんだかんだで蓮人と一緒の時間が多かった件について。

 いやまあ、家がそれこそお隣さんだからという理由で登校をしていたのはまあ良いとして。

 中学を卒業するまで一度だけクラス替えを挟んだのにもかかわらずなんか同じクラスだった。

 これもしかして神様がなんかやっているとかないよね?

 そうだとしたら有難迷惑なんだけど。

 ま、まあ蓮人がしっかりすくすく育ってくれるのはありがたい事だ。

 今の蓮人は特に人間関係とかで拗れる事もなく精神的にも肉体的にも健全に成長している。

 まさに理想的な成長だ、イケメンなのでモテるし。

 幼馴染だからっていう理由で私に「彼ってどういう人なの?」と聞いてくる人も何人かいたし、それに対して私は社交辞令的に「カレーが好きで、甘党。あと割とオタク趣味だよ」と教えたりしていた。

 その結果誰かと付き合ったりするのかなーとか邪推していたのだったが、しかし今の今まで彼は誰とも恋人になったりはしなかった。

 マジかよ。

 

「蓮人ってさ」

「ん?」

 

 高校受験のために彼の部屋で勉強をしていた私と彼だったが、休憩の時に彼のお母さんが持ってきてくれたケーキを食べている途中に私は彼に一つ質問をしてみる事にした。

 

「なんか好きなものとかあるの?」

「甘いものは好きだけど」

「いや、趣味とか」

「前まではソシャゲやってたけど最近サ終したから買い切りのゲームばかりやってる。来月発売する狩りゲームとか楽しみだな」

「確かに、休みの時間にちょっとだけ一緒に遊ばない?」

「優菜は勉強大丈夫なのか?」

「う。ま、まあゲームのためなら頑張れるから……」

「神童も歳を取ればただの人って本当だったんだな……」

「何それ?」

「いや、なんでも」

 

 肩をすくめて見せる蓮人。

 イケメンにだけ許される仕草だけどなんだか様になっているから腹立たしい。

 いやまあ、イケメンなんだがこいつ。

 

「そういう優菜はなんか好きなものとかあるのか?」

「ハンバーガーが好き。特にフライドオニオンチップとバーベキューソースが挟まったやつが好き」

「アメリカンな奴か」

「そうそれ」

「趣味は?」

「人並みにゲーム、あと漫画」

「なんか最近の優菜って昔ほどゲームしなくなったよな」

「勉強についていくのが大変で……」

 

 というのは半分本当で半分は嘘。

 ……将来的に開催するであろう『デスゲーム』、それを具体的にどうしていくのかを同じ転生者達の意見を聞きつつ練っている。

 デスゲーム、と言いつつもそこで活躍する人は決まっているし死人も出ないよう攻略法もいろいろと用意する予定ではあるけれども。

 そこで蓮人は能力を覚醒させ、主人公として活躍する事となる。

 ちなみに、だが。

 その能力に関してのその後については、それこそ現代ファンタジーの如く「世界の危機」に対して使われる事となる予定らしい。

「世界の危機」ってなんだ。

 そしてその時の私はどうなっているんだよ。

 

「うーん」

「なんか悩み事あるのか?」

「いや、将来はどうしようって悩んでて」

「進路について?」

「そんな感じ」

「まあ、それに関しては別にまだ悩んでも仕方ないんじゃないかな。今はどちらかと言うと高校にちゃんと入学出来るかどうかが重要だと思う」

「む、それは確かにそう」

 

 成績は足りている。

 ただ受験で失敗するのは、ちょっと怖い。

 

「勉強、頑張らないと」

 

 同じ転生者達にどやされつつ、予定通りちゃんと彼と同じ高校に入学出来るように。

 とにかく今は、勉強をして成績を伸ばすのを優先するばかりだ。

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