ある日、冬が近い。そんな日。俺はトレーナールームで作業しながらテレビを見ていた。今やってるのはまた異世界からの来訪者が出た、というニュースだった。
「ほーん。」
俺も異世界からの転移者だが・・・そういえばどういう方法で召喚したかなんてのは聞いてなかった。ちょうどいいからゴルシ辺りに聞いてみようかな。
「もしもーし。ゴルシ?」
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「なるほどな…」
「おう。それで、どうやったんだ?」
ゴルシをそういう理由で呼んだらちょうど張本人が集まってるっていうから来てもらった。俺を召喚しようと企んだウマ娘達は6人。メジロドーベル、マチカネフクキタル、スマートファルコン、ヴィブロス、ヴィルシーナ、ゴルシというメンツだ。
「まぁ…話すのはいいんだけどよ。広めたりトレぴっぴがやろうとしないでくれよ。」
「わかった。」
「おう、じゃまずは出所からヴィブロス。」
「うん~えっとね~まずトレセン七百七十七不思議って言うのがあってね?その中に学園のエントランスの西側七番目の柱の鏡を満月の夜中の二時に焼いたにんじんを持ってのぞき込むと未来の担当トレーナーと会えるって言うのがあるの。」
「七百七十七個もあるのか不思議が・・・」
「今はそれは置いておいて~でね?先輩方から結構その話受け継がれてて実際に会って担当してもらったっていう先輩がいたの。」
「深夜の学園に侵入したのか?」
「そうだよトレーナー。私が事前に昇降口のカギを確保してて…」
「なにやってんだドーベル。」
「もうめちゃくちゃに怒られたから許して…」
「それでヴィブロスとドーベルさんが侵入してトレーナーさんに会おうっていうのしてるっていうのを聞きつけて止めに行ったんですけど…」
「ヴィルシーナも取り込まれたと?」
「はい。」
こいつらは…まぁでも今担当してるみんなは俺が来るまで担当してもらってたのは数名でトレーナーとの相性もあまりよくなかったというらしい。それなら自分だけのトレーナーが欲しいという気持ちも一応頷ける。
「フクとファル子は?」
「私はファル子さんと没収されたものを秘密裏に回収しようと思ってたら渡りに船だ!となりまして。」
「面白そうだから着いていったの。」
「ふーん。ゴルシは?」
「あたしは先んじてあたしだけのトレぴっぴを見つけ出そうとしてたら普通に合流したんだ。」
「なるほどなぁ…」
「それじゃトレっちその時のこと説明するね。」
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「ドーベルさん大丈夫~?」
「大丈夫よ。でも意外と雰囲気あるわね…」
「そうだな~まぁでもこんだけいれば大丈夫っしょ。」
「フクちゃんとファル子先輩は没収品回収しなくていいの~?」
「こっちの方が面白そうですし。」
「うんうん!」
深夜の学園。静まり返っているのはそうだったんだけどなんかすごい雰囲気でね?不思議は本当なんだ~って思ってたの。
「お、あったぞ。」
「これね。」
「わ~…でどうするんだっけお姉ちゃん。」
「焼いたにんじんを…どうするのかしら。」
「食べるんですかね。」
「待ってフクちゃん焼いたにんじんを生贄にするんだよ~!」
「待てよスマファ。焼いてるから生贄には出来ねーだろ。」
「ゴルシさんその呼び方可愛くないな~」
鏡を見つけて焼いたにんじんも持ってたんだけどそれをどうするのかわからなくてわいわいしてたら…フクちゃんが食べちゃいましょう!って言いだしたの。袋に10本ほど焼いたにんじんを持ってきてたんだけど一本取り出したらね。
「ふんぎゃろおおおおおおお!?!?!?!」
「ちょ!フク!声が大きいわ!」
「今の見たお姉ちゃん!?」
「え、ええ…」
「な、なに今の…」
「おいおいおい噂はマジだったのかよ。」
にんじんがね!スポって鏡に吸い込まれたの!!私たちびっくりしちゃって。でも吸い込まれたけど鏡には何も映ってなくて。にんじんが足りないのかな~って持ってたにんじんを鏡の前に全部出したらすぽぽぽぽぽ~って!!!全部吸い込まれちゃったの。そしたらね。
「何か映ってる!!!」
「ほわ!?」
「これ…誰?」
「こ、この人がトレーナー!?お、男の人だ…」
「嘘…」
「…なるほどな。」
そこにはトレっちが映ってたの。なんか指をフリフリしてて。ずっとこっち見てて…でもこれだと映っただけで会えたわけじゃないな~と思って。私、触れないかな…って鏡に触ったの…
「おいおいおい!!!鏡に手が入ったぞ!!!」
「あっ!掴んだ!!!」
「ヴィブロスちゃん引っ張って!!!連れてこよう!!!」
「えええっ!?!?!」
「私に任せてください!!!ほらヴィルシーナさんも!!!」
「私も!?!?」
「行きますよ!!!せぇーのっっっ!!!」
そのあとはトレっちも知ってる通り。トレっちを鏡の中からこっちに召喚したってわけなの。
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「そういうことだったのか…」
「うんこんな感じだった。そのあとのことはトレっちも知ってるでしょ?」
「まぁそうだな。」
「あの後私たちは尋常じゃなく怒られましたよね…」
「ええ…あんなに怒った理事長を見たのは初めてだったわ。」
「トラウマになりそうでした。」
「たづなさんがうろたえるくらい怒ってたよ。」
「そんなに怒ることないだろうに。神隠しなんて割とよくあることなんだろ?」
「普通ならな。いわゆるこっちに来る異世界転移なら普通にあることなんだよ。でもあたしたちがしたのは異世界召喚。もっというと誘拐だ。その辺はあたしも説明しただろ?」
「ああ。」
「トレぴっぴの人生をぶち壊しちまったんだ。あたしたちは。普通なら退学だった。」
「でもトレーナーさんが引き留めてくれたって聞きました。」
「ありがと☆トレーナーさん☆」
「…?」
「あれ?」
「とれぴっぴ?」
「俺そんなこと言ったかな…」
「えええーーーーーーー!?!?!?!」
「じゃあ私たちなんで…」
「ああ…?でも俺が呼ばれたのは俺を必要としてる子がいたからだ、ならば俺はその使命を全うするみたいなことは言ったけど…」
「なんか、何かがいい感じに伝わって私達ギリギリ退学回避したの…?」
「怖すぎますううううううううう!!!!!」
。
「ははは…まぁいいだろ。」
その日はそれで解散した。そしてその足で俺は理事長のところに向かった。今日は、ちょうど満月だ。
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深夜、トレセン学園。俺はそこにいた。焼いたにんじんを持って。
「えっと、エントランスの西側七番目の柱の鏡、だったよな。」
俺は試してみることにしたのだ。帰れるか、どうか。まぁ帰る気はさらさら無いんだが。だが帰れないのと帰れるけど帰らないのでは雲泥の差がある。
「たづな、どうだ。」
「異次元計には反応ありません。」
たづなさんと理事長も見に来ている。ほかの異世界人は元の世界を特定して理論上返すことが出来るらしいが、俺は不可能。それが一縷の望みを賭けてのことだった。
「トレーナー君ここだ。」
「ですね。」
エントランス西側七番目の柱の鏡。確かにあった。人の顔ほどの大きさの鏡で。ちょっとなんでこの位置にポツンと設置してあるかはわからない。
「校舎の図面も持ってきたんだが…この位置に鏡は設置されてない。誰かが勝手に置いたものだと思う。」
「そうなんですか。」
「もうすぐ二時です。」
腕時計で二時になるのを確認する。何か鏡が光るだとか、何かが映るとか、焼いたにんじんをかざしても何も起こらない。
「何も起きませんね。」
「だな。とすると、トレーナー君の事象はなんだったのか…」
「…。」
俺と理事長がうんうん悩む間たづなさんはべちべちと鏡に焼いたにんじんを叩きつけている。もちろん何も起こらない。
「生徒ではないとダメなのか…?」
「でもまた召喚してしまうと。」
「だな。この件に関してはもう探るのはやめておこう。」
帰れそうになかった。残念だ。その次の瞬間だった。
「きゃっ!?」
「たづなっ!?」
「たづなさん!?」
「い、いえ、大丈夫です。」
「どうしたたづな。」
「いえ…今これが鏡から落ちてきたんですけど…」
そういってたづなさんが見せてくれたもの。それは…
「俺の…スマホ…」
「え?」
「スマホ…」
「あ、ああ。こちらではウマホでしたよね。間違いないこれは俺の世界の、スマートフォン。スマホです。」
物理キーボードを備えたblackberryのスマホ。間違いなくこの世界には存在しない俺のスマホだ。
「なぜ、今になって。」
「わかりません…もしかして、三女神が慈悲を見せてくれたのかも…」
「そういうことにしておきますか。」
電源ボタンを押すと映る画面。アプリもまんま俺の。スペースキーの指紋認証でロック解除してウマ娘プリティーダービーを起動してみた。
「通信が良いとこで接続してください…まぁつながるわけないか。」
通信できなければ、スマホは文鎮だ。とりあえず元の世界の思い出として取っておくことにしよう。
「理事長、戻りましょう。」
「もういいのか。」
「ええ。やっぱ帰るのは無理です。帰るつもりもありませんし。」
「そうか…だが気が変わったら言ってくれ。なんでも協力する。」
「頼りにしてますよ。」
「うむ!」
協力!!と書かれた扇子を広げる理事長。父ちゃん。母ちゃん。俺頑張るよ。