ある日、ルドルフから助けてくれと救援が来た。あまりにも珍しいことなので一体どうしたんだと聞いたら、どうやら裏レースを走らされていた子達を救出したらしくその子達のメンタルケアを頼みたいという。一応俺もメンタルケアについて勉強はして入るが臨床心理士ではないのでそんな重篤なものは・・・と躊躇ったがルドルフが言うこのメンタルケアとは、正しいトレーニングなのだと言う。
「すまないトレーナー君。忙しいところを・・・」
「いやいやルドルフが助けてくれと言ったんだろ。任せろ。」
「ありがとう。」
とりあえずシンボリ家の施設で保護してるという。ここで裏レースと言うものについて教えよう。みんなが想像するウマ娘の裏レースというものは、例えば違法賭博レースだったりするだろうが、ここでは違う。以前説明した施設に入ったウマ娘を言葉巧みに騙して引き取る反社会的勢力の民間ウマ娘保護施設があるのだという。そこに連れてこられたウマ娘は薬などによる身体強化、虐待と変わらない過酷なトレーニングを施し、反社会的勢力のマネーロンダリングに使われる賞金の出るレースに出される。これを裏レースという。
「しっかしひでぇことだ。今のご時世そんな連中がいるのか。」
「ああ・・・・・・警察だけでなく、様々な組織が根絶に動いているがどうしてもなくならない。果てにはそこでトレーニングされた子がトレセン学園に入学し、獲得した賞金を横取りされ、勝てなければ闇に葬られるという事案まで発生しているんだ。」
「なんてことだ・・・・・・」
「今回保護したのは20人。もうボロボロだ。洗脳され、走る事でしか自分を確立出来ない可哀想な子達なんだ。頼む。トレーナー君。」
「さっきも言ったろ。任せろって。でも具体的にどうすればいいんだ?」
「彼女達に楽しいトレーニングというのを施して欲しい。ひとまず健康状態は回復し洗脳も解いた。だが彼女達は走る事しか知らないし走ることしか出来ない。」
「おっけー」
そうしてシンボリ家の施設に到着した。奥多摩の療養所をシンボリ家が買い取った場所らしい。
「おいっすー」
早速ノックして入る中には数名いるだけで20人全員はいなかった。
「およ。ルドルフ全員いないぞ。」
「何人かは部屋にいるかもしれないな。スタッフに呼びにいかせよう。」
「おう。」
とりあえず今いる子達を確認する。歳は全員12歳ほどだという。本格化もしてない子達をレースに出すのは虐待だ。ちびっこレースならまだしも。
「・・・。」
「どうだい。トレーナー君。」
「そうだな・・・・・・」
とりあえず今いる子達は・・・・・・異様に不自然だ。明らかに体が発達し過ぎている。12歳の体ではない。かと言って鍛えられているかと言えば否だ。見てわかるだけでバランスが悪く、マトモなトレーニングを受けていない事は明らかだった。体は大人、頭は子供と言った状態だ。明らかにドーピングの影響だろう。
「とりあえず・・・・・・ドーピングは抜けてるんだよな?」
「ああ。医者に確認させている。薬は完全に抜けているよ。だが・・・・・・薬の影響だけはどうしようもなかった。」
「そうだろうな・・・・・・」
まぁどうなるかはやってみないとわからん。今日はルドルフが着いて来てくれるって言ってるし、いろいろやってみよう。
⏰
運動場に集まってもらった。20人全員いるな。だが集まった子達は不安そうな顔で震えている子達ばかり。トレーニングを施すのは無理そうだ。ならば。
「みんなまず。体のチェックをしなきゃならない。」
体のチェックをすると言ったら彼女達の目から光が消えた。
「しまったな・・・・・・」
「トレーナー君、彼女達は健康状態は回復したがPTSDなどは治療中だ。気をつけてくれ。」
「おっけーじゃあ趣向を変えよう。」
今日はルドルフも参加してるのでルドルフを利用しよう。
「みんな。体のチェックというのは何も触るだけじゃない。自分でチェックするんだ。今日はちょうどいい比較対象がいるからなールドルフ!」
「ああ。」
「脱げ。」
「わかった。」
「!?」
あまりにも理解が早過ぎてびっくりしてしまったが脱げと言ったのは冬なので長袖ジャージを着ているから脱いで半袖になれということだ。トレーニングを受ける子達はビクビクおどおどしているが。トレーニングを楽しいものだと思ってもらう為には突き抜けるしかない。
「おほん!!ルドルフ。適当にポージングして。」
「わかった。」
ムキ!とポージングしてもらう。
「みんな!まず自分の状態を確認して把握しておかないとトレーニングは出来ない。ルドルフの体を触って。自分との違いを確認してみてくれ。」
ざわざわとするが、1人、また1人と前に出てルドルフの筋肉を触っていく。徐々にだが笑顔がで始めた。ふぅ。
「みんな触ったか?どうだ。ルドルフの体は。これが完成されたウマ娘の体だ。この体を目標にトレーニングしていくぞ!まずやるのは〜・・・・・・ルドルフホワイトボード持ってきて。」
「はいはい。」
ダッと走り出したルドルフがあっという間にホワイトボードを引っ張ってくる。
「まずは!!!トラック鬼ごっこだ!!!」
みんな?マークが浮かんでいる。
「君。」
「は、はい!」
「名前は?」
「14番です!」
「・・・・・・。」
「彼女達の名前はわからないんだ・・・・・・施設から移る時の書類はすべて処分されていて・・・・・・元の施設にも残ってなくて・・・・・・」
「仮の名前とかも無いのか・・・・・・?」
「ある、だがウマ娘の名前は不思議な物で誰とも被らないその子だけの名前があるんだ。その名前じゃないとウマ娘は・・・・・・」
「なるほどな。」
「君名前をもらわなかった?」
「え、えと・・・・・・」
「合わないのか?」
「・・・・・・はい。」
「よし!じゃあトレーニングの前に名前を考えよう!!!自分で納得する名前があった方がトレーニングも捗るだろう。」
またもやざわざわとした。でも笑顔が多いので今の提案はいい案だったかもしれない。
「よし!じゃあどんな名前が良いかだしてくれ。」
⏰
20人全員納得行く仮の名前を決めた。だがしかし良い時間になってしまったのでおやつにしようと提案したら彼女達はおやつをトレーニング中に食べても良いのかという驚愕と共に質問された。
「いいか?トレーニング中のおやつというのは重要だ。ウマ娘のトレーニングはおやつを食べないとハンガーノックの可能性が非常に高くなる。だからおやつを食べるんだ。」
そう説明すると彼女達の顔が輝いた。
「みんなでおやつを食べるぞ!!!ルドルフ用意してるよな?」
「もちろんだとも。トレーナー君のトレーニングをやると決めた時からケーキの準備をしていたとも。」
みんながワッと喜んだ。名前も決まって、今まで過酷な虐待としか言えないトレーニングしかしてなかった彼女達にとってはトレーニング中のおやつなど夢のような話だろう。
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施設に戻ってみんなにおやつを食べさせている途中。俺はみんなの体をつぶさに確認した。どう考えてもバランスが悪い。マトモに走る事は不可能だろう。それもこれからトレーニングを施してもマトモに走れるかどうかはわからない。非情な状態に俺は腑が煮え繰り返りそうだった。
「・・・・・・。」
「どうだい?トレーナー君。」
「ひでぇ状態だ。ウマ娘をぶっ壊すことしか考えてなかったんだな。」
「ああ、保護した当時はもっと酷かった・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
美味しそうにチョコケーキを頬張る彼女達にこれから幸せな未来が待ってる事祈る。とりあえずいまやれることをやろう。その後。おやつを食べた彼女達を再び運動場に連れ出し、鬼ごっこ、ドッジボール、綱引きなどをしてトレーニングした。そして確信した、この子達はもう走れない。完全に壊れてしまっているのだと。