ある日。俺はたづなさんと仕事をしていた。珍しくたづなさんが助けを求めてきたからだ。俺は二つ返事で了承し手伝ったわけだが・・・・・・
「・・・・・・。」
「すみませんトレーナーさん。助かりました。」
「あ、いえ、いいんですよ。俺で良ければいつでも。」
「本当にすみません。お忙しいトレーナーさんの手を煩わせてしまって・・・・・・」
「そんな気を使うこと無いですよ。俺だってここ中央の仲間ですから。いつでもなんでも言ってください。」
「ありがとうございます。」
たづなさんは仕事を片付けて去っていった。明らかに人間では持てないクソデカ荷物を抱えて。・・・・・・まぁいいかこれで良し。
⏰
「・・・・・・。」
しかし不思議だ。たづなさんは。明らかに俺たち人間より、力が強く。足も速い。だがウマ娘と比べると?そうでもない。力を抑えてる?どうなんだ・・・・・・?
「どうしましたのトレーナーさん。悩んでいるようですが・・・・・・」
「そうだよトレーナー、ずっと難しい顔してるよー?」
「あ、いや、なんだマックイーン、テイオー。そのだな。」
簡単にあらましを2人に説明する。すると2人は怪訝な顔をした。
「たづなさん、ですの。」
「たづなさんはすごいよー」
「何かエピソードはあるのか?」
「うん。」
「ですわね。」
そして聞いた。2人のたづなさんエピソードを。
「私は、そう、ですわね・・・・・・まだトレーナーさんが来る前でしたわ。夏前の芝刈りの時期でしたわ。夕方までコースの芝を刈っていたのですが・・・・・・」
「ですが?」
「コースから刈った芝を積んだ軽トラが続々と出て行ったのですが・・・・・・そのうちの一台のなんて言うんでしょう。軽トラよりは大きくて、普通のトラックよりは小さい・・・・・・」
「1トントラックのことかな。」
「多分それですわ。たづなさんはコースの外ラチを越えるのをめんどくさがったのか・・・・・・」
「まさか・・・・・・」
「まさかですわ。軽トラより大きいトラックを持ち上げ、外ラチを越えてしまったんですのよ。」
「嘘だろ。流石にたづなさんがウマ娘でも1500キロ持ち上げるのは無理だろ。」
「あ、あの。バーベルのように持ち上げたわけではありませんわよ?トラックの前の方を持ち上げて外ラチを越えて、後ろに回って押し出したのですから。」
「にしても・・・・・・それが出来るのはジェンティルくらいだぞ。マックイーンは無理だろ。」
「ですわね・・・・・・」
えらいエピソードが出てきた。この話が本当ならたづなさんは化け物だ。そんなわけあるか?ないよな。
「マックイーンそれ本当に軽トラよりデカイトラックだったか?軽トラと見間違えたんじゃあ・・・・・・?」
「もう前の事なので記憶が定かではありませんわ。でも荷台が大きかったのは覚えています。ですが近くで見たわけでもないので・・・・・・」
「なるほどな・・・・・・」
「次はボクだよー」
「おう。テイオーはどんな話だ?」
「えっとね・・・・・・これは割と最近。トレーナーがはちみー禁したことあるでしょ?」
「ああ。最近っていうほど最近じゃないけど。」
「最近だよーそれでね?はちみー禁が開けた日にね。どうしても我慢できなくって、夜中に買いに行ったの。」
「なにやってんだばかちん。」
「ごめーん。それでね。はちみーのキッチンカーって寮の前に来るじゃん?あれ深夜になると駅前に移動して売るんだって。だから夜中に駅前行ったの。」
「それで?」
「まぁもうわかると思うけどたづなさんに見つかっちゃってさ。駅前で。多分たづなさん夜中まで仕事してて遅い晩御飯食べてたんだと思う。」
「あーね。」
「ボク追われること想定してて中距離シューズ履いてたんだよね。たづなさんはパンプス。ボクも追いかけられちゃって。なんだけどさ・・・・・・」
「さ?」
「たづなさんめっちゃ速いの。ボク全力で逃げてるのに1バ身後ろにピッタリ貼り付いてて怖くて怖くて。」
「はえーなそりゃ。」
「うんあのスピード出せるの絶対ウマ娘だよ。スズカやライトオより速いと思う。」
「ははは!!そうかもしれんな!!」
「・・・・・・誰より、速いっていうんですか?」
「うぎゃ!!!」
「ひぃ!!!」
「うわああああああ」
気がついたら後ろにスズカが立っていた。まじでびっくりした。
「トレーナーさん?」
「あ、あ、いや。」
「す、スズカさん?」
「誰より・・・・・・速いって・・・・・・?」
「ひぃ。」
マックイーンがスズカを恐る恐る羽交い締めにする。テイオーは壁に貼り付いて逃げようとしてるが3人行動の教えを守ろうとしているのか動こうとしない。
「トレーナーさん・・・・・・?」
「あ、ああ、いや、な?たづなさんが・・・・・・」
「ああ、たづなさんですか。」
さっきまでの先頭民族の表情からスッといつものスズカに戻る。
「流石に私もたづなさんよりは速くないと思います。」
「え?」
「ええ?!」
「はぁ?」
「?なんですか?」
あのスズカがあっさりと自分は遅いと認めた。スピードジャンキーで、先頭民族のスズカが。自分より誰かが速いと、こんなあっさりと。
「なんか、たづなさんエピソードがあるのか?」
「エピソード・・・・・・ありますよ。」
「おお。」
「結構みんなたづなさんエピソードもってるんだね〜」
「まぁたづなさんほど生徒に近い職員はいませんもの。」
「私、偶に深夜ランニングに行くんですけど・・・・・・」
「うん、やめような。」
「もう行ってませんよ?それでだいたいたづなさんに見つかるんですよ。私も力を振り絞ってレースの様に逃げるんですけどいつもあっという間に捕まってしまって。どう考えてもたづなさんの方が速いんですよね。」
「そうなのか。やっぱウマ娘?」
「え?たづなさんってウマ娘じゃないんですか?」
「それがわからんのよ。誰も耳も尻尾も見てないし。」
「でもウマ娘に追いつけるならウマ娘なんじゃ・・・・・・」
「そうだよなぁ・・・・・・」
考えてもわからん。証拠は結構あるのに断定出来ないってどういうことじゃ。
「まぁ考えても仕方ない。お前達もいい頃合いに帰れよ。」
「はーい。」
「わかりましたわ。」
「あ、トレーナーさん、ちょっとお願いが・・・・・・」
「おうなんだスズカ。」
こうしてその日は大体夜9時まで仕事して帰った。
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「あ〜終わった。」
今日も堪えた。やっぱ100人以上は無理なんじゃ・・・・・・いやいや諦めるな俺。
「トレーナーさん?」
「お?たづなさん!」
駅前で飯でも食おうとブラついてたら結構顔の赤いたづなさんに会った。
「たづなさんも今帰りですか?」
「ええ。ちょっとURAの会合がありまして・・・・・・ちょっとお酒が・・・・・・」
「え?下戸なのにお酒の席だったんですか?」
「ええ・・・・・・ちょっとしんどかったです。」
「ははは・・・・・・」
「トレーナーさん良かったらこの後お食事でもどうですか?お酒ばかりでちょっとアレだったので・・・・・・」
「ああ。良いですよ。どこ行きます?」
「いつものラーメン屋で!」
下戸なのに飲んでしまったたづなさんはいつものラーメン屋に行きたいという。まぁ良いかと駅前のラーメン屋に雪崩れ込む。
「やっぱりこれですよ〜」
「たづなさんも好きですね。」
「私にはこういうのが合ってるんですよ。」
「はははは。」
そして俺は味噌チャーシュー麺を食べ、たづなさんはデカ盛り野菜ラーメンと餃子、炒飯を食べていた。
「ふぅ!これで明日も頑張れます。」
「それは良かった。」
その次の瞬間だった。やはりたづなさんは無理に酒を飲んで酔っ払っていたのかフラついて倒れたので慌てて支えたが、帽子を取り落とした。
「!!!!」
「あは、ははすみません・・・・・・」
俺は慌てて帽子を拾い、乱暴にたづなさんに被せる。たづなさんはそれにハッとなって頭を押さえた。
「・・・・・・トレーナーさん、見ました?」
「・・・・・・ええ。」
たづなさんは俺のネクタイをグイッと掴み引っ張ると鼻と鼻が触れそうな距離まで近づかれ妖艶な表情でこう呟かれた。
「えっち♡」
「は?」
そうしてたづなさんはフラフラと走って行ってしまった。
「・・・・・・。」
あの帽子の下の物を見たからうなづける。たづなさんはウマ娘の可能性が高いと。だが何故頭頂部を見ておきながら断言出来ないかというと・・・・・・
「・・・・・・なんで耳が片方しかないんだ。」
たづなさんの頭頂部の耳は右耳しか存在していなかったからだ。