この世界には、元の世界では考えられないほど超常現象が身近だ。これはそれを体験した時の話だ。
ある日、俺は働きづめに働き、推定10ヶ月連続出勤をしてボロボロになっていた時のこと。見かねたルドルフに休めと怒られ、身を粉にしすぎだとマックイーンに泣かれ、おばかとキングに罵られた。そして俺はたづなさんと理事長に直談判した担当達の働きで一週間の休暇をもぎ取った。休めるのか・・・・・・と一安心したのも束の間。ルドルフの命でマックイーンにメジロ家の湖畔の別荘を確保され、そこに押し込められることになった。見張り付きで。
「ふぅーーー・・・・・・」
そして湖畔の別荘のバルコニーで優雅に葉巻をくゆらせながら過ごしていた。
「ふは・・・・・・美味いもんだ。仕事の心配も無く吸える葉巻というものは。」
「トレーナーさん、おやつですよー」
「おう。」
見張りその1。ニシノフラワー。食事、おやつ、洗濯担当。
「トレ公!晩ご飯はスカイが釣った魚にするね!」
「にゃははースカイちゃん頑張りましたよー」
見張りその2、その3ヒシアマゾン、セイウンスカイ。食事全般担当とお昼寝担当。
「トレーナーさん・・・・・・コーヒーも・・・・・・おやつと一緒にどうぞ・・・・・・」
「いいね〜」
見張りその4。マンハッタンカフェ。コーヒー担当。
「みんなもおやつにするか。」
「そうしましょう〜」
「あ、じゃあもっと用意しますね。」
「あたしはいいよ。魚捌いとくから。」
「コーヒー・・・・・・全員分淹れますね・・・・・・」
以上が俺の見張りである。まぁなんの見張りかってちゃんと休んでるかの見張りだから。
「トレ公明日はどうするんだ。」
「明日か・・・・・・明日はどうしようかな。」
「ベッドから起きたらタバコ三昧ですけどそれは流石に健康に悪すぎます。タバコは一日に10本。葉巻は3本までにしてくださいね。」
「わかった・・・・・・」
「トレーナーさーん明日はスカイちゃんと釣り行きましょうよー」
「釣りか・・・・・・俺経験無いけど・・・・・・」
「釣り糸垂らしてるだけで安らぐものですよ〜」
「そういうもんか・・・・・・」
「じゃあ明日も魚料理にするか。イワナが釣れれば食べたいなー」
「湖だから釣れるのは鱒ですよー」
よし。じゃあ決まり。明日は釣りだ。
「ちなみに今日は何匹釣ったんだスカイ。」
「今日は60匹くらい釣りましたよー。ボートがいっぱいになりましたね。」
「すげぇなおい。」
そんなに釣ってたのか・・・・・・そしてキッチンを見に行くとものすごい速度で魚を捌き串打ちして焼くヒシアマがいた。
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翌日。俺はスカイと一緒にボート・・・・・・ボートこれ?なんか豪華な釣りボートを船頭付きで借りられた。メジロ家様々である。
「よーし釣るかー」
「ういー」
ポイントに移動しルアーを投げる。キリキリと巻くと一投目からヒットした。
「うお!釣れた!!」
「おーすごいじゃないですか。スカイちゃん、ポイントが悪かったのかなー」
そして投げるたびに釣れる。釣れて釣れて釣れる。入れ食い状態で釣れる。すごい!!釣りすごい!!!面白い!!!
「うほほほもう18匹も釣れた!」
「すごいですよトレーナーさん!スカイちゃん今日は坊主みたいですねー」
「スカイは全然釣れないの?なんかおかしいな。」
「いや、まぁでも隣の人が釣れないなんて釣りじゃよくあることですよ〜」
「そうなのか・・・・・・?お!また来た!!」
その時だった。ヒットした瞬間に異様な匂いが漂ってきた。まるで死体とゴミを一緒にして腐らせたような・・・・・・とにかく、不快で、気味が悪い匂い。
「スカイ・・・・・・?」
「?」
スカイを見ると別に何も感じてなさそう。おかしいこんなに匂ってるのに。鼻の良いウマ娘がこの匂いを感じてないとは・・・・・・
「お・・・・・・お?」
釣り竿に急に手応えが無くなった。でも何もいなくなった感じでは無い。急に獲物が力を抜いたような・・・・・・
「・・・・・・?」
釣り上げた獲物・・・・・・それは。
「なん・・・・・・なんだこれ・・・・・・」
「!!!!」
でっぷりと太った気味が悪い顔の魚。それが釣れた。それを見たスカイは血相を変え、針を引きちぎりボートの上に落とすと渾身の力で踏み潰した。
「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
「す、スカイ・・・・・・?」
「ッ!!!!」
次にスカイは俺が釣った魚のクーラーボックスをひっくり返し、全て湖に棄てた。
「船頭さん!!!今すぐ帰って!!!早く!!!早くしろォ!!!」
「スカイ!?!?」
そしてすぐに帰った。岸に着くと同時にスカイは一緒に降りた船頭さんの匂いをクンクンと嗅いでいる。
「船頭さんは大丈夫・・・・・・じゃあトレーナーさんは・・・・・・」
スカイが俺の匂いをクンクンと嗅ぐ、すると苦々しい顔をして俺の手を取った。
「マズイ・・・・・・カフェさんだけでなんとかなるか・・・・・・?」
「スカイ何があったんだ・・・・・・?」
「別荘に着いたら話します。急いで帰りますよ。」
「あ、ああ・・・・・・」
そして別荘に戻ったらスカイは俺を寝室に押し込め絶対に外に出るなと言った。
「何があったんだ・・・・・・?」
そしてしばらく待った。そしてスカイとカフェがやってきて俺に大量の塩をぶちまけ、部屋中に塩を撒き始めた。
「スカイさん、一応初期対応としてしましたがこれだと・・・・・・」
「わかってるでもしないよりはマシでしょ。」
「そうですけど・・・・・・」
「なぁ、スカイ、一体何が・・・・・・」
スカイとカフェが椅子に座り俺に向き合った。スカイは顔色が悪く、カフェは結構な汗をかいている。
「まず、トレーナーさんが釣ったあれ、あれは人面魚です。」
「人面魚?」
人面魚なのかあれは。俺の世界にもいた。あれは顔の模様がある魚だったけど。けれども俺の釣った魚は口があり、歯があり、鼻があり、目があり、眉毛があった。とにかく不気味な魚だった。
「まず初心者のトレーナーさんが入れ食い状態で鱒を釣りまくってる時点で気付くべきだった・・・・・・昨日爆釣してたから気付かなかった・・・・・・」
「とにかく・・・・・・トレーナーさんは・・・・・・何かしらの怪異や、神仏の類いに・・・・・・魅入られたノかと・・・・・・」
「なんだそれは・・・・・・」
「この場合、何に魅入られたのかわからない状況が非常にマズイの。相手はこっちをわかってるのにこっちからあっちに取れる手が何も無い。」
「じゃ、じゃあどうすればいいんだ?何もしないとどうなる?」
「良くて殺されるで済むけど、最悪連れ去られる。そうなったら死ぬよりヤバいってこと、わかる?」
「トレーナーさん・・・・・・がこちらに来てから・・・・・・初めての危機です・・・・・・」
「どうしたらいいんだ・・・・・・?」
「・・・・・・真っ向から迎え撃ちます。」
「なに!?!?」
「それしか・・・・・・手が無いです・・・・・・」
「ウマ娘程度の神秘で立ち向かえるかわからないけど・・・・・・」
「やるしか・・・・・・ないです・・・・・・今・・・・・・この別荘にいるウマ娘で・・・・・・立ち向かえるのは・・・・・・私だけですが・・・・・・」
「まじかよ・・・・・・」
するとカフェは部屋の四隅に何か細工をし始めた。そしてそのまま食事も無く夜になった。フラワーとヒシアマも塩を撒いて部屋に閉じこもってるらしい。
「トレーナーさん大丈夫?」
「トレーナー・・・・・・さん・・・・・・?」
「いや体調は大丈夫なんだか・・・・・・匂いが・・・・・・」
「匂い?」
「匂い・・・・・・?何も・・・・・・しませんが・・・・・・」
「いやするんだよ。なんかゴミとか、死体が腐ったような匂いが・・・・・・」
「!!!」
「スカイさん・・・・・・!!!!」
「うん!!なんとかなるかも!!!」
「え?え??」
「トレーナーさん!!助けられるかも!!」
「そ、そうなのか・・・・・・?」
「トレーナーさん、アイツなら・・・・・・なんとかできます・・・・・・」
「アイツって・・・・・・?」
「狐です。」
「は?」
「トレーナーさんは狐にだまされてるんですよ。」
「え?こんな大騒ぎしたのに狐なの?」
「・・・・・・?」
「あれ・・・・・・?」
「え?」
「トレーナーさん、狐ってなにか知ってますよね・・・・・・?」
「ま、まぁ・・・・・・知ってる・・・・・・けど・・・・・・あの、こんこんって鳴いて、北海道ではエキノコックス持ってるやつでしょ・・・・・・?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
二人は驚いた顔をしている。そしてまた血相を変え始めた。
「なにそれ・・・・・・」
「トレーナーさん・・・・・・なんですかそれ・・・・・・」
「は?」
「狐は・・・・・・妖怪ですよ。唯一実在が確認されている。」
「対処法が確立しているので・・・・・・恐ろしいですけどなんとかなるんです・・・・・・」
またもや俺の知らない神秘が出てきた。どうなっちゃうのこれは。