「まずさ、トレーナーはウマ娘の乳児についてどう思う?」
「え?そうだな・・・まぁ可愛いなぁくらいには・・・だけど今までの話からすると乳児でも危険なのか?」
「そうだね。そういう意識が芽生えてくれて嬉しいよ。」
「じゃあウマ娘の赤ちゃんが人間にとってどれだけ危険か説明するぜ。クリーク。」
「はいゴルシさん。そうですね・・・ウマ娘の赤ちゃんは具体的に身体の強さを言いますと。握力が40キロ。」
「握力40キロ!?乳児じゃないのか!?」
「乳児ですよ。それに成長するとどれほどの握力になるかご存知ですか?私、140キロありますよ?」
「アタシでも137キロ。」
「あたしは160キロある。」
「ええ・・・!?」
「蹴りの力はもっとすごいですよ。50キロ近くあります。」
「蹴りの力は50キロ・・・!?」
「大人になると1200キロは越えるぜ。ジェンティルなんかは2500キロ行くんじゃねーか?」
「まじか・・・いやでも・・・ウマ娘に蹴られるのは危険だって言われてるもんな・・・」
「おう。ここまでで人間には育てらんねーってわかるよな。」
「おう。」
信じられない。これがウマ娘の赤ちゃん・・・範馬刃◯が可愛く見えるレベルだ。下手したら赤ちゃんに殺される未来が待ってる。人間にとって危険生物どころの話じゃないぞ・・・
「人間はウマ娘の赤ちゃんに指を握られただけで骨折。」
「おむつ替えで蹴られたら骨折。」
「授乳中に齧られでもしたら乳首が取れちゃう。」
「お、おう・・・」
「さらにだ。食事量も半端じゃねー。」
「ウマ娘の赤ちゃんはミルクを3リットル程飲みます。」
「母乳じゃまず育てられないんだよ。」
「そうなのか・・・」
「だからポニーポストがあるんだ。」
「ポニーポストに捨てられたウマ娘は国営の施設で育てられるんだよ。」
「へぇ〜・・・」
確かに人間じゃ育てられない。それにこの言い方だと人間から生まれるウマ娘は結構居ることになる。すごい世界だな・・・
「ポニーポストってよ。まず生まれた段階で病院が入れるかどうか聞いてくれるんだ。」
「普通はそこで入れるんだけど・・・」
「稀にそこの段階で入れない場合がある。」
「え?それはどうしてだ?」
「子供に身バレするからだよ。」
「それが何の問題が・・・?」
「もし、もしだ。子供が捨てられた事に恨みを持って探し出されたら・・・?」
「そういう場合が無いなんて事はないんだよ。」
「ええ・・・」
「病院からポニーポストに捨てる場合は親の双方の個人情報の提出が義務だ。」
「だけど自分でポニーポストに捨てる場合はそうじゃない。」
「身バレしたくない親は、病院で聞かれた段階では捨てず、後で自分でポニーポストに捨てに行くんだ。ひでー場合は3歳くらいまで育ててから捨てる。」
「それは・・・」
ひどい話だ・・・でもさっきゴルシは悪い話ばかりじゃないと言った。それはどう言うことだろう。
「ゴルシ、さっき悪い話ばかりじゃないと言ったよな。それはどう言うことなんだ?」
「んーとな。単純に施設がすごく良い施設だって事なんだよ。」
「周りにいるのはみーんなウマ娘、お姉ちゃんがいっぱい。」
「ご飯も美味い。施設を出た後も支援してくれるしな。」
「ふーん・・・ん?」
「どうしたの?」
そういえばネイチャは商店街のみんながーみたいな話を聞いた事がある。もしかしてネイチャは施設組じゃないのか・・・?
「ネイチャやクリークは・・・施設組じゃないのか・・・?」
「ああ、アタシは人間の両親だけど、近くに乳母的な役割を担ってくれるウマ娘がいたんだ。だから施設には行ってないの。」
「私も人間の両親です。似たような感じですね。」
「そうなのか。じゃあゴルシは・・・」
「あたしは施設だ。」
「そうか・・・」
「そうしょぼくれんなって。あたしの親は病院で捨てずに後からの親だったけど施設は良いとこだったから。恨んでねーよ。話聞けば仕方ねーって納得も理解も出来るし。」
「おう。」
ちょっと一息ついてデザートのケーキを食べる。他に聞いておいた方がいい事は・・・
「そうだ・・・学校。」
「学校?」
「おう、ここまでの話を聞くと学校も人間とウマ娘は別れてるもんだろ?でもこないだ新聞でウマ娘が同級生の男子に怪我させたってのを見たんだ。あれはどう言うことだ?」
「あーそれはね。」
「私立の共学のとこですね〜」
「そんな・・・それは大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないですよ〜?」
「ええ・・・」
「共学の私立っていうのは将来社会に出た時にウマ娘と職場が一緒になっても大丈夫なような精神を育むためっていう場所だよ。」
「だからウマ娘の学費は高く、人間の学費はべらぼうに安い。」
「その代わり、ウマ娘に何されようと自己責任。訴える事は不可能なんだ。」
「へぇ〜・・・」
「正直、共学に入れられた子供はかわいそうだぜ。親の都合で入れられるんだから。」
「普段は温和でも一瞬の手違いで掛かるウマ娘がいる場所ですからね〜」
「相当怖いでしょうな・・・」
「トラウマ製造学校なの?」
そんなのが許されて良いのかよ・・・こえーよこの世界の日本。
「まぁでもさ、アタシは共学にいたけど。仲良い人間の友達もいたよ。」
「好かれ過ぎても、嫌われ過ぎても困るのがウマ娘ですからね〜」
「ちょうどいい距離感を掴む為の学校だと思えばちょうどいいんじゃねーの?」
「ふーん。」
デザートを食べ終わる。紅茶を一口飲んで一息吐く。だいぶ話聞けたな。
「あ、もう8時じゃん。」
「あら〜そろそろ帰らないと。」
「だな。じゃあなトレぴっぴ。また来るぜ。」
「おう。いつでも来いよ。」
「そういう態度も本当は悪いんだけどな・・・」
「まぁまぁ・・・」
「トレーナーほんっっっっっっと自衛しろよ?」
「わ、わかった。」
こうして3人は帰っていった。そしてテレビをつけて。ニュースをぼんやり眺めていると先日のレースのハイライトが映し出されていた。
「こんな・・・こんな熱狂してるのに、裏ではウマ娘と関わりたくないって顔してるのは・・・なんだかなぁ・・・」
そんな有様に薄ら暗さを感じて、風呂の準備をするのであった。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ある日。トレーナールームで必死こいてトレーニングメニューを作りながらコーヒーをねぶっている。やっぱ100人担当は無茶だったか・・・?いやでもやるって言っちまったんだ。やるしかねー。
「ひー。」
するとコンコンコンとドアがノックされた来客の予定は聞いてない。誰だろう。
「どうぞー」
「失礼する。」
入ってきたのは理事長だった。まさか・・・またあの話か?
「トレーナー君。あの話、考え直してくれたか?」
「前にも言ったじゃないですか。俺には過ぎたる事ですって。」
「だがこうでもしないと・・・」
「それは・・・」
いや・・・俺はウマ娘達に話を聞いて、少し意識が変わったんだった。だとするとあの話も少し見方を変えられるかもしれない。
「わかりました。詳しく聞かせてください。」
「おお!本当か!」
「ええ・・・少し思うところがありまして。」
「そうか!!実に助かる!!正直受けてくれないとトレセンの沽券にもトレーナー達の就業意識にも関わる事なのだ!」
「ええ・・・」
「それじゃあ・・・説明させてもらう。君の給料に付いて、だ。」