発情期、動物等が繁殖の為に訪れる時期の事。それくらいしか知識は無い。それがウマ娘にもあるとは・・・驚いた。
「いいか貴様。エアシャカールが発情期に入っている。まずはそれを理解しろ。」
「チッ・・・」
「お、おう・・・」
「それじゃ、まずは簡単にウマ娘の発情期について説明するぞ。」
ゴルシはホワイトボードにチャカチャカと円グラフを描き始める。
「いいか?まずウマ娘の繁殖期は4月から9月の5ヶ月間だ。そのうち1ヶ月から2ヶ月が発情期になるんだ。」
「だからウマ娘の誕生日が年初めから初夏に集中してるのか・・・」
「おうそうだぞ。この繁殖期は特に言うことはねー普通の繁殖期だ。厄介なのがこの発情期だ。」
ゴルシがホワイトボードの発情期、と書かれた文字をぐるぐると赤ペンで囲む。
「発情期ってのはその名の通り、発情する。発情期は子供が産める様になったウマ娘だけが突入するんだ。子供が産めなくなる年齢まである。」
「貴様、この発情期は全てのウマ娘にあるのだ。余もその時は苦労する・・・」
「発情したウマ娘は排卵しやすくなって、妊娠率はほぼ100パーセント。確実だ。その時ウマ娘は伴侶となる男を探すようになり、割と凶暴になる。」
「いいか。発情したウマ娘による犯罪は後を絶たない。誘拐、脅迫、果ては殺人。いくらでもある。」
「ちょうどシャカールが発情期みたいだから、それで説明するぞ。すまねぇなシャカール。」
「チッ・・・まぁ良い。トレーナーに知識詰め込むのも必要な事だ。」
「すまねぇ。トレぴっぴ。シャカールの様子を見たろ?いきなり結婚について聞くようになったり、結婚について過剰に反応したり。普段の冷静なシャカールじゃありえねぇ。シャカール薬飲んでるか?」
「ああ・・・ちょうど10時に飲んだ。今4時だから・・・次の薬は晩飯前だ。」
「そっか。ちょうど薄れる時間かー」
「薬?発情期に飲む薬があるのか?」
「おう。言ったろ?排卵しやすくなるって。それで女の子の日が調子悪くなる事があんだよ。それだけじゃねぇ。発情による気分の変化を抑える効果があったり、食欲の変化を整えたり。」
「なるほどな・・・」
「貴様、先程も言ったが発情期のウマ娘は凶暴だ。学校、勤務先にいる場合はそれで特別に休みを許可されたりもする。ほとんどが自宅で苦しみながら発情期が終わるのを待つ。」
「ちょっと待て、俺の担当でそんな長期休みを取ったやつなんて・・・」
「トレセンにいる場合は薬が保健室で処方される。その薬があれば長期の休みを取る必要は無い。まぁ薬も一長一短だがな・・・」
「そうなのか・・・」
「薬についても説明しとくか。」
「それがいいな。」
「じゃあトレぴっぴ。薬はウマムスミアピンって薬だ。覚えておいてくれ。」
「おう。」
「薬の効果はな。ピルみたいに排卵を抑制したり、調整したり、イライラや情欲を抑えたり。全部説明すると長いから省くけど問題は副作用だ。」
「副作用があるのか?」
「ああ。肌が荒れやすくなったりとか。尻尾の脱毛症とか、爪が白くなったりとか。まぁこれはそこまで問題じゃねぇ。」
「別な問題があるのか?」
「おう。それはな。全身に下着がズレたような不快感が現れることだ。発情期のイライラは抑えられてもこの副作用でイライラするウマ娘は多い。ま、大したイライラじゃないけどな。全身を撫でられでもしない限り。」
「そうなのか。」
「オルはこの感覚が嫌いみたいでな・・・だけど発情するよりはマシだから仕方なく飲んでる感じだ。」
「うむ。これなら毎秒湯浴みをしていたい。」
「ふぅん・・・」
発情期についてはあらかた聞けた。あと聞いといた方が良いことは・・・
「そうだ。シャカール、大丈夫か。」
「ん・・・おう。」
「今日は早めに戻りな。」
「そうさせてもらうわ・・・」
シャカールは立ち上がり、出て行った。・・・よし。
「・・・貴様。」
「ああ、少し聞きたい事があって。シャカールは退室させた。」
「・・・何を聞きたい。」
「オル、シャカールは発情期に入ってどれくらいだ?」
「・・・そうだな、あの様子を見るに2週間と言ったところか。」
「どれくらい薬を飲んでいる?」
「1日3回だ。」
「副作用、さっきゴルシが言ったやつだけじゃないな?」
「・・・。」
「よく気づいたなトレぴっぴ。」
「いや気づくだろ。シャカール、ただのノートをパソコンだと思ってるんだぞ。」
「そうだ。ウマ娘の発情期を抑える薬の副作用に、軽度の幻覚がある。一種の、麻薬なんだよ。依存性も少々ある。」
「・・・。」
「まぁ禁断症状とか、離脱症状があるもんじゃねぇよ。」
「そうか・・・」
「シャカールはそれを知らねぇと思う。まぁこの事を知ってるのはよく調べた一部だけだ。」
「シャカールが・・・それを調べてなかったと?」
「シャカールは医者とか信頼してるやつはそいつの言葉を信じるからな。」
「そうか・・・」
「禁止薬物には指定されてねぇから安心してくれ。」
「それは安心・・・だが・・・」
「まぁ・・・ウマ娘なら飲み続ける物だ。トレセンにいるうちはタダだけど、病院でもらうと高い。簡単に処方してもらえるんだけどな。」
「・・・。」
「ついでに子供の事も説明しとくか。こないだ説明しなかったしな。」
「?」
「ウマ娘の子供はこないだ説明した通りだ。妊娠してる時はな、胎児のままだとウマ娘か人間かわからねぇ。だから堕ろせる段階でウマ娘と判別して堕ろすのは無理なんだ。」
「そうなのか?」
「おう。ウマ娘か判別するのは妊娠250日を過ぎた段階でのエコー検査とかか、妊娠期間で判別する。」
「そんなにわかんないのか・・・それと妊娠期間?」
「ああ、人間は十月十日で生まれてくるだろ?だけどウマ娘は平均340日。ほぼ1年掛かるんだ。」
「おう。」
「そこで判別して・・・ポニーポストの準備をする。」
「なるほどな・・・」
「妊娠してるウマ娘についてもしておけ、ゴルシ。」
「そうだな。」
「何か人間と違うのか?」
「ああ。これはどういう理由でそうなってるのかは分かってないんだけどな?妊娠してるウマ娘は夫でさえ近づかせない程凶暴だ。それは妊娠初期から。まるで人が変わったかの様に凶暴になる。」
「気をつけないとな・・・」
「まぁ結婚でもしない限り会う事なんてないだろ。」
「そうだな。基本は妊娠したウマ娘は病院に缶詰だ。」
「ふぅん。」
またもや俺のウマ娘データベースに情報が追加された。大分しれただろう。後なんか聞きたい事あったかな・・・
「今日はこの辺にしとこうぜ。」
「そうだな。トレーナーに詰め込み過ぎても把握出来ないであろう。」
「それは助かる。」
「じゃああたし達も戻るわ。」
「おうまた明日な。」
みんな帰っていった。まぁ聞きたいことが出来たらまた聞けばいいか。するとコンコンコンとみんな帰ったトレーナールームにノックの音が響いた。
「トレーナーさん、いますか?」
「たづなさん。どうしました?」
「少し書類をお持ちしまして。」
「なるほど、拝見します。」
たづなさんだった。ちょっと書類を持ってる。
「これなんですけど・・・」
「あ、その前に、コーヒーでもいかがですか?」
「まぁ。いただきますね。」
コーヒーを淹れて書類の話をして一息。
「ふぅ・・・」
「書類はまぁレースの関係ですね。」
「はい。次のレースに関してです。出走表ももうすぐ持ってきますね。」
「お願いします。」
コーヒーを一口。うん美味く淹れられてる・・・そうだ。
「たづなさん。」
「はい?」
「ちょっとお聞きしたい事が。」
「何でしょう?」
「昨今騒がれている・・・レースの低迷について。」