「レースの低迷化・・・ですか?」
「はい。たづなさんはどういう見解を持っているのかな・・・と。」
レースの低迷化・・・と言うより観客数の目減りが問題化されているのだ。ネットの視聴数は微増な事からレース場に足を運ばない人が増えていると言うことだ。
「うーん・・・そうですね・・・最近のレース事情は誰か1人が強い一強の時代ですから・・・そのせいもあるのかもしれませんね。」
「なるほど・・・」
「あとは・・・」
「あとは?」
「・・・新聞やニュース等で、ウマ娘による事件が多くて、ウマ娘に忌避感を抱いている・・・というのもあると思います。」
「・・・。」
そう、それだ。みんなウマ娘が怖くなっている、というのが大きいと思う。というか、ウマ娘が怖いと言うのがおかしいのだ。正直前の世界で馬による事故というのは本当に少なかった気がする。俺のアンテナの張り具合が悪かったのかもしれんが、気性難こそいるものの人に危害を加えるような凶暴な馬の話は聞いたことがない。馬との共存を成していたのだ。厩務員の努力や馬主の相馬眼など様々な要因があるにせよ。この世界ではウマ娘との共存が上手くいっていないということ。
「ウマ娘って・・・なんでそんな事件を多く起こすんですか?」
「え?それは・・・」
「以前俺が召喚された時、俺の世界ではウマ娘の代わりにウマという動物がいる・・・という話をしましたよね。」
「ええ・・・そうですね。」
「そのウマという動物は、そんな凶暴な面は持ってないんです。こないだルドルフに話を聞いたり・・・今日もオルと話をして、気に掛かっていたんです。」
「そうなんですか・・・」
「ウマ娘に何が起きているのか、調べる必要があると思うんですよね。」
「・・・なるほど。」
「まぁ・・・そういうのって・・・大学の先生とかに聞かないといけない事だとは思うんですが・・・」
「マスコミの報道の仕方にもあると思いますよ?ウマ娘の事故事件を多く取り上げて、触れ合いの部分を報道しないところもありますから。」
「あー・・・」
マスコミの問題もあるのか・・・まぁ確かに。ニュースでは多くウマ娘の事故事件が取り上げられる。その他にウマ娘とのハートフルな案件も必ずある。それを報道していないというのは意図的に情報が操作されている可能性もあるのか。
「まぁマスコミはそういう波があると思っていいいです。ちょうど今はそういうのを多く取り上げる時期なんですよね。しばらくすると友好的な面を取り上げるようになりますから。」
「そうなんですか?」
「ええ。」
うーん・・・ならば仕方ない・・・か。それは放っておこう。それよりもウマ娘の凶暴化だ。明らかに人間社会に馴染むには行き過ぎたもの。なんとかしたいが俺1人の力なんてたかが知れている。
「幸いおれの担当で凶暴化する子はいませんが・・・それでも一瞬カッとなる子はいます。その度に取り押さえられてますけど。」
「ルドルフさんが言ってましたね。専属担当の子は必ず人目のある共有スペースを使うこと。複数担当の場合は3人以上でトレーナーと会うこと。」
「それみんなに言ってたんですか。」
「そうですね。不幸な事故を減らす為と言ってました。」
「まぁ・・・納得はあります。」
「私からすると・・・ウマ娘と、人との距離が近すぎるから起きてる事だと思うんですよね。」
「距離が近すぎる?」
「はい。いくらなんでもウマ娘は人の社会に馴染み過ぎたんだと思います。人と同じシルエットだからと言って、人と同じ生活が出来ると考えた弊害ですね。」
「なるほど。」
「ウマ娘はウマ娘で、人は人で生活すべきなんじゃないか・・・と最近は考える様になりましたね私は。」
「そうですか・・・」
「でも、それってとっても難しいんです。」
「それは・・・どういう?」
「ウマ娘って、人が大好きなんですよ。なるべくなら人と一緒にいたい。そういう思いがあるからこその距離の近さだと思います。」
「・・・。」
人が大好き・・・か。ブラストワンピース・・・ブーなんかが良い例だな。あいつは人が好きすぎる気があるけど。
「人が大好きなのに・・・傷つけてしまう・・・事故事件で被害を被っているのは人間ですが、心を痛めているのはウマ娘でもです。わざとじゃなかった、そんな気はなかった。そういう事故ばかりですよね?」
「拉致・・・とかありましたが。」
「それは例外です。」
「あっそう・・・」
「人間が力の差をわかってないんじゃなくて、ウマ娘が力の差をわかってないんです。人間は、弱い生物なんだって言うことを理解しなければなりません。」
「ウマ娘の方がわかってないパターンか・・・」
まぁ・・・考えれば同じことか。馬も厩舎に入れて厳重に管理して世話してるから事故が起きてないだけであって、人と密接してたら事故なんて起きまくる。ウマ娘ではそれが起こってるんだ。普通馬と人間は同じ家では暮らせない。
「・・・。」
「レースの観客動員数の低迷は・・・そういう理解してたつもり、の積み重ねで起きています。レースを盛り上げてもなかなか解決する問題じゃありません。」
「面白いレースをすれば良いわけじゃないのが辛いところですね・・・」
「ええ。お互い理解に齟齬が起きつつある世界を変えなければならないんです。」
「世界を変える・・・」
とんでもない時期に俺は召喚されてしまったな・・・世界を変えるなんて到底無理。だが・・・
「俺が・・・懇意にしてる新聞社に・・・協力を仰ぎましょう。」
「え?」
「情報を対価に、ウマ娘の良いところの記事を書かせます。」
「でも・・・」
「ええ、普通にやるだけじゃ、相互理解なんて夢もまた夢です。少し手法を変えなければなりませんね。」
「どうやるんですか?」
「たづなさん、俺の世界では・・・わからせというジャンルがありましてね?」
「わからせ?」
「ええ、人間に、ウマ娘の力のわからせをします。」
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「で?これはどういうことかしら?トレーナー?」
「そ、そう怒るなキング・・・」
後日、俺は公開トレーニングの日を設けた。新聞社だけを呼ぶはずだったんだが、100人担当の俺の公開トレーニングということで雑誌記者に話が回り、巡り巡ってテレビ局にまで話が回って大勢のマスコミが押し寄せる事になった。まぁ俺としては呼ぶ手間が省けて良かった。一気に来たので予定を詰める必要があったが。
「公開トレーニングは聞いたわよ?なんで力比べになっているのか聞いているの。」
「いや、これはある種の実験だから。」
「そうなの?まぁそれも良いわ。1番悪いのは・・・」
「なんだ?」
「優勝者のご褒美よ!!!」
公開トレーニングはパワートレーニングの集大成として力比べを実施する事にした。走る姿はレースとかで見慣れてるし、力がわかりやすい方が良いと思って・・・そして1番トレーニングの成果が出ている物にご褒美も用意した。キングはそれについて不満たらたらというわけだ。
「いやか?俺からのハグ。」
「い、嫌じゃないけど・・・あなたほんとおばか。あれだけ話をしたのに死にたいわけ?」
「ハグにしたのも理由がある。規格外のウマ娘のパワーを持ってして、人間とのハグという精密なコントロールも出来るというのを知らしめる為なんだ。」
「考えがあるなら良いけど・・・いや、良くない。優勝するとしたらジェンティルさんよ。どう考えても背骨が粉砕されるわ。」
「いやいや・・・流石のジェンティルもそんなことせんだろ。」
「だと良いけど・・・」
ふと、少し離れた場所で体を温めているジェンティルを見る。ジェンティルはさも優勝は当然と言った感じで鼻歌混じりに体を伸ばしているが・・・何も1番力の強い者が優勝するわけではない。1番成長率のあったものが優勝するのだ。騙してない。ほんとだよ。
「それじゃ!!!記者の皆さん!!!始めます!!!」
俺の号令でカメラやビデオが回り始める。キャスターが着々と話し始めた。プロは流石だ。こうして100人担当の俺のチームの公開トレーニングが始まった。1番力の強かったのはやはりジェンティルだったが、成長率は500キロのバーベルから軽トラを持ち上げるまでに至ったマーベラスサンデー、マベが優勝する事になった。その時のジェンティルの悔しそうな顔よ。マベはおっかなびっくりと言った感じで俺とハグし、その姿をテレビで流した。まずは馬とは違い、人と変わらない感情を持つウマ娘の、そして繊細な10代の女の子である俺の担当の可愛らしく、優しい面をマスコミにアピールした。だが、やはり俺の体は無事じゃ済まなかったようで、背骨を僅かに剥離骨折していた。これを伝えると嬉しそうなみんなを曇らせることになるので俺は生涯黙っている事にした。
ここまでになります。
以上、本当は怖いウマ娘プリティダービーでした。
思いつきで始めたのでもう書けません。いつも書いてるやつの更新に戻ります。
あまり愉快な感じの小説ではありませんでしたが感想、評価、ありがとうございました。