こんなネガティブな妄想に何が琴線に触れたかはわからないんですが・・・面白いと言ってくれるなら面白くしてみようと思います。でもこう言う場合って失敗しますね。
それではどうぞ。
ある日、俺は担当の1人であるアグネスタキオンに他の担当達のデータを渡しに行った。タキオンはクラシック期で引退という不完全燃焼ではないかと言われる早期引退劇を繰り広げたが本人は我関せずという有様。俺はもうちょっと走ってもらいたかったなぁとごちたらそういうことは引退する前に言ってくれたまえよと返されてしまった。理科準備室はぽかぽかと春の日差しが入り込んでいて暖かい。タキオンはフラスコ片手に物書き、カフェは豆を炒っている、おそらくコーヒー豆、あと寝息が微かに聞こえた。
「はいタキオン。これ全部ね。」
「ありがとうトレーナー君。これでまた研究が捗れば良いんだけどねぇ。」
「まぁどう言う結果になるかは精査してみないとわからないだろ。シャカールも言ってたぞ。」
「シャカール君のデータも確かに有用なんだけどスタンスの違いで私のデータには使いづらいからね。」
そうして理科準備室の一角にドカンと書類の束を置く。タキオンは1番上からしげしげと眺め始め俺は一仕事片付いたとやたらと座り心地の良いソファーでふんぞり返った。カフェが買ったらしい。
「ふぅむ・・・だいたいはもう本格化の終わりのデータになってしまうね・・・新入生の生のデータが欲しいところだが・・・」
「あーうちは超大規模チームだからな。というかタキオンは今どんなデータが欲しいんだ?」
「今かい?今は食生活のデータさ、走行データはみんなのおかげでだいぶ集まったからね。」
「食生活か・・・」
俺の担当達にはとにかく飯を食うように言いつけてある。太るとかお構いなしに食べろ。俺が絶対に太らせないから、と。スペ、オグリ、ライスを筆頭に爆食してる担当達だが俺は細心の注意を払って管理している。
「・・・。」
「これはライラック君か・・・ちょっと偏食気味になったか・・・?これが反映されてるのは・・・」
「・・・。」
「キセキ君はこれで足りてるのか・・・?どう足掻いても・・・」
「・・・。」
「ふむ・・・ふむ・・・」
ふと・・・思った事がある。ウマ娘と人間は、食べる物が同じだ。量という違いはあれど同じ。トレーナーになる際の勉強で学んだがどうしても疑問が残る。
「なぁ・・・タキオン。」
「ふむぅ・・・ん?なんだいトレーナー君」
「ウマ娘って、人間と食べるものって同じなのか?」
「それはそうだろう。ウマ娘だって人間とは違う種族だが同じヒト科だよ。」
「たとえば・・・たとえばだ、タキオン。俺はトレーナーになる時栄養学を学んだ。その時、摂取する量によっては毒になる物質だってあるって知ったんだよ。ウマ娘は人間とは比べ物にならない量を食べるだろ?それって本当に大丈夫なのかと思ってな・・・」
「なるほど・・・」
「覚えるには覚えたんだがまだ理解が追いつかなくてな・・・」
「まぁそれは仕方ない。トレーナー君は異世界人でウマ娘がいない世界から来たからウマ娘の栄養学に理解が及ばない事もうなづける。」
「だろ?ちょっと掻い摘んで教えてくれないか。」
「いいだろう。トレーナー君がそう言うところを理解すればデータの講評に何か生きるかもしれないからね。」
「ありがとう。」
「じゃ、ちょっと準備するから待っててくれたまえ。」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「それでは授業を始めるよトレーナー君。」
「はい先生!」
「なぜ私も・・・」
「いいじゃないかカフェ〜トレーナー君が寂しがらないようにだよ〜」
「・・・。」
「すまんカフェ、ちょっと付き合ってくれないか。」
「・・・キリマンジャロ、700グラムで手を打ちます。」
「おっけー」
「じゃ、トレーナー君、まずはこれだ。」
タキオンがパソコンを操作すると準備されたスクリーンにイラストが投影された。そこにはウマ娘とヒトの摂取カロリーの違いが書かれていた。
「まずだ。人間の男女の1日の必要接種カロリー。大体大人の男性が2600から2750キロカロリーだ。これを目安にするよ。」
「おう。」
「続いてウマ娘、ウマ娘の10代、ティーンエイジャーの必要な接種カロリーは最低で4800キロカロリーから最大10000キロカロリーを超えるんだ。」
「やっぱ多いんだな。」
「だね。やはり代謝からなにから違うし。必要な栄養も違う。何が必要かはトレーナー君は知ってるだろうから省くよ。」
「おう。」
「まず、何故コレだけのカロリーが必要かと言うと成長に伴うエネルギー量が人間とダンチなわけだ。それは走る為に特化されたと言っていい。」
「なるほどな。」
「ウマ娘も大人になれば落ち着くが・・・今は良い。さてトレーナー君。ここで問題だ。ヒトとウマ娘が接種カロリーが違う原因になる、ヒトには無くてウマ娘にはある現象がある。これはなんだい?」
「おいおい俺を舐めてるのか?これでもトレーナーだぞ。本格化だろ?」
「正解だ。ヒトには無くてウマ娘にはある本格化。これはレースに走る走らない関係無く、全てのウマ娘が本格化する。この本格化に備えてウマ娘はカロリーを必要とするんだ。次の問題だよ。本格化とはいったい何だい?」
「体が一気に走るのに適合することだろ?」
「うーんトレーナーとしては正解だが、この問題では不正解だ。」
「ええ?」
「本格化、と言うのは羽化に近い現象だ。」
「羽化・・・?」
「そう、昆虫が、蛹から成虫になるような、羽化。これが本格化とされている。」
「ふぅん・・・?」
「少し脱線するがこれを見てくれ。」
タキオンがスライドを切り替え、幼いウマ娘と身長が高く、スタイルの良いウマ娘が笑顔でピースする写真が写し出された。
「このウマ娘は同一人物だ。」
「そうなのか?」
「ああ、そしてこの変化はたった4ヶ月で幼い姿からここまで変貌した。」
「4ヶ月!?!?」
「これが本格化なんだよ。幼い頃は身長128センチ。本格化を迎えたら187センチまで伸びた。急激な成長だよ。」
「・・・。」
「まぁトレーナー君の周りでこれほど急激な本格化を迎えた子はいないからびっくりするだろうねぇ。」
「そうだな・・・基本的に本格化を迎えた子が俺の所に来るから本格化前の子を見たことが無い・・・」
「これほどの急激な成長をするのだとしたら接種カロリーがヒトの大人の四倍ほどあるのが納得出来ないかい?」
「出来るな。これがウマ娘の神秘か。」
「まぁこれは神秘というほどではないね。」
「え?」
「諸説ある内のひとつの説なのだが・・・原初のウマ娘、というのは生まれた瞬間から立つ事の出来る生物だった、という説があるんだ。牛や山羊のようにね。」
「そうなのか?」
「うむ。こういうウマ娘の起源の説というのは実にしっちゃかめっちゃかで眉唾で意味のわからないものが多いんだが、この生まれた瞬間から立つ事の出来た種というのは私も支持してる説のひとつなんだ。以前は違かった。」
「え?なんで?」
「トレーナー君だよ。」
「は?」
「トレーナー君が、ウマという生物の話を持ち込んでくれただろう?それを知ってこの説を支持し始めたんだ。」
「???」
「ウマ・・・ウマ娘の異世界のでの姿ならば、納得が行く。本格化も、生まれた瞬間から立つ必要の無くなったウマ娘が2度目の立ち上がりとも言える羽化を経験することで走るのに適合されていくというのなら理解ができる。」
「な、なるほど?」
「話が脱線してしまったね。さて戻そう。ウマ娘の食事に関してだ。」
再びスクリーンが切り替わる。そこには何やら大量の草を前にして嫌そうな顔をしているウマ娘が映っていた。よく見るとナイフとフォークを持っている。
「ウマ娘とヒトは食べる物が同じ・・・と言われているね。でも、詳細は少し違う。」
「どういうことだ?」
「ウマ娘はヒトと同じ物を食べる、のではなく、ヒトと同じものも食べられる、という事だよ。」
「・・・???」
「ウマ娘は雑食だ。ここまではいいかい?」
「おう。」
「だが雑食は雑食でも草食寄りの雑食なんだ。このスライドを見てくれ。」
シャッとスクリーンが切り替わる。そこにはズラッと数字と難しそうな名前が羅列されていた。
「これはヒトと比べた時のウマ娘の消化酵素の表だよ。表を見れば・・・」
「・・・???」
「・・・噛み砕いて説明しよう。ウマ娘は野菜等を消化する酵素がヒトと比べてすこぶる多いという事なんだ。」
「なるほど・・・」
「草からタンパク質に分解する牛などに見られる物も含まれてる。本質的にはウマ娘は肉は食べなくて良いんだよ。」
「ええ・・・じゃあブライアンは無駄な事をしてるって感じか?」
「そうとも言えない。ウマ娘の体を作るのに草からタンパク質を作り出すのと肉を食べてタンパク質を摂取するのでは雲泥の差があるからね。」
「そうなのか・・・?」
「うむ。結論から言うとウマ娘の食性というのはヒトと同じではあるが牛などの草食動物に寄っているんだ。」
「へー。」
「さっきの草を前にしてるウマ娘の画像はそれの実験をした時の画像さ。結果は牛等が食べる飼い葉などでも栄養面では全く問題は無かった。メンタルの問題を除いてね。」
「それはそうだろ。」
「タキオンさん・・・」
「おや?カフェ?」
「ルドルフさんが呼んでますよ・・・電話に出て欲しいそうです・・・」
「会長が・・・?なんだい良い所だったのに。」
タキオンがウマホを手にして部屋の外に出ていく。カフェはいつの間にかコーヒーを片手に持っていた。
「カフェは興味無かったか?」
「知識としては持っていましたが・・・それほど興味は・・・」
「そうか・・・?割と面白いぞ。」
「そうですか・・・あ・・・そうだ・・・トレーナーさん・・・」
「なんだ?」
「私も・・・ひとつ、説を持っているんです・・・」
「お!面白そうだ。聞かせてくれ。」
カフェが椅子に座り直したので俺は向き合って座った。カフェの吸い込まれそうな金色の瞳が・・・なんか瞳孔が大きくなってない?
「私の説は・・・これです・・・ウマ娘・・・寝取り彼女説・・・」
「お、おう・・・」
なんかすごい単語が出てきたぞ。大丈夫か?
「ウマ娘は・・・ヒトの男性に気に入られるように・・・進化してきたんです・・・」
「おう。」
「同じものを食べて・・・美味しいって言えるように・・・同じ景色を見て・・・綺麗って言えるように・・・同じ音を聞いて・・・楽しいって言えるように・・・」
「・・・。」
「全て・・・ヒトの女性のいたポジションを・・・奪うように進化して・・・繁栄してきたんです・・・」
「そ、そうか・・・」
「いずれ・・・ヒトの女性のいるスペースは・・・無くなるでしょう・・・世の中は・・・ウマ娘と・・・ヒトの男性だけ居ればいいんです・・・」
「ヒェ・・・」
「ウマ娘の方が・・・可愛くて・・・健気で・・・いじらしいです・・・ヒトの女性なんて・・・要りませんよね・・・?」
「か、カフェ?ち、近・・・」
「ふふ・・・トレーナーさん・・・」
カフェがゆっくりと近づいてくる。よく見たら今、カフェと1対1だ!!!!!!マズイ!!!!!!!
「ふふふふ・・・」
「カフェ・・・落ち着け・・・落ち着け・・・」
「あははッ・・・」
「やばい・・・ッ!」
掴み掛かられる、そう決心したその時だった。
「はーいそこまでだよー」
「あっ・・・」
「お、お前・・・」
「まったくお昼寝してたのにヤバげな気配感じちゃって起きちゃったじゃんかー」
「ミラクルさん・・・冗談ですよ・・・冗談・・・」
「ダメだよカフェちゃん。トレーナーすっかり怯えてるもん。」
「えっ。」
物かげからカフェを羽交締めにしたのはヒシミラクル、ミラ子だった。寝てたのこいつだったのか。
「と、トレーナーさん・・・すみません・・・そんなに怖がられるとは・・・」
「あ、焦った・・・!まじで掛かったのかと思った・・・!!」
「すみません・・・」
「普段冗談言わない人は冗談だって受け取れないんだよカフェちゃん。」
「肝に銘じます・・・」
「ミラ子助かった。」
「にひひーじゃあ次のプール免除してくださいね!」
「それはダメ。」
「ナンデ!?!?」
ドッキリで済んで良かった。しかしカフェの説もあながち間違いじゃないのかもしれない。ウマ娘は人間の男性に取りいらないと繁殖できないわけだから。人間の女性より魅力的になるのは当然だ。寝取り彼女説だなんて可愛いものじゃ済まないと思ったな・・・