ロクでなし魔術講師と氷輪丸   作:洟魔

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2話

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「うわー、見ろよ、ロッド、あの講師を……」

「あぁ、スゲェな……目が死んでる……」

「あんなに生き生きとしていない人を見るのは初めてだ……」

 教室のあちこちから、ひそひそと響く囁き声。

「で~~多分、こうだから~~きっと、こんな感じで~~で~~大体、こうで~」 

生徒達の蔑みきった視線の先では、脳天に盛大なタンコブを乗せた男……グレンがまるでゾンビのように緩慢な動作で教鞭を執っていた。

 

「あぁ、ヒューイ先生はよかったなぁ……」

「ヒューイ先生、なんで辞めちゃったんだろ……」 

 

端的に言えば、グレンの行う授業は今までに見たことない最低最悪の授業だった。とにかく、聞いていて授業の内容が理解できない。

そもそも説明になっていない。だらだらと間延びした声で要領を得ない魔術理論の講釈を読み上げ、時々思い出したかのように黒板に判読不能な汚い文字を書いていく。 生徒達は授業の内容を何一つ理解できなかったが、このグレンとかいう非常勤講師が恐ろしくやる気がないことだけは理解できた。こんな授業は拝聴するだけ時間の無駄であり、その時間に自分で教科書を開いて独学した方がまだましだった。

そんな状況の中でユキトはというと

 

(あ〜授業中に思いっきりのびのびと寝れるの気持ちいぃ…自習サイコー…)

 

と完全に睡眠を満喫していた。

 

 

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そんなこんなでグレンの講師着任から一週間が経ち、その日、最後の授業となる五限目のことである。

 

「いい加減にしてくださいッ!」

システィーナは机を叩いて立ち上がった。

「む? だから、お望み通りいい加減にやってるだろ?」

グレンは抜け抜けとそんなことを言い放ち、教科書を黒板に打ちつける作業を堂々と続けている。金槌を肩に担ぎ、釘など口にくわえている姿はまるで日曜大工だ。

「子供みたいな屁理屈こねないで!」 

肩を怒らせ、システィーナは教壇に立つグレンにずかずかと歩み寄っていく。

「まぁ、そうカッカすんなよ? 白髪増えるぞ?」

「だ、誰が怒らせていると思っているんですか!?」

「ほら、そんなに怒るからその歳でもう白髪だらけじゃないか……可哀想に」

「これは白髪じゃなくて銀髪です! 本当に哀れむような顔で私を見ないで!」

 

この言葉に対してユキトは

(これオレにも言ってるのかな?……いや、きっと違うな!)

と自分の髪色の事も言ってるのかと少しだけ気にしていた。

 

「ああ、もう! こんなこと、言いたくありませんけど、先生が授業に対する態度を改める気がないと言うなら、こちらにも考えがありますからね!」

「ほう? どんなだ?」

「私はこの学院にそれなりの影響力を持つ魔術の名門フィーベル家の娘です。私がお父様に進言すれば、貴方の進退を決することもできるでしょう」

「え……マジで?」

「マジです! 本当はこんな手段に訴えたくありません! ですが、貴方がこれ以上、授業に対する態度を改めないと言うならば──」

「お父様に期待してますと、よろしくお伝え下さい!」

 グレンは紳士の微笑を満面に浮かべていた。

「──な」 

このグレンの反応に、システィーナは言葉を失うしかない。

「いやー、よかったよかった! これで一ヶ月待たずに辞められる! 白髪のお嬢さん、俺のために本当にありがとう!」

 

「貴方っていう人は──ッ!」

もうシスティーナの忍耐も限界だった。魔術の名門として誇り高きフィーベルの名において、魔道と家の誇りを汚す者を許しておくわけにはいかない。システィーナは左手に嵌めた手袋を外し、それをグレンに向かって投げつけた。

「痛ぇ!?」 

手首のスナップをきかせて放たれた手袋は、グレンの顔面に当たって床に落ちる。

「貴方にそれが受けられますか?」

「お前……マジか?」 

グレンも眉をひそめ、柄になく真剣な表情で床に落ちた手袋を注視している。

「私は本気です」

 グレンを険しくにらみつけるシスティーナの元へ、ルミアが駆け寄った。

「シ、システィ! だめ! 早くグレン先生に謝って、手袋を拾って!」

 だが、システィーナは動かない。烈火のような視線でグレンを射貫き続ける。

「……お前、何が望みだ?」

 その視線を受け、グレンが半眼で静かに問う。

「その野放図な態度を改め、真面目に授業を行ってください」

「……辞表を書け、じゃないのか?」

「もし、貴方が本当に講師を辞めたいなら、そんな要求に意味はありません」

「あっそ、そりゃ残念。だが、お前が俺に要求する以上、俺だってお前になんでも要求していいってこと、失念してねーか?」

「承知の上です」

「やーれやれ。こんなカビの生えた古臭い儀礼を吹っかけてくる骨董品がいまだに生き残っているなんてな……いいぜ?」

グレンは底意地悪そうに口の端を吊り上げた。床に落ちている手袋を拾い上げ、それを頭上へと放り投げる。

「その決闘、受けてやるよ」

 

 

 

 

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等間隔に植えられた針葉樹が囲み、敷き詰められた芝生が広がる学院中庭にて。グレンとシスティーナの二人は互いに十歩ほどの距離を空けて向かい合っていた。

クラスの生徒達や、講師と生徒が魔術決闘を行うという噂を聞きつけて集まった野次馬達が二人を遠巻きに取り囲み、そこはさながら即席の闘技場のようだった。

 

--

 

「おーあんなにゾロゾロと大勢で見に行っちゃって…まぁ、今どき決闘なんて珍しいからしょうがないか…にしてもこうやって上から見ると人がゴミのようだね〜アハハ」

そうやってオレは中庭には行かずに教室に残って窓の外の光景を見ていると…

「ねぇ、ユキト君」

後ろからルミアが来て話しかけてきた。

「ん?どうしたの?」

「システィは大丈夫かな?」

なるほど、どうやらフィーベルのことが心配らしい。それでオレに聞きに来たと……まぁ

 

「大丈夫だよ。そもそも決闘で使うのは【ショック・ボルト】だけなんだしケガなんかしないよ。」

オレがそういうも

「それはそうだけど…でも」

まだ不安そうにルミアは俯いていた。

 

(ん〜アイツに似てるルミアのそういう顔に弱いんだよな〜オレ…それにそもそも【ショック・ボルト】だけのルールなんてグレン先生にとって最悪だしね。あの固有魔術(オリジナル)を使うんなら別だけど)

 

「心配ないよ。この決闘はフィーベルが勝つって断言できるから。だから笑って待ってなよ、ね?」

と言いながらルミアの頭を撫でた。

 

すると

「う、うん!わかった!//」

と顔を少し赤くしながらも笑って答えてくれた。

(う〜頭なでなでは反則だよー///)

 

 

その後、オレの予想通りフィーベルの勝利で終わった。

 

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