FAIRY TAIL 才禍の怪物   作:XAI

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第4話 侵入

 

 

 評議院から戻り、マグノリアに着いたアルが見たのは、辺り一面が白銀と化したマグノリアだった。上空は分厚い雲が覆って薄暗く、雷も鳴っている。そして何より異常だったのが、本来なら街やギルドがあるはずが見る影もなくただただ殺風景な大地が広がっており、まるで最初から何も無かったかのように何もかもが消えていた。

 つい数時間前まで賑やかだったマグノリアの街のあまりにかけ離れた光景にアルは固まる。

 

 ──どういう事だ!? 一体何があった!? ギルドは? 街の人は? ミラはどこに!? ──

 

「アルか?」

「ッ!」

 

 アルが焦っていると後ろから声が聞こえ、振り返ると……

 

「ミストガンか!」

「ああ、久しぶりだな」

「そうだな……っと今はそれどころじゃない! これは何があったんだ?」

「大きくなり過ぎたアニマが原因だ」

「アニマ? 確か前にお前が言っていたやつか?」

「そうだ」

 

 アニマとは各地で起こっている謎の異常気象に似た、超常現象の事だ。突然空を分厚い雲が覆って渦巻き、その雲の下のものを吸い込んでしまう。

 アルは以前、ミストガンからアニマについて聞かされており、そのアニマをミストガンが消して回っているのは知っていた。

 

「大きくなり過ぎたアニマは私1人では消すことも出来ず、マグノリア全体を吸い込み、人々はこことは別の世界……エドラスへ送られた。先程、星霊の力で凌いでいたルーシィという少女と、ガジルという男をそのエドラスに転送した。だが、それより先にナツとウェンディ、そしてそれぞれの猫達がエドラスへ向かって行ったようだ」

「なるほどな……だが、ルーシィは例外として滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)ばかりがアニマに巻き込まれなかったのはどういう事なんだ?」

「それは私にも分からない。だがエドラスに送られた人々は水晶(ラクリマ)に変えられており、それを元に戻せるのは滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)だけだ。恐らくそれが関係しているのだろう」

「そういう事か……そのガジルとやらは知らないが……まぁナツ達が先に向かっているならすぐに皆を助けられるな」

「いや、実はそうでも無いんだ」

 

 アルがそう言うが、ミストガンは深刻そうな顔をしながら否定する。

 どういう事なのかとアルが思っているとミストガンが続きを話し始める。

 

「エドラスでは魔力は有限。つまりこちらの世界とは違い、魔法が使えないんだ」

「使えない? ……確かにそれは大きいな……こっちの魔道士は少なからず魔法に依存しているからそれが使えないとなると戦力は一気に減る」

「だが、それについては対策済みだ」

 

 そういうとミストガンは懐から瓶を取り出す。その中には飴玉サイズのピンクの玉が十数個入っている。

 

「これは『エクスボール』といって、エドラスの世界でも魔法を使えるようになるものだ。ルーシィとガジルにはこれを飲ませてある為、問題ないが……」

「それより先にエドラスに向かったナツとウェンディは魔法が使えないってことか?」

「そういう事だ」

「ナツ達は大丈夫か……」

 

 どんな奴らがいるのかも分からない未知の世界に、魔法が使えない状態で行ってしまったナツ達の事を考えるとアルは不安になる。

 

「一応ガジルには水晶(ラクリマ)から助け出した者たちに飲ませる為の、予備の『エクスボール』を渡してあるから合流出来れば大丈夫だろう。……アル、これを」

 

 ミストガンはアルに1つ『エクスボール』を渡し、アルはそれを受け取る。

 

「さて、アル。これからあなたをエドラスに送るが、エドラスのアルには注意してくれ」

「? 別世界にもオレがいるのか?」

「ああ、エドラスにも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆がいるが、こっちの皆とは違うんだ。そしてエドラスのアルは()妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーであり、現王国軍魔戦部隊元帥。王国軍で最強の男だ。彼はアル、あなた以外では相手にならないので対処は任せたい」

「元? なぜギルドを抜けたんだ?」

 

 アルはミストガンの言ったその言葉に疑問をもち質問をする。

 するとミストガンは顔を曇らせながら口を開く。

 

「詳しい事は分からない。だが、一つだけ分かっている事がある……それはエドラスのアルはギルドメンバーを殺害(・・)したという事だ」

「な!?」

 

 その言葉にアルは驚愕する。まさか別世界の自分がギルドのメンバーを殺しているとは思わなかったのだ。

 

「言っておくと、殺されたのはミラジェーンでは無い」

「そうか……」

 

 ミラでは無いと聞き、ひとまずは落ち着いたアル。

 

「さて、そろそろ送りたいのだが大丈夫か?」

「ああ、早速送ってくれ」

「分かった。頼んだぞ」

 

 そうしてアルはエドラスへと送られた。

 

 

 

 ──エドラス

 

「陛下──────────!!!!」

 

 アルがエドラスに送られたのと時を同じくして、エドラス内のとある場所では1人の少女が長い廊下を慌ただしく走りながら叫んでいた。少女はそのまま廊下の奥に進み、やがて奥深くの玉座の前まで着くと、そこに座っている1人の老人に向かって敬礼をしながら話しかける。

 

「予定通り、4日後にはあの巨大水晶(ラクリマ)から魔力を抽出出来るとのことです! やりましたね!」

「……足りぬな」

「ふへ? ……陛下? 今なんと?」

「あれでは足りぬと言っておる」

「お言葉ですが陛下! あの水晶(ラクリマ)はアースランドの魔法都市1つ分の魔力なのですよ〜! この先10年相当の我が国の魔力として利用出来るのですよ〜!」

「我が偉大なるエドラス王国は……有限であってはならぬのだ」

「ふぉ? ……」

 

 そう言うと陛下と呼ばれた老人は玉座から立ち上がり始める。

 

「もっと魔力を寄越せ……ワシが求めるのは永遠。永久に尽きぬ魔力……!」

「ならオレに任せろよ」

 

 どこからともなく声が聞こえると、その直後に老人の前に青年が現れる。

 

「ふむ、では頼むぞ! 王国軍魔戦部隊元帥……アル(・・)シュティレ(・・・・・)よ」

「ああ、期待して待ってな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 一方、ミストガンによってエドラスに送り込まれたアルは、着いた時には何故か浮いている島の岩壁に吊るされていた。

 

「……えぇ……さすがに送り込む場所は考えてほしかったんだが……とりあえずここを離れるか。……ホッ……!」

 

 アルは吊るされている岩壁に両足を着けると、そのまま壁を蹴り、バク転の要領で上の陸に着地し、辺りを見渡す。

 

「ここがエドラスか……まさか島ごと浮いてるとは……! それに川まで……ッ! これは確かに魔力が感じられないな……」

 

 エドラスの光景に驚いていると、ミストガンの言った通り体内の魔力が一切感じられなかった。試しに魔法を使おうとするが発動する気配がない。

 アルはその事を確認すると懐からミストガンにもらった『エクスボール』を取り出し飲み込む。

 

「ゴクッ……おお……! さっきまで感じられなかった魔力が使える。これで魔法の心配はいらないな……さて、とりあえず街でも探して情報収集を始めるか……その前に顔を隠すか」

 

 そう言うとアルはフードを深く被る。そして目をつぶり集中し始め……しばらくすると再び目を開ける。

 

「こっちだな」

 

 アルは迷いなく進み、やがて大きめの街が見えてきた。

 街に入ると、まずはこの世界の情報を集める為に本でも探そうと通行人に声をかける。

 

「失礼、この辺に本が読める所はありませんか?」

「ん? ああ、旅人かい? それならあそこのでかい建物が見えるだろ? あれが図書館だからそこに行くといい」

「ありがとうございます」

 

 通行人に言われた建物に入り、本を読んで情報収集をしていると気になる題名の本が出てきた。

 

「ん? 『エクシードについて』? ……ふむ、『エクシードとは、100年ほど前から存在している猫型の天使である。エクシードは人間とは違い、体内に魔力を宿しており、背中に翼を作り出して空を飛べる』……ハッピーやシャルルの事か……『また、エクシードの女王は神と呼ばれ人間を管理しており、消し飛ばす力も宿しているため人間は女王に従うしかない』……神とは大きく出たな。まぁ自称神様の事は分かったから他の情報は……」

 

 アルはその本を閉じると別の本を探し始めると──

 

 

『ワァアアアアアアアアアアアアアアアー!!!』

 

 外から歓声が聞こえる。アルは気になり図書館を出て見に行くと、街の中央の広場に人が集まっていた。中に入ると一際目立つ巨大な水晶(ラクリマ)が置かれていた。

 

「巨大な水晶(ラクリマ)? ……確かミストガンが皆は水晶(ラクリマ)に変えられてるって言ってたな。じゃああれがそうなのか……ん? でも切り取られた跡がある……という事はあれが全部じゃないのか」

 

 そしてアルは水晶(ラクリマ)の周りを確認する。周りには王国の兵士がおり、水晶(ラクリマ)を囲むように配置されており、その更に外側に民衆がいるという形になっていた。

 その時、突然1つの花火が上がり民衆が更に大きな歓声をあげた。花火は連続して上がり続け1つの文字になる。

 

「NORTH……北? どういう意味だ?」

 

 アルが疑問を浮かべていると、どこからか男の声が聞こえてきた。

 

「見ろ! あそこに何てかいてある!? 広場の北だ! 怪しいヤツが水晶(ラクリマ)を狙ってるみたいだぜ!」

 

 男の言葉に兵士達が慌てて動き出し、民衆を更に後ろに下げ始める。アルはひとまず周りの壁の上に上がり様子を見ると、1人だけ下がらずにその場に残っている者がいた。その者は薄茶色のマントを羽織り、フードを被っているため顔が分からない。兵士達がその者に下がれと命令した瞬間、その者はマントを脱ぎ捨てた。

 

「……!? あの紋章は妖精の尻尾(フェアリーテイル)! ……そうかあいつがガジルか」

 

 アルが驚いている間にも、ガジルは兵士達を吹き飛ばしながら滅竜魔法で水晶(ラクリマ)に傷を入れていく。すると水晶(ラクリマ)から突然眩しい光が放たれ、光が収まるとそこにはグレイとエルザが現れた。

 

「グレイにエルザか!! ……ひとまずオレも合流しよう」

 

 そう言ってアルは壁の上から飛び降り、ガジル達の前に降り立った。ガジルはいきなり現れたアルに攻撃を仕掛けようとするが、その前にアルから話しかける。

 

「お前がガジルだな? オレはアル。妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーだ。お前のことはミストガンから聞いている。だから攻撃はやめてくれ」

「……グレイ、エルザ。本当なのか?」

「ああ、アルは仲間だ」

「そーいやお前はアルに会って無かったな……本当だ」

 

 ガジルはアルの事を知らない為、エルザとグレイに聞くが味方だと言われ警戒を解く。

 

「分かった。ひとまずここからずらかるぞ!」

「なら早めに終わらせよう……ギンッ!」

 

 そう言ってアルが兵士達の方を向く。するといきなり兵士達が気を失って倒れていき、最終的に兵士全員が倒れてしまった。

 それを見たガジルは驚き、アルに聞く。

 

「……これはお前がやったのか?」

「そうだ。さて、とりあえずここから離れよう」

「ああ……」

 

 そうしてアル達はその場から離れ、近くの路地裏に着くとグレイ、エルザにここまでの説明を始める。

 

「つまりここはオレ達がいた世界とは別の世界……エドラスという事だ。エドラスでは魔力は有限。だから今お前ら2人は魔法を使えない」

「何!? ……ホントだ、使えない」

 

 アルに言われ、グレイが試してみるも魔法は発動しない。

 するとエルザが質問してくる。

 

「待て、今2人と言ったな……つまりアル、お前とガジルは使えるということか?」

「よく聞いてるな……その通り。オレとガジルは使える」

「なぜだ?」

「こいつのおかげだ」

 

 そう言ってガジルは懐から『エクスボール』の入った瓶を取り出し、2人に1つずつ渡す。

 

「こいつは『エクスボール』ってやつでこの世界で魔法を使えるようにする薬だ。この世界に来る前にミストガンってやつにもらった」

「ミストガンから? 一緒じゃないのか?」

「ああ」

「ミストガンは後から来ると思う。まずはそれを飲んでみろ」

「「分かった」」

 

 グレイとエルザは『エクスボール』を飲み込む。すると魔力を感じられたのか驚きの表情を浮かべていた。それを確認したアルが続きを話そうとした時、近くに気配を感じたのでそこに向かって話しかける。

 

「ところでオレ達の後ろにいるお前は誰だ?」

「おや、気づいてましたか」

 

 そう言うとその気配の主は姿を現す。その姿を見たエルザとグレイは驚いていた。

 

「ガジルが!?」

「2人!?」

「初めまして、この世界のガジルと言えば分かるでしょうか?」

「こいつ結構使えるぜ? お前らを助け出せたのもこいつの協力があったからできたようなもんだ」

 

 それを聞いてアルは、ガジルが暴れる前の花火を思い出す。

 

「……まさかあの文字の花火はお前が?」

「ええ、警備の配置を確認して最も薄い部分を地上(アースランド)の僕に教えたんです」

「なるほどな……」

 

 アルは納得すると、手を叩き注目を集めこれからの行動について全員に説明し始める。

 

「よし、これからの各自の行動について決めよう。まずはガジル……お前はもう1つの水晶(ラクリマ)を見つけてくれ。広場にあった水晶(ラクリマ)は見ての通りエルザとグレイ、2人だけだった。となるともう1つ別の物があるはずだ……それもとびきり大きなやつが」

「確かに、あれには切断面があったからな……分かったぜ! ギヒ」

「次にエドラスのガジル……お前はさっき警備の配置を確認と言っていたな? つまりそれだけの情報収集能力があるということ。それを見込んでエドラスでのエルザ、グレイの情報を教えてくれるか?」

「頭のキレるお方ですね……いいでしょう。まずはグレイさんですが、こちらの世界の妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入っているので敵ではありません。しかし協力はお願い出来ないと思います」

「この世界でも俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってるのか!」

 

 エドラスのガジルからの情報にグレイが嬉しそうにする。

 

「次にエルザさんですが……残念ながら彼女は王国軍第2魔戦部隊隊長。つまり敵です。敵対の道しか無いと思われます」

「な!? この世界の私は王国軍なのか!?」

「はい、それに彼女は『妖精狩り』と呼ばれるほど妖精の尻尾(フェアリーテイル)と敵対しています」

「な……なんだと!?」

 

 逆にエルザは酷く動揺していた。当然だ。地上(アースランド)ではギルドに対して誰よりも忠誠を誓っていたのだから。

 

「アルさんの情報もあるのですが聞きますか?」

「いや、オレ自身についてはミストガンから聞いている」

「そうですか」

「よし、エルザにグレイ。2人にはオレと一緒に行動してもらい王宮に向かう。そこで残りの情報を集めるぞ……ナツやウェンディ、ルーシィも、来てるらしいからな。そしてエルザはこの世界の自分と遭遇し、戦闘になった場合は相手を頼む」

「ああ、わかった」

「いいぜ」

「エドラスのガジルはこの後も情報を探ってくれ。王国が何をしようとしてるのか分からないからな」

「分かりました」

「では行動開始だ!」

 

 そしてアル達は各自それぞれの役割を果たしに動き始めた。

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