FAIRY TAIL 才禍の怪物   作:XAI

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お待たせ致しました!!
いや〜モチベーションって大事ですね……いつの間にか評価が基準になって書く気が失せていってましたよ……今はチャットGPTを使いながら初期に戻って色々想像を広げて楽しんでる最中です。
色々リメイク版等書いてみたんですが「あれ?これ意味無くね?」と結局なって破棄したりバカやってました笑
今回は少し長くなったのでどうだったのか感想等頂けたら取り入れたいです


第6話 激闘

 

 ──妖精の尻尾フェアリーテイルの魔導士アル。

 ──王国軍魔戦部隊元帥アル・シュティレ。

 

 互いに名乗りを上げたあと、二人は同時に一歩踏み込んだ。

 

「「いざ、参る!」」

 

 ぶつかり合った瞬間の衝撃で、王宮地下の通路に乾いた音が響く。

 先ほどまで倒れていた兵士たちは、すでに別の区画へ運び出されており、この場所には本当に二人しかいなかった。

 

 石造りの通路。等間隔に並んだ魔導ランプだけが、薄暗い光で二人の姿を照らしている。

 

 アルは、まっすぐ目の前の“自分”を見据えた。

 

 銀髪、金色の瞳、整った顔立ち。

 外見だけを見れば、本当にそっくりだ。だが、その瞳の奥にあるものはまるで違う。

 

 アースランドのアルの瞳には、積み重ねてきた覚悟と静かな決意。

 エドラスのアルの瞳には、ただひたすらな殺意と、血の臭いを喜ぶ歪んだ光。

 

「……さて、どっちの“俺”が上か──試してみるか」

 

 エドラスのアルが口角を吊り上げる。

 灰色の全身鎧の背から、じゃらりと鎖の音が響いた。

 

 ガシャン、と重い音を立てて引き抜かれたのは、鉈のような形状の刃。その根元には分厚い鎖が繋がっている。

 

「鎖剣か」

「《断罪鎖剣(チェイン・ジャッジ)》って代物だ。逃げようとするやつは、絶っ対に離さねぇ。気に入ってんだよ」

 

 エドラスのアルは嬉しそうに鎖剣を振ると、その刃が床をかすめ、火花が散った。

 

 一方、アルは腰の刀に右手を添えるだけで、まだ抜かない。

 その姿勢は、いつも通りの静かな構えだった。

 

「抜かねぇのか? “俺”」

「まだお前の底が見えていないからな」

「クク……そういうところ、やっぱムカつくわ」

 

 次の瞬間、床を蹴る音が重なった。

 

 二人は同時に間合いを詰める。

 

 エドラスのアルが鎖剣を横薙ぎに振るうと、刀身は途中で分かれ、鎖をしならせて伸びる。

 アルは一歩前へ出るだけで、頬の横をかすめる刃をやり過ごし、その軌道を指先で弾いた。

 

「ちっ!」

 

 鎖がわずかに逸れ、後ろの壁に深い傷が刻まれる。石片がぱらぱらと落ちた。

 

「初見で触るかよ、普通」

「お前の顔はよく知っているからな。どう動くかも、何となく分かる」

「それは光栄だな、“俺”」

 

 鎖剣が戻るより早く、今度はアルが一歩踏み込んだ。

 鞘ごと振るわれた刀が、鎖剣の刃をいなすように受け流す。

 

 ガキィン!! 

 

 衝撃で通路に澄んだ金属音が響いた。

 

「……重いな」

「そっちこそ、見た目の割にガッチリしてんじゃねぇか」

 

 互いに力を押し合いながら、アルは僅かに足の位置を変えた。

 わずかな重心のズレだけで、エドラスのアルの力を空へ流し、その勢いのまま懐へ潜り込む。

 

 近距離。鎖剣が振り回しにくい距離。

 

「ここまで近ければ──その武器は重りにしかならない」

「なら、こうするだけだろ!」

 

 エドラスのアルは笑いながら、自分ごと後ろへ跳んだ。

 鎖が一気にたるみ、その反動で距離が再び開く。

 

 床に鎖が叩きつけられ、石が砕ける音が鳴り響いた。

 

 ──力も、速さも、技術も……さすがに高水準だな。

 

 アルは心の中で冷静に分析する。

 

 こちらと同じだけの肉体能力。

 違うのは、歩んできた道と、積み重ねた戦い方だけ。

 

「そろそろ魔法も見せてもらおうか、“俺”」

 

 エドラスのアルが鎖剣を構え直すと、その刃に青白い光が走った。

 床に突き立てられた刃を中心に、鎖が通路一帯へ張り巡らされていく。

 

「《雷鎖陣(ライチェイン・フィールド)》」

 

 バリバリバリッ!! 

 

 鎖全体に雷が走り、床一帯が光に包まれる。

 四方八方に伸びた鎖が、逃げ場を削るように輝いた。

鎖全体に雷が走り、床一帯が光に包まれる。

 本来なら近づくだけで皮膚が焼けるほどの魔力密度──

 だがアルの肌に触れた瞬間、何かが薄膜のように雷を弾いた。

 

 シュティレは気づかない。

 アル自身も表情ひとつ変えない。

 ただ淡々と、流れる魔力の薄弱な部分を踏み抜いて一歩で抜けた。

 

「……っ!」

 

 アルは足裏から伝わる魔力の流れを読み、唯一薄い場所へと跳び出した。

 その瞬間、足元を雷光がかすめ、靴の端が焦げる。

 

「ほぉ、喰らわねぇのかよ。それ、何人も炭にしてきたんだけどな」

「運が良かっただけかもしれないぞ」

「そういうとこだよなぁ。マジでムカつくわ、“俺”」

 

 エドラスのアルが鎖剣を引き抜き、今度は頭上から叩きつけてくる。

 アルは鞘でそれを受け止めながら、左手を軽く上げた。

 

「さっきまで静かにしていたが──こちらも少し、見せるか」

 

 小さく息を吸う。

 

「《福音(ゴスペル)》」

 

 ゴオォォォォン……ゴオォォン……

 

 空気そのものが震えた。

 

 目には何も見えない。だが、通路全体に“音の圧”が満ちていくのが分かる。

 圧縮された音の塊が、一直線にエドラスのアルへと放たれた。

 

「なっ──」

 

 直感で身を捻ったエドラスのアルの肩鎧が、見えない弾丸に抉られる。

 金属片が弾け、壁に当たって跳ねた。

 

「見えねぇ攻撃か……音魔法ってやつかよ」

「音は、目で見えるものじゃないからな」

「ククッ……いいじゃねぇか。そういうヘドが出るような嫌らしさ、嫌いじゃねぇぞ」

 

 痛みなど気にも留めず、エドラスのアルは笑う。

 壊れた肩鎧からは、じわりと血が滲んでいた。

 

「もう一発──」

 

 アルは指を弾いた。

 

「《炸響(ルギオ)》」

 

 先ほど放った音の軌跡が、その場にまだ残っている。

 その残滓を“起爆”させる。

 

 ゴオォォォォン!! 

 

「っぐ……!」

 

 今度は完全に避けきれなかった。

 エドラスのアルの胸部が衝撃に揺さぶられ、鎧がべこんと嫌な音を立てる。

 そのまま背中から壁に叩きつけられ、石が砕けた。

 

「二段構えかよ……クソッたれだな、おい」

「簡単には倒れてくれないな」

 

 アルはそう言いながらも、呼吸が少しだけ荒くなっていることに気づいていた。

 エドラスの魔力の流れは、アースランドとは違う。慣れない感覚に、少しずつ負担がかかっている。

 

 ──この世界での大技は、まだ温存しておくべきだな。

 

 そう判断しかけた時、エドラスのアルが再び立ち上がった。

 

「……楽しくなってきたじゃねぇか」

 

 鎖剣の鎖が再びうねり始める。

 今度は床だけではなく、壁や天井にまで絡みつき、通路そのものを覆うように広がっていく。

 

「《断罪円環(ジャッジメント・サークル)》」

 

 鎖が巨大な円を描き、その中心にアルが閉じ込められる形になった。

 

 バリバリバリッ!! 

 

 再び雷が迸り、鎖全体が光り輝く。

壁面が黒焦げになるが、アルの足元だけ焦げすらつかない。

 

「さぁ、どうする、“俺”!! ここから出られんのか!?」

 

 アルはわずかに目を細め、刀に触れていた手に力を込めた。

 

「仕方ない」

 

 静かに、刀を抜く。

 通路の薄暗い光を受けて、刃が冷たく煌めいた。

 

「《居合・壱の型》──**音穿(おとほがし)**」

 

 振り抜いた一閃に、圧縮した“音”を重ねる。

 刃が描いた線に沿って、見えない衝撃波が走った。

 

 ギンッ! ギィン! ガキィン!! 

 

 鎖陣を形作っていた複数の鎖が、一気に断ち切られていく。

 雷が暴発し、通路の奥で爆ぜた。

 

「ははっ! マジかよ、それも斬るのかよ!!」

 

 嬉しそうに叫びながら、エドラスのアルは突っ込んでくる。

 鎖剣は半壊しているが、それでもなお、純粋な膂力と殺意だけで振り回していた。

 

 アルは刀を構えなおし、正面から迎え撃つ。

 

 斬撃と鎖、金属と金属が何度もぶつかり、砂煙が上がる。

 床には無数の傷が刻まれ、壁のあちこちには斬撃の痕が残った。

 

 どちらも、決定打を許さない。

 一度でも読み違えば、自分が倒れる。

 

 ──これは、長引かせる戦いじゃないな。

 

 アルがそう考え始めた瞬間だった。

 

 ドォン!! 

 

 地下通路全体が大きく揺れた。

 遠くで、巨大な魔力反応が爆発する。

 

「……上が騒がしいな」

「王宮が本格的に動き始めたか……クソ、こっちも忙しいんだよ」

 

 天井から砂が降り、何本かの柱にひびが走る。

 再び、ドン、と揺れが来た。

 

 ミシミシミシ……

 

 嫌な音を立てて、天井の一部が落ち始める。

 

「……このままじゃ、崩れるな」

 

 アルが低く呟くと、対面のシュティレも舌打ちする。

 

「チッ……まぁいい。崩れる前に“お前”を殺せりゃそれで──」

 

 言葉の途中、アルが一気に踏み込んだ。

 

 速度が──今までと違う。

 

「ッ……!」

 

 シュティレは反応が遅れた。

 アルを見失いかけた次の瞬間、すぐ目の前に影が迫る。

 

「終わりだ」

 

 アルの拳が、音を置き去りにして振り抜かれた。

 

 ──ドガァァァンッ!!! 

 

 拳がシュティレの腹部を捉え、衝撃が通路を駆け抜ける。

 シュティレの身体は弾丸のように吹き飛び、後方の壁へと激突した。

 

 壁が砕け、石片が飛び散る。

 粉塵が舞い上がり、シュティレの身体が崩れ落ちる。

 

「ぐ……っ……は、はは……ガハッ……」

 

 笑おうとした声は途切れ、血を吐きそのまま膝を折り──

 

「……」

 

 糸の切れた人形のように、シュティレは完全に意識を失った。

 

 アルは息を整え、その身体が動かないのを確認すると刀を収めた。

 

「殺してはいない。……だが、しばらくは動けないだろう」

 

 崩れかけの天井を見上げる。

 アルは踵を返し、通路の奥へ向かう。

 

 

 ──二人の“アル”の初戦は、こうして幕を閉じる。

 

 ────

 

 ──しばらく進むと。

 

 嫌でも目に入る“異様すぎる光景”があった。

 

「……何だ、あれは」

 

 通路の中央。

 老人の顔をした巨大なタコの化け物が、まるでぺちゃんこに潰れたように倒れている。

 足が何本も広がり、そのうちの一本の下から──

 

「もう少しよ〜……っ!」

「おっぱいでかいよぅ……苦しい〜っ……!」

 

 ……聞き覚えのある声がしていた。

 

 近づいてみると、タコの足のすき間にルーシィが半ば潰されて挟まっており、

 そのルーシィを、見覚えのない少女が必死に引っ張っていた。

 

 アルは思わず眉をひそめる。

 

「……お前ら、何やってるんだ?」

「アルさん!!」

「この人が……地上(アースランド)のアル様……!」

 

 二人は同時に振り返り、ほっとしたのか震えたのか、顔を赤青に変えながらこちらを見た。

 

 アルは倒れているタコを見下ろしながら尋ねる。

 

「これは……敵だったのか?」

「う、うん……! バイロって男が魔法の液体を飲んで変身して……

 倒したはいいけど、その反動で巻き込まれちゃって……!」

「なるほど。……手伝う」

 

 そう言うとアルはルーシィのところまで歩き、タコの足に手を置く。

 

 軽く力を込めてもほとんど動かない。

 

「……では──こうだ」

 

 ほんの一呼吸。

 

 アルは後ろに一歩だけ下がり──

 

 ドゴォォォォン!!! 

 

 助走なしの蹴り一発で、巨大タコ老人は弾丸のように吹き飛び、

 通路の壁をぶち抜いて遥か向こうへ飛んでいった。

 

「えっ……飛んでった……!」

「ア、アル様……蹴っただけで……!」

 

 タコが消えた穴から砂埃が舞い上がる。

 

 そして──

 

 ズボォッ!! 

 

「はぁぁ……やっと抜けたぁ……!!」

 

 ルーシィが勢いよく壁から転がり出た。

 

「無事か?」

「う、うん……ありがとうアルさん……!」

 隣では、ルーシィを引っ張り出していた見覚えのない少女が息を整えながら立っていた。

 

 アルはその少女に視線を向ける。

 

「ところで……君は誰なんだ?」

 

 少女は一瞬驚いたが、小さく胸に手を当てて名乗った。

 

「わ、私はココ! エドラス王国の、えっと……王室警備隊の見習いです! 

 その……今は王国を裏切ってますけど……」

 

「なるほど、王国側か」

 アルは軽く頷く。「助けてくれて感謝する」

 

「い、いえっ! 私何か全然!」

 ココは必死に首を横に振る。

 アルはその様子に少し苦笑いをするが、直ぐに表情を引き締め状況の説明を求めるように二人を見た。

 

「……それで何があった? 王国は何をしようとしている?」

 

 ルーシィとココは顔を見合わせ、すぐに真剣な表情に戻った。

 

「アルさん……実は国王が竜鎖砲っていう巨大な魔法兵器を作動させようとしてるの」

「たった今、ナツとウェンディから奪った滅竜魔法の魔力を“鎖”にして……

 空に浮かんでる魔水晶(ラクリマ)島に接続して……」

 

「その魔水晶(ラクリマ)を──エクシードの島へぶつけるつもりです!!」

 

 ココは震える声で続ける。

 

「それを作動させる“鍵”が奪われたので……もう止められないかもしれないんです!」

 

 アルは険しい顔をした。

 

(滅竜魔導士の魔力で作られた鎖……そして魔水晶(ラクリマ)を島ごと衝突させる……

 どこまでも巫山戯た作戦だ。

 そして“鍵”が奪われたということは──ほぼ確実に発射される……)

 

「……マズいな。

 恐らくもう、起動の最終段階まで進んでいる。

 止めるなら魔水晶(ラクリマ)そのものへ向かうしかない」

 

「じゃ、じゃあ急がないと……!」

 

 アルはすぐに跳びそうな勢いで言い放った。

 

「直ぐに魔水晶(ラクリマ)の元へ行くぞ!」

 

 だがルーシィは窓の外の空を見て、不安そうに言う。

 

「けど、どうやってあそこまで行くの? あんな距離……飛べないよ」

 

 対してココが拳を握って前に出る。

 

「私に任せてください!!」

 

 そして窓辺へ駆け寄ると、胸元の小さな笛を取り出して吹いた。

 

 ピィィィィィィ──ッ!! 

 

 次の瞬間──

 

 グオオオオオオオオオオオッ!!!! 

 

 空から巨大な鳥型の獣が滑空してきた。

 

「こ、これが……?」

「レギオンっていう乗り物なの! 背に乗って!」

 

 レギオンの背にアルとルーシィ、そしてココが飛び乗り、

 城から突き出た巨大砲台へ向かって飛ぶ。

 

 その最中──

 

 バリィィィィィッ!! 

 

 城の中心部から強烈な魔力の光が放たれ、

 巨大な青白い鎖が空へ向かって伸び、魔水晶(ラクリマ)の浮遊島へ直撃した。

 

「竜鎖砲が……!」

「王様が発動したんだ……っ!!」

「……間に合わなかったか」

 

 アルは歯を食いしばりながら、浮遊島へ繋がっていく鎖を見上げた。

 

 やがて地上を見ると──

 

「ナツ!! エルザ!! グレイ!!」

 

 三人がこちらを見上げている。

 

 レギオンは急降下し、ナツたちの元へ着地した。

 

「みんなー! 乗って!!」

 

「コイツで本当に間に合うのか!?」

「分かんないけど、行かなきゃ!!」

 

 ナツが叫び、エルザが頷き、グレイが後ろに飛び乗る。

 アルはレギオンの首元を叩き、

 

「行くぞ! 魔水晶(ラクリマ)を止める!」

 

 一行は空へ舞い上がった。

 巨大な魔水晶(ラクリマ)へ向けて──最後の阻止に挑むために。

 

 レギオンの背に乗ったアルたちは、急ぎ巨大魔水晶(ラクリマ)の浮遊島へと向かう。

 到着すると同時に、全員が散開し──

 

「せーので押すぞ!!」

「「「おおおおおおおお!!!」」」

 

 アル、ナツ、グレイ、エルザ、ルーシィ、ウェンディ……

 そしてココやエドラス側の仲間たちまで、全員が島の反対側へ回り込み、

 迫りくる魔水晶(ラクリマ)を 真正面から押し返そう と力を込めた。

 

「うおおおおおお!!! 止まれえぇぇぇぇぇ!!!」

「止まってぇぇぇぇぇええ!!」

「押せぇ! なんとしても食い止めろ!!!」

 

 皆が持つ魔力を最大限まで引き上げ、

 “巨大な島”と呼んでも差し支えない魔水晶(ラクリマ)へと全身の力をぶつけていく。

 

 だが──

 

「ぐっ……動きが……止まらない……!」

「少しずつだけど……押し戻されてる……!」

 

 どれほど全力で押しても、魔水晶(ラクリマ)はわずかに減速するだけで、

 軌道そのものは止まらない。

 

 その時だった。

 

 バサササササ……ッ!! 

 

 後方から、白い影が大群となって空を埋め尽くすように押し寄せてきた。

 

「シャルル!? それに……エクシードのみんな!」

「自分たちの国は自分たちで守るんだ!!!」

「みんなで押すんだよーーーー!!」

「行くぞ!!」

 

 エクシード達が一斉に魔水晶(ラクリマ)へ取りつき、小さな体で必死に押し始める。

 

「止まれぇぇぇぇぇ!!!!」

「お願い……お願いだから……止まってぇぇ!!」

「押せえええええええええ!!!」

「オレ達なら……絶対できるぞーーーー!!」

 

 その声が重なりあうたびに、

 巨大魔水晶(ラクリマ)はゆっくり……本当にゆっくりだが、後退しはじめた。

 

 ──その瞬間だった。

 

 ─────カッ!!!! 

 

 空間が一閃したように光り──

 次の瞬間、魔水晶(ラクリマ)が 跡形もなく消失 した。

 

 押していた全員が、凍りつく。

 

「……え……?」

「な、無くなった……!?」

魔水晶(ラクリマ)が……消えた……?」

 

 あれほどの質量を持つ魔水晶(ラクリマ)が、まるで最初から無かったように、

 一瞬で消えうせたのだ。

 

 アルも息を呑みながらつぶやく。

 

「一体……何が起きた……?」

 

 その問いに答える声が、背後から静かに響いた。

 

地上(アースランド)へ帰ったのだ」

 

「「「「──────ッ!?」」」」

 

 現れたのは──フードを脱いだ ミストガン。

 

「すべてを元に戻すための巨大なアニマの残骸を探していて、

 少し遅くなってしまった。すまない」

「ミストガン……!」

「おお!! やっとか!」

「という事は……!」

 

 ミストガンは静かに頷く。

 

魔水晶(ラクリマ)はもう一度アニマを通り、地上(アースランド)で元の姿に戻る。街も……妖精の尻尾(フェアリーテイル)も……すべて、元通りになった」

 

 その言葉が落ちると同時に──

 歓声が空に響き渡った。

 

 アルも胸の奥に熱いものが広がる。

 

(そうか……マグノリアも、仲間たちも……元に戻ったか)

 

 ミストガンは黒い猫──リリーと静かに言葉を交わす。

 

「君の故郷を守れてよかった……」

「えぇ……本当に……ありがとうございます、王子──」

「王子が帰ってきたよぅ……!」

 

 ジェラール──この世界のミストガンは、

 本来エドラス王国の“王子”である。

 

 しかし、その喜びに浸る間もなかった。

 

 地上から、一条の光が放たれた。

 

 ──ドギュウゥゥゥゥゥン!!!! 

 

「──ガッ!?」

「──ッ! リリーーーーーーー!!!!」

 

 誰も反応できなかった。

 黒い猫の身体──パンサーリリーの腹部を、

 “見たこともない光の砲撃” が貫いたのだ。

 

 突然の事態に、誰もが声を失っていた。

 パンサーリリーの腹を貫いた光の余韻が、まだ空に揺らめいている。

 

 アルもまた、拳を握りしめたまま、ほんの一瞬だけ動きを止めていた。

 

 ──今の一撃は……。

 

 放たれたレーザーの源を辿ると、そこには、見慣れた鎧姿の女が立っていた。

 

「まだだ……まだ終わらんぞ!! スカーレットォォォォォォォ!!!!!!」

 

「ナイトウォーカー……!」

 

 こちらのエルザとは対の存在──エドラスのエルザ・ナイトウォーカー。

 その顔は怒りに染まり、殺意を隠そうともしない。

 

 ナイトウォーカーがいるということは──

 

「フハハハハハハハハ!! ゴフッ……ゴホッ……! ま……だ……まだ終わらせんぞォ!! アースランドの俺よ!!!」

 

 鎧の隣、ボロボロの全身鎧に身を包んだ、もう一人の“アル”。

 エドラス王国魔戦部隊元帥──アル・シュティレが、血を吐きながらも嗤っていた。

 

 ──シュティレめ……先の戦いでかなり削ったはずだが、それでも追ってくるか。

 

「エドラス王国王子であるこの私に刃を向けるつもりか、エルザ・ナイトウォーカー……アル・シュティレ……そして、アル」

 

 ミストガン──いや、この世界のジェラールが前に出て、はっきりと言い放つ。

 その言葉に、ナイトウォーカーが眉をひそめ、動きを止めた。

 

 だが、シュティレは違う。

 

「だからどうしたァ!! 貴様が王子であろうが神であろうが関係ねぇ!! 

 邪魔立てするなら、何者であろうと殺す!!!!」

 

「「「「「────────ッ!!」」」」」

 

「……シュティレ。それがお前の本性か」

 

 周囲の者たちが、息を呑むのが分かる。

 アースランド側の仲間たちは、シュティレを見てから、どこか気まずそうにアルへ視線を向け──そして、慌てて逸らした。

 

 同じ顔で、同じ声で、真逆の言葉を吐く男。

 アル自身も、それを苦い気持ちで受け止めていた。

 

 そのとき──空間に老人の声が響いた。

 

『ワシは貴様を息子と思ったことなど一度も無い』

 

「「「「……!!!」」」」

 

「王様の声!」

 

「どこから!?」

 

 周囲を見回す声が飛び交う。

 

『よくおめおめと戻ってこれたものだ。

 貴様が地上でアニマを塞いで回っていたのは知っているぞ……この売国奴めが』

 

「この声……どこからだ……」

 

「オイ! 姿を現せ!!」

 

「あなたの計画は失敗に終わったんだ、もう戦う意味はないだろう」

 

 ジェラールが真っ直ぐに言い返す。

 

『意味? 戦う意味だと? これは戦いなどではない。

 王に仇なす者への一方的な殲滅……』

 

「な、何あれ!!」

 

「!!!!」

 

 声の方角──地上を見下ろすと、そこには巨体があった。

 

『ワシの前に立ち塞がるつもりならば、例え貴様であろうと消してくれるわ……跡形も無くなァ!』

 

「父上……!」

 

『ワシは父などではない、エドラスの王だ。

 貴様をここで始末すれば、地上でアニマを塞げる者はいなくなる。

 また巨大なラクリマを造り上げ、エクシードを融合させることなど何度でも出来るわ』

 

『フハハハハハハ!! 王の力に不可能はない! 王の力は絶対なのだ!!!!』

 

 機械仕掛けのドラゴンのような兵器が、地上を睥睨していた。

 その身から溢れ出す魔力は、この“有限の世界”には不釣り合いなほど膨大だ。

 

「ドロマ・アニム……」

 

 アルは、その名を噛みしめるように繰り返した。

 

「ドロマ・アニム……こっちの世界の言葉で“竜騎士”の意味……ドラゴンの強化装甲か……」

 

「強化装甲って何なのよ!?」

 

 ルーシィが悲鳴混じりに叫ぶと、ココが震える声で説明する。

 

「対魔専用魔水晶《ウィザード・キャンセラー》が外部からの魔法を全部無効化しちゃう、搭乗型の甲冑……! 

 王様があの中でドロマ・アニムを操縦してるんだよぉ……!」

 

 エクシードたちは、その姿を見ただけで恐怖に駆られ、散り散りに逃げ出す。

 しかし、ナイトウォーカー率いる王国軍が、逃げるエクシードに謎の光を浴びせ、次々とラクリマへ変えていく。

 

「クソッ……!」

 

「行かせないわよ!!」

 

 アルたちが追撃しようとした、その瞬間──

 

「人間はこの場から誰一人として逃がさん! この場で死んでもらう!! 

 消えろオォォォォォォォォォ!!!」

 

「ハアァ!!」

 

 ドロマ・アニムの口部から、凄まじい光線が放たれた。

 ジェラールがすかさず前に出て、両手を広げる。

 

「エルザ! アル! 今のうちに行け!! ──《鏡水きょうすい》!」

 

 放たれた光線が、透明な水鏡に弾かれて反射し、ドロマ・アニムへと襲いかかる。

 しかし、強化装甲は一切の魔法を拒む。

 

「何……!」

 

 再び撃ち出された光線が、今度はジェラールを直撃した。

 

「っ──!」

 

「ジェラール!!」

 

 吹き飛んだ彼の身体は、支えを失い、そのまま下方へと落ちていく。

 

「次は貴様等だ!!!」

 

「クソ! あれを躱しながら戦うのは無理だ!」

 

 ナツが歯噛みする。

 アルも同じ結論に至っていた──が。

 

 ──忘れているぞ。

 

 アルは空を一瞥し、僅かに息を吐く。

 

 ドゴオォン!! 

 

「ぬう……!」

 

 ズドオォン!! 

 

「ぐあ……!」

 

 ドロマ・アニムの装甲に、三方向から衝撃が走る。

 

「天竜てんりゅうの──咆哮ほうこう!!」

 

 ズガガガガガガガガ!!!! 

 

「ぐおおおおおおお!!!???」

 

 風の咆哮が装甲を軋ませ、続いて炎と鉄の攻撃が叩き込まれる。

 

「やるじゃねぇか、ウェンディ」

 

「いえ……二人の攻撃の方がダメージとしては有効です……!」

 

「ヤロウ……よくもオレの猫を……!」

 

 ナツ、ウェンディ、ガジル──三人の滅竜魔導士が、

 竜の姿を模した兵器を前に、真っ向から牙を剥く。

 

「ナツ!」「ウェンディ!」「ガジル!」

 

 アルは一瞬だけ頷き、決断する。

 

「ドロマ・アニムはお前らに任せる! あれを止められるのは、滅竜魔導士お前達だけだ!」

 

「おうともよ!」

 

「やってみせます!」

 

「ギヒ……派手に暴れてやるぜ!」

 

 ドロマ・アニムは三人に任せ、アルたちはアルたちの“やるべきこと”へと向かう。

 逃げ惑うエクシードを追う王国軍を追撃し、ラクリマ化を止めるために。

 

 ──だが、その前に。

 

「待っていたぞ、スカーレット……」

 

「来ると思ったぞ、エドラスの俺よ……」

 

「「……!!!!」」

 

「罠か……!」

 

 気づいた時には遅かった。

 アルたちの乗るレギオンの一体が、側面からの一撃を受けて吹き飛ばされる。

 

「きゃあっ!」

 

「くっ!」

 

 体勢を立て直しながら、アルは素早く跳躍し、別のレギオンの背へ乗り移った。

 エルザも同じように、ナイトウォーカーの近くにいたレギオンへと飛び移る。

 

「待ちくたびれたぞ……!」

 

 鎖剣を肩に担ぎながら、シュティレが嗤う。

 少し離れた場所では、エルザとナイトウォーカーも同時に構えを取っていた。

 

「……そろそろ決着をつけようか、アル・シュティレ」

 

「ハハッ……望むところだ、“俺”」

 

 シュティレとアルは、互いを真っ直ぐに見据え、睨み合う。

 

「全員、地上へ降りろ! こいつは俺が相手をする!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 レギオンの兵たちが次々に離脱していき、空中には二人だけが残る。

 

 アルは静かに、だがはっきりと言った。

 

「貴様は闘いだけに目が眩み、仲間を傷つけすぎた……」

 

「てめぇは感情を殺しすぎたんだよ。

“アル”を名乗るくせになぁ……!」

 

血を滴らせ笑うシュティレ。

 

二人は同時に構えた。

 

 

 

「「この世にアルは二人といらない(ねぇ)」」

 

 

 

「「この闘い……どちらか一方が倒れるまでだ!!」」

 

 

刃が鳴る。

 

 俺達は、ぶつかった。

 

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