「マドカ先生、お話がありましてね」
「取り敢えず座ると良い」
「おや、フレンドリーですね。
私の姿は言うなれば異形と言うべきもの。
もっ警戒されると思っていましたが」
マドカは棚からインスタントコーヒーを入れ、
2つ用意する。
そして、自分と黒服の前に置いた。
「砂糖、ミルクはコレだ」
「では…少々」
黒服に続いてマドカも小量の砂糖を追加し、
コーヒーを一口飲んだ。
「それで、黒服。要件は?」
「貴方を知りたくなったから、でしょうか。
私事ですが、ゲマトリアという組織に所属していましてね。
まぁ、貴方方、光の巨人と共に戦った『ゲマトリア』とは
違います。あくまでも、名前を借りている組織です」
「ゲマトリアか」
「えぇ、私は『探究者』でして私は知りたいのです。
生徒の持つヘイローと言う神秘を。だからこそ、
私はこの場に立っている」
「個人的に聞くけど、前にホシノが話してくれた。
黒服のスーツの変人に声をかけられたとね」
「クククッ…変人とは、ホシノさんもお人が悪い」
マドカは敵意の無い目の前の男に溜息をつく。
「あまり、俺の生徒を狙ってほしくないものだな」
「別に狙ってなどいませんよ、ただゲマトリアに勧誘した。
それだけじゃないですか」
「まったく、それで……生徒が対象なら。
何故、ウルトラマンティガを?」
マドカは斬り込む。
此処にいる時点で既に正体は見破られていると考えるべきだ。
黒服はコーヒーを一口のみ、マドカの目を見る。
「気になったのですよ。ウルトラマンティガ。光の巨人が、
どんな大人なのか」
「……それで、答えは?」
「わかりませんね、貴方はアビドスを。詳しく言えば、
アビドスにいる生徒達を最優先に考えているはず、
しかし前回キリエル人の襲来において、ゲヘナ、トリニティ、
2校に赴き傷ついた生徒、死にかけていた生徒を救った」
黒服の問いにマドカは一息ついてから話した。
「…簡単だよ。自己満足だ、死ぬのは少ない方が良い。
そう思ったから助けたんだ。
それなのに、救えなかった事を後悔している。
黒服、10を救うにはどうしたら良いと思う?」
「10ですか?答えは簡単ですね、不可能です」
「…そう、不可能なんだ。
10というのは割合だ。被害が増えるにつれ、
その母数は増えていく。俺はその母数の中で救える人を、
救う人を厳選している。最優先かアビドス、他の生徒の
優先順位は低いものだ」
「貴方は理想を持ちながらも現実をみている。
しかし、その現実に傷つけられている。
なんとも矛盾していますね」
「でも、それが人間だろ。俺はウルトラマン、光だけど、
心は人間だ。大を救うために小を犠牲にしながらも、
結局、ソレを割り切れない。嫌いな奴が死んだら、
あぁ、そうなんだで終わる。結局、自分次第さ」
「…クククッ、面白いですね。貴方は」
「俺からすればお前のほうが面白い。
俺は探究者じゃない、リアリストだ。
ロマンチストじゃなければ研究や探究なんかしないさ」
「ほお?何故です?」
「研究や探究をしてそれが現実になる。
現実と定義されるまで、すべては幻想。ロマンだった。
正しいと、きっと理解できるというロマンがなければ、
研究なんて出来るかよ」
「くっ……くははは……私がロマンチストですか」
「あぁ、ロマンチストだよ。
だけど、殺戮者になってほしくないね。
俺達、GUTSが動かなくちゃいけなくなるんだから」
「仕方ありません。
しかし採血をお願いするのは犯罪にはなりませんよね?」
「良いが、怪獣をつくるなよ?」
「……キヴォトスを破壊するつもりはありませんよ。
ところで、マドカ先生。採血しても?」
「せめて器具あるところで頼む」
「クククッ面白いお方だ。私自身、不審者なんですがね」
「キリエル人でもない、侵略異星人でもない。
それに、黒服。君なら判るだろ。
キヴォトスを破壊たくないなら、俺を捕まえたり殺すのは
『NG』さ。知ってるんだろ、『闇』を」
「えぇ、何れ来る色彩も『闇』には勝てないでしょう。
我々、ゲマトリアも知っています。世界には『闇』と言う
抑止欲に等しい何かが存在すると。『闇』は全てを飲み込むと」
「……彼奴は『闇』は抑止力だが守り神じゃない」
「ほぉ、神?!貴方は知っているのですか。
怪獣も、『闇』についても」
「……怪獣は知ってる怪獣しか知らないさ。
だが『闇』に関しては言える。闇の尖兵が来た以上、
時間の問題だ」
「……ならば私も及ばずながら、協力しましょう」
「ありがとう、正直。生徒達も頑張っているが、
自治区としては難しいものもあるんだよ。
探索や、調査なんて以ての外と言うところもさ」
「……クククッ、私を利用すると?」
「違う、怪獣っていう生命の神秘の調査。
片手間だろ?」
「…面白いお人だ」
マドカは右腕を黒服の前に差し出す。
「何と?」
「友人になりたいと思う。
だから、始まりはシェイクハンドだ」
「まったく……面白く…おかしな人だ」
黒服は笑いながらマドカと握手を行った。
「そうだ、此方、私の連絡先です」
「なら、俺の連絡先を。怪獣を見つけたら、報告してくれよ」
「採血には協力してもらいますよ?」
それからマドカと黒服は怪獣、キヴォトス、ウルトラマン。
その他のことも話し合った。
まるで十年来の友人のように、初対面とは思えない程に。
「有意義な時間をありがとうございました。
貴方には、是非とも……いえ個人的な
友人で居てほしいものです」
「次はアポがあるとうれしい」
部屋からでた黒服を見送り、口角が上がった自分に驚く。
大人として子供や生徒ではなく、同じ様な歳の相手との会話。
ソレはそれで気持ちの良いものだった。
その時、端末からエマージェンシーコールが響く。
「仕事の時間だ」
まだユメの傷は癒えていない。
それどころか、意識が戻ってすらいない。
それでも、GUTSの顧問と言う立場が許さない。
端末を開くとイルマの声が響く。
「先生、オデュッセイア海洋高等学校にてクラーケンが!」
「クラーケン?」
「全長は少なく見ても50m以上!GUTSに出動要請です!」
「……GUTS出動!」
「「ラジャー!」」
端末からメンバーの声がする。
マドカはDAIGOと背中に書かれた白の制服を身に着け、
GUTSハイパーをホルスターにしまう。
「先生、お待ちしていました!
被害者は多数!現在、オデュッセイアの最新鋭艦が戦闘中!」
「……ドルファーP1を出す。
オデュッセイアに到着次第、ムナカタ、ヤズミ。
ホリイ、シンジョウでペアをドルファーだ!」
ドルファーP1、海洋生物型怪獣が現れた際を見越したマドカが
オデュッセイア、ミレニアム、GUTSの合同で作り出した。
通常はヴァルキューレの海上警察部隊の基地に格納されており、
有事の際にはGUTSからも貸し出されている。
「1号機がムナカタ、ヤズミペアだ。
2号機はホリイ、シンジョウ」
「先生、私は」
「レナ、お前はヘリで空中から哨戒および救助活動。
イルマ、お前はオデュッセイアとヴァルキューレ海上警察の
総指揮だ!事態は一刻を争う。そして、
『『オデュッセイア海洋高等学校、
ヴァルキューレ海上警察連合部隊の諸君。
俺はGUTS顧問マドカ・ダイゴだ。相手は怪獣だ。
相手は君達を捕食する、殺すんだ。だから言う。
危なくなったら逃げろ。
皆、仲間を、友達を、失いたくないと言う思いがある。
それでも、相手を助けたいなら自分の命も勘定に入れろ。
生きて帰れ』』」
この日、GUTS、オデュッセイア、ヴァルキューレの
連合部隊はウルトラマンの協力なく新たな怪獣。
軟体怪獣『クラーケン』を討伐。
キヴォトスにGUTSの装備の強力さと対応力、
そしてイルマの指揮が大きく評価される一件となった。
軟体怪獣クラーケン
全長300m以上 体高50m 体重2万8千トン
オデュッセイア海洋高等学校が発見、
何十もの生徒が行方不明でありクラーケンの体内からは
オデュッセイア海洋高等学校生と思われる制服の一部も発見されている。水蛸の当然変異体とオデュッセイア所属の海洋学者の生徒の見解が見られており、最悪な場合は繁殖している可能性も示唆されている。
皮膚組織は通常の蛸と変わって居ないため、通常兵器でもダメージを与えることが可能であったが、1隻の最新鋭イージス艦と2隻の護衛艦が轟沈。行方不明者も現れた。
また、クラーケンの出した墨により半径3kmが汚染され現在
『墨溜まり』と呼称されている。