ブルアカに生徒以上の神秘を入れてみた   作:影後

24 / 33
影を継ぐもの2

「ごめん、言い過ぎた」

 

ホシノは自分の発言が先生を困らせており、

生徒会長としてそれでは駄目だと笑い謝罪する。

ユメはその仕草を辛そうな顔で見つめる。

ホシノは演じている、マドカ・ダイゴという大人を。

キヴォトスを、アビドスを守護し、導いた大人を。

でも、ホシノはまだ子供なのだ。護られるべき存在なのだ。

16歳で、それを背負う背中を持っている筈がない。

 

「んで、まぁ予算はカツカツ。

シャーレの権限でさ、インフラ整備の補助金と人員、

ついでにヴァルキューレアビドス署の復活とか……」

 

『先生、それは一度会議をしないと厳しいです。

ですが、シャーレの権限ならば無碍にされる事は無いと

思います』

 

(うん、アロナ。ありがとう)

「持ち帰って会議しないと駄目みたい。

でも、シャーレの権限なら無碍にはされないと思う」

 

「良かったです、私達の弾薬費もありますから」

 

「……ふぅ…ごめん、落ち着いたらお腹減っちゃって」

 

えへへ~と微笑むユメだが、ホシノだけはそんな彼女を

辛そうに見つめていた。気を使わせたと感じているのか、

少なからず苦しさがある。

 

「美味しいラーメン屋さんがあるんだよ!」

 

そして皆が向かうのは柴関ラーメンだ。

マドカ・ダイゴが好んでいたアビドスのラーメン店。

ユメ、ホシノ、ノノミ、シロコにとっても思い出の場所。

 

「いらっしゃいま……な?!」

 

「セリカちゃん、えっと………

私、先生、ホシノ先輩、シロコちゃん、アヤネちゃんの

5人ですね」

 

「ん、先生の奢り」

 

「シロコ?!」

 

「5名様奥の席に!メニューはそこにあるから!」

 

先生はメニューを開くと、お手頃のラーメンに驚く。

今どき、1000円以下で食べられるのは珍しいのだ。

 

「800円までなら………」

 

「アズマ、大丈夫なのか?」

 

「うーん、趣味もあるけど……これ経費で落ちるかな」

 

届いたラーメンはいわゆる二郎系のような見た目のラーメンだ。

これを、本当にマドカ・ダイゴが好きだったのかという

疑問が先生に浮かんでくるが、一口食べると理解した。

豚骨ベースの醤油ラーメンだが、

意外にもこってりしすぎて居ない。 

美味すぎるというわけではない、ただ美味しい。

お値段も手頃で普通に美味しい、

店内の雰囲気も落ち着いており時折看板娘の声掛けが聞こえる。

 

「お義父さんは……皆で此処に来た。

大将とも仲良くて……何時も多めに払ってた」

 

「俺は要らねぇって言うんだがな。

ここは学生の憩いの場だって、言って聞かねえんだよ。

シロコちゃんの親父さんはな」

 

「大将、ん!」

 

柴犬の獣人、柴大将。

マドカ・ダイゴの古くからの知り合いである。

 

「あの、マドカ先生って」

 

「もう…6年も前だな。キヴォトスに来たのは。

あの人は元は砂漠で死にかけてたんだよ。

それをアビドスの生徒たちが保護したんだ。

まだ学校も本校舎でな、直ぐに砂漠に埋めれちまったが

あの人が居たからアビドスはギリギリを保ててた。

知ってるか、当時の生徒会じゃアビドスの土地を売る。

そんな話もあったんだ。でも、マドカ先生が止めた。

土地を売るとしても二束三文で買い叩かれると。

だから、俺を信じてくれと。実際、信じて今がある。

大半の生徒さんは消えちまった。そこら辺は、ユメちゃんが

知ってるだろ?」

 

「……うん、皆マドカ先生は理想を喋るだけだって。

でも、裏でずっと頑張ってたんだよ。

アビドスに支援を持ち掛ける企業とかがあったけど、

皆真っ黒だった。マドカ先生はそんな人達から

私達を守ってくれてた。皆、判っていたのに……」

 

そう、残っていなかった。

ユメを残し生徒は他の自治区へと消えていった。

だから、マドカ・ダイゴの裏の活躍を知っているのは、

もうユメとホシノだけだった。

 

「でも、今は違うよ。アビドスは戻って来たんだ。

アビドス砂祭りも……ほら……きっと出来るし」

 

ユメは話している時に涙を隠せなくなった。

 

「ごめんね……こんな所で」

 

「…先生、私達はマドカ校長に出会った事はありません。

ですが…2年前、キヴォトスにシビトゾイガーという

人喰いの怪物が来たんです。ユメ前会長は当時、別件で

昏睡状態にあり、マドカ先生はきっとその時に……」

 

アヤネが耳打ちしてくるが、それは違う。

先生はタロウと視線を見合わせる。

マドカ・ダイゴはティガである。

そしてティガは石化している。

 

(知っているのは、ユメとホシノそれに……)

 

(おそらく、シロコとノノミも知っている。

1年生だけだろう、知らないのは)

 

タロウとの念話をする傍らで、ラーメンを食べる。

すると少し汚れた制服を着ている生徒達が入店してきた。

見覚えのあるゲヘナの改造制服を着ている

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

「……こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」

 

「一番安いメニュー……?でしたら、580円の柴関ラーメンです。看板メニューなので、美味しいですよ!」

 

金欠なのだろう。

確かに今のキヴォトスはアルバイトか何か仕事に付かないと、

まともにお金が入らない。

ユメ、ホシノは一番苦しい時期を知っているため

同情心が湧いてくる。

それに、自分がよく知っている人ならきっと手を差し伸べる。

ユメはそう思う。

 

「ねぇ、君たちお金ないの?」

 

「え…」

 

「私、連邦生徒会の梔子ユメって言います!

良かったら、私たちと一緒に食べない?」

 

「え…でも、私達本当にお金」

 

「うん、だって私も気持ちがわかるから。

お金がなくて、周りの友人は居なくなった。

でも、頼れる人がいてくれたから今があるの。

これは、私の自己満足。私がやりたいからする事。

それに、今だけかも」 

 

「良いの?」

 

「私の奢りだよ、それに皆で食べるともっと美味しいよ」

 

ユメもマドカがいた頃の様な子供ではない。

連邦生徒会の大学に通いながらも、大人として先人としての

役割を今成そうとしている。

その日、アビドスと便利屋68は出会った。

 

 

アビドスと便利屋が会話をし親交を深めて居る頃、

アビドスの、いや、キヴォトスの守護者にも動きがあった。

 

「うっ……はぁはぁ………」

 

闇に囚われていた筈の男、マドカ・ダイゴ。

見窄らしい服装の彼は深い苦しみと憎しみに苛まれながらも、

ティガとは別の存在として復活していたのだ。

 

「帰るんだ………あの子達の……元へ」

 

漆黒のスパークレンスを一度見つめ、

その思いと石像となっているもう一つの存在を見る。

闇が消え去ったティガは人の身体となるとマドカ・ダイゴと

瓜二つの存在としてマドカにハイパーガンを向ける。

 

「終わりだ、闇の尖兵」

 

「……ティガ」

 

そう、マドカの対峙しているのは正真正銘。

ティガである、ウルトラマンティガ。本人だった。

マドカの様に超古代の遺伝子を持った光の適正者ではない。

ウルトラマンとして世界を守護した巨人の一人、

それが眼の前に存在する。

 

「お前の存在は、世界の危機になる」

 

「……俺は死なない。死ねないんだ」

 

マドカは徒手空拳の間合いに入り込むと、

ハイパーガンに向けて上段蹴りを放つ。

しかし、ティガは負けていない。マドカよりも数段以上ある

戦闘経験を生かし、マドカの蹴りをいなすとハイパーガンを

その腹部へと放つ。

鮮血と肉の焼ける匂いが鼻につく。

傷口がレーザーによって瞬時に焼かれて止血され、

身体の中も激しく痛む。

 

「世界は護る、楽になれ」

 

「巫山戯るな!俺が護りたいのは世界じゃない!

俺の手の届く人達を護りたい、だから護るんだ!

手の届く範囲の人達が幸せに生きるために!」

 

「……終わりだ」

 

マドカの問いにティガは答えない。

マドカは最後に走馬灯のように今までを振り返る。

急にアビドス砂漠にいた事、先生と呼ばれるようになった事。

ウルトラマンティガとして、戦ってきたこと。

その結末が、いわばもう一人の自分によって殺される。

そんな結末など、認めたくは無かった。

 

「させませんよ」

 

マドカの周囲に砂嵐が巻き起こる。

それはあの怪物に等しいものだが、不思議と敵対心は感じない。

 

「さぁ、私の手を」

 

「ありがとう、友よ」

 

マドカは差し出された手を握りしめ、砂漠から消えた。

そして薄暗いビルの中で救い出してくれた友人の手当てを

受けていた。

 

「……ティガの石像が消えたと思えば、

貴方が二人に増えていたのだから驚きましたよ」

 

「その割に、俺を助けてくれるんだな」

 

「友人ですから、それに貴方の言葉を聞いたので」

 

黒服、異形の青年に手当てをうけ苦しみながら起き上がる。

 

「何があったのです?」

 

「……あぁ、それは」

 

マドカは静かに話し始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。