「ゼェア!」
くすんだシルバーにブラックの差し色、
そして胸のプロテクターはゴールドのパーツに囲まれた
鮮血を思わせるレッド。
ティガに何処となく似ている巨人、
その巨人の名は明かされては居ない。
しかし、ある世界では邪悪なティガ『イーヴィルティガ』、
又はもう一人のティガ『オルタナティブティガ』と
呼ばれていた超古代の戦士である。
(私が……巨人、ウルトラマンに)
ホシノは不思議とその身体が自分のものであると理解できた。
しかし、それは借り物であり一時的なものだと。
(あの変な女の言う通り、
このウルトラマンの身体は私には合わない)
そう、合わないのだ。何処か違和感が拭えない。
自分にはもっと相応しい身体があると、内側から叫ぶ。
しかし、今は関係ない。
違和感よりも、目の前で自分に対し
ファイティングポーズをとる『ウルトラマンティガ』
の方が重要だった。
「シェア!」
「ゼェア!」
ティガのパンチとイーヴィルティガのパンチがぶつかり、
火花が飛び散る。いや、光だ。
イーヴィルティガがティガに攻撃させないよう馬乗りになり、
顔面を只管に殴打している。
「あれが……ホシノ先輩?」
「タロウ、止めないと!」
「私をライブするんだ!」
「うそ……駄目、ライブできない?!」
アビドスの校庭では先生達が何やら叫んでいる。
しかし、ホシノの、イーヴィルティガの耳には届かない。
「ハァ!」
「ヴェア?!」
ティガの左ストレートがイーヴィルティガの左頬を打ち抜き、
後方に弾き飛ばす。
砂漠方面ということもあり被害はたいしてない。
「ゼェア!」
それはティガのハンドスラッシュに似ている速射に優れた
イーヴィルティガの必殺技の一つ、
イーヴィルビーム、紫色の手裏剣型の光弾が連続して
ティガに向かって放たれた。
「ハッ!」
それをティガはハンドスラッシュで相殺してみせた。
あまりの早業にイーヴィルティガは一瞬焦るが、
直ぐ様冷静さを取り戻しティガに再び格闘戦を仕掛ける。
マドカの、ウルトラマンティガの戦いを見てビームや光線は
エネルギーを消費すると理解している。
それに人型の相手の戦い方は、目の前で観ていた。
「ジェア!」
「?!」
ティガの方に拳を向けながら駆け出すと、
(FE3ダイナストロングタイプのイメージ)
ティガはそれを迎え撃つ為に
上半身を守るべく防御のポーズをとる。
だが、イーヴィルティガが狙っていたのは打撃ではなく、
タックルであった。
拳が当たる寸前で無理矢理体勢を下ろしティガの
懐に入り込む。
そのまま押し倒し、背中に座り込み逃げ道をふさぐ。
両脚を破壊しようと両脚を掴み全力を持って曲げていく。
ティガからゴギュリと生々しい音が響き、
蠢くティガをそのまま足蹴りする。
「酷い……あんなの」
「止めて!止めて…ホシノちゃん!!」
「立って…立ってください!ティガ!!」
何も知らない外野が叫んでいた。
(…ウザいな)
それはホシノの中に燻ぶる闇。
偽物を本物と思い込む哀れで間抜けで、
救いようのない存在。
そして、それを知らずに叫ぶ後輩達。
何もかもが、ホシノを苛つかせ握り拳を作らせる。
何も知らない、何も知ろうとしない。
何のために話さず、自分一人で終わらせようとしたか。
何のために、何の為に、生徒会長になったのか。
「シェ…シェア…………」
尚も立ち上がろうとするティガだが、
3分も経っていないはずの身でも動きが悪い。
カラータイマーはなっていない。
足が折れた程度、ティガには何ともない。
ティガは超古代最強の巨人のはずだった。
だが、今目の前にいるのはそんなティガを倒す為、
自分の大切な人を守る為、修羅にも悪魔にも堕ちる覚悟を
持った一人の少女。
本来、かのイーヴィルティガも光の巨人である。
そんなイーヴィルティガが全面的に闇へ力を貸していた。
誰にも理解してもらおうとは思わない。
自分がどうなろうと構わない。
たった一人の幸せの為、その人の居場所を守る為、
ホシノの力は闇だろう、だがその本質は光だ。
だからこそ、オルタナティブティガは
イーヴィルティガになる事を良しとした。
たとえ自分と違う巨人の末裔だとしても、
仲間の為に戦う覚悟を、イーヴィルティガは知っている。
「ジェア」
イーヴィルティガの握り拳にした両手が引かれ、
そこから大きく広げてエネルギーが集約される。
そして、胸の前で狭めながら交差させてから
両手を逆L字に組んで左腕全体から
イーヴィルティガの必殺技たる〘イーヴィルショット〙
が放たれた。
「へァ?!」
ティガは即座にウルトラシールドを展開したが、
イーヴィルショットは止められ無かった。
それは意志の力、負けられない。
勝たなければならない。
ホシノの心とオルタナティブティガの心が、
合わさった闇の力の一撃でティガは吹き飛ばされた。
「ゥ゙ッ……エァ」
カラータイマーが鳴っている。
いくら最強のウルトラマンでも彼は
人の心の光を信じなかった。
巨人として、人間に干渉せず、光として消えた存在。
そんな存在に、キヴォトスで苦しみ、悲しみ、
人を守る為、命をかけて戦ったたった一人の大人の背中を
見てきた少女が、負ける訳にはいかないのだ。
「?!」
だが、イーヴィルティガの優勢は何者かに一瞬にして
壊された。
数多のミサイルとレーザーがイーヴィルティガに降り注ぎ、
守るまもなく吹き飛ばされる。
ティガはソレを好機と見るなり、
パワータイプへとタイプチェンジを行い、
イーヴィルティガに駆け出していく。
(こいつ……まさか)
ホシノは起き上がろうとした瞬間、
ティガに足を掴まれていた事を理解した。
そのままティガパワータイプはイーヴィルティガを
まるで砲丸投げするように振り回し、
砂漠へと吹き飛ばす。
「ジュア………」
背中から打ち付けられ、
それでも起き上がろうとしたイーヴィルティガ。
だが、そんなイーヴィルティガを狙うものが地中にいた。
「ジァァァァァ」
それは巨大な鮫だった。
イーヴィルティガの脇腹にその牙を突き立てながら、
背部からミサイルを乱射してくる。
そこにはティガもイーヴィルティガも無い、
ただウルトラマンを殺す為に動いている。
イーヴィルティガは何度も鮫を殴るが、
むしろ鮫は顎の力をより強めていく。
ティガは容赦をしなかった。
両腕を左右から上にあげ、
胸の前に高密度に集めた超高熱の光エネルギー粒子を
光球にしてイーヴィルティガと鮫に放つ。
変化させた破壊光線によって敵の生体組織を破壊し、
爆発させるパワータイプの必殺技。
〘デラシウム光流〙がティガと鮫に向かって放たれた。
「よせ……止めろぉぉぉ!!!!」
全てを見ていたシャーレの先生コウタロウが叫ぶ。
今、何故かウルトラマンタロウにライブできない。
力ない存在だった。
「シェア!」
だが、アビドスにはもう一人ウルトラマンがいた。
たとえ闇の尖兵と言われようと、大切な生徒。
教え子の未来の為、皆の為に戦うウルトラマン。
体色は黒・黒銀。
それでもその目は慈愛に満ち、確かに守る意志と、
強い覚悟が存在している正真正銘、
キヴォトスとアビドスの守護者。
ウルトラマンティガ改め、ティガダーク。
闇に呑まれし光の巨人が今姿を現した。
「ハァ!」
鮫いや地中鮫ゲオザークがティガダークの拳に
頭を破壊される。
中からは鉄板が現れるが、
ティガダークはお構い無しにソレを己の拳で破壊し
中の精密機械を現れにさせる。
流石に破壊されることを恐れたのはゲオザークは
砂漠の中へと潜り、消えていく。
(……アレの想定外が起きたということか)
(先生……なんで)
(あそこを見てみろ)
「ん…ホシノ先輩、✌」
それはシロコだった。
眠らせた筈なのに何故ああも元気なのだろう。
そんな疑問を抱かずにはいられない。
「ん…ホシノ先輩。眠いけど、ずっと起きてた。
あと、お義父さんも許さない。皆で、一緒に寝る」
(……もう…シロコちゃんも大きいのに)
イーヴィルティガの姿がゆっくりと、
光になって消えていく。
最後には傷付いたホシノが砂漠に横たわる。
「ホシノ先輩は任せて。お義父さん、勝って」
シロコの言葉に頷くと、
ティガダークは改めてウルトラマンティガに
ファイティングポーズをとった。
(よくも俺の生徒を傷付けたな、
容赦はしないぞ)
(こい…闇の尖兵。必ず、倒す)
今此処に、ティガとティガの火蓋が斬って落とされた。