後日談
ビナーと言う存在が砂嵐の原因だったのかアビドスへと降り注ぐ砂塵の量は目に見えて減っている。
元から砂漠であった為、砂塵との戦いは遥か昔から続いている。
だからこそ、慣れていた。また、それだけではない。
ウルトラマンティガとの戦闘により地盤に穴が空いたのか、
地下水が噴き上がりかつて失った景色がそこにある。
ただ、問題があるとすればビナーの残骸の位置に湧き出た事だ。
ウルトラマンティガと言う、アビドスの神話が蘇り、
この大蛇を倒したと言う話を最初、連邦生徒会は
信じようとはしなかった。
そのためミレニアムサイエンススクールから派遣された
生徒達による見聞が行われたのだ。
結論は、既存の兵器による攻撃では不可能である。
生徒会長梔子ユメ、副会長たる小鳥遊ホシノ、
アビドス教員マドカ・ダイゴの言葉を信じる理由になった。
そして、現在アビドスのメンバーは。
「ホシノちゃん!お金がいっぱいだよ!」
「ユメ先輩落ち着いてください」
「……ユメ、その紙は無くさないでね」
ビナーと言う古代キヴォトスの遺産を調査する為、
アビドスはミレニアムと連携を組むことになった。
正確にはビナーを売ったのだ。
ビナーと言う存在はアビドスにとって今出せる最高の餌だ。
そこへ真っ先に調査の許可を求めてきたのはミレニアムだった。
対価は資金とビナーの情報。運ぶには重すぎるため、わざわざアビドス自治区にミレニアムサイエンススクールアビドス支部も建造した。
「ミレニアムへ土地を売るのではなく貸し出す。
条件はビナーの情報の共有、土地代は月1000万円。警備費などは全てミレニアム持ち。」
「しかも、先生初期費用と言って一億円も取ったよね?
すごかった、悪い大人みたいで!」
「ホシノもユメも……言い方が悪いかもしれないが、お金が無いと生活は出来ない。今、アビドスにはお金が無い。そこで、ミレニアムの宣言はありがたいものなんだ」
「……そうですね、私達ではビナーの情報を調べるなんてできませんし。それに」
「マンパワーがない、ならミレニアムに任せた方が良い」
「移住許可を求める人も多いです、やっぱりその」
「ウルトラマンティガか」
「先生が頑張ってくれたからです!ほら、書いて書いて!」
「ひぃん…書類が多いよぉ」
移住者は増えるだろうが、生徒が増える見込みはない。
旅立った者たちには今の生活がある。
ソレに、直ぐに数か増えるわけではない。
「……」
マドカは胸ポケットに入っているスパークレンスをスーツの上から触る。わざわざスパークレンスの為のポケットを追加で作成した。これなら、奪われるか、自分で手放さない限り問題ない。
(……守るんだ俺が)
大人だから、ウルトラマンティガだから、ではない。
自分はアビドス高等学校唯一の教師だからだ。
「……そう言えば、先生ってアビドス砂祭りって」
「人が集まったら、きっとできる。もう少しの辛抱だ」
「はい!」
マドカにとっての日常は既に終わりを告げている。
だが……これ以上、巻き込みたくない。
「………惨めだな」
誰にも聞こえないように、心の奥底の本音を下ろしてしまう。
それが、一人の男として恥ずかしかった。
数日後、マドカがアビドス高等学校で補給作業をしていた時。
窓から見慣れない光を見た。スーツに仕舞われたスパークレンスは輝き、その光に導かんとしているようだ。
「……いくか」
車が無いため、マドカは砂漠を一人歩いている。
コンパスと水はある、何かあった時用の連絡手段も持ち合わせている。
「……」
タオルで流れ出る汗を拭きながら、スパークレンスが指し示す光を目指す。どれだけ歩いたかわからない。
どれだけ進んだか理解できない。
だが、マドカは砂漠をゆっくりと歩いている。
「…まさか…そんな………」
そこにあったのは金色に輝くピラミッド。
いや、その残骸だったものだろう。
ティガの石像はない。
勿論だ、今ウルトラマンティガは自分なのだから。
しかしティガの仲間だった2人のウルトラマンの石像がある。
腕や足を砕かれ、石塊となったかつての光の守護者。
「あっ……あぁ……」
マドカは涙が止まらなかった。
誰かもわからない、しかし涙が止まら無い。
「ソルカ…ダヤ……ごめん……俺は………」
(…ダイゴ、泣くなよ。俺達は居ない、お前が守るんだ)
(そうだね…ティガいや、ダイゴ。僕達の分も頼んだよ)
光が、マドカの周りに集まる。
「……俺は…マドカ・ダイゴ。ウルトラマンティガだ」
強い瞳で朽ちる巨人の石像を見つめる。
「約束する…俺が……二人の分まで守るさ」
眩い光に包まれながら、マドカの意識は眠りについた。
「……起きてください。ホシノちゃんも心配して」
「……っ…なんだ……眩しい……な」
「先生!マドカ先生!!」
「ん……あっ………」
「気が付きました?!これ何本ですか!」
「あっ…あぁ……ふぁあ……アレ?」
「何本ですか!」
「2本だろ?てか……アレ、俺は砂漠に」
「砂漠でなにしてたんですか!時間になっても先生が来なくて!私達は三日三晩探してんですよ!それなのに……欠伸ですか!」
「えと……ごめん、ユメ。でも……なんていうか……久し振りにゆっくり寝たって気がして」
「砂漠で永眠寸前でした!」
「は?」
「その、カタカタヘルメット団ってわかりますか?」
「不良グループだね、ヘルメット団の一派の」
「砂漠で砂まみれで倒れてた先生を見つけて運んできてくれたんです。敵対してますけど、オフの日もあります。って、それはよくて…砂漠で倒れてたんです!」
(…夢?いや、違う。二人の光は確かに)
マドカは自分の胸に手を当てる。
中には超古代の戦士の魂が確かにある。
ウルトラマンティガの仲間たるウルトラマンソルカ、
ウルトラマンダヤの確かな光がある。
「はあ……目覚めた一言目が眩しい?しかも欠伸ですか?」
「本当に申し訳ない」
「酷いよねホシノちゃん!先生ったら私達の気も知らないで!」
「コレコレ、一応患者だからね。病室では静かに」
スナネコの獣人のドクターが二人を諌める。
その代わり、いかにも不機嫌ですと言う視線を向けられている。
「砂漠に出た理由は知らないけど、寝不足だけじゃなくて鞭打ちやら打撲やら……一体何してたのよ。先生」
「あはは……」
心当たりがあるのか、ユメとホシノも視線をそらす。
おそらくはビナーとの戦闘が原因なのだろう。
「疲労が酷い、あと3日は回復に努めなさい」
「入院ですか?」
「退院だよ、でも仕事はしないこと。ベットで寝てなさい」
「そんな……アビドスは今」
「わかっとるよ。少なからずだが。昔のような活気が蘇りつつある。ワシも歳だが、居続けてよかった。それに、守護神様も見れた」
「ウルトラマンティガを観たんですか?!」
「……ビナー、そう呼ばれとる大蛇。アレも知ってる。昔からアビドス砂漠に居続けた厄病神だ。学生さん達が追っ払っとったがね、まさか…守護神様いや、ウルトラマンティガが倒しちまうとは」
マドカはアビドスの情報にせいつうしている目の前の老人に驚く。誰かは知っている。自分のかかりつけ医であり、アビドス高等学校から300m圏内にある個人医だ。
知っていれば話を聞いていたのにと後悔がある。
「兎に角だ、二人とも。先生が大事ならベッドに縛り付けでもしてなさい」
退院したマドカは右手をユメに、
左手をホシノに掴まれ歩いている。
身長はマドカ、ユメ、ホシノの順であり、
傍から見れば兄妹の様に見える事だろう。
「もう、一人で砂漠になんてでないで下さいね?」
「そうです。ユメ先輩のお目付け役なんですから」
「ひぃん…ホシノちゃんか虐める」
二人の見慣れた風景に心躍らせながら、握る手に力を込める。
(二人の未来の為に……世界を守る)
(それが……俺の選択だ)