地底鮫ゲオザークMark2 登場
「選べないって……それは」
「俺はウルトラマンだ、俺は戦う。
俺の命をかけて、アビドスの、キヴォトスの未来の為に。
俺は選んだんだ、人間じゃない。ウルトラマンティガとして。
光として、生きる未来を」
ホシノは理解できないと言った顔をしていた。
人間ではなく、光、その言葉を理解できない。
いや、理解したくない。
「俺は、人であり、光なんだ」
それはマドカ・ダイゴが選んだものとは逆の選択。
人である事を選んだのではなく、光として戦い続ける事を、
守り続ける事を選んだ選択。
「おかしいよ……タロウだっけ!あのウルトラマンも」
「彼はいつかキヴォトスを去る。
キヴォトスは特異点だ、銃で撃たれても死なない。
そんな人間が生きている場所、他の侵略者も、
この場所を狙いに来る。その時、ティガが居れば守れる。
それに、ルルイエもある」
「ルルイエ?何を言ってるの!
あの場所に何が」
「知る必要はないさ、ほら部活動もあるだろ?
ユメは一応シャーレの所属だろうに。
社会人にも等しい存在になるんだからな。
頑張れよ」
「え………いや……私」
「なんで……なんで……」
ホシノはあの時のように地面に座り込んでしまった。
立ち上がれないのだ。腕に力が入らないのだ。
涙が止まらないのだ。
「ホシノ、大丈夫だ」
太陽の光がマドカを照らす。
顔が見えない、しかし優しい光が確かにそこにある。
それをホシノは知っている。
知っているからこそ、怖いのだ。
マドカの優しい手が頭に触れようとしている。
変わらず、無でようとしてくれている。
「来ないで!」
それは自分でも理解できない拒絶だった。
マドカの顔は変わらないが、
その微笑みは酷く辛そうに見える。
「ちっ……違うの……私は」
「大丈夫だ、誰だって怖いさ。
死ぬ事を考えてない、人間として死ぬ事を。
でも、わかってほしいんだ。光にならなくちゃ、
邪神は倒せなかった。いや、倒し損ねた。
奴は生きてる、ホシノ。お前はまた狙われるだろう。
だから、お前もお前達も護らせてくれ。
俺はアビドスの校長で、ウルトラマンティガだから」
「……!」
ホシノは走った。理解したくなかった。
マドカの哀しみと、苦しみを。
マドカはホシノを戦わせたことを恐れていた。
ウルトラマンとして、ティガと戦ったことを恐れていた。
だから、こんな事を言ったのだ。
お前達は護られるべきものだと。
無意識だろう、だがその言葉がホシノの心を抉った。
隣に立ちたい、一緒に居たい。
もう、ユメとノノミに対する怒りなんてどうでもいい。
ただ、受け入れて貰えないこと、そして
「なんで……なんで……そんな…自分を」
何故そこまで自分を犠牲にできるのか。
一番苦しくて、一番悲しいはずなのに、なんで戦えるのか。
ホシノはもう、心がグチャグチャになっていた。
ここはキヴォトスの暗部。
学籍のない生徒や非合法な商売をしている者たちが集い、
ヴァルキューレすら手が出せない漆黒の闇。
そこにあるビルの一室、
「はい、此方便利屋68です!」
赤ピンク髪の麗しい少女が受話器から
聞こえてくる声に耳を傾ける。
「へ?前金で6000万円……成功報酬で1.2億円?!」
その言葉に周りにいた少女達は詐欺だと思うが、
「え…あわわぁ!!」
『そのビルにあるー階のトイレの中を確認してみろ』
「ハルカ社員!」
「ハイぃぃ」
ハルカと呼ばれた少女が走り出すも、
電話が途切れる事なく無音で続いている。
数分後、ハルカが戻って来ると青ざめた顔で
アタッシュケースを見せてきた。
「……本物です」
「なっ………」
『その反応、受け取ってくれたようだな。
我々が本気である事の証明だ。さて、依頼内容だが
我々はアビドス自治区への攻撃を行う。
その際《小鳥遊ホシノ等生徒会メンバー》の足止めだ』
(ゴクリッ……)
アルは生唾を飲んだ。
友人ではないが、知人ではある相手。
ラーメン屋で奢ってもらった恩もある。
『そして、もう一つ。此方は努力目標だ。
《マドカ・ダイゴを暗殺》しろ』
「なっ…なんですってぇぇぇぇ」
通話の相手はその叫び声に対して、一切の反応がない。
ただアルだけでなく便利屋68のメンバーは
マドカ・ダイゴと言う名前は知っている。
だがそれ以上に暗殺の依頼など初めてだ。
『金が貰えれば何でもするのだろ?
努力目標が達成できた際には、成功報酬を3倍にしても良い』
「え……あ…………」
『無言は承知したと受け取ろう。
くれぐれも、我々を裏切らない事だ』
電話が一方敵に切られると白髪の少女と銀髪の少女が動いた。
白髪の少女は直ぐ様、窓にカーテンをつけ銀髪の少女は
電源を消す。
「社長、盗聴器とか調べる奴あった?」
「カッカヨコ課長?!」
「此方にあるよ!」
「ムツキ室長?!」
「わっ…私にもください!」
アルを差し置いて、カヨコ、ムツキ、ハルカの3人が
部屋中を探し周りあらゆる者を確認する。
「盗聴器は無し…でも」
「アルちゃん、今回の依頼は不味いよ。
本当に不味い、努力目標って言ってるものだけど、
キヴォトスで暗殺を依頼してくるなんて」
「でっ…でも、どんな仕事も……」
根が優しいアルにとって、
ここまで悪に偏った依頼は初めてだ。
ましてや、この前食事を奢ってもらったアビドス。
そして、キヴォトスに居るものならば知らない人は居ない。
それほどの有名人であるマドカ・ダイゴ。
「GUTSの顧問を暗殺……うん、
アルちゃん、そっちは止めよう。あくまでも努力目標だよ。
生徒会メンバーの足止めだけで良いんだよ!」
「えぇ……そうね、そうしましょう」
アル達、便利屋68は襲撃の準備を始めるのだった。
そして、アビドス砂漠の一角。
唯一、カイザーPMCに売買され拠点開発が行われた地区。
カイザーPMCと言う民間軍事会社の本拠地でありながら、
その場は僻地に等しい。
周囲にはオアシスもなく、
アビドス自治区との境界線がまるで軍事境界線の様に
5mほどの壁と有刺鉄線。
そして、武装した兵士達に守られている。
その中心には兵器開発実験場、兵員訓練施設、
其れ等を兼ね備えた砦が鎮座している。
「さて、黒服。便利屋68はどう動いている?」
「傭兵バイトを集め、
アビドス分校舎を攻撃するようです。
努力目標の方は行わない様ですが」
「フン、所詮は子供。努力目標の方は此方で行う」
黒服はそれを淡々と聞いていた。
目の前にいる男、カイザーPMC理事は共犯者である。
そんな共犯者が、協力者にして友人を殺害しようとしするのを
良しとする自分が嫌になる。
だが……銃弾で死ぬだろう友人は、
何故か死なないと想像できる。
かの友人は死ぬとしたら、戦った末にと言う考えがあるのだ。
「……2体のティガ、それだけでなく未知の巨神。
まさか……神と呼べる者達が未だにいるとは」
「神……ですか」
アレは神等ではない。
巨神ではなく、巨人、ウルトラマンだ。
それも、ティガは護る為に戦いを選んだ勇気ある青年。
未知の巨神と言われた方は、そんな青年を取り戻さんと、
嫌いなはずの自分とも取引をして変身した少女。
正直、もう『暁のホルス』などという小さな神秘など、
どうでもいい。友人と『怪獣』という『生命の神秘』と
語り合い、未だに生きている者達を調べる。
それが果てしなく、楽しいのだ。
「そう言えば、シャーレの先生とか言ったあの男は?」
「D.U.と各学園を飛び回って居るようです。
どうやら、GUTSの正式復活の署名活動を」
「面倒な事だ。
まぁ怪獣災害が表に出れば、
我々の事業としても有効活用できる。
そのためにも、あの男は邪魔なのだ」
邪魔というよりも、私怨だろうという言葉は隠す。
このキヴォトスにおいてカイザーは対怪獣において、
大きく出遅れている。
それは一重に、GUTSの存在とマドカ・ダイゴが居たから。
そして、マドカ・ダイゴの存在は怪獣を知る上で、
必要なのだ。
経験と実績、それを理解した上でカイザーPMC理事は
マドカ・ダイゴを殺したい。
マドカ・ダイゴさえ居なければ、
今頃アビドスはカイザーPMCの物だったのだから。
「……便利屋の動きを監視しろ。
失敗すれば、2度目で攻めてやろう。
成功すれば、その時はその時だ。
くくく」
カイザーPMC理事の見ている映像には、
かつてティガと戦った地底鮫ゲオザークの映像が
映し出されている。
だが……一体ではない。
「ティガだろうと、このゲオザークとゲオザークMark2。
この2体の力があれば………フフフッ…」
(人間による怪獣災害、マドカ先生。
これが人間の考える事なのですが……)
人間による怪獣災害、
アビドス最大の危機が刻一刻と迫っていた。