マドカへ応急手当てをするため、
シロコが近寄った瞬間大地が揺れた。
そして、激しい咆哮と爆発がさらに大地を揺らした。
「!!!ーーー/////!!!!」
「//1@!!!!」
機械音の様な、生命体のような咆哮。
一つではない、似た様な音だが確かに2つある。
「くっ……アレは、あの時の!」
ウルトラマンタロウはアズマの胸ポケットから肩に移動し、
現れた怪獣を見る。
かつて、イーヴィルティガとウルトラマンティガの決闘。
そこに横槍を入れた機械怪獣。
修理は完全に終わっているのだろう。
ティガダークが与えたダメージが見えない。
そして、絶望的な事に背ビレが2つ見えている。
「タロウ、力を貸してくれ!」
「あぁ、コウタ!」
《ウルトライブ》
《ウルトラマンタロウ》
「タァァ!」
逞しい赤いスーパーボディーと
トレードマークの父譲りのウルトラホーンが最大の特徴。
ウルトラホーンは超戦士の証と言われ、
宇宙警備隊の筆頭教官を務める勇者。
ウルトラマンタロウがアビドス砂漠に現れた。
「皆、ここは私に任せて下がるんだ!」
「駄目!お義父さんを動かせない!」
「くっ…」
ウルトラマンタロウはそれを聞くと、
しっかりと防衛ラインを見定める。
少なくとも、まだ距離はある。
長距離から爆撃の如くミサイルがアビドスに降り注ぎ、
数多の被害がでている。
「プッシュリターン光線!」
半球状の光線バリヤーが空のミサイル群に飛んでいく。
密集されたミサイルが誘爆し始めたのを一瞥し、
タロウはゲオザーク達に向かって走る。
「ダァ!くらえ!!」
「ー!!!!」
ゲオザークはその一撃を受けると、顔面が陥没する。
ここに居るのはウルトラ兄弟No.6にして、
ウルトラの父とウルトラの母の実子のウルトラマン。
機械獣との戦いの経験も大量にある。
「インペライザーに比べれば、豆腐のようだ!」
(エンペラ星人の尖兵に比べなくても)
アズマもインナースペースの中から反応を返す。
無双鉄人インペライザー。
暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人の作り出した自立戦闘兵器。
それに比べ、今目の前に居るのはただのPMCが創り出した
機械獣。装甲はキヴォトス産だが、
素材の強度は地球と変わらないのだから、
ウルトラマンからしたら豆腐だろう。
「ぐぁ…くっ!」
ダメージを瞬時に理解したゲオザークMark2は砂漠から頭だけ、
露出するとその目からレーザーキャノンを放った。
タロウの肉体に命中し飛び散った粒子が砂漠を硝子化させた。
それだけではない、ウルトラマンを傷つけられるほどの火力。
それがキヴォトスに存在することの証明である。
ミサイルではなく、レーザー。
ビナーと呼ばれた大蛇は、超古代文明の創り出した怪物。
だが、目の前に居るのは現代のキヴォトスが産んだ怪物。
こと、破壊能力においてかつての文明に近付いている。
「くっ……」
ウルトラマンタロウに狙いを定めた対になるゲオザーク。
しかし、タロウへと攻撃しながら街へミサイルの雨を送る。
虐殺者の思考である、目の前に対処すればアビドスが。
アビドスに対処すれば、己が危ない。
「巫山戯んなこなくそぉ!」
「私たちの先生を守るぞ!!」
「カタカタ土建を舐めんじゃねぇ!」
「土建じゃない!」
「もう土木会社じゃん!」
「アビドスの連中も手伝わせろよ!!」
カタカタヘルメット団、否カタカタ土建。
アビドスの交通インフラの整備と、
アビドスという島を守る為に戦う元不良集団である。
彼女達は対空砲を用意し、激しい弾幕を起こす。
そうしてゲオザークから放たれたミサイルを撃ち落とす。
「おい!赤い角のウルトラマン!
さっさと怪獣倒せよな!私達のお金も有限なんだぞ!」
ニッコリと笑いながらそう叫ぶ少女。
それにタロウも心が熱くなる。
「これが彼の…マドカの紡いだキズナか!」
(タロウ、いけるよね!?)
それはウルトラマンタロウが最も多用した必殺光線。
「ストリウム光線!」
開いた右手を頭上に翳し、同時に左手を腰に当てる。
両手に重ねてスパークを起こし、
腰に添えて大気中の宇宙エネルギーを全身に吸収する。
そして、右手に上げた左手を重ねてT字型に構えて
左手全体から発射する。
しかし、並のウルトラマンの必殺技の数倍の力を誇る
ストリウム光線があろう事かゲオザークに命中する寸前、
空間が歪み消えていく。
「なに?!」
そして、タロウの背後に空間のユラメキが発生し、
正面に発射したはずのストリウム光線が背中から命中し、
激しい火花を散らした。
「ぐぅあ!」
回避などが間に合わないほどのノータイムの攻撃。
目の前で消えたと命中したと思った瞬間、
背中に激しいダメージが発生したのだ。
(そんな…空間が歪んだ?!いったいどんな力を…)
アズマもゲオザークの事は知っている。
多少変化していると言っても、ゲオザークはゲオザーク。
そう思っていた節がある。
機械怪獣であり、硬くともウルトラマンタロウなら
歴戦のウルトラ兄弟のNo.6なら簡単に倒せる相手。
そう思っていたのだ。
「あれは……まさか、ブルトン?!」
ゲオザークの胴体部。
魚で言う、エラの部位から見覚えのある触角が飛び出ている。
タロウはそれを一目見ただけで理解した。
四次元怪獣ブルトン、破片からでも再生し、
並のウルトラマンであれば苦戦は免れない相手。
それをどうやってかは知らないが、目の前のゲオザーク達は
体内に宿し、力を行使しているのだ。
「「!!!!!!!」」
次元が裂け空間がヒビ割れ、
その中から赤く禍々しい雷がアビドスに振り注ぐ。
人類の作った建物なんて、一瞬にして灰になる。
タロウの光線バリヤーも意味がなさない。
上下左右、理解できない位置から現れる雷撃に、
街は焼け、住む者達の命も削られていく。
悲鳴だけでなく、救助しようとする者たちの叫び声。
ゲオザークはそれすらも喪わせようとしている。
「させん!」
それでもウルトラマンタロウはゲオザーク達に立ち向かう。
ここは彼の知る地球ではない。
しかし、彼の知る者達と同じ勇気ある者達が確かにいる。
タロウの背では、その勝利を願う者達がいる。
傷ついた者を救おうと戦う人間がいる。
タロウも守るだけでは勝てはしない。
ゆっくりとだが、胸のカラータイマーが点滅を開始する。
「…アズマ、恐れる必要はない」
(うん、タロウ)
同化しているからこそ、理解できる。
光線技を使えばより被害が増えていく。
それはタロウの寿命を20年も縮める禁断の必殺技。
そして、その光景をホシノは何処かで知っている。
いや、知っているのだ。
違いがあるとすれば、タロウは燃え盛る劫炎が人型に
圧縮されているようなもの。
「タァァァァ!!!」
『ウルトラダイナマイト』
本来なら、怪獣1体に向けて放たれる技である。
しかし、タロウはさらに体内に込めるエネルギーを増やした。
肉体に欠ける負荷が増えればどうなるかわからない。
だが、アズマも理解している。
ここで同時に倒さないと、アビドスに未来がない。
タロウが復活するまでの数秒で、
アビドス校舎など簡単に破壊されてしまう。
そうなれば、今校内に居るであろうマドカの命も危ない。
タロウは見ていた、理解した。
マドカこそが、今のアビドスの支えなのだ。
アズマもささえになれるだろう。
しかし、それは今の2年生以下の生徒達に関してのみ。
ホシノと言うアビドスの軸の支えには決してなれない。
だからこそ、ウルトラダイナマイトを選んだのだ。
タロウが一歩踏み出す度に、砂漠が融解し溶けていく。
硝子化もしない、ドロドロのマグマが砂漠に生まれる。
大気がが揺らめき、灼熱の砂漠は煉獄へと変わる。
「はぁ!」
2つの背鰭を無理矢理掴み、力任せに持ち上げる。
そして、上半身が出た所でタロウの肉体は臨界点に達する。
「アズマ、私を信じろ!」
『うん、タロウ!!』
それはもう、ウルトラダイナマイトではない。
空にある太陽の如く、アビドスの砂漠に閃光が発した。
ティガのように輝き照らす光ではなく、
熱く宇宙から照りつける太陽の光。
「……ハァ…ハァ…」
細胞レベルにまで別れたタロウが復活する。
視線の先にはゲオザーク達の姿はない。
あるのは、ただの怪獣の残骸のみ。
「アズマ、すまない…」
けたたましく鳴り響くカラータイマー。
ウルトラダイナマイトの消耗に耐えきれず、
タロウの肉体は薄くなり最終的に消えていく。
「タロウ?タロウ!?」
アビドス校舎の前に戻ったアズマは
胸ポケットに居るタロウに声をかける。
だが、タロウの返事はない。
「そんな…タロウ!!」
タロウは居た。だが声も聞こえなければ、
テレパシーも何もない。
「アズマ先生…大変です!
マドカ先生が!!」
「ノノミ!1体何が!」
アビドスを襲う崩壊は、始まったばかりである。