磁力怪獣アントラー
小型怪獣アントライオン
登場
ビナーの出現いや、ウルトラマンティガの復活から、
キヴォトスは変わった。
空想の中の産物と思われていた怪獣が姿を現したのだ。
だが、ミレニアムサイエンススクールの『古代史研究会』
による発表で古代キヴォトスには『怪獣』という人知を超える
怪物が存在していた事が大々的に発表された。
アビドスの伝承にある光の巨人『ウルトラマンティガ』。
キヴォトスにはまだ見ぬ歴史があると一部の生徒は沸き立つ。
だが、治安維持を専門とする生徒からしたら冗談ではない。
「……SRTがあってよかった」
そう話すのはヴァルキューレ警察学校公安部の『局長』
の位置に就いている女生徒だ。
「はい、局長。通常火器でも対応は可能です。
しかし、特殊部隊の様に常に訓練している生徒と、
今や怪獣の専門家が居るアビドスに比べて我々、
『ヴァルキューレ』の有する火力は不良に対してであり、
怪獣に対する火力としては」
『SRT特殊学園』というキヴォトスNo.1の
軍事組織が今現在『怪獣災害』の対応をしている。
そしてそのSRT内部で立ち上がった案が問題だった。
明確に『対怪獣専門部隊』として新たな部活の立ち上げだ。
他の自治区に本来干渉しないSRTだが、
アビドス高等学校の支援として作戦を行った時、
アビドス高等学校の教師と名乗る男が指揮権を略奪。
当時、アビドスに現れた怪獣『パゴス』。
その特性や食性を何故か知っており最初は逮捕したものの、
ミレニアムの生徒がその言葉を信じガイガーカウンターを起動。
すると、放射能が検知された。
アビドスの講師は兵器としての『カドミウム弾』を提案。
『パゴス』体内の核エネルギーの活動を停止させ、
脳髄にドリルミサイルを撃ち込み内部から撃破する。
という作戦を提案し直接指揮を行い見事『パゴス』を撃破。
それからアビドス生徒会へ件の『先生』を緊急招集したが、
アビドス生徒会も、先生本人もそれを拒否。
連邦生徒会とアビドス自治区の溝は大きいものとなった。
その代替案としてアビドスにも『ヴァルキューレの警察署』
があるため、近しい者からの説得なら何とかなるのでは?
と考えた者達が現在も引き抜きを実行している状態だ。
「上はヴァルキューレとアビドスの関係を崩したいのか!」
思わずデスクに拳を叩きつける。
何か硬いものがあったのか、痛めてしまい冷静さが帰って来る。
「ヴァルキューレは警察という立ち位置ですが、
他の自治区でまたもな活動はできていません。
条件付きとは言え、ヴァルキューレを認めてくれた
アビドスに対する義理もあります。
局長、上の指示はこの際無視するのが賢明かと」
「わかっている。ふぅ……
それで、先生は何と」
「読み上げます。
[今までアビドスを見捨ててきた貴方方は、
自分が危険になると常に掌を返しただ
『正義と平和の為』という大義名分のみを掲げ
此方に対しての対応を一切しようとしていない。
よって、私も貴方方を見捨てようと思う]
……うわぁ」
「アビドスの今までが問題だった。
と言ってしまえればどれだけ良いか。
ヴァルキューレもアビドスから即座に撤退。
しかも、治安は悪くなる一方だったと言うのに。
あの人、マドカ先生は数多の生徒や大人がアビドスを
見捨て、去る中でたった一人残る生徒の為に生きている。
こんな反応になるのも仕方がない」
アビドスは元はマンモス校として連邦生徒会を牛耳ろうとした。
だが、オアシスが消え砂漠化が進行してからはどうだ。
大人達が先に消える中、指導者として残り続け今は二人の生徒の
為だけにアビドスにいるのだ。
「……一応、徴兵という」
「それをやった瞬間とうなると思う?
アビドスとミレニアムから抗議が来るだろう。
元々、怪獣対策に遅れかあるのはD.U.だ。
ゲヘナは風紀委員会と万魔殿。
トリニティは正義実現委員会とシスターフッド。
ティーパーティーの私兵達。
ミレニアムとアビドスは怪獣に対しての協力体制を築き、
此方に対怪獣兵器を送ってきている」
「なら、アビドスに二度とSRTの支援をしないとするなら」
「……逆に聞くが、アビドスでは何がいや、誰が有名だ」
「先生以外となると……小鳥遊ホシノ。梔子ユメ。」
「ウルトラマンティガだ。
しかも。お前が名を挙げた2人と共に怪獣の迎撃、
撃破を行った事もあるようだ。
ティガという守護神とそれを援護する巫女二人。
元々SRTが入る余地なんてあるものかよ」
局長ほ疲れ果てた目をしながら机に突っ伏した。
「あ~もう、卒業したい。
早く申し送りしてこのきつい業務から解放してぇ!」
「頑張りましょうね」
「……うん」
「局長!上層部がアビドスに」
嫌な予感を感じつつ、急いで入ってきた生徒の話を聞く。
すると、局長だけでなく共にいた副局長の顔色も悪くなる。
「あぁぁぁぁぁ!!!!」
公安局局長の胃が休まることはない。
「ん……先、お義父さん。これあげる」
「シロコ、好き嫌いはして良いけど野菜は食べないと」
「口内炎になる、よく聞いてる」
「シロコちゃん、先生はお義父さんじゃないよ」
「ん、お義父さん」
「俺、15の娘を持てる年齢じゃないんだけど」
マドカをお義父さんと呼ぶのは、
アビドス高等学校に略奪に入ろうとした『砂狼シロコ』だ。
名前以外何一つ覚えておらずその身一つで、
砂漠での生活を行っていたが遂に物資が尽き襲撃。
しかし、お腹を好かせながら歩いていた所ベンチに腰掛ける
マドカの前で力尽きる。
その後アビドス高等学校で食事などを奢ってもらい、
何故かマドカを父親として慕う様になった。
「強い人にしか従わないのではなくて?」
現在はホシノに倒されたことでホシノの言葉にも従うが、
シロコの一番はマドカだった。
「お義父さんは強い、戦わなくても判る。
アビドス…ううん、キヴォトスで一番弱くて、一番強い」
「……」
その言葉にホシノは何も言えなくなっていた。
確かに人間としてマドカはキヴォトスで一番弱いだろう。
しかしウルトラマンティガという側面を見れば、
シロコの言う通りキヴォトスで一番強いだろう。
それを本能で理解しているようでホシノは驚きが隠せない。
「あっ、先生!またヴァルキューレの方が」
「……ユメ、俺が対応するよ」
マドカの疲れたような台詞に3人は困った様な顔をする。
しかし、それを口に足すことはしなかった。
「先生の引き抜きですよね」
「うん、先生が一番怪獣について詳しいから。
SRTで怪獣対策の部活を作るからその顧問になって欲しい、
私も判るよ。キヴォトスが危ない事になっているのは」
「でも、先生はアビドスの」
「そうだね、ホシノちゃん。先生はアビドスの先生。
先生自身、それを変えるつもりはないみたいなの。
でも………」
「先生は私達を指揮して怪獣と戦っています。
でも、怪獣自体はアビドスだけでなく他の自治区にも」
「ん、ホシノ先輩もアホ毛先輩も気にし過ぎ。
お義父さんはアビドスを離れない」
「ひぃん…シロコちゃんがちゃんと呼んでくれない」
「ん!私に勝ってから」
ユメを煽るようにドヤ顔をして見せるシロコと、
それに対して涙目になるユメ。
ホシノは変わらず呆れ顔だがふと校門を見れば、
マドカとヴァルキューレの生徒が何処か言い争いをしている
ように見えた。
「ユメ先輩、アレおかしくないですか?」
「うん、行ってみようか」
「ん」
3人が歩いていくと普段の優しいマドカとは違い、
赤羅様に不条理な怒りをヴァルキューレの生徒に
ぶつけようとしているマドカがいる。
「君はこの内容を読んだのかい?」
「いえ……その私は」
「ヴァルキューレの総意と考えて良いのかな?」
「知っ…知りません。私は何時も通り手紙を」
「なら読んであげるよ。
俺が招集に応じない場合、ヴァルキューレ及びSRTは
『アビドスで行われる犯罪行為に対して、
一切の責任を負うことはない』
元々自治区だ。これはしょうがないね。
此方もヴァルキューレに協力して貰っている方だ。
でも、この一文は何かな?
『アビドス生徒による不当な逮捕を我々は容認しない。
これが受け入れられない場合、ヴァルキューレはアビドス生徒会を誘拐、監禁の罪で指名手配する物とする』」
「知りません!私はそんな」
「何処までも君達は腐っているな!
アビドスを今度はブロックするつもりか?
皆がアビドスから出た瞬間指名手配犯だ!
俺一人のためにそこまでするのか!お前達は!」
「知らなかったんです!私は…私はそんなの」
「先生!落ち着いて!この子に言っても」
「だが、君達が」
「先生、先生はなんでアビドスに残ってくれるんですか?」
「ホシノちゃん?」 「ホシノ先輩」
「先生、私の為ですか?
なら、そんな事大丈夫です。ユメ先輩が卒業したら私は一人になるからですか?」
「それは……」
「先生、アビドスにはシロコちゃんも居ます。
ユメ先輩には卒業しても来てくれる約束もしました。
先生とも二度と会えなくなる訳じゃないです」
「だが……」
「ん…お義父さん。私もホシノ先輩も大丈夫」
「……マドカ先生。
今、先生を必要としているのはアビドスだけじゃないです。
キヴォトス全域が先生を必要としています」
ユメ、ホシノ、シロコの3人は頷く。
マドカは少し目を瞑るとヴァルキューレの生徒に向かい、
頭を下げた。
「済まない。大人気ないことをしてしまった」
「いえ、その…私も短い間ですけどアビドスで
一緒に学んだり出来ましたし、私にとっても
マドカさんは先生でしたので……」
「ヴァルキューレの上に伝えて欲しい。
顧問の件を受ける事、明日連邦生徒会に出向する事を」
「はい…その……マドカ先生。ありがとうございます」
ヴァルキューレの生徒は何処か哀しそうな言葉を告げ、
警察署への帰路につく。
「……先生、今日は」
「ごめん、これから荷物を纏めるんだ。
シロコ、住む場所は無くて学校の保健室暮らしだったよね?
学生がそんな生活は駄目だよ。俺の家の鍵をあげる。
元々私物なんて日用品以外に無いし、
布団とか臭いが気になるなら洗濯出してね。
代わりのは予備であるし」
「…先生、住む場所って」
「SRT特殊学園内にあるらしいんだ。
もともと、その手の説明書はコレが来た時に渡されたしね」
「…なら、送別会とか」
「大丈夫、休みの日はアビドスに帰ってくるしね。
ホシノはシロコに色々教えてあげて欲しい。
シロコ、俺の家に行こうか」
「う……うん」
「なら、私達にも手伝わせてください!」
「そうです!」
「……まぁ良いか。なら、行こうか」
マドカ達4人で家に行った。
一軒家だが砂等はなく清潔であり、
真新しい車両が車庫に止まっている。
「先代はビナーにお釈迦にされたからね。
砂漠でも使えるように改造してあるハンヴィーさ。
防塵、防弾、銃座とかは無くてエアコン完備」
「過ごしやすそう」
「そうだね。今開けるよ」
マドカはそう言って玄関の鍵を開けた。
玄関から客間にあげられる。
そこにあるのはテレビやテーブルといった最低限の物。
最低限の家電でやりくりされたそれに何処か、
几帳面な気持ちになる。
「シロコの部屋は此方になる」
「……ベッドがない」
シロコの部屋になるであろうその部屋は収納等もある。
「一人暮らしで一軒家自体おかしいだろ?
掃除はしてあったんだけど、使ってくれないとな」
「お義父さん、ありがとう」
「お義父さんって歳じゃないのにな」
「でも保護者」
「ん……わかったよ。通帳は直ぐに作るからな」
「あるよ?」
「この家を変わりに管理してもらうんだ。
管理費とお小遣いだ」
「そういえば明日に行くって言いましたけどそれって」
「明日と言えばアッチは迷惑するだろう?嫌がらせだよ」
「うへぇ」
「こう言えるんだ。お前達は徴兵紛いの事をするくせに、
最低限の用意も出来てないんだなと。
そして、俺が受けた脅迫をクロノスを用いて暴露。
元が腐ってるからな。
余計にヴァルキューレの立場は悪くなるが、
知った事じゃない。」
「……そうだ、先生!せめて先生の家で簡単な料理とか」
「…カレーなら作れるが」
「なら先生の変わりに私とホシノちゃんが作ります!
先生はシロコちゃんと荷物纏めててください!」
夕食はアビドスの生徒だけでなく関わりのある
ヴァルキューレの生徒も招待してのカレーパーティー。
「あの……良いんですか?」
「うん!だってハミちゃんも一緒でしょ!」
「……あの、ありがとうございます」
ヴァルキューレアビドス高校前警察署、
それは実際の所名ばかりだ。
アビドスも人口は増えてきているが、
それでもD.U.等連邦生徒会の直下に比べれば居ない。
「……俺はキヴォトスの外から来た」
「先生?」
マドカが話すのは過去の自分、
「俺はウルトラマン、光の巨人を一度だけ見たんだ。
瓦礫に潰されそうな時、救ってくれたのがティガ、ダイナ、ガイアの3人」
「ダイナと……ガイア…」
「俺は……ずっと目を背けてた。怪獣が怖いんだ。
今でも、俺の心はあの瓦礫の中でティガに救われた中にいる。
俺はアビドスを言い訳にしていたんだ。
自分の中にある恐怖から逃げる為に」
「でも…先生は」
「俺は覚悟を決めた。キヴォトスを護るんじゃない、
君達の、アビドスの未来の為にキヴォトスで戦う」
マドカはティガの人形をホシノに手渡す。
「それ…ティガの……先生の思い出の」
「もう、子供の記憶に決着を付ける。これは覚悟なんだ。
女の子にこんな贈り物はとは思うけど、ホシノ。
俺の覚悟を持っていてくれないか?全部決着がついた時。
きっと、俺はその人形…ティガに向き合える筈だから」
自分はティガだ。
しかし、幼き日空想の産物だった怪獣に襲われ。
マドカ・ダイゴに救われた。
今の自分はそれを夢見て待つ少年ではない。
この世界のウルトラマンティガという再認識だ。
「わかりました。なら、無事に帰ってきて下さいね」
その後、夜遅くまで会話が続きマドカは
寝てしまった生徒達に苦笑いする。
「……駄目だな」
毛布などを引っ張り出し4人に掛ける。
布団が足りなくなってしまうが、それは慣れている。
置き手紙を残し、ハンヴィーに乗り込む。
「………出ていくのが辛くなる」
砂漠の闇をヘッドライトが照らす。
だが、照らした先にあるのは車両用のゲートではない。
「…先生」
ドアを開け、ユメの正面に立つ。
「ユメ、アビドスを…皆を頼む」
「帰って来るよね?」
「当たり前だ。俺の家は此処だからな」
ユメの頭を優しく撫で、再びハンヴィーのハンドルを握る。
そして、アクセルを踏み締めた。