車を走らせ、D.U.に入る。
近頃の怪獣災害により通常よりも『ヴァルキューレ生徒』が
多くパトロールをしている。
「すみません!」
「なんでしょう」
「コレってハンヴィーですよね?しかもSRT制式採用型の」
「型は同じですけど民間の払い下げ品ですよ。
身分証はコレです」
キヴォトスでの身分証をヴァルキューレの生徒に見せる。
すると驚いた顔で上位者と思われる生徒を連れてきた。
「貴方がアビドスの先生ですか?」
「あぁ、俺はアビドス高等学校の唯一の教員。
マドカ・ダイゴだ」
「棘のある言い方ですね」
「ヴァルキューレも、連邦生徒会も、SRTもはっきり言って俺が嫌いだからね」
「では何故D.U.へ?」
「君達の上の上が俺の生徒を人質にしてね。
俺があのままアビドスに居続けたら、
生徒達を指名手配すると手紙を受け取ってね。
後でヴァルキューレにもお邪魔すると思うよ。
上に伝えてくれ『覚悟しておけよ』」
「?!」
「君達がまともな生徒なら、
捕まえるべきは不良じゃなくて上だ。
じゃあ、仕事頑張ってね」
ハンヴィーから手を振り、D.U.を進んで行く。
砂等は泣く、至って平和という状況。
それでも、アビドスでの生活の方が長い。
いつの間にか砂漠に立っていた自分を受け入れてくれた。
身分証も、信じられる証拠もない。
それなのに教師という立場に置いてくれた。
「未練がましいか………」
SRT特殊学園はその性質から高い警備力を持っている。
入口の検問には最低で6人が在中しており、。
入校者を常に監視している。
「SRTに何用で」
「対怪獣対策部の顧問として赴任してきた。
事前に連絡が入ってきていないか?」
「…来て頂けたのですか」
「生徒を人質に取られてはね」
身分証の提示と書類の書き込みを依頼され、
それが終わると駐車場に案内される。
ハンヴィーを停め、鍵を抜いたとき生徒が話す。
「申し訳ありません。先生、車両の鍵は此方で保管致します」
「無くさないでくれ、まだローンが6年残ってる」
検問所に一度戻り、車の鍵を預ける。
番号札のついた鍵を受け取り、それを財布に仕舞うとSRT校舎
に向けて歩く。
特殊学園という名の通り、厳しい訓練を行っている生徒がいる。
学ぶだけでなく、戦うこと。それが、彼女達の使命。
「見学者ですか?ここは機密の」
「対怪獣対策部の顧問に赴任した。マドカ・ダイゴだ。
対怪獣対策部の部室は何処かな?」
「でしたら、私がご案内致します!」
栗目の少女が敬礼する様は何処か微笑ましい。
しかし、装備は普通ではない。
アビドスでも見かけないチョッキとヘルメット。
そして歩幅は常に一定である。
雑談をしながらその少女を観察する。
「凄いな」
「え?」
「歩幅が常に一定だ。それを常に行うには訓練がいる。
君は俺と雑談しながらも無意識に歩幅を一定にして
歩いている。厳しい訓練だっただろう?」
「はい、でもそれが私達の誇りでもありますので」
「……連邦生徒会や何やらの圧力で毛嫌いしてけど、
君達を見ていると考えを改める必要があるね。
腐ってるのは上だ、君達現場の人間は変わらない」
「はい…私達SRTは連邦生徒会の私兵扱いされます。
でも、皆市民の為に働きたくて此処に来たんです!
ヴァルキューレは寄り添う形だと思いますけど、
それじゃあ守れるものも守れません。結局は武力ですから」
「その考えは嫌いじゃない。だが、少し違うな。
SRTというのは本来抑止力にならなくては行けないんだ。
ゲヘナに対するトリニティと言うように。
犯罪者に対するSRTという最大の抑止力。
だが、それはできていない。市民は君達をただの武力集団としか
認識しておらず、更には連邦生徒会もとい防衛室。
いや……指揮権の略奪が可能な事を考えれば連邦生徒長の私兵にも」
「そんな!私達SRTは」
「では、命令されたら?君達にとって生徒会長に準ずる者は
防衛室長だ。しかし、防衛室すら通さず連邦生徒会長は君達を
実働させられる権限を有している。まったく……」
それ程までに連邦生徒会長という存在の権限は大きい。
連邦生徒会長の一声で動かせる最大戦力。
どの学園よりも最新鋭の武装と練度を有しているのだ。
警戒されないほうがおかしいというものだ。
「……では、先生は」
「その点で言えば、俺もとある条件付きだが超法規的措置として
連邦生徒会長と同じ権限が与えられたよ」
「…それが怪獣災害」
「期待し過ぎだ、俺はヘイローもない。
ただ、アビドスに生きる一人の人間だ。故郷を守る為に…
頑張っただけなのにな」
「でも…それができる人は少ないです。ヘイローもないのに、
立ち向かえる人は」
どこか尊敬の眼差しを受けるが、それが不愉快だった。
「付きました。『Global Unlimited Task Squad』
キヴォトス全域に対して、各学園からも容認されています。
怪獣災害だけでなく、超常現象、怪事件に対しても捜査を行う
我々SRTの『特捜チーム』です通称は」
「……GUTS。ガッツ、俺もその名前を冠するチームを知っていたよ」
「そうですか…そのガッツは?」
「優秀だった」
「では、此方のガッツも優秀であると言えます。
私はガッツ初代部長。入間メグミです。よろしくお願いします。
マドカ先生」
その名に心当たりがある。
それにしても、ガッツのメンバーだと思わなかった。
「他のメンバーにも挨拶させてもらうよ」
「ハッ!
また、先生!私達は部という体裁を整えております。
しかし、指揮権は常に先生自身にあると」
「……メンバーの紹介をお願いしたいね」
「副部長の宗方・セイです」
「柳瀬レナです。基本的にヘリのパイロットをします」
「信条テオです。射撃ならSRTトップです」
「堀井マスミですわ。僕はメカニック担当ですさかい、
よろしゅうお願いします」
「矢住ジュンです。オペレーターをしています」
エセ関西弁のホリイ隊員という驚きがありつつ、
名前にも正直興味は失せてしまう。
似た名前てGUTSだろうが、TPCという組織じゃない。
ここは始めから武力集団として作られた組織。
「……君達の顧問となった。マドカ・ダイゴだ。
怪獣に対する第一人者という認識で構わない。
基本的に前線には俺も出る」
「そんな!先生はヘイローが」
「聞くが、数トンある生命に踏みつぶされる。
瓦礫に押しつぶされる。捕食される。
それでもヘイローは守ってくれると思うのかい?
怪獣は災害と同じだ。ヘイローがあろうがなかろうが、
関係ない。死にたくなければ俺に従って欲しい」
マドカが神妙な顔つきで話していた時、
ジュンの座っていた場所からアラートが鳴る。
「SRTに出動要請。怪獣です!」
部室の巨大なモニターに映像が出される。
D.U.サンクタムタワー付近だろう。
そこで3M程の蟻地獄が市民を捕食しようとしている映像だ。
「うぷっ」
「ジュン、吐くなら後にしろ。お前達、武器は」
「対怪獣様に7.62×51mmFNSCAR-Hです!
全員に1丁ずつ支給されて」
「俺にはない!ジュンのをよこせ」
「はい!」
「マガジンは6つ。最大数だ!良いな!」
「「了解!」」
「私は」
「他の部隊と情報共有だ!
ヴァルキューレ及び既に出ているSRTとの連携は忘れるな!」
SRTの校舎から出るといきなり問題に直面する。
「車両がない!嘘!」
「防衛室に確認取りました!
えと…先生が本日着任の為、配備が間に合わ…」
「再三にわたり拒否してきたツケか。
俺のハンヴィーに乗れ!」
「え…でも、それ」
「銃座の所をハッジで偽造して民間車両と偽ってるだけだ。
中からなら開けられる!それで6人乗れる!早くしろ!」
「了解!」
運転席にレナが入り込むのをマドカは見逃さない。
「運転するのか?!」
「パイロットですので!」
「……新車だ!壊すなよ!」
喧嘩する暇はない。
直ぐ様キーを投げ渡し、マドカは銃座につく。
体格の問題だ。成人男性と高校生程度の少女では、
横面積が違い過ぎる。
「見えてきました……これは」
「何体居るんだ」「弾を…弾をちょうだい!」
「45口径を!」「私9mm!」
「ひっ…」
捕食されそうなヴァルキューレ生徒の前に、
黒のスーツ。SRTの校章とGUTSの部隊章の付いた
プロテクターを装着した大人が現れ、怪獣に蹴りを入れる。
「……アントライオンか」
「////2!!!!」
大きな顎で挟まれるかと思った瞬間、
その男は蟻地獄の頭に銃口を向ける。
「調査対象だ。ミレニアムに送るか」
数発の銃声と共に緑色の粘液が身体にかかる。
助かったという希望よりも、口に入ってしまった粘液で
気分が悪くなる。
「…怪獣の血を飲んだか。検査入院だ。
おい……聞こえる?」
「え……あの」
「まだ民間人も居る。
俺達は君の護衛をしている余裕はない。わかるね?
自力で避難してくれ」
冷たい様な言い様だが、仕方がない。
アントライオンは地中を掘り進んで移動する。
そして、蟻地獄の様な狩場を作り獲物を捕食するのだ。
今、少なくとも20カ所餌場が出来ている。
アントライオンを討伐している者も居るようだが、
被害者の方が多い。
「GUTS結成初の実戦だ!ホリイ、シンジョウは右!
ムナカタ、ヤナセは左!俺とイルマは正面!
無駄玉は撃つな!奴等の甲殻は硬い。だが、
腹の肉や顎の中。つまり、口は柔らかい!
一人が後ろ、一人が正面で戦え!
安心しろ、2対1が基本なら問題ない。
同じ巣穴に2体居ることはないからな!良いな!
喰われるなよ!」
「「はい!」」
こうしてアントライオン討伐作戦が開始された。