シャアって色んな意味で罪深い男です。
宇宙世紀88年9月。
シャアが我が家に来て数ヶ月経った頃、彼は珍しく体調不良になった。
パパによれば、疲れが溜まったのが出たのかもって言ってたから、すぐに回復するかもしれない。
.......でも
「.....すまない、ハマーン」
シャアが体調不良で寝込んでからというもの、彼は寝ている時にそんなことをよく呟くようになった。
....シャアはジオンのエースパイロット。
なら、クワトロ・バジーナを演じる前にハマーン・カーンと出会っていてもおかしくはない。
だけど、ハマーンの名を呟くシャアの顔はどこか悲しげで......彼とハマーンの間に何かがあったのは間違いないみたい。
「ジャーヴィス、具合はどう?」
シャアが寝込んでいる部屋の中に入りながら、そう尋ねる私。
一方のシャアは私の声に気がつくと、ベッドから体を起こしたかと思えば
「少しは良くなった....と思いたい」
少しだけ元気のない声でそう言った。
「その様子だとまだ元気100%じゃなさそうだね」
私はそう言った後、シャアに近づくと........彼の脇にあった体温計を手に取った。
「体温は.....少しだけ熱があるっぽいね」
「だろうな」
私の言葉に対し、そう呟くシャア。
その言葉を聞いた私は、シャアをジッと見つめた後......意を決して、彼に対してこう尋ねた。
「.....ねぇジャーヴィス、あなたってハマーンとはどういう関係性なの?」
ハマーンという言葉を聞き、シャアはピクッと反応した後......私の目を見ながら、こう言った。
「何故、そんなことを聞く」
「だって、ジャーヴィスってたまに寝言でハマーンに謝っていたから気になっただけだよ」
私がそう言うと、シャアはビックリとしたよう顔になったかと思えば、ハマーンのことを思い出したのか.......悲しげな顔になりながら、私に対してこう語り始めた。
一年戦争後.......地球を目指していたシャアは、アクシズで当時まだ14歳だったハマーンと出会った。
当のハマーンが好意を抱いていたみたいで、シャアはそのことに気がついていたみたいだけど、彼はそんなハマーンの好意を受け取ることなく、指導者として接していた上にナタリーという女性と関係を持っていたとか。
そんな状況が続いていた時、シャアとハマーンは徐々にすれ違うようになっただけではなく、ハマーンがナタリーの死を黙認したことによって、二人の仲に完全に亀裂が入ったのだとシャアは語った。
シャアの過去を知った私は一言
「つまり、シャアはハマーンを利用しようとしてたってこと?」
と言った。
もしかして、前にシャアが言っていた一人の少女ってハマーンだったりして。
そんなことを思っていると、私の言葉を聞いたシャアはヴッと苦い声を出した後.....その言葉を否定することもなく、こう言った。
「.....あの時の私は、ハマーンのことを女ではなくカーン家の後継者として見ていた。だからこそ、ハマーンはあんな風になったのかもしれない」
そう言うシャアの顔には、ハマーンに対する罪の意識が滲み出ていて....その顔を見た私は、彼が自分の罪と向き合っているのだと理解した。
「シャアはハマーンに謝りたいの?」
「出来ればそうしたい。例え、自己満足だと言われようとな」
私の言葉に対し、覚悟を決めたようにそう言うシャア。
ハマーンに謝りたいというシャアの言葉は本物だ。
だけど、今のハマーンはネオ・ジオンの親玉。
だからこそ、シャアの中にある後悔はどんどん強くなっているってことなのかな?
「シャアが反省しているのなら、それでいいと思うよ」
シャアに対し、私がそんなことを言うと.....シャアは優しそうな顔になると、私に向けてこう言った。
「....お前は相変わらず優しいな」
「私は自分の意見を言ってるだけだよ」
シャアに背中を向きながら、そう言う私。
そして、シャアの方を向くと
「パパが言ってたけど.....例え謝って許されなくても、それで終わりじゃない。本気で反省してるって分かれば、その人は前を向くことが出来るんだって」
あくまで、パパからの受け売りの言葉だけどね。
なんて思っていると....その言葉を聞いたシャアは遠くを見つめると、こう呟いた。
「.....そうだな」
その後、シャアの体調は徐々に回復していき....やがて、完全に復活した。
けれども、この時の私達は知らなかった。
この後、ネオ・ジオンが戦いの中で恐ろしいことをするということを.....