クワトロ・バジーナ....もとい、シャア・アズナブルがウチにやって来たから数日が経った。
彼は未だに目覚める気配はない。
まぁ、そう簡単に目覚めないよね。
一応、パパにあの男の正体を伝えたところ.......驚きはしたものの、やっぱり彼を見捨てられないのか、このまま治療は続けるらしい。
全く.......パパらしいと言えばらしいけどね。
火傷の治療は順調そのもの。
だけど、それでもシャアが目覚めない状況にパパは首を傾げていた。
それで念の為に脳波とかを調べた結果、どうやら今のシャアは何かしらの夢を見ている状態なのだとか。
夢.......ねぇ。
多分、その夢がシャアの覚醒を邪魔しているのは間違いない。
でも、夢だからこそ手出しが出来ないとパパが言っていたから、今は自然に目覚めることを待つしかない。
「シャア・アズナブル....」
シャアの治療室にて、そう呟く私。
彼は一年戦争の後、姿を消した。
だから、その後に生み出された私はシャアのことは知らなかった。
でも、彼と初めて出会ったあの時.......私のニュータイプとして力が何かを訴えかけていた感覚に襲われた直後、私は彼がシャアであることを理解した。
あと、ダカールでのあの演説を見た影響もあるかもしれないけど。
噂によれば、シャア・アズナブルは私と同じニュータイプだったらしい。
.......だとしたら、彼の正体を何となく察するのも無理はないか。
「パンジー、彼の様子は?」
「今日も今日とて寝てるよ」
パパの言葉に対し、椅子を回転させながら私がそう言うと.....パパは眠っているシャアを見ながらこう言った。
「う〜む.......やっぱり今日もお休み中か」
....シャアはそう簡単に目覚めないのは分かってる。
ただ、問題なのはその後のことだとパパが言っていた。
確かに、シャアが生きているとなると面倒なことになるのは間違いない。
だけど、だからと言ってパパが彼を見捨てることはないだろうし....う〜ん、どうしたもんかねぇ。
「.......なぁパンジー、彼とは」
「知り合いじゃないよ。ただ、噂程度でしか聞いたことはないけどね」
パパの言葉に対し、そう答える私。
だって、私が生まれたのはシャアがクワトロだった頃だしね。
「....そうか」
パパはそう言うと、シャアがいる部屋に荷物を置いたかと思えば.........その部屋の机にとある書類を置いていた。
その書類をチラッと見てみると、そこにはジャーヴィス・キャメロンという名前が書かれていて
「.....パパ、これもしかしてシャアの偽名?」
私は、思わずパパに対してそう言った。
するとパパはニコッと笑うと.....こう言った。
「あちゃ〜、バレちゃったか」
「バレちゃったって.......これ大丈夫なの?」
私がそう尋ねたところ、パパはニコニコ笑いながら私に向けてこう言った。
「大丈夫!!パパの昔の知り合いに頼んでそういうのはやってもらったから!!」
いや、逆にそういうことが出来る知り合いがいる時点でヤバいよ!!
というか、よく話が通ったね!!
ま、まさか....!?
「賄賂.......?」
「いや違うからね!!」
私の言葉に対し、そう否定するパパ。
だ、だよね〜!!パパに限ってそんなことはしないよね〜!!
「賄賂じゃないのは分かったけど....何で偽名なんかを作ったの?」
私がそう尋ねると、パパは苦笑いしつつもその理由を話してくれた。
パパがシャアの偽名を作った理由。
それは、もしもシャアの意識が回復した時のための保険としての策だったらしい。
そりゃシャア・アズナブルがうちのコロニーにいるって知られたら大騒ぎになるしね。
あと、念の為に彼がここに来たバックストーリーも考えているとか。
......パパって結構切れ者なのかな?
「けど、何でまたシャアのためにそこまでやるの?」
「困っている人を助けるのが医者の役目だからね」
困ってる人....か。
少なくとも、パパにとっての困っている人は敵味方関係ないんだろうなぁ。
そこはパパの良いところであり、悪いところなんだけど。
「ふぅん....」
パパの言葉に対して私はそう言った後、再びシャアの方を向いた。
シャアはまだまだ夢の中。
目覚める兆しは特に無し。
だけど、もしもシャアが目覚めたらどうなるのだろうという私がいるのだった。
優男なパンジーパパは実は色んなコネを持つOTONAなのだ!!